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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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2007年03月21日

tpt『Angels in America【第1部「ミレニアム」】』03/20-04/08ベニサン・ピット

 2004年しのぶの観劇ベストテンのダントツNo.1だった作品の再演です。トニー・クシュナーの傑作戯曲『エンジェルス・イン・アメリカ』の第一部、第二部連続上演。各パート3時間以上ある大作を同じキャストで、1日(マチネ&ソワレ)で両方観られるという贅沢!

 初日に第一部だけ拝見したのですが、もー・・・素晴らしすぎて嬉し涙!たまたま一緒に観ていたお友達も、最初の途中休憩から驚愕のため息!この至福のプレゼントをどうぞお見逃しなく♪第一部の上演時間は約3時間30分(途中休憩10分&15分を含む)。

 ⇒CoRich舞台芸術!『Angels in America

 レビューをアップしました(2007/03/25)。
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舞台写真(C)TPT/撮影◎島田麻未

 ≪あらすじ≫ パンフレットより。★ネタバレしています。(役者名)を追加。
 ---あんんたたちも、あんたたちの子供たちも、アメリカで生きているのではない。そのような場所は存在しない。
 1980年代半ば。ロナルド・レーガンの共和党政権下で社会が急速に右傾化するアメリカ。当時まだ謎の伝染病だったエイズの嵐が吹き荒れていたニューヨーク。
 モルモン教徒で共和党支持者、「隠れゲイ」の法務官ジョー(パク・ソヒ)は、法曹界の大者ロイ・コーン(山本亨)からワシントンへの栄転をもちかけられる。ロイ・コーンは1950年代、ジョセフ・マッカーシーの右腕として「赤狩り」の急先鋒に立った超保守派のユダヤ人であり、彼もまた「隠れゲイ」である。ロイは医者(深貝大輔)にエイズの宣告を受ける。
 ゲイのユダヤ人で裁判所の雑用係をしているルイス(池下重大)は、恋人のプライアー(斉藤直樹)と同棲している。プライアーはエイズを発病する。ルイスは重い現実に耐えられずプライアーのもとを去ってしまうが、プライアーの親友で黒人、元ドラァグクイーンの看護士ベリーズ(矢内文章)を呼び出し、様子を聞こうとする。「自由の国」アメリカを愛してやまないルイスは、同時にレーガン政権下で大きな権力を握りつつある保守主義アメリカに嫌悪感を抱いている。

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舞台写真(C)TPT/撮影◎島田麻未

 ジョーの妻ハーパー(宮光真理子)は夫のワシントン行きに反対である。ハーパーは精神安定剤ヴァリアム中毒で、日々さまざまな幻覚を見ている。プライアーも先祖の亡霊(パク・ソヒ&深貝大輔)に出会ったり、奇妙な「お告げ」の声を聞いたりする。また、あるときは、夢のなかのプライアーと幻覚のなかのハーパーが出会ってしまう。プライアーはハーパーに告げる。「あんたのダンナ、ホモよ。」
 そしてある晩、プライアーの部屋の天井を突き破り、天使(チョウソンハ)が降り立つ。
 ---ごあいさつを、預言者を! 大いなる仕事がはじまる! 使いが到着した!
 ≪ここまで≫

 初演と同様、スピーディーかつ自由自在な展開にわくわくしながら、ベニサン・ピットで生き生きとその役を生きる役者さんと一緒に『Angels in America』の世界を共有することができました。

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舞台写真(C)TPT/撮影◎島田麻未

 この公演に携わる方々は『BENT』、『Angels in America』(第1部第2部)、『三人姉妹』と、ロバート・アラン・アッカーマンさんとともに製作を続けてきたザ・カンパニー(THE COMPANY)と呼ばれるグループです(※宮光真理子さんは初参加)。一人一人が存分に個性を発揮し、それぞれがかけがえのないパーツとなって作品を構成しています。このメンバーだからこそ、自由奔放で息がぴったり合った、躍動感のある劇世界が生まれたのではないかと思います。

 ここからネタバレします。

 ハーパー役が中川安奈さんから宮光真理子さんに変わった事で、夫ジョー(パク・ソヒ)のキャラクターに大きな変化がありました。初演時は真面目一徹の青年が姉さん女房の尻に敷かれているように見えていたのですが、今回は同じ宗教を信じ、一緒の未来を夢見て結婚した若くて初々しいカップルに見えました。だから2人がすれ違っていくことがとても切ない・・・。

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舞台写真(C)TPT/撮影◎島田麻未

 そしてジョーが、エイズを発症した恋人プライアーのことで苦しむルイスに惹かれていくシーンでは、初演の時は恋愛のときめきの方が強く印象に残ったのですが、再演では2人の心の痛みの方が鮮やかに伝わってきました。逃れようのない自己矛盾・自己嫌悪のどん底にいる2人が明日も生きていくためには、他の誰かにただ愛してもらうしかなかったんですね。

 ハーバー(宮光真理子)がクスリでぶっトんで、幻覚の世界に行ってしまうシーンの破天荒さにスカっとします。ツアーガイド(矢内文章)との荒唐無稽なやりとりも笑えるんですよね。宮光さんはやっぱり凄い女優さんだと思いました(過去レビュー⇒)。彼女が話すと、その言葉どおりの感情が彼女の身体を透けて生まれてくるように感じるのです。

 ジョー(パク・ソヒ)がソルトレイクの母親(松浦佐知子)に「僕、ホモセクシャルなんです」と電話するシーンはやっぱり超キュート♪胸にグサっと刺さるような爆弾発言や残酷な宣告の後に、ちゃんと笑いが用意されていることが素晴らしいです。

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舞台写真(C)TPT/撮影◎島田麻未

Part 1 ミレニアム・Part 2 ぺレストロイカ
Tony Kushner's A Gay Fantasia on National Themes
出演=山本亨/斉藤直樹/パク・ソヒ/池下重大/チョウソンハ/宮光真理子/松浦佐知子/植野葉子/矢内文章/深貝大輔/小谷真一/アンソン・ラム
脚本=トニー・クシュナー 訳=薛珠麗・TPTworkshop 演出=ロバート・アラン・アッカーマン 演出補/薛珠麗 美術・衣裳=ボビー・ボヤヴォッツキー 照明=沢田祐二 ヘア&メイクアップ=鎌田直樹 音楽=粟屋顯 音響=高橋巌 舞台監督=赤羽宏郎
発売日:2007/02/24 全席指定 一般5,000円 学生3,000円(TPTのみ取扱い) Part1&Part2通し特別観劇料金9000円(同じお日にちの昼夜でご観劇の場合のみ)
公式=http://www.tpt.co.jp/

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Posted by shinobu at 2007年03月21日 09:30 | TrackBack (0)