みつわ会は、演劇集団円、文学座、新派などに所属する役者さんたちが、久保田万太郎(関連ページ⇒1、2、3)の作品だけを10年間上演し続けている団体だそうです。私は初見。久保田万太郎作品も初めてでした。
『雪』と『舵』の短編2本立てだったのですが、休憩15分の間に装置が完全に入れ替わったのに驚き。衣裳もヘアメイクもしっかりしていたし、前売り4,000円なのもちょっと納得でした。
⇒CoRich舞台芸術!『「雪」/「舵」』
今の日本では決して耳に入って来ないであろう昔の日本の日常会話が、しっとり、ゆったりと舞台の上で生まれていました。明治から昭和の日本人の庶民の生活を、ありのままに淡々と写し取ったような戯曲なんですね。
最初のうちはその希有な状態を珍しいものを見物するように眺めていたのですが、徐々に集中力が失われていってしまいました。役者さんはちゃんとした美術の中で、それらしい衣裳を着ていらっしゃるのですが、そういう時代の所作や常識などを身体で表現すること(真似ること)で精一杯のように見えたからだと思います。また、どの役者さんも自分のセリフを言うことや、予定通りの動きをすることに集中していて、舞台上の誰かとコミュニケーションをしているようには見えませんでした。最近の私は役者さんの状態が気になると、それだけで観る意欲が減退してしまうのです・・・。
『雪』(明治45年作)では登場人物がみな着物を着ていて、女性はかつらでした。髪結い屋の女が客の家を訪問して髪を結っているシーンから幕が開き、色んな種類のクシや小さな鏡台などの小道具も気が利いていて見ごたえがありました。
『舵』(昭和29年作)では男性はポロシャツに長ズボン、裕福な女性役は着物でしたが、日常着ではなくよそ行きの晴れ着を着ていました。夏のお祭の時期のお話だったので、玄関に吊るされたちょうちんに火を入れるなど、季節感がよく出ていました。そういえばちょうちんなんて、何年触ってないだろう・・・。
今現在30代の私は、昭和というと高度成長期やバブル経済などをまず連想します。戦後60年という節目ももう過ぎ去って、昭和のことは今や歴史の1ページ・・・。「バブルへGO!!」なんていう映画まで出てきました。
本当に人間は忘れっぽいですね。「喉元過ぎれば熱さを忘れる」とは言いますが、自分のことながらちょっと悲しいし、あきれます。だから今日、私が生まれていなかった昭和(そして明治)を描いた久保田万太郎戯曲の上演を観られてありがたかったです。
今公演は6月にNHKで放送予定があるそうです。舞台写真は公演関係者から頂戴しました。
『雪』出演=本山可久子・名越志保・片岡静香 ・伊和井康介・蔵一彦・山口千春 ・中平良夫・佐堂克美
『舵』出演=大原真理子・紅貴代・菅野菜保之・袴塚真実・吉岡健二・山口眞司
演出=大場正昭 美術=中嶋八郎 照明=古川幸夫 効果=秦和夫 舞台監督=藤森條次 宣伝美術=美香(pri-graphics) 協力=中山信弥・坂入清子・前波英夫・東京演劇音響研究所・村井加壽・柳沢延恵・谷沙保里・山崎由美子・サイスタジオ吉田悦子さん・円企画・文学座・松竹株式会社
日時指定・全席自由 前売り4000円 当日4500円 学生(当日のみ)2500円
CoRich=http://stage.corich.jp/stage_detail.php?stage_main_id=804
シアターガイド(2006年)=http://www.theaterguide.co.jp/news/2006/03/14.html
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