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2007年04月02日

DULL-COLORED POP『ベツレヘム精神病院』03/16-18タイニイアリス

 谷賢一さんが作・演出されるDULL-COLORED POP(ダル・カラード・ポップ)の第四回公演です(過去レビュー⇒)。タイニイアリスのサイトに谷さんのインタビューあり。

 これまでに拝見した谷さんが関わる作品の中で、最もお芝居らしい構造の作品でした。個人的にはもっとアグレッシブに戦っていって欲しいなと思っていたので、少々がっかり・・・。でもこれまでで一番形の整った作品だったと思います。

 ⇒CoRich舞台芸術!『ベツレヘム精神病院

 ≪あらすじ・作品紹介≫ 公式サイトより。(役者名)を追加。難しいと思う言葉に注釈追加。
 片田舎の精神病院。父(富所浩一)を蛇蝎(だかつ:へびとさそり)の如く忌み嫌い、詐病を用いて入院して来た政明(加賀美秀明)は、ある目的を持っていた。
 「見に来たんだ、ここを」
 政明は、目を包帯で覆い、耳をヘッドフォンで塞いだ少女・うにか(清水那保)と出会い、その目的の真意を彼女に漏らす。
 実在した史上初の精神病院・ベツレヘム精神病院に着想を得、精神病者の内的世界の舞台化と、精神病者を見詰める視線を描いた、DULL-COLORED POP第四作。
 ≪ここまで≫

 舞台はおそらく劇場をそのまま使ったブラックボックスの状態で、黒紗幕を上げ下げして病室、ロビー、診察室などにシンプルに場面転換します。
 病院モノが苦手な私ですが、病気で人が死ぬことをテーマにしているわけではなかったので、それほど引かずに最後まで拝見できました。

 県会議員の父親に反発する若者・政明が亡くなった母のことを知ろうと、母が入院していた精神病院に侵入します。そこで出会う患者や医師・看護士との対話・・・。終始、「青春だな~」と外側から眺め続けました。登場人物も出てる役者さんも、青春真っ只中な感じがしました。若い患者についてはそれでいいかもしれませんが、父親や医師、看護士は大人ですから、悩みが青春レベルに見えてしまったのは残念。演技のせいだけではない気がします。

 私がこんなことを言うのは差し出がましいことですが、DULL-COLORED POPに出演されてきた役者さんは、とても成長されているなと思いました(成長っていう言葉があつかましいですね)。何年もこつこつと同じ場所でひとつのことを続けていけば、人間は何かしらの成果を自動的に出すものなんだと思います。もちろん、その成果の大きさや伸び具合には個人差がありますが。

 詩的な言葉がいっぱい出てくる脚本はやっぱり面白いです。でも今回は精神病を患った人の言葉として出てきたので、普通だったんですよね。個人的には『4 nudists』の時のように、日常会話の中に突然出てきたりする冒険が欲しいです。

 主人公の名前を精神科医・ノンフィクション作家の野田正彰さん(Wikipedia)から取っていましたが、名前は変えて欲しかったですね。漢字だけ変えても読み方が一緒だと、観客はどうしてもご本人を連想してしまいます。

 ここからネタバレします。

 父が息子を追って病院にやってきて、息子と本気で衝突し語り合います。でも息子が退院して家に帰ったら、すんなりと二人で味噌汁を囲んだ団らんになりました。リアリティが感じられませんでした。
 死んだと思っていた母親は、実は同じ病院にまだ入院し続けていました。政明は衝撃的な事実につき当たってしまったわけですが、なんだか全体が軽かったんですよね・・・。もっと残酷で恐ろしいことだと感じたかったです。

 政明が患者のうにか(清水那保)と一緒に植えたひまわりが満開になります(一緒に植えたように記憶しています)。でも、うにかは自らの目をつぶして目が見えなくなっていました。ひまわりに囲まれながらも少女はそれを見ることができないという、皮肉で悲しいラスト・シーンが良かったです。さりげなく消えた照明も。

 若い女の子に卑猥な言葉を言わせたり、あからさまに胸を触らせるラブシーンをやらせたり、そういう性的に奇抜な演出が結構ありました。そこだけ際立って印象に残ってしまってもったいないので、必要不可欠でない限りそういうことは控えて欲しいなと思いました。

出演=岩藤一成、加賀美秀明(青春事情)、清水那保、富所浩一、猫道(猫道一家)、ハマカワフミエ(劇団活劇工房)、堀奈津美、和知龍範(fool-fish)
作・演出=谷賢一 舞台監督=甲賀亮 照明=松本大介、河上賢一 音響=長谷川ふな蔵、若井大輔 演出助手=上金由佳 舞台美術=鮫島あゆ 宣伝美術=堀奈津美(写真)、鮫島あゆ(編集) ロンドン=新井宏美 制作=大藤多香子、神谷愛美、黒澤ナホ、林安由美、片山響子
前売2000円 当日2300円(学割: 前売当日ともに大学生500円・高校生1000円引き。要学生証提示)
公式=http://www.dcpop.org/

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Posted by shinobu at 2007年04月02日 17:42 | TrackBack (0)