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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2007年04月12日

世田谷パブリックシアター『現代能楽集Ⅰ「AOI/KOMACHI」』04/11-15世田谷パブリックシアター

 世田谷パブリックシアターの芸術監督の野村萬斎さんが企画・監修されているシリーズ「現代能楽集」第一弾の再演です。2003年の初演はシアタートラムで上演されていました。なんと北米ツアーを経ての東京公演なんですね。

 会場が変わったし、アメリカでどんなことされたのかしら~んという興味が沸いたため、初日に伺ってきました。てゆーか「好きな役者さん目当て」っていうのが正直なところ(笑)。

 CoRich舞台芸術!⇒『現代能楽集Ⅰ「AOI/KOMACHI」

 ≪あらすじ・解説≫ 公式サイトより抜粋。
 本作は全く趣向の異なる二部構成で物語を展開。第一部の『AOI』は、光源氏の妻・葵に生霊となって取り憑く六条御息所の恋の懊悩を描く謡曲『葵上』を、現代の美容サロンの出来事へと描き変えた作品。初演では、主演の麻実れいが、圧倒的な存在感を放つ演技で高い評価を受けました。第二部は、老女となった小野小町が昔を懐かしむうちに狂気に陥る謡曲『卒都婆小町』をもとにした『KOMACHI』。手塚とおると舞踏家・笠井叡の共演、映像を用いた演出と見どころたっぷりです。
 ≪ここまで≫

 シャープな都会的空間で、過激にエロティックな、大人向けの退廃・耽美ホラー・・・という感じでしょうか(特に「AOI」)。私は残念ながら能楽の知識がないのでストーリーについて特に深いところで味わえたわけではないのですが、病的なほど白い照明や、シンプルで躍動感のある美術、そしてこの作品の空気にすっかり慣れ親しんで自由に動いている役者さんなど、舞台のそれぞれの要素を気楽に楽しむことができました。やっぱり長いツアーを経た公演っていいですね。

 舞台にそびえる大きな2枚の壁が初演では板だったのですが(すっかり忘れてましたけどレビューを読んで思い出しました)、今回は巨大な白い布でした。布になったことで色んな効果が増えていましたね。照明も映像も面白かったです。

 ただ、卑猥な言葉が多いしラブ・シーンも生々しいので(「AOI」)、苦手な方もいらっしゃるかも・・・。「そーゆーのも面白いよね!」って思えたらいいんですけど。まあそれも含めて“都会的”だと思いました。ちょっとスノッブ(snob)な感じっていうか(笑)。アメリカで評判が良かったことに納得です。

 ここからネタバレします。

 白い布に動画や静止画が大きく映写されて、さらにその布がグルグル回転します。影絵も素敵。「AOI」、「KOMACHI」ともに、2枚の布に挟まれた舞台中央にイスがぽつんと置かれるのがいいですね。

 ■「AOI」:洗練された都会の美容室。カリスマ美容師(長谷川博己)のもとにかつての恋人(麻実れい)がやってきて・・・。

 目がチカチカするほどはっきりとしたモノトーンの空間。がっちりとシャープなのに、黒子が出てきて布を動かして転換したりするので、手作り感があって面白いです。生き生きと自由な感じもするんですよね。

 お話は・・・取り立ててどこかに感動するのではなく、“情欲”や“戦慄”のムードを楽しむって感じでしたね、私には。役者さんの演技合戦でもあるので見ごたえはあります。
 最後に麻実れいさんが真っ赤なスーツで登場し、白と黒の中でおどろおどろしい美しさを見せてくださいました。


 ■「KOMACHI」:自称映画監督の男(手塚とおる)が不思議な体験を語る。さびれた映画館で、今はもう年老いた往年の映画女優(笠井叡)に出会ったのだ。

 男(手塚とおる)が自分の経験を客席に向かって語っていきます。映像・画像に意味が付加されていました。映画館のイスだとか、口いっぱいに入った大量のみみずだとか。手塚さんの生首が転がってる画像は怖いよ(笑)。

 手塚さんは膨大なセリフを滑らかに話されます。霊に乗り移られたりする怪奇的要素もありますが、全体の雰囲気は柔軟でキュートでした。
 執事的な立場の老人役の福士惠二さんは、びっくりするほど機敏な動きで、コミカルで素敵。
 笠井叡さんは白塗りで無言ですが、気品のある老女でした。ダンスは私の好みの方向性ではなかったですが、すべてを舞で表現するという演出はいいな~と思いました。

 「AOI」では「イヴの総て」、「KOMACHI」では「サンセット大通り」を思い出しました。伝統芸能、都会の洗練、戦争の記憶などにアメリカ映画のイメージも入っているなんて、贅沢な脚本だと思いました。

≪神奈川、大阪、福岡、北米ツアー、東京≫
出演:「AOI」麻実れい/長谷川博己/剱持たまき/中村崇 「KOMACHI」手塚とおる/福士惠二/笠井叡
作・演出:川村毅 美術=堀尾幸男 映像=伊藤高志 照明=大野道乃 音響=島猛 衣裳=半田悦子 演出助手=小松主税 技術監督=熊谷明人 舞台監督=山本園子 技術監督助手=福田純平 舞台監督助手=奥野さおり 照明操作=加藤学 音響操作=尾崎弘征 映像操作=中安翌 衣裳進行=阿部朱美 ヘアメイク=高橋幸子(奥松かつら) 宣伝美術=マッチアンドカンパニー 宣伝写真=中居中也 法務アドバイザー=福井健策 営業=清水言一 広報=森直子 森田悠記子 票券=金子久美子 制作=奥山緑 大下玲美 竹内美樹子 主催=財団法人せたがや文化財団  企画制作=現代能楽集「AOI/KOMACHI」北米公演実行委員会 企画・監修=世田谷パブリックシアター芸術監督 野村萬斎
全席指定A席6,000円/B席4,000円、TSSS A席3,000円/B席2,000円 SePT倶楽部会員割引 <A席>5,000円 世田谷区民割引 <A席>5,500円
http://www.setagaya-ac.or.jp/aoi/

Posted by shinobu at 2007年04月12日 00:46 | TrackBack (0)