シス・カンパニーがプロデュースする豪華キャストのシアターコクーン公演です。『写楽考』はマキノノゾミさんの演出で一度だけ観たことがあります。あの時は約3時間10分(休憩含む)だったんですが、今回は脚本をカットして全体で約2時間(休憩なし)になっていました。
CoRich舞台芸術!『写楽考』
≪あらすじ≫ 公式サイトより。(役者名)を追加。改行を変更。★少々ネタバレあり
時は江戸・天明の世。地獄絵を志す「あの男」(堤真一)と極楽絵を志す貧乏侍の子・勇助(長塚圭史)は、 江戸八丁堀の八軒長屋で奇妙な共同生活を送っていた。そこに転がり込んで来た世直しを志す浪人・幾五郎(高橋克実)。相次ぐ天災や飢饉で世情は不安ながらも、三人はそれぞれの志を胸に、熱き青春時代を送っていた。しかし、一人の女(キムラ緑子)の死を境に、三人の人生は大きな運命の渦に巻き込まれていく。
10年あまりの歳月が過ぎ、寛政の江戸の世では、「喜多川歌麿」が描く浮世絵が一世を風靡していた。そこに突如、猛烈な勢いで錦絵を発表する正体不明の絵師「東洲斎写楽」が登場。歌麿をしのぐ注目を集め出した。果たして、謎の絵師・写楽とは一体何者なのか? 写楽がその人生に背負った宿命とは? 写楽を取り巻く人々の運命は?
≪ここまで≫
江戸時代のほんの1年間だけ大活躍した、東洲斎写楽という名の絵師のお話です。巨大な写楽の役者絵を使った、全体的に暗いめの美術。和太鼓と笛の生演奏がありました。
うーん・・・全体的に、地味? 普通のお芝居でしたねぇ、なんだか。6人だけとはいえ、クセも華もある役者さんが揃っていると思っていたんですけど。観終わった時の素直な感想はというと、「物足りなかった」だな~。
マキノノゾミ演出版では写楽役は高橋和也さんで、熱くて猥雑で、大衆的な笑いもふんだんにあったように記憶しています。でも今回の鈴木勝秀さんの演出では、大きな出来事を順番にぽん、ぽんとフラットに並べていくスタイル。わかりやすくて引っかかりが少なく、どんどこスムーズに進むのを追いかけるのは気楽です。でもドキっと留まって味わえるところが少なかったのは残念。
キムラ緑子さん、七瀬なつみさんの2人の女優さんが素敵でした。西岡徳馬さんがケレン味のある悪役を、水を得た魚のように演じてくださってかっこ良かったです。“油が乗ってる”っていうことなのかしらん。
ここからネタバレします。
伊之(堤真一)が愛人・お加代(キムラ緑子)の自殺ほう助をしておたずね者になり、お米(七瀬なつみ)との10数年の逃走生活を経て、運命的な再会の重なりから写楽として絵師デビューをするまでは、ふむふむと流れをすんなり追うようにして拝見しました。お加代の自害シーンはかっこ良かったですが、それ以外に胸にズシンと来るところが少なかったですね。
写楽が牢に入れられてから最後までが長く感じました。写楽という男が最後にたどり着いた境地を、彼自身の独白でじっくりと描いたのかもしれませんが、私にはちょっと長かったし残念ながら退屈しちゃいました。
写楽が首吊りの刑に処される時、堤真一さんが首に縄をかけてワイアーで高く飛びました。そういえば写楽が描いていたのは歌舞伎役者で、版元の蔦屋(西岡徳馬)が歌舞伎役者のように見得を切ることがありました。つまり写楽が飛ぶのは歌舞伎の宙乗りなんですね。堤さんは飛ぶ直前に目の横に赤い色も入れてらっしゃいましたし。でも、もっと効果的な見せ場にできるんじゃないのかな~・・・あっけなくてもったいなかったです。
最後は写楽の死から約40年(だったかな)経ったうららかな春の日。十返舎一九となった幾五郎(高橋克実)が写楽の女房(七瀬なつみ)と娘(キムラ緑子)を訪ね、喜びの再会をするという大団円でした。・・・ちょっと困っちゃいましたね、あまりに「大団円」過ぎて(笑)。コマ劇場でやってる芝居みたいだゾって思いました。
西岡徳馬さんと長塚圭史さんはいわゆる時代劇の“悪役”らしく、まぶたからまゆげまでの間に濃い茶色を塗るメイクだったようです。西岡さんはお似合いでしたが、長塚さんは別にそんなメイクをしなくても良かったんじゃないかな~。西岡さんと長塚さんでは、演技の種類が重なっていないような気がするんですよね。わざわざ怖そうな顔を作らなくても、長塚さんは充分に狂気を感じさせてくれただろうと思います。
出演=堤真一/高橋克実/長塚圭史/キムラ緑子/七瀬なつみ/西岡徳馬
作:矢代静一、構成・演出:鈴木勝秀、美術:二村周作、照明:倉本泰史、音響:井上正弘、衣装:前田文子、ヘアメイク:高橋功亘、演出助手:長町多寿子、舞台監督:瀧原寿子、プロデューサー:北村明子、企画・製作:シス・カンパニー
S¥8,500 A¥6,500 コクーンシート¥5,000
http://www.siscompany.com/03produce/17sharaku/
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