急な坂スタジオで開催された“坂のはるまつり”にて、チェルフィッチュの公開稽古を見学して参りました。
第49回岸田戯曲賞を受賞した代表作『三月の5日間』がベルギーのクンステンフェスティバル2007に招待され、来月から山口県、福岡県、パリ(フランス)、高知県へもまわるツアーに出発します。“自称『三月の5日間』フリーク”の私ですから(笑)、こんな好機を見逃す手はない!と、奮起して横浜に伺いました。
⇒CoRich舞台芸術!『三月の5日間』
15:00から岡田さんが見学者に対してこの作品、および急な坂スタジオについて簡単に説明されました。15:10頃からお稽古が始まり、終わったのは16:45ごろ。村上聡一さんと下西啓正さんの2人が登場する第9場を、1時間30分たっぷり拝見しました。村上さんが一人で同じセリフを何度も何度も、ずーっと繰り返し演じ続けて、村上さんだけの一人稽古で終わりましたね。下西さんも一緒に立ってらっしゃいましたけど、岡田さんが言及したのは村上さんについてのみでした。
感想をひとことで言うとすると・・・「なんてストイックなんだ!!」ですね。何度も、何度も、何度も同じセリフをやり続けるんですよ!?数えてないけど村上さんは、たぶん裕に20回以上は演じてたんじゃないかしら・・・。それに岡田さんは俳優に“考えること”を強く求めます。「演出家の言われたとおりに演じる」のでは決してなく、演出家と俳優が実践とフィードバックを繰り返して、一緒に探っていく共同作業なんですね。地味な頭脳労働ですし、体力と忍耐力が必要です。しかもお互いが自立していることが不可欠だと思います。あぁ、役者辞めてよかったワ(笑)♪
見学者は最大で50人以上集まっていたように思います。いつでも退室してOKだったんですが、終了時刻まで残ってたのは20人ぐらいだったかな。うん、確かに退屈だと思います(笑)。私は岡田さんの言葉をメモしながらいろいろ考えつつ拝見しました。岡田さんは演劇だけでなくダンスの分野でも振付家として活躍してらっしゃいます。その意味がやっと具体的に理解できた気がしました。たしかにチェルフィッチュの俳優の動きは、ある種の“振付”なのかもしれません。俳優がその時の役柄の気分で勝手に動いているわけではないことが確認できて、非常に有意義でした。
下記、岡田さんが話された言葉のごく一部です。私がメモしたことの羅列ですし、お稽古を観ていないとわからないかもしれません(観ててもわからないかも・・・)。“氷山の一角”のお話はすごくためになりました。言葉や意味の限界をはっきりと示してくださったように思います。
岡田「“やりすぎて引き際を間違えた”っていうのを、失敗してもやってみてほしい。それで正解なんだけど、失敗じゃないんだけど、やりすぎないとわかんないから。」
岡田「感情と身体とがブレるってことを見せたい。」
岡田「セリフをしゃべる時、何を念頭に置いておくかが大切です。逐語的でないもの。」
岡田「言葉って、言いたいことを上手に言えないじゃないですか。たとえば“氷山の一角”の絵でよく説明するんだけど、言葉で説明するのって、それが下手だろうが上手かろうが、やっぱり言葉では一角しか伝えられない。その残りの大きな部分が身体に、演技(パフォーマンス)に出てくる。」
岡田「身体で生まれたものを頭がもって行っちゃうのがもったいない。」
演出=岡田利規(チェルフィッチュ) 出演(出席)=村上聡一/下西啓正/山崎ルキノ/松村翔子/瀧川英次/東宮南北/山縣太一(不在)
主催:急な坂スタジオ 協力:横浜市中央図書館、横浜市青少年センター(ふりーふらっと野毛山)、老人福祉センター横浜市野毛山荘、野毛山動物園
日時:4月21日(土)映像上映15:00~ 稽古場公開17:00~/4月22日(日)稽古場公開15:00~ 参加費:無料
公式=http://kyunasaka.jp/
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