2007年05月30日
双数姉妹『チューブラルーム』05/26-06/03 THEATER/TOPS
小池竹見さんが作・演出される双数姉妹。劇団員募集オーディションで若い方がいっぱい入団されたんですね。装置が凄いという噂を聞いて伺いました。噂にたがわぬ、すっごーーーーーーーーーーい装置!上演時間は約2時間。
⇒CoRich舞台芸術!『チューブラルーム』
旅行会社の冴えない社員(五味祐司)とその同僚や上司(小林至)、いわくありげな姉妹(吉田麻起子、浅田依子)とその同居人(今林久弥)などが登場するお話でした。あまり必要だとは思えないシーンや会話などがチラホラとあり、ストーリーについては少々退屈でした。双数姉妹はエチュード(即興劇)から創作する団体ですから、雰囲気や流れを楽しめればいいのかもしれません。
シアタートップスであの装置が観られてお得でした~(舞台美術=小池竹見・杉山至 装置製作=コイケ左官工房)。チケット代3,500円は安いと思います。小劇場演劇の底力を観た!っというところかしら。装置の特徴を生かした照明も素晴らしかったです。うわ!うわわっ!と、何度もドキっとしたりわくわくしたりしました。
タイトルからイメージされる「宙ぶらりん」な雰囲気は、スペシャルな装置と照明、ほんわかした歌などから充分に伝わってきました。
ここからネタバレします。
ひとことで言うと筒型の美術でした。巨大な土管が、客席に丸い穴を向けた状態で横たわっています。シアタートップスの舞台がその土管で埋まるぐらいの大きさです。そして、その筒がぐるぐる回るんです!!役者さんは動く床を歩きながら演技します。
旅行会社のデスクとチェアー、姉妹が暮らす家のちゃぶ台などを出す時は、机の足などを床にグサっと刺して固定します。机やイスが刺さったままぐるぐると回転した時は、会場の空気が一瞬凍りましたね。「お、落ちる!」って思ったから。でも天井まで行って逆さになっても落ちなかったんだな~・・・すごい。どういう仕掛けなのかしら!?
舞台は横たわった円柱型になっているだけではありません。筒の外側から中を突き通すように1本の鉄の棒が刺さっています。その棒をしっかり握った役者さんが、装置と一緒に一回転したのは鮮やかだった~!
筒の外側の壁もムード満点でしたね。イスや机が壁に溶け込んでいるかのようにくっつけられていました。ひとつひとつに照明が当たるのもきれいでした。『ピッチフォーク・ディズニー』を思い出しました。
タイトルの『チューブラルーム』には“宙ぶらりん”だけじゃなく、“筒(チューブ)”状の“部屋(ルーム)”という意味もあるのかも。
出演=今林久弥 小林至 五味祐司 青戸昭憲 鰻家喜平治 熊懐大介 河野直樹 宮田慎一郎 辻沢綾香 浅田依子 井上貴子 吉田麻起子
作・演出=小池竹見 舞台美術=小池竹見・杉山至 音楽=佐藤こうじ(Sugar Sound) 舞台監督=安田美和子 村岡晋 照明=斎藤真一郎(A.P.S.) 音響=島貫聡 衣裳=小原敏博 装置製作=コイケ左官工房 宣伝美術=高橋歩 宣伝写真=引地信彦 演出助手=小林英朗 制作=津田はつ恵 小林エリカ 企画・製作=双数姉妹 劇中歌「チューブラテイル」作詞=小池竹見 作曲=佐藤こうじ
発売:2007年4月14日〈土〉全席指定3,500円(前売、当日ともに) 学生割引2,500円
http://www.duelsisters.com/
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2007年05月28日
快飛行家スミス『月の船』05/13-06/05 KAWAGUCHI ART FACTORY
快飛行家スミスは俳優の奈佐健臣さんと、作家・演出家の北川原梓さんお2人の団体です。奈佐さんの一人芝居を上演されているんですね。奈佐さんは状況劇場(Wikipedia唐十郎)出身だそうです。上演時間は約1時間5分。
入り口の看板
「CoRich舞台芸術まつり!2007春」審査員として伺いました。レビューはCoRich舞台芸術!に書きます。こちらは写真などの記録です。
KAWAGUCHI ART FACTORYには初めて伺ったんですが、南北線で都心から約30分の川口元郷駅から徒歩5分の場所にあり、思っていたよりずっと近かったです。
CoRich舞台芸術!『月の船』
KAWAGUCHI ART FACTORY
≪あらすじ≫ 公式サイトより。
永遠の繁栄を約束された<鉄の町・月船町>。
その町に今、滅亡の危機が迫る。
錆び付いた町を捨て、深夜の定期船<月の船>に乗って町を出てゆく人々。
止まらない町人の流出と、繰り返される命の誕生に翻弄され雨に沈んでいく月船町。
三日月女の喘ぎに誘われ、今、不吉な名前を背中に背負った男が一人。世界を救わんと立ち上がる。
男の、月船町の、運命は如何に?!そして、<月の船>の行き着く場所とは?
呼び覚ませ、<鉄の町>の記憶!!
≪ここまで≫
KAWAGUCHI ART FACTORY
出演=奈佐健臣
脚本・演出=北川原梓 照明=上川真由美 チラシイラスト=佐瀬麻友子 チラシデザイン=雪田芳乃 美術=北川原梓 映像=石川雷太 美術協力=岡島博徳、川上香織 音響=奈佐健臣 制作=J-Stage Navi
【発売日】2007/03/22 前売券2800円 当日券3000円 ※5月13日~15日の3日間オープニング割引 前売・2200円※適用は前売券のみ
http://www.geocities.jp/kaihikouka/hune.htm
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2007年05月27日
LEMON LIVE『WOMAN』05/26-06/03駅前劇場
LEMON LIVEは斎藤栄作さんが作・演出される作品をプロデュースする団体です(⇒過去レビュー)。
男優中心のキャスティングの中、今回は紅一点の主演に演劇集団キャラメルボックスの岡田さつきさんが登場。全員が2役、しかも男女を演じ分けるコメディーでした。上演時間は約2時間。
⇒CoRich舞台芸術!『WOMAN』
≪あらすじ≫ 少々ネタバレしています。これからご覧になる方はお読みにならないほうがいいかも。
おかまバーの控え室兼更衣室。オーナーのおかま・ヒカル(岡田さつき)は従業員が別の店にどんどん引き抜かれ、窮地に立たされている。そこを友人で常連客のサラリーマンらが力をあわせて助けようとするが…。
ある田舎の旅館の一室。新人女将(岡田さつき)は慣れない接客業に四苦八苦しており、ベテランの仲居(浅野雅博)にいじめられている。初対面同士の主婦たちが部屋に到着してきた。どうやら彼女らはそれぞれの息子たちに何かを頼まれてやってきたらしい。
≪ここまで≫
役者さんが男女2役を演じ、2つの場所で起こる別々のストーリーに登場します。そしてその2つのストーリーがリンクする少々複雑な設定でした。面白いアイデアだと思いました。
達者な役者さんがどんどこ着替えてドタバタと笑わせてくれます。でも、ベタすぎて頭を傾げちゃうような感動ネタが下地にあって、途中で作品の目指す方向がよくわからなりました。いわゆるドタバタコメディーの王道の笑いが成立していたので、もっと笑いに重点を置いてもいいんじゃないかな~。感動ドラマを作るなら、もっと深く掘り下げて欲しいなとも思います。
2つの物語をシンクロさせながら両方とも成立させるのって、ハードルが高いですよね。さらに、たたみかけるような笑いも盛り込むわけですから、大変なチャレンジなのだろうと思います。
ここからネタバレします。
化粧品会社の社長夫人(阿部丈二)とベテラン仲居(浅野雅博)が「アタックNo.1」みたいに卓球勝負するとか(※「エースをねらえ!」が正しいです。教えてくださった方、ありがとうございました!5/27加筆)サラリーマン同士で仲たがいするシーンで本宮ひろし(津村知与支)の心の声が聞こえるとか、笑うためのネタが贅沢に散りばめられています。汗だくで着替えまくってがんばってる役者さんを見るのも結構楽しいです。
笑いの方が充実しているので、“母の愛海より深し”とか、“逆境に打ち勝つ熱い男達のサクセスストーリー”などの感動ドラマが、取って付けたような印象になって残念でした。
出演=岡田さつき(演劇集団キャラメルボックス)/津村知与支(モダンスイマーズ)/有川マコト(絶対王様)/犬飼淳治(扉座)/濱田龍司(ペテカン)/阿部丈二(演劇集団キャラメルボックス)/浅野雅博(文学座)
作・演出:斎藤栄作 照明:高橋英哉 音響:小笠原康雅(OFFICE my on) 衣裳:神場やす江 舞台監督:筒井昭善 写真・宣伝美術:垣内敏秀(コマンドエヌ) 宣伝ヘアメイク:武井優子 演出助手:山神友恵 制作:橋本香苗(コマンドエヌ)・こばちえ(コマンドエヌ) 企画・製作:レモンライブ
【発売日】2007/04/29 全席指定3,800円 ※小学生未満のお子様のご入場はご遠慮ください。
http://www.lemonlive.net/
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2007年05月26日
【情報】永井愛 原作・脚色ドラマ「こんにちは、母さん」5/26~全4回@NHK土曜ドラマ
永井愛さんの傑作戯曲「こんにちは、母さん」がTVドラマになりました。本日5/26(土)21:00より第1回が放送されます。各回1時間ずつで全4回のシリーズです。
『こんにちは、母さん』(紀伊國屋ブックウェブ)は、私の観劇人生(っていってもそんなに長くないけど)の中で不動のNo.1であり続けている作品です(参照⇒佐藤佐吉演劇祭2006レビューブログ)。初演で大感動して永井さんの戯曲本を買いあさり、再演には家族と大切なお友達を連れて行きました。
母さん役と息子役は舞台版と同じく加藤治子さんと平田満さん。その他、NHKならではの豪華キャストです。演出は岡崎栄さん。いったいどんな風景が見られるのか、ちょっとドキドキです。
2007年05月25日
POTALIVE 駒場編vol.1『museum』05/13, 19井の頭線駒場東大前駅西口改札前待ち合わせ
POTALIVE(ポタライブ)とは、「散歩をしながら楽しむライブ」のこと(公式サイトより)。好評だった2006年3月公演の再演だそうです。私は初体験。5/13に伺いました。
15:30に駒場東大前駅で待ち合わせて、案内人の岸井大輔さんが約15人の観客(というか参加客)一人一人に、今回の“お散歩”についての丁寧な説明をされました。
この作品のために岸井さんが駒場を歩き回り、住人にインタビュー取材をした期間はなんと3ヶ月!その成果が溢れんばかりに詰まった約2時間のお散歩は、1930年代の日本陸軍の若者とともに軍事演習所だった駒場野と出会う旅でした。
あぁ、写真撮ればよかった・・・。そんな気分にならないほど、どっぷりとお散歩を味わっていたんですね。POTALIVEの次回公演は今年の8/4~9/4。こまばアゴラ劇場夏のサミット内の企画です。
CoRich舞台芸術!⇒『museum』
レビューをアップしました(2007/07/31)。
駒場東大前・・・。20代の頃の私にとっては鬼門でした。学生時代に東大で劇団活動をしていたんですが、それがほとんどトラウマになっていてですね(苦笑)、数年前までは駅に降り立つことさえもできませんでした。でも今ではこまばアゴラ劇場の最寄駅ということで、ウキウキする場所になっています。
待ち合わせ前に昔の彼氏のアパートを見に行ってみたら(←痛いよ、しのぶさん!)、大きなマンションに建て替えられていました。もう15年以上経つのかな。
そんなプライベートな思い出が満タンの駒場東大前が、岸井さんのガイドによって全く違う側面を見せてくれるようになります。京王帝都井の頭線・駒場東大前駅から東大敷地内の森林、駒場小学校の明治天皇駒場野聖跡碑を見て駒場野公園へと進みました。
1936年(昭和11年)のニ・ニ六事件(Wikipedia)等にまつわる膨大な知識を披露しながら、岸井さんは時に案内人、時にインタビューを受けた老人などになりきって語りつつ、散歩を誘導していきます。最初はとっつきにくかったんですが、ただ導かれるままについていって、森林浴をし、語られる情報を頭に入れて味わって、無理をしないで考えながら歩きました。それは単純に気持ちのいい“団体散歩”の時間でした。
ダンサーの木室陽一さんが坂を駆け下りるように舞う姿を彼の背後から見つめた瞬間、自分が観ていた風景がぐにゃっとうねる様に変化しました。「駒場野公園の脇の道」がただの「道」ではなくなったのです。童話に出てくる空に浮かぶ道のような、夢に見た秘密の抜け道のような、私の死んだ曽祖父・曾祖母が今も歩いている道のような、三次元以外の性質(っていうのかな)を持つものになったのです。
そこからは驚きの連続でした。淡島通りの車道を馬が走っているように感じたり、自分が歩いている歩道や壁が「いらっしゃい」と語りかけてきたり。大砲の訓練をしていた広場では、汗だくで走る若い兵隊さんが見えたような気がしました。昔の男子学生がぽつんと佇んでいる風景は、どこかの写真集とか映画とかで見たような、ものすごく絵になるものだったりもしました。岡田利規さんはアンゲロプロスっておっしゃってますね。
道に、演劇がある。家に、物語がある。日常の中に、夢がある。演劇は、私が今見ている、生きている瞬間に存在しているものなんですね。それを可視化してくれたんだと思います。劇場というハコの中に入って夢を見るのも素晴らしいことですが、実は何も特別な行動をしなくたって、目の前にソレはあるんだってことを証明してくださいました。
生半可な努力では成立せし得ない作品だと思います。体験しながら構造のことを探ったって徒労になるだけな気がします(あまりに深くて巧妙だから)。だから観客は、難しいことを気にせず、ただ素直に味わうことが大事なんじゃないかしら。一人の人間として、触れて、感じること。それを大らかに許してくれる参加型演劇でした。
ここからネタバレします。
最初の集合場所で岸井さんから「タイトルを『museum』から『アラ』にアラためます」と言われました。「ミュージアムって言ったって、駒場の駅前にはそういうのは見当たらないし」という理由だったのですが、ちゃんと最後に『museum』も上演されたんです。
歩兵第1連隊中尉だった栗原安秀の家から松見坂に出て、終幕。最後に上演された短編『museum』には、山の手通りとそこから見える風景全体が、外国人に日本を紹介するために作られた美術館だったという結末が用意されていました。それを深く納得するために、駒場東大前駅からの散歩(『アラ』)がありました。確かに最初から『museum』というタイトルだったら、2時間の散歩が『museum』を説明するためのものになってしまい、興ざめだったかもしれません。
実は『museum』も散歩の始まりから『アラ』と平行して味わっていたんですよね。戦時中の学生のような風貌の男の子2人と、テンションが高すぎるヘンな女性ダンサー(笑)が、道中のところどころで「駒場っていいな~♪」という歌を大声で歌ったりしつつ、演技をしていました。『アラ』という全く違う作品を体験することで『museum』(の結末)が理解できるという仕掛けは見事だと思います(『museum』に『アラ』が含まれていたと考えればいいのかも)。
車が激しく行き交う山の手通りをバックに、戦時中の男子学生と女性ダンサー、岸井さんが現れたラストシーンでは、昭和の日本人(私のご先祖様)と私とが東京の町(道)に溶け合ったように感じ、しばらくその風景の中に、じーっとたたずむことにしました。でも次の予定が詰まっていてすぐに帰らなきゃだめだったんですよね・・・残念。
人間は変わりますね。全く解決されないまま放置された問題も、時間が経過することで何らかの形になるんですね。でもその形状が変化し続けるんですが。私たちはその変化の瞬間瞬間を生きているんだと思いました。
『アラ』
出演:垣内友香里(ダンサー/BennyMoss主宰) 木室陽一(振り付け家・ダンサー/POTALIVE主宰) 笠木真人(俳優) 愛川武博(俳優・演出家/演劇集団 移動する羊主宰)
作・演出・案内=岸井大輔(劇作家/POTALIVE主宰)
『museum』
出演:垣内友香里(ダンサー/BennyMoss主宰) 笠木真人(俳優) 愛川武博(俳優・演出家/演劇集団 移動する羊主宰)
作・演出・案内=岸井大輔(劇作家/POTALIVE主宰)
http://d.hatena.ne.jp/POTALIVE/
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ジェットラグ・プロデュース『バラ咲く我が家にようこそ。』05/24-27シアターサンモール
明日図鑑の牧田明宏さんの脚本を青年団リンク・東京デスロックの多田淳之介さんが演出されます。文学座の坂口芳貞さんや毛皮族の町田マリーさん、元ク・ナウカの寺内亜矢子さんなど、演劇界(特に小劇場)の夢のタッグ、みたいなキャスティングのプロデュース公演。はてさて。
⇒CoRich舞台芸術!『バラ咲く我が家にようこそ。』
≪あらすじ≫
バラが好きだった妻がコンビニ強盗に殺されて以来、残された夫・小出(坂口芳貞)は一人娘の智美(町田マリー)と二人暮らし。犯人が捕まること待ちながらもう三年経つが、何の手がかりもない。バラが枯れたままの家に招かれざる客人たちが訪れ・・・。
≪ここまで≫
バラが咲かない家のお話なのに、タイトルが『バラ咲く我が家にようこそ。』なのが牧田さんのセンスですよね~。素敵です。
個性の強い役者さんが揃っていますから、その人なりの存在感で舞台に居てくださるだけでも退屈はしないんですが、物語の行く先やこの作品の勘所を役者さん全員で共有しているようには感じられませんでした。「まだ完成してません」って感じなのかな~。プロデュース公演ならではのバラバラ感と言えるかもしれません。
犯人探しのサスペンスなムードが出てきた時、グイっと引き込まれる感覚はありました。でもそういうのは重要じゃない気がします。ストーリーが面白いかどうかというと、特に面白くはないと思うんですよね。でもこういう戯曲の場合は筋書きの面白さが重要なのではなくて、瑣末な会話や奇妙な仕草の積み重ねなどから、人間の悲しさ、滑稽さをゾクっとくるほど感じられることが、大切なんじゃないかしら。あと、もっとカラっと笑いたかったな~。
選曲が素晴らしかった・・・!!もー鮮烈ですよ、あの女性ヴォーカル!そして歌詞もストーリーにぴったり。同じアーティストの曲がずっと使われるので、まるでこのお芝居用にサウンドトラックを作ったみたいです。
ここからネタバレします。
大切な人を誰かに殺された(と信じ込んでいる)人々の暗~いお話でした。恨みが循環してしまうんですね。小出の妻を殺したのは智美の彼氏(大口兼悟)だったと匂わせ、何かが解決したかのようにしながら、そこで終わらなかったのが良かったです。
自殺した警備員(山本雅幸)の妹(甲衣都美・弁護士?)が、兄を殺したのは小出だと思い込んで小出につきまとうようになります。ちょっとおかしいですよね、その人。そういう「それ、おかしくネ?!」って突っ込みたくなるような行動が現れる時に、ゾクっときたり、にやっと笑えたり、感情に波が立つような刺激が欲しいなと思いました。
オープニングとエンディングの演出が良かったです。シアターサンモールに備え付けの(おそらく)カーテンのような幕が上がると、登場人物全員が舞台に居て、ゆらゆら揺れていました。一人ずつぱらぱらと去っていって、静かにお話が始まります。ラストもいわば同じ演出でした。それぞれの悲惨な人生を舞台でさらしていた登場人物たちが客席に向かって立ち尽くす姿は、まるで箱庭の中の人形のように見えました。オープニングと同様に幕が降りることで、人形達の悲しいおとぎ話がパッケージにすっぽりと入れられたような効果がありました。
出演=大口兼悟、町田マリー、寺内亜矢子、吹上タツヒロ、夏目慎也、山本雅幸、本多裕香、甲衣都美、坂口芳貞
作=牧田明宏[明日図鑑] 演出=多田淳之介[東京デスロック] 舞台監督=伊東龍彦 舞台美術=鈴木健介 照明=岩城保 音響=泉田雄大 衣裳=原竹武臣 宣伝美術=宇野モンド 宣伝写真=可児保彦 演出助手=佐山和泉 web担当=高橋直人 当日票券=三村里奈(MRco.) 制作=ジェットラグ&田辺恵瑠 プロデューサー=阿部敏信 企画・製作=ジェットラグ
【発売日】2007/04/15(全席指定席・税込)前売り¥4,000 当日¥4,500
http://www.jetlag.jp/
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ハイバイ『おねがい放課後』05/24-06/03こまばアゴラ劇場
ハイバイは岩井秀人さんが作・演出される劇団です。岩井さんが関わっている作品はこれまでに7作ほど拝見しました(過去レビュー⇒1、2、3、4、5、6、7)。
ハイバイを初めて観てから1年と4ヶ月しか経ってないんですね・・・ちょっと驚き。岩井さん、多作ですよね。
「CoRich舞台芸術まつり!2007春」審査員として初日に伺いました。レビューはCoRich舞台芸術!に書きました。どうしてもプレビュー公演と比べちゃうので、その感想をこちらに。
記事を壁に貼ってくださってます
★追加公演決定!
6月1日(金)15時~の回
売り切れ続出中です。急いでご予約を!
Weeklyぴあ(5/24発売号)に記事を書かせていただきました。アゴラ劇場の階段入り口付近に記事を貼ってくださっています。どうぞご笑覧ください♪
CoRich舞台芸術!『おねがい放課後』
≪あらすじ≫ 公式サイトより。
1年に4歳、年をとってしまう奇病に悩む、見た目おっさんの大学生、
志賀君。
と、それを取り囲む家族や同級生達の絶妙な気の遣いようと、
大学での志賀君の活躍が、新しい顧問の先生のせいで
台無しになる様子を、自意識がバツグンに冴え渡る二十歳くらいの精神状態を下地に
その自意識をさらに助長させる恋愛、友情、苛立ちとナルシズムと性欲で味付け、
皆がドロドロと放課後におねがいしたものについて書き連ねます。
≪ここまで≫
開演前に主宰の岩井さんが前説をされました。「1年に4つ年を取るってことなんですが、4日ぐらい前に計算したら、志賀ちゃんは20歳なので80歳になっちゃうんですよね。なので1年に3歳ってことに、設定を変更させてください」とのこと。笑いました(笑)。
ここからネタバレします。
プレビューの時とは反対側の席に座ったおかげで、よく理解していなかったことに気づいたり、味わい尽くせていなかったことを満喫できたり、改めて作品の深さを知ることができました。
真っ暗闇のエッチシーンは、プレビューよりもかなり大人モードでエッチ度がアップしていました。同時に志賀君が本当に熟年の体であることで、悲しさも大幅アップ。大きな笑い声が響く客席でボロボロ涙を流してました。
志賀君のお母さん役の代わりにお父さん(猪股俊明)が登場したことで、男同士の対話のトライアングル(品川先生と志賀君⇒志賀君とお父さん⇒お父さんと品川先生)が生まれていたように思います。基本的に無邪気でおバカ丸出しだし、子供みたいにケンカしちゃうし、好きな女のために浮かれちゃうし・・・っていうのは男性ならではの性質だと思います。品川先生がただの悪役ではなく、愛すべきバカ男として私の心に残ってくれたので、最後に志賀くんと品川先生が一緒に刺し違えて死んでしまうことも、物語の結末としてスムーズに受け入れられました。
あの最後の長い暗転で(ラブ・シーンほどじゃないけど・笑)、私も一緒に死後の世界に行って、そしてマチコと、志賀くんと、品川先生と一緒になった・・・ように思い、涙がこぼれました。うん、泣いてばっかりダスよ。
役者さんは皆さん素晴らしかったです。私は初日に拝見しましたので、またグンと良くなっていくことと思います。
≪ポスト・パフォーマンス・トーク≫
出演:岩井秀人、岩井さんのお母様 司会:徳永京子
またもや徳永京子さんの司会!なんておしゃれで可愛らしい人なのかしら。語り口が穏やかで和みます
岩井さんのお母様がトークに出演されるのは2度目。1度目は岩井さんが泣いてしまったので、今回は泣かない対策のために司会を立てたそうです。たしかにあのトークは私も泣いちゃったな~(遠い目)。
お母様が岩井さんの坊主頭のエピソードを話してくださったり、あきれるほど赤裸々なトーク満載でした。
岩井秀人「『これは嘘でございます』と最初に言っておく。じゃないと恥ずかしい。」
出演=志賀廣太郎(青年団)、猪股俊明、古館寛治(青年団)、金子岳憲、石橋亜希子(青年団)、島林愛(蜻蛉玉)、星野秀介(田上パル)、永井若葉
脚本・演出=岩井秀人 照明=松本大介(enjin-light) 音響=荒木まや 舞台監督=田中翼 舞台美術=土岐研一 三浦俊輔 宣伝美術=池田泰幸 西村美博 上野敬(サン・アド) 写真撮影=岩井泉 シェークスピアの絵 いちこじま画伯 制作=原田瞳(tsumazuki no ishi) 企画制作=ハイバイ/(有)アゴラ企画・こまばアゴラ劇場 主催=(有)アゴラ企画・こまばアゴラ劇場
【発売日】2007/04/15 5/24~5/28は前売り2500円、当日3000円 5/30~6/3は前売り3000円、当日3500円
http://hi-bye.hp.infoseek.co.jp/
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2007年05月24日
studio salt『7』05/16-24相鉄本多劇場
studio salt(スタジオ・ソルト)は椎名泉水さんが作・演出される劇団です。横浜の小劇場系の団体でもっとも集客数が多いと言われています。私はお友達からのクチコミもいくつか聞いて、今回初見でした。上演時間はとても気持ちの良い約1時間20分。いつもそのぐらいの長さだそうです。
⇒CoRich舞台芸術!『7』
≪あらすじ≫
舞台は地下の薄暗い事務室。奥に檻(おり)のようなものが見える。青い作業服の男達が談笑しているが、全員が何かしらあきらめの表情をしているように見受けられる。今日から新しい職員が来るらしいが、彼もすぐに異動になって去っていくだろう。
≪ここまで≫
取り上げた題材は暗い目ですが、ほんわかと優しいムードの漂うワン・シチュエーションの会話劇でした。独特だと感じたのは、舞台と客席とが前向きで柔らかな意識で結ばれていること。役者さんはこびたり威張ったりせず、澄んだ気持ちで「良いものを届けたい」と思っていて、観客は座ったままそれを受け止めて「応援してるよー!」と声援を送っているような・・・とても穏やかで暖かい劇場空間でした。1000人を超える動員はすべて手売り(プレイガイドを通さず、劇団員から直接購入すること)というのにも納得です。
こうなってくると、観客も一緒に舞台を作っているような気持ちになるので、役者さんが上手いとか下手だとかってあまり気にならないんですよね。常連客にとっては、演劇を観に行くというより「スタジオ・ソルトに行く」という体験なのかもしれません。
日本現代社会のいわば底辺を支える労働者と、売買され放棄、処分される命を描く、素朴な優しさが感じられる脚本でした。人間を含むちっぽけな命を慈しむ姿にとても好感が持てました。ただ、言葉や演技で表わされていたものの、もっと奥、もしくは高みを感じ取りたかったですね。暗い目と明るい目の2パターンの作風があるそうなので、次回公演が楽しみです。
ここからネタバレします。
犬や猫など、捨てられた(面倒を見ることを人間に放棄された)動物を殺す施設で働く男たちと、そこに訪れる人々を描きます。タイトルの「7」は働いている男の人数と、届けられた動物が7日後に処分されることを表しているんですね。観終わってからチラシを見て気づきました。
動物を処理するブルーカラーの男達は、母親が入院中だったり(東享司)、離婚調停中だったり(shikyo)、知的障害を持っていたり(麻生0児)、それぞれに悩み・弱みがあります。一人だけ前途洋々に見える若いエリート社員・星野(增田知也)は両親が韓国人だと言いますので、彼自身もおそらく外国籍でしょう。ペットを捨てに来る老女(勝碕若子)も夫の介護と自分の病気に疲れており、世間知らず・礼儀知らずの女子高生(富岡英里子・小角真弥)も、あれはあれで病的でした。登場人物全員が何かしらプライベートに問題を抱えた現代人です。
前半は陰湿ないじめのムードがひやっと広がっていましたが、徐々にやわらいできます。終盤で、10年かけて事務所で育てていたカメを星野が逃がしてしまい、よそ者扱いされていた星野とブルーカラーの男たちの間に対話が生まれます。リーダー的存在の六郎(東享司)が星野と打ち解けたのは少々急すぎるように感じました。一人一人を丁寧に、無理に押し付けることなく、慈しむ心を持って書かれているのは好感が持てますが、優しさが前面に出ているせいで、お話が都合よく進みすぎてるようにも思います。
エンディングは、10年以上連れ添った犬を殺してくださいと頼みに来る老女と、1匹のカメを助けに行こうと外に出る星野との対比が鮮やかで、さらりと暗転したのが良かったです。カーテンコールの照明の演出もきれいでした。
男たちがむさくるしく(笑)エアロビクスのような体操をするシーンは、笑っていいのかどうかが微妙で、その生ぬるい雰囲気が良かったです。欲を言えば必死で不恰好に動く男たちが、躍動する肉体美から不気味な肉塊に移っていくぐらいまで見せてもらいたかったですね。たとえばペドロ・アルモドバル監督の映画「LIVE FLESH」の、車椅子のバスケットボールの練習シーンみたいに(ピンポイントな説明ですみません)。可愛いいと思っていた犬が、吠えるとブサイクに見えたり、気持ち悪い姿のカメが命の大切さを教えてくれたり、生きた肉体というのは美しさと醜さを併せ持っていると思います。長い体操シーンだったのでいろいろ考えちゃったんだな。短かったら「おもしろいな~」で終わったかもしれません。
コンクリートの壁に囲まれた(と思う)事務所は、下手に向かって斜めに傾いた大きなハリが天井に取り付けられ、陰鬱な表情になっていて、味がありました。中盤に夕焼けの光のようなオレンジ色の照明が、檻の方から事務所へと窓越しに入ってくるシーンがあり、地下室だと思っていたのは間違いだったのかと迷いました。あれは光が大きく差し込みすぎなんじゃないかな~。ハリに取り付けられた青白い照明は効果的でした。
出演者=麻生0児、增田知也、勝碕若子(劇団蒼生樹)、高野ユウジ、富岡英里子、小角真弥、東享司、松本・F・光生、木下智巳、shikyo
作・演出=椎名泉水 舞台美術:小林奈月 大道具製作:C-COM舞台装置 照明:阿部康子(あかり組) 音響:岩野直人(STAGE OFFICE) 舞台監督:笹浦暢大(うなぎ計画) 宣伝写真:降幡岳 宣伝美術:成川知也 記録撮影:升田規裕(M's Video Group) 制作:薄田菜々子(beyond) 企画・製作・主催:studiosalt
【発売日】2007/03/18 指定席 前売・予約のみ/2800円 自由席 前売・予約/2500円 当日/3000円 学生割引 前売・予約のみ/1500円(自由席、劇団取扱いのみ。高校生以下。要証明書提示)
http://www.studiosalt.net
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2007年05月23日
GALA Obirin 2007『長坂まき子講演会「大人計画の制作、そして社長としての仕事」』05/21プルヌスホール
長坂まき子講演会
大人計画の制作、社長の長坂まき子さんの講演会に行ってきました。桜美林大学の学生が運営する芸術祭「GALA Obirin 2007」内の企画です。
プルヌスホールには初めて伺ったんですが、すごくきれいな劇場ですね。フラットなブラックボックスなのでダンス公演に合いそう。
長坂まき子さんは元気はつらつで、はきはきと楽しくお話される方でした。まっすぐのびのびと(ご苦労はおありでしょうが)お仕事されてるように見えて、かっこいい社会人女性だなと思いました。
学生による学生のためのイベントのような扱いだったのは少々残念でしたが、20歳そこそこの若い学生さんが全てを運営・管理しているのだと思うと、とても立派な講演会だったと思います。
心に残った言葉を下記に。言葉は完全に正確なわけではありません。
長坂「制作は誰にでもできる仕事です。要は雑用ですから。照明とか音響とか、はじめに技術が必要な仕事ではない。」
司会「制作に向いている性格って、どんな性格でしょうか?」
長坂「温和で、白黒はっきりしてる人。温和な人は人を不快にしないし、それでいて白黒はっきりしている人がいいと思います。」
長坂「いいと思ったら、褒めることにしています。悪いことははっきりしているから言いやすい。でもいいことってスルーしちゃうんですよね。だまっててもうまくいくから。だから、いいと思ったらスルーしないで褒めようと思っています。」
観客「本番まであと1ヶ月という時期に、お客さんに沢山来てもらうために出来ることは何でしょうか?」
長坂「劇団員の一人一人が、1枚でも多く売ることですよね。」
観客「それはとにかく手売りする(手売りしかない)という意味ですか?」
長坂「手売りはもちろん必要です(自動的に誰かに公演のことを知らせることになるし)。まず“知らせること”じゃないですかね。より広く知ってもらうこと。とにかく知らせたいと思うことが大事だと思います。」
5月21日(月)19:00~
講師:長坂まき子 司会:林香菜(桜美林大学3年生)
会場:桜美林大学プラネット淵野辺キャンパス プルヌスホール【GALA Obirin 2007企画】
一般1500円 学生1200円 当日:各200円増(予約整理番号順)
http://galaobirin2007.com
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2007年05月22日
大人計画『ドブの輝き』05/10-06/03本多劇場
大人気の大人計画の本公演です。松尾スズキさんが体調不良のため降板され、代役は池田成志さんです。3本のオムニバスでした。その内の1本は映像作品で、私にはあまり楽しめなかったな~。上演時間は約2時間30分(休憩なし)。
物販で「宮藤官九郎の小部屋」単行本が発売されててびっくりした(笑)。
⇒CoRich舞台芸術!『ドブの輝き』
ここからネタバレします。
■「涙事件」作・演出=宮藤官九郎
舞台は法廷。不幸な演歌歌手を売り出す会社の社長(村杉蝉之介)が、殺人事件の容疑で裁判にかけられている。所属歌手の紹介をしていく。
ロシア人に間違えられるオランダ人女性ハイネケン(伊勢志摩)と、マグロが苦手で船酔いしちゃう船乗り(池田成志)のデュエットが面白かった。
池津祥子さんは上半身スーツなのに下半身はパンツ一丁だし、猫背椿さんはスカートで足開くし。それを面白いと思っちゃえるのが凄いですよね。
一番笑ったのは知的障害を持つ人(宮藤官九郎)が登場した時。これだから大人計画って・・・やっぱり凄いなって思います。
■「えっくす」脚本・監督=井口昇
相続争いをする男3人兄弟。争いごとが嫌いな三男(近藤公園)は家出し、障害を持つ人々を介護する施設で働くことになり・・・。
目の前であれだけテンションの高いことをやってくれると面白いだろうな~と思うんですが、映像で観てもなんだか大げさだな~とか、ヤラセっぽいな~とか思っちゃって、私は楽しめなかったです。
■「アイドルを探せ」作・演出=松尾スズキ 協力=大堀光威
樹海で自殺しようとしているワタナベ(宮崎吐夢)が、ゴミたちに自分がどん底に落ちてしまった理由を語る。
次の展開が読めなくって最後に「なるほど~」と思えました。やっぱり松尾さんの脚本って私にはいつまで経っても未知の世界。それが好き。
最後の方まで秀吉役(皆川猿時さんの父親役)が阿部サダヲさんだとわからなかった。座席が最後列だったからとはいえ、やっぱり阿部さんが上手いなんだなと思いました。
そして再び池津祥子さんの肢体が美しかった。
出演=阿部サダヲ、池津祥子、伊勢志摩、顔田顔彦、宍戸美和公、宮崎吐夢、猫背椿、皆川猿時、村杉蝉之介、田村たがめ、荒川良々、近藤公園、平岩紙、宮藤官九郎、松尾スズキ(映像出演) 池田成志 ※平岩紙・宮沢紗恵子はダブルキャスト 私は平岩紙さんの出演日でした。
作・演出:松尾スズキ 宮藤官九郎 井口昇 舞台監督=舛田勝敏 照明=佐藤啓 音響=藤田赤目 舞台美術=加藤ちか 音楽=門司肇 衣裳=戸田京子 ヘアメイク=大和田一美 映像=ムーチョ村松、吉田りえ(トーキョースタイル) 演出助手=大堀光威 佐藤涼子 演出=神保愛子 稲田武士 特殊メイク=西村喜廣 チラシイラスト=サイトウユウスケ 宣伝写真=種市幸治 宣伝美術=守先正 舞台写真=田中亜紀
【発売日】2007/04/01 前売5,800円 当日6,000円(全席指定) ※未就学児童の入場不可
http://www9.big.or.jp/~otona/
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パルコ『魔法の万年筆』05/12-06/12パルコ劇場
稲垣吾郎さん主演のお芝居です。作・演出はラッパ屋の鈴木聡さん。音楽は本多俊之さんが手がけられます。出演者だけでなく装置も衣裳も超ゴージャス~。笑いがいっぱいのドタバタ・ラブコメでした。上演時間は休憩15分を挟む2時間45分。
CoRich舞台芸術!『魔法の万年筆』
≪あらすじ≫ 公式サイトより。(役者名)を追加。
舞台は1920年代のニューヨーク。ジャズと狂乱の時代。
自由を求める人々が、音楽・文学・映画・演劇とさまざまな分野におけるエンターテインメントで、空前の活況を見せようとしていた時代。若き小説家のパーカー(稲垣吾郎)も、時代の渇望に応えようと、傑作を生み出すことに取り組んでいた。
しかし、なかなか小説を書けないパーカーは、傑作を書くのにふさわしい万年筆を捜し、担当編集者(阿南健治)にお金を借りて、たった5ドルの魔法の万年筆を手に入れる。
すると、NYの小説界の大流行作家となり、プライベートも順調に…。
しかし…。
≪ここまで≫
舞台装置がじゃんじゃか転換して豪華なお芝居でした。衣裳もきれいだし、役者さんも超コミカルな演技で楽しませてくれるし、演劇を初めて観るお客様にはサービス満点のエンタテインメント作品だと思います。前半はちょっとエッチで、それも鈴木さんらしくって好き。
音楽が良かったですね~。ヴォーカルはミナコ“ムーキー”オバタさん。パワフルでした。そうそう、歌詞が面白かった。「ニューヨーク、渋谷だけど、ニューヨーク」とか。
でも全体的には物足りなかったな~。大味すぎ、というか。鈴木聡さん作・演出のパルコ作品だと『サクラパパオー』や『最悪な人生のためのガイドブック』の方が好きですね。
ここからネタバレします。
自称小説家の若者パーカー(稲垣吾郎)は、自分を支えてくれた恋人デルタ(西牟田恵)を捨てて、金も名誉も実力もある大作家モンブラン(山崎一)の娘セーラー(久世星佳)と結婚します。セーラーの兄(役名失念・河原雅彦)はちゃらんぽらんなダメ男なので、モンブランはパーカーに財産の全てを残して突然死。
大金持ちになったパーカーですが、魔法の万年筆を無くしてから全く筆が進まなくなります。女遊び(秘書の三鴨絵里子と浮気)や無駄遣いに呆けている内に、パーカーの魔法の万年筆を手に入れたセーラーの兄がベストセラー作家になり・・・。
役名はすべて万年筆メーカーの会社名なんですね。パーカーの万年筆を会場の観客2名にプレゼントする企画が実施中でした。すご~い。
デルタは伝説の万年筆作りの名人(小林隆)の娘で、パーカーに裏切られて心を病み、男として生きる決心をして父の跡を継いでいました。最後はパーカーが改心し、デルタとも心を通じ合わせることができるようになった・・・かと思いきや、そこでセーラーの兄がパーカーを銃殺してしまいます。まさか死んじゃうとは思わなかったな~。
セーラーの「(私たちは)悲しい兄妹なのよ!」というセリフは、ちょっとベタ過ぎると思いました。そんなこと言わなくても悲しいシーンだったと思うんですよね。
死んだパーカーがすぐにむっくりと起き上がったのは良かったな~。「生きている内は(愛してると)言えなかったけど、死んだら言えた。でも死んじゃったら何にもならないから、生きている内にしよう!」おバカな展開に見せつつ、ちょっとイイことを言ってくれるから鈴木さんの作品が大好きです。
≪東京、大阪≫
出演=稲垣吾郎、西牟田恵、三鴨絵里子、久世星佳、山崎一、阿南健治、小林隆、河原雅彦
脚本・演出=鈴木聡 音楽=本多俊之 美術=二村周作 照明=高見和義 音響=高橋巖 衣裳=黒須はな子 ヘアメイク=永嶋麻子 佐藤裕子 アクション指導=渥美清 演出助手=則岡正昭 舞台監督=小林清隆 今野健一 音楽制作=岡田こずえ 歌=ミナコ“ムーキー”オバタ 宣伝デザイン=田部良子 宣伝写真=吉田多麻希 製作=山崎浩一(パルコ) 宣伝=吉田由紀子 制作=山家かおり(Me&Herコーポレーション) 尾形真由美(パルコ) 市瀬玉子 プロデューサー=祖父江友秀(パルコ) 製作=(株)パルコ 企画制作=(株)パルコ/(株)Me&Herコーポレーション
【発売日】2007/04/22 8,400円(全席指定・税込)未就学児童入場不可
http://www.parco-play.com/web/page/information/maho/
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【オーディション】アートネットワーク・ジャパン プロデュース『子どもに見せたい舞台vol.1「オズの魔法使い」』08/25-09/02にしすがも創造舎特設会場
アートネットワーク・ジャパンがプロデュースする超豪華スタッフが勢ぞろいのお芝居で、主役のドロシー役1名を募集しています。
対象年齢は18歳~35歳位まで。締め切りは6/11(月)郵送必着。詳細はこちら。
男女不問、ですね。
公式サイトより、主な情報です。
■タイトル:『オズの魔法使い』
■公演期間:2007年8月25日(土)~9月2日(日)(予定)
■応募資格 :18歳~35歳位まで。7/1からの稽古に全回参加できる方。高校生および初心者不可。
■応募方法:郵送のみ受付
■締切:6月11日(月)必着
★スタッフはこちら↓ 豪華すぎ!
上演台本:山田裕幸(ユニークポイント)
演出:倉迫康史(Ort-d.d/にしすがも創造舎レジデント・アーティスト)
振付:井手茂太(イデビアン・クルー)
音楽:棚川寛子
美術:伊藤雅子
音響:藤田赤目
衣装:竹内陽子
舞台監督:松下清永
アートネットワーク・ジャパン=http://anj.or.jp/
お問合せ:NPO法人アートネットワーク・ジャパン/にしすがも創造舎
Tel:03-5961-5200(11時~18時・土日祝除く)
Mail:sozosha-info@anj.or.jp
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2007年05月20日
小指値『オールテクニカラー』05/18-20半蔵門アーツファースト
小指値(こゆびち)は多摩美大出身のパフォーマンス集団です。先日のガーディアン・ガーデン公開二時審査会でのプレゼンテーションが素晴らしかったので、番外公演にもお邪魔してみました。
各回限定15席の小さな公演は1500円でグリーンカレー付き!美味しかったです。あ、パフォーマンスもめちゃくちゃ面白かった。上演時間は1時間弱。
⇒CoRich舞台芸術!『オールテクニカラー』
⇒舞台写真(2007/06/13)
≪あらすじ≫ 公演が終了しているのでネタバレします。
渋谷でホームレスの女の子と目が合った。追いかけてくるから彼氏の部屋まで連れてきて、一緒にグリーンカレーを食べた。そのままそのコは彼の家に住みついちゃった。いつもの4人組に1人の異邦人が加わって、ちょっと刺激的な日常。でも・・・。
≪ここまで≫
役者さんは開場時間から舞台にいて、観客と気さくに話したり準備運動をしたり、とてもリラックスした状態(に見えました)。開幕前から体感したことのない特別なムードがあり、わくわくしました。そして幕が開いて・・・むむ~、ものすごく面白かった。
作風はダンスのような身体表現と現代口語演劇がまざった感じで、自然な会話の途中で突然飛び跳ねたり、ある行動を全く関係ない動きで表現したり、登場人物が勝手に人間じゃなくなったり、もー自由自在。アイデア止まりではなく、ちゃんと狙いが定まったパフォーマンスになっています。
しっかりと地に足がついた状態で役柄を演じているし、鍛えられた体のダンス(動き)も堂々としていて見ごたえがあります。そう、めっちゃくちゃ堂々としてるんですよね。いったいこの存在の仕方はどこで、どうやって身につけられたのでしょうか。
演劇やダンスなどのジャンルの境界を自由に飛び越え、行き来して、自分たちが信じる面白さ、気持ちよさ、美しさをそのまま舞台に上げることに成功していると思います。若いカンパニーから新しいものが生まれてきていることを、ビシビシ感じました。
フリーターの一人暮らし、仲良し4人組のダブルデート、ホームレスの女の子との出会いとさよなら。渋谷、渋谷、渋谷・・・渋谷のイメージが肌感覚をともなって広がっていきます。最後は首都高の車の走行音とカーライトで渋谷を俯瞰。ホームレスの女の子と目が合うシーンが、終盤でもう一度出てきたのが良かったな~。
それにしても濃ゆ~い部屋だった。めちゃくちゃあつかましい白人女性観客がいて、ある意味、人生勉強にもなりました(笑)。
出演=池田拓哉(パパタラフマラ)、大久保亜美(mon)、飛田美紀、山崎皓司、篠田千明
作=オールテクニカラー 演出=篠田千明・大道寺梨乃 照明プラン=上田剛 制作=小指値 カレー作り=山崎皓司
1,500円 各回限定15席 要予約 ※食事付(グリーンカレー)
http://www.koyubichi.com/
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ONEOR8 B面公演『COLT GOVERNMENTS(コルトガバメンツ)』05/19、05/23-27イマジンスタジオ
ONEOR8(ワンオアエイト)は田村孝裕さんが作・演出される劇団です。田村さんは劇団外での執筆、演出もよくされています(過去レビュー⇒1、2、3、4、5、6)。B面公演は本公演(A面)とすると、そのカップリング
ライター招待のプレビューに伺いました。開幕前のクチコミ効果を狙い、観客の反応から作品をブラッシュ・アップするという素晴らしい企画です。こういう双方向のイベントが増えてきましたよね。初日は5/23(水)です。
★パンフレットと一緒に贅沢な資料をいただきました。ONEOR8の過去公演すべてを載せたオールカラーの1枚に感動。舞台写真が入ったCD-ROMも頂戴しました。
⇒CoRich舞台芸術!『COLT GOVERNMENTS』

プレビュー舞台写真
≪あらすじ≫
小学校の同窓会の帰り。信也(恩田隆一)、明夫(冨塚智)、正次(平野圭)の3人は、仲良し4人組だったのに一人だけ会に来なかった藤井(野本光一郎)の家に上がりこんだ。小学校時代の思い出を語るうちに、それぞれの胸の内と今の生活が明るみに・・・。
≪ここまで≫
イマジンスタジオに初めて伺いました。日比谷のニッポン放送の大きなビルの地下に、ものすごくきれいな空間が!記者会見などにも使われているそうです。フラットなスペースで客席に段差がなく、装置は少々簡略化されているように見えました(そういう演出なのでしょうけど)。舞台をパっと見た第一印象は「やりづらそうだな~・・・」でしたね。
その感覚に引きづられたのか、中盤までは役者さんの演技の荒さが気になってお話に入っていけませんでした。でも、あるきっかけからガツンと集中して観られるようになり、最後には男4人の今と昔の生活の匂いのようなものが、じんわりと感じ取れるようになりました。

プレビュー舞台写真
幼い頃、若い頃のつらい思い出って、ちょっと触れることすら恐怖になるぐらい、本人にとっては大きな痛手なんですよね。でも時が経てば、恐る恐るその禁断の箱を開けても、けっこう平気になってたりします。見ることができるようになったら、次はそれを肯定して愛してあげること。そうすれば今の自分がしっかりと立てるようになり、未来を見ることができるようになるんだなと、カーテンコールの可愛い男の子たちを眺めながら思いました。
初日は5/23(水)なのでまだまだお稽古の時間があります。幕が開く時にはかなり完成度が高くなっているのではないでしょうか。こういうの、嬉しいですね。
ここからネタバレします。

プレビュー舞台写真
いじめられキャラだった明夫(冨塚智)が実は変装していたとわかった時から、前のめりに舞台を観られるようになりました。同窓会の裏側が具体的に目に見えたからでしょうね。もっと前から入っていきたかったな~。
友達同士の気軽な日常会話のお芝居に、黒いランドセルと黄色い帽子を被って小学生になりきる回想シーンと、藤井が見る夢のシーンが挟まれます。夢の示す意味は最初はわかりづらいですが、最後にスっと腑に落ちて嬉しくなりました。違う中学に行くことを決心するぐらい嫌いだった「聖徳太子ゲーム」も「長嶋のモノマネ」も、もう一度見つめて、そして愛してあげることができたんですよね。
奥のふすまの裏の部屋にいる(ことになっている)お母さんのシーンは、今回のために新しく増やしたそうです。
≪ポスト・パフォーマンス・トーク≫
出演:田村孝裕(ONEOR8作・演出)、岡本麗(女優)、徳永京子(演劇ライター)
岡本麗さんは田村さんと2度お仕事をされていて(『東おんなに京おんな』『猿股のゆくえ』)、徳永京子さんは2000年からずっとONEOR8をご覧になっているそうです。旧知のおともだちが勢ぞろいしたような、ほんわかあったかなトークでした。岡本さんは本当にキュートな方!田村さんは素朴で正直で・・・作品の印象そのままの好青年でした。
質疑応答では岡本さん、田村さんのファンの方々からの発言が多かったですね。あんなにはっきりと「ファンです!」なんておっしゃるんですから、相当熱心なファンなんだな~。

プレビュー舞台写真
出演=恩田隆一、冨塚智、野本光一郎、平野圭 声の出演=和田ひろこ
作・演出=田村孝裕 照明=和田典夫(満平舎) 音響=今西工 舞台監督=村岡晋/八木橋貴之 演出助手=伊藤俊輔(M★A★S★H) 宣伝美術=美香(pri-graphics) イラスト=とみつかさとし 舞台写真=山本圭ニ 票券=岡本愛子 中島まり子 制作=高田雅士 椎名浩子 協力=Habanera エムエイチ企画 主催=ONEOR8 ニッポン放送
【発売日】2007/04/22 前売3.000円 当日3.500円 全席自由(日時指定・整理番号付き自由席)
http://homepage2.nifty.com/oneor8/index.html※5月19日(土)プレビュー公演にライターさんご招待!
http://my.formman.com/form/pc/1lcCUiBycmTnfb7M/
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2007年05月19日
G-up+MCR『MCR LABO #3「審判」』05/15-20新宿村ライブ
櫻井智也さんが作・演出されるMCR(エム・シー・アール)。チラシのビジュアルが怖くって今まで行けてなかったのですが、ご縁が合って初めて伺いました。※第13回ガーディアン・ガーデン演劇フェスティバル公開二次審査会でのプレゼンテーションは拝見しています。
「MCR LABO」とはMCRの実験室。今年中にすでに#1「運命」、#2「無情」を上演し、今作で3回目です。お手軽価格のオムニバス短編集ですね。作風は「狙いを定めた演技ができる若い役者を揃えた、乱暴だけどロマンティックな会話劇」かな、と。上演時間は1時間20分。
⇒CoRich舞台芸術!『 #3 「審判」 』
レビューをアップしました(2007/05/20)。
新宿村ライブにも初めて伺ったんです。中央付近に2本の柱がある地下のスペースで、何もない舞台を三方から客席が囲みます。ジァンジァンを思い出しました。道具は四角い箱をイスに見立てて使うだけ。照明効果も特に派手ではありませんし、衣裳もシンプル。いわば役者さんだけで魅せる企画です。
チラシのビジュアルから“血みどろのプロレス”なイメージを勝手に持ってたんですけど(苦笑)、暴力や汚い言葉などのスパイスが効いた、元気な、そしてとてもロマンティック会話劇なんですね。基本的にコント風ですが、私は笑うよりも言葉の選び方やニュアンスを味わうのが楽しかったです。役者さんの演技はいわゆる小劇場っぽい感じで全体的に私の好みではありませんでしたが、言葉がはっきりと届きましたので不快感はありませんでした。
MCRファンの方にとっては今回の「審判」は少々物足りない感じだったようですが、全く初めての私にとっては、「へー、こんな劇団なんだ~」と気楽に作風に触れられる軽さで、良かったかもしれません。本公演を観てみたいです。
ここからネタバレします。
■Announcment「優子メタルジャケット」
男数人が横一列に並んぶ。女(高橋優子)が男たちを暴力込みで順番にいじくっていく。
バットをがんがん振り回すし、言葉がすごく汚いし卑猥だし、最初は引いちゃいました。でも「携帯の電源を~」という前説のセリフもあって、気の利いたオープニングになっていました。MCR初心者の私にとっては最初の衝撃で免疫ができて良かったかもしれません(笑)。
■「彼女のポケット」(オモテ)/「轟音」(ウラ)
喫茶店にウェイターが2人(小野と櫻井)。小野の彼女が彼氏と一緒に店にやって来てしまって・・・。
「“付き合う”って何?」という大人の疑問(笑)について、本気でしつこく語り合うのが面白かった。
■「222(before)」(オモテ)/「222(after)」(ウラ)
ゾンビに囲まれた密室。ゾンビに噛まれ激痛に耐えながらゾンビになるのを待つしかない男2人と、彼らを見守りつつ、どうすべきか(ゾンビになる前に殺すべきか)悩む男2人と女1人。
痛みに耐えながら「キスしたい」と連呼するゾンビ予備軍の男と、彼に言い寄られる女の、友達以上恋人未満から肉体関係を持つにいたる(?)展開がロマンティックでした。けんか腰の悪口とストレートな求愛の言葉がパタパタと交互に入れ替わるように繰り出され、対話に波が立つのが面白かったです。
■「ファッキンディズニーリゾート」/「舞浜のゲルニカ」/「さらば舞浜の灯よ」
ディズニーキャラクターの着ぐるみを着てディズニーリゾートで働く若者3人(ミッキー、ミニー、プー)の、控え室でのおしゃべり。
ディズニーキャラクターのパロディーとして楽しめました。ガンダム・ネタはお約束だそうで、私はグフが出てきて喜んでしまった(笑)。
憎まれ口をたたきあう3人ですが、最後はバイトを辞めて実家に帰らなければならなくなったミニーに、ミッキーとプーが優しく接します。笑えるネタでどんどこ進んでいたので、こんなにしんみり、ほっこりなエンディングになるとは意外でした。
出演=櫻井智也(MCR)/小野ゆたか/大佐藤崇(ロリータ男爵)/中川智明/三瓶大介(ククルカン)/草野イニ(ロリータ男爵)/山田奈々子/高橋優子/上田楓子(MCR)/おがわじゅんや(MCR)/福井喜朗(MCR)/渡辺裕樹(MCR)/小野紀亮(MCR)/伊達香苗(MCR)
作・演出=ドリル(MCR) 舞台=小林英雄 照明=シミズトモヒサ 音響=中村成志(SoundGimmick) 制作=八田雄一朗(MCR)・丸山かおり(MCR) プロデューサー=赤沼かがみ(G-up) 企画+製作=G-up +MCR
前売・当日 2,000円(全席自由・日時指定) 発売期間:2007.04.21(土)~公演前日24時まで
http://www.mc-r.com/
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2007年05月18日
エリーコーポレーション『返り花』05/15-19三越劇場
ご縁があってものすごく久しぶりに三越劇場にお邪魔しました。2002年以来!やっぱり内装がゴージャスで素晴らしいわ~。
休憩25分を挟む人情もの(?)の現代劇でした。上演時間は3時間ぐらいあったんじゃないかな・・・って、うろ覚えです。最後はやっぱり主役の男優さんの歌がありました。参っちゃうな(笑)。
≪ストーリー≫ 公式サイトより。 (役者名)を追加。
開発の波に乗り遅れてしまったと在る都会の片隅。主人公太一(石橋正次)はエリート銀行マンであったが、銀行側の命令で自宅謹慎を仰せつかっている。過去、仕事一筋に生きてきた太一の身の上に様々な災難が降りかかります。今の世の中の忘れ去られた戦後の人間愛・家族愛がここにあります。
≪ここまで≫
主人公はバブル時代のツケがまわって来たエリート・サラリーマン。会社のために身を粉にして働いてきたのに、会社は都合が悪くなると簡単にクビを切ろうとする・・・。新劇や小劇場演劇でもよくテーマになってきましたが、三越劇場みたいなところでも上演されるんですから、それぐらい日常的な、当たり前のことになっちゃったってことなのでしょうか。
予想(覚悟)はしていましたけど実際に体験すると強烈な客席でしたね。まず年齢層がものすごく高いです(劇団民藝よりも)。マダムは上演中も客席で思いっきりおしゃべりしてますし、サンドイッチも召し上がります。場面転換で暗転する時、びっくりするほとシーンに合っていない大団円な音楽がかかります。そしてなぜか観客が拍手。うー。
演出といえるものは作用していなかったですね。集中して見る必要を感じませんでした。一緒に観に行った方が「テレビの再現ドラマみたい」とおっしゃって、まさにその通りだなと思いました。
ここからネタバレします。
元エリート銀行マン・太一とその妻と娘、太一の弟(叔父)と妹(叔母)・・・という家族に加えて、太一と因縁がある(と後からわかる)小料理屋の女、そして元船頭だった老人らが登場します。
汽車の運転手だった(かな?)父親の幽霊が、仏壇の裏から登場するのは可愛かった。「誇りを持て」という幽霊の言葉はありきたりではあるけれど正しいし、私もがんばろうと思えました。
女子高生の娘の描き方に納得がいきませんでした。ダンスを勉強するためにアメリカに留学したいと思っていて、いつも携帯を肌身離さず持っているような17歳の若い女の子が、「弟と起業するから留学を1年待って欲しい」という父の奇想天外な願いをあんなにすんなり受け入れるのか。そして鶏ビジネス(?)をやるために田舎に引っ越して「すっかりあの土地の生活に慣れる」のか。しかも父と母は2人で伊豆に住むんでしょ?じゃあ娘は叔父と2人で田舎暮らし!?あんなチャランポランな叔父が真面目に働くなんて・・・ありえないよな~。
脚本家の方は基本的に、子供は大人よりもバカで親に従順なものだ(そうあるべきだ)という考えを持っていらっしゃるんじゃないかと思いました。会社に「都合が良すぎるゾ」と物申しておきながら、子供に対してやってることは企業と同じなんじゃないのかな。
出演:石橋正次/吉沢京子/西崎緑/小宮健吾/佐々木剛/亜蘭美香 /田村元治/柴崎まり子/鶴見卓三/大本麻鈴/根岸光太郎/萌乃智子/小林真二/本倉さつき/摩耶聖子/仲野智美
脚本:阿部照義 演出:吉村忠矩
前売開始 2007年4月1日(日)午前10時~ 6,000円(全席指定・税込)
http://www.elly-pro.com/
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チャリT企画『アメリカをやっつける話』05/17-21王子小劇場
楢原拓さんが作・演出されるチャリT企画は早稲田大学演劇研究会(通称:劇研)出身の劇団です。私はこれが3度目(過去レビュー⇒1,2)。超満員の初日でした。
キャッチーな(笑)タイトルですよね。パンフレットによると上演時間は1時間30分(私は未確認)。
⇒CoRich舞台芸術!『アメリカをやっつける話』
≪あらすじ≫
場所はある大学の地下の部室。ときは新入生歓迎会がさかんに行われる4月。新入部員を獲得しようとアメリカ研究会のメンバー全員が張り切っている・・・かと思いきや、実はサークル内は分裂しており・・・。
≪ここまで≫
サークル間・内の派閥争いを主軸に、和気あいあい、喧々諤々、走って暴れて、アメリカをやっつけようとするお話。隠喩がいっぱいあるものと期待していたのですが、それほど意図されてはいなかったようです。中盤以降、予想できない展開が生まれてググっと劇空間が盛り上がるのですが、最終的に大人しく収まってしまった感、大。結果、終始ストイックに組み立てられた前作『アベベのベ』の方が私には面白かったですね。でもアイデアや設定はとても面白いと思いました。
舞台をどんどこ走り回るライブ感や役者さんがぶつかり合う熱さが、学生演劇っぽくて楽しめました。でもしたたかな狙いをもって作っているようには見えませんでしたので、できれば今後はそのあたりの洗練も観たいなと思います。
ここからネタバレします。
爆弾が落ちたような音が鳴って、部室が何度か停電します。すると本土決戦に備えて「鬼畜米英!」と叫びながら訓練する防空頭巾を被った女(内山奈々)が登場するので、昭和20年の日本と平成の今が混ざってきたのかと思いました。そしてアメリカをやっつけるための巨大ロボットを操作するリモコンを探し、奪い合う・・・というフザけた展開になります。これがすごく面白かったんですよね。ブッシュ(おそらく現ブッシュ大統領)が来日するという架空の設定、あるコミュニティ(アメリカ研究会)の崩壊、反戦モノの常套手段である過去と現在の交差に加えて、子供向け戦隊モノの王道まで盛り込まれるんですから。しかも役者さんが舞台を走り、暴れまわるので疾走感・躍動感もあります。
でも実際は爆音ではなくカミナリの音だったそうです。演劇サークル(「凶器の桜」を上演)が中庭の桜の木を切り倒したことのバチが当たり、木のそばに居た学生だけが錯乱状態になっていたということでした。んー、わかんなかったな~。爆音だと勘違いしたおかげで作品世界がものすごく広がったので(勝手な言い分ですが・笑)・・・桜の木を元に戻した(といってもアロンアルファでくっつけた程度)途端に、夢から覚めたように元の状態に戻ったのはもったいないなと思いました。あのまま突っ走ってしまって良かったんじゃないでしょうか。
アメリカ研究会はアメリカについて真面目に研究する社会部(冠仁、小杉美香、熊野善啓)と、Nintendo Wiiで遊びまくる文化部(松本大卒、秋吉孝倫、下中裕子、竹内洋介)と、語学部(角田ルミ)に分裂しており、特に社会部と文化部との間で意見が対立しています(立て看板の撤去について等)。
“アメリカをやっつける話”は文化部の米良(冠仁)、利香(小杉美香)、新入部員の阿久津(熊野善啓)の名前から来ていました。⇒阿久津のア、米良のメ、利香のリカ。
出演=松本大卒、内山奈々、伊藤伸太朗、高見靖二、冠仁、下中裕子、秋吉孝倫(乞局)、角田ルミ、竹内洋介、小杉美香、熊野善啓、楢原拓、長岡初奈(新人)
脚本・演出=楢原拓(chari-T) 音楽=YODA Kenichi 舞台監督=甲賀亮 照明=伊藤孝 (ART CORE design) 音響=島貫聡 音響操作=樋口亜弓 宣伝美術=BLOCKBUSTER 制作=チャリT企画
【発売日】2007/04/15 前売=2300円(日時指定整理番号付き) 当日=2500円 ○学生割引=前売当日共に1800円(劇団のみ取扱い・要学生証掲示) ○失業者・障害者=無料(要証明書類)
http://www.chari-t.com
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ナイロン100℃『犬は鎖につなぐべからず』05/10-06/03青山円形劇場
7つの岸田國士(きしだ・くにお)作品をある町内で起こったお話としてまとめた、ナイロン100℃の本公演。“日本の近代劇の創始者”といわれる岸田國士戯曲を7本一度に味わえるお得な公演、とも言えますよね。上演時間は10分の休憩を含む3時間。当日券が出ていました。
空調が寒かったので休憩時間に劇場スタッフの方にお伝えしたんですが、円形劇場ってなかなか温度が変わらないみたい・・・。
⇒CoRich舞台芸術!『犬は鎖につなぐべからず』
和風のわびさび感も少々付加されたポップでおもちゃっぽい美術。役者さんは基本的に和装(和装監修:豆千代)で登場します。何度も着替えてくださって、それはそれは見ごたえがありました。衣裳、最高でしたね。わんさかと踊りながら(振付:井手茂太)場面転換するのがにぎやかで、音楽も良かったです。
岸田國士作品を一度に沢山観られたのが何よりの収穫でした。でも、もっと面白いはずなんじゃないかな・・・と思うこともありました。
ナイロン100℃っぽいナンセンスをがっちりと体現する、個性のはっきりしたキャラクターが登場します。何かしらの目的のために狙いを定めて演じる技術はさすがだなと思いますが、今の私はそういう演技にはあまり魅力を感じないんですよね。素敵だなと思ったのは「屋上庭園」で並木(植本潤)の妻を演じられた植木夏十さんでした。
新国立劇場で2008年3月に『屋上庭園/動員挿話』が再演されます。また楽しみになっちゃったな。
NYLON100℃ 30th SESSION ~岸田國士一幕劇コレクション~
「犬は鎖につなぐべからず」「隣の花」「驟雨」「ここに弟あり」「屋上庭園」「ぶらんこ」「紙風船」
出演=松永玲子、みのすけ、村岡希美、長田奈麻、新谷真弓、安澤千草、廣川三憲、藤田秀世、植木夏十、大山鎬則、吉増裕士、杉山薫、眼鏡太郎、廻飛雄、柚木幹斗、緒川たまき、大河内浩、植本潤、松野有里巳、萩原聖人
脚本=岸田國士 潤色・構成・演出=ケラリーノ・サンドロヴィッチ 和装監修=豆千代 振付=井手茂太 舞台監督:福澤諭志+至福団 舞台美術:加藤ちか 照明:関口裕二(balance,inc.DESIGN) 音響:水越佳一(モックサウンド) 映像:上田大樹(iNSTANT WiFE) ヘアメイク:武井優子 大道具:C-COM舞台装置 小道具:高津映画装飾 演出助手:山田美紀(至福団) 宣伝美術:坂村健次(C2デザイン) 宣伝写真:小木曽威夫 イラスト:フカザワテツヤ 宣伝ヘアメイク:山下まきえ/山本絵里子 舞台写真:引地信彦 制作助手:市川美紀/土井さや佳/寺地友子/松田美緒 制作:花澤理恵 お問合せ・企画・製作=(株)シリーウォーク
【発売日】2007/03/17 前売¥6,000/当日¥6,500(全席指定)
http://www.sillywalk.com/nylon/
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2007年05月16日
2007年05月15日
新国立劇場/日中共同プロジェクト公演『下周村(かしゅうそん)』05/15-20新国立劇場小劇場
李六乙(リー・リュウイ)さんと平田オリザさんが脚本・演出を手がけ、日本・中国の両国からキャスト・スタッフが揃った作品です。香港、北京公演を経ての日本初演。
新国立劇場で上演された平田オリザさんの国際共同製作といえば『その河をこえて、五月』です。だからメルマガ2007年5月号で一番のお薦めだったんですが・・・見終わった時の第一の感想は「全然意味がわからない!!」でした。でも・・・めっちゃくちゃ面白かった!そんな感触です(笑)。「意味わかんなくてもいいよ~」という方は、ぜひ♪ 上演時間はカーテンコールを含めて2時間ちょうどぐらい。
⇒CoRich舞台芸術!『下周村(かしゅうそん)』
≪あらすじ≫ 公式サイトより
中国四川省あたりの町外れの宿屋。近くの古代遺跡の村では300年にわたり贋の文化財を作ってきたが、最近新しい古代遺跡が発見され、村の住人、噂を聞きつけた中国人、考古学者、日本人学生やサラリーマンなどさまざまな人々が宿屋に集まってきた。新遺跡発見で歴史が塗り替えられるとはどういうことなのか。数千年前の文化財と300年前の先祖が作った偽物とは何が違うのか。歴史とはいったい何か。急速に発展する中国で様々な価値観を持つ中国人と、遺跡騒動のなか、中国奥地までやって来た日本人との出会いから、日中の現在が浮かび上がる。
≪ここまで≫
舞台三方が白い布で囲まれており、真四角の空間になっています。その布に描かれているのは美しい山などの水墨画。いかにも“中国”らしいムードです。置かれている家具も中国風ですが、塗りが施されていない白木の状態なので、空間全体が白と黒(灰色)のモノトーンに近い色彩にまとまってスタイリッシュでした。上手奥には山の上から水を引いているのであろう水場があります。
最初のうちは、歴史を書き換えるかもしれない大遺跡が発見されて、考古学者やサラリーマンなど、色んな人たちがそれぞれの思惑を持って集まってくる・・・という、いわば普通によくできた群像劇だったのですが、途中で演出が大転換します。
「何だ、コレ!?」と驚くままに置いてけぼりにされ(笑)、繰り出される難解なセリフたちに煙に巻かれ(字幕なのでさらに難解)、変貌する役者さんの演技に圧倒され、キョロキョロとどこを観ていいのかいけないのかもわからないままに・・・没頭していました。色んなことを考えましたね・・・。次々と新しいイメージが出てきて、舞台と自分を近づけようとするんだけど、すぐに遠ざかって・・・。観て知ったことも、そこから想像したことも全て断片のまま、放置したままに終演を迎えてしまいましたが、私にとってはものすごく豊かな時間でした。
中国人の役者さんが面白かったです。自然な演技やメロドラマ的な演技をしたかと思ったら、突然アングラ劇みたいにケレン味たっぷりになるんです(笑)。何をやっていても堂々として揺らがないのがかっこ良かった。じーーーーっと凝視するのに耐えられる存在感でした。あと、女優さんは皆さんすごく美人ですよね。
前方の座席の観客には字幕の文章をすべて印刷した冊子が配布されていました。舞台左右にある字幕が読みづらいためです。親切ですね~!私は3列目で運良くゲットできました♪見づらいといえば確かに見づらかったですが、冊子をいただけたし役者さんを間近で観られたので、前の方で良かったです。
ここからネタバレします。
たしか「ニおじいさんの家が崩れた!」みたいなセリフをきっかけに、舞台を囲んでいた水墨画の幕がカーテンを開けるように取り除かれていきます。後ろから表れたのは不気味に赤く染まった空。ところどころに登場人物(であろう人間)が描かれていて、みんな驚いていたり怖がっていたり、ヘンな顔をして空にぶら下がっています。抽象画といえばいいでしょうか。
シンプルだった照明もどんどん大胆に変化するようになり、役者さんは対話のセリフを独白みたいに話したりし始めます。考古学者(于洋)が豚の気持ちを代弁するのは面白かったな~。パンダのおばさんを演じる時なんて、あれは京劇の女形の振付??目も心も奪われました(笑)。
この作品のメッセージや大意は「全然わからなかった」というのが正直なところです。私が勝手に考えたこと、想像したことを下記に:
予想以上に大きな遺跡が発見されたため、歴史の教科書が書き換えられる可能性が出てきます。そうなるとそれを認めなくない学者がいたり、発掘現場に工場を建設することになっていた日本企業が困ったり、遺跡が出てきてもすぐに儲かるわけではないので、村の住民も工場ができた方が良いと思っていたり・・・。世紀の大発見よりも現実の生活の方が重視されることがあるんですよね、それも頻繁に起こっているのでしょう。
遺跡は発見されたら存在するけど、発見されなければ無いものとされています。本当は地中に存在していても。「目に見えないものは存在しない」なんて論理的には間違っているはずです。でも、見つからないうちには「ある」って言えないし・・・。ジレンマだな~。つまり、それほど私たちが信じている「歴史」なんて曖昧なんですよね。
遺跡が見つかったと言ったって、それが本物かどうか、どうしてわかるのでしょう?研究者だって間違うかもしれないし、嘘をつくかもしれません。
農民の三爺(果静林)が自宅で見つけた300年前の模造品は、いまや骨董です。「正真正銘のニセモノ」というセリフも可笑しかった。「新しい遺跡」という言葉も、それ自体が矛盾をはらんでいて可笑しいです。
本物も偽物も、今も昔も、全部がぐっちゃぐちゃに混ざったような気がしました。私は本物なのか、一体何者なのか、誰がどうやって証明できるのかしら・・・。自分で、しかないのかな。いや、私一人では無理ですよね。でも・・・何かに頼ることでは証明できないんだなと思いました。
≪香港、北京、日本≫
花に嵐のたとえもあるさ・Lost Village
出演=篠塚祥司(父)、内田淳子(母)、粟田麗(娘・大学院生)、能島瑞穂(めがねの大学院生)、佐藤誓(サラリーマン)、果静林(三爺・農民)、陳煒(宿の女主人)、韓青(私服警察・黒スーツ)、于洋(考古学者・豚になる)、林熙越(犯罪者・白い服)、薛山(玩家・うんちくを言う)、劉丹(女主人の妹・北京で働く)、王瑾(通訳)
脚本=平田オリザ、李六乙 演出=李六乙、平田オリザ 美術・衣裳=嚴龍 照明=岩城保 音響=嚴貴和 共同制作=新国立劇場/中国国家話劇院/香港アーツフェスティバル
【発売日】2007/03/18 A席4,200円 B席3,150円 Z席1,500円 当日学生券=50%割引
http://www.nntt.jac.go.jp/season/updata/10000122.html
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文学座『ぬけがら』05/08-17紀伊國屋サザンシアター
第50回岸田國士戯曲賞受賞作品の再演です。脚本はB級遊撃隊の佃典彦さん。演出の松本祐子さんが初演で第8回千田是也賞を受賞されています。私は初演を見逃し、横浜未来演劇人シアター版が『ぬけがら』初見でした。
面白かった~・・・微笑みながら涙しました。伝統ある劇団だからこそ実現したキャスティングですよね。これからも財産演目として再演を重ねて行って欲しいです。自分が年取ってからまた観たい!上演時間は約2時間15分。
⇒CoRich舞台芸術!文学座『ぬけがら』
レビューをアップしました(2007/05/15)。
≪あらすじ≫ 公式サイトより。(役者名)を追加。
夏、県営住宅の一室。昨日母親の葬儀を済ませ、今日は妻(山本郁子)に離婚届を突きつけられ捺印を迫られている男、鈴木卓也(若松泰弘)。41歳の元郵便局員。彼は、学生時代の友人(奥山美代子)との浮気がばれ、車で人身事故を起こし、職場もクビになる始末。心臓の悪かった母親(添田園子)は、度重なる心労であえなく他界。そして、残されたのは、84歳になる認知症(痴呆症)の父親(飯沼慧)ただ一人。男は失禁した父親をトイレに連れて行ったが・・・その後気が付くといつの間にか深夜。父親を探してトイレで見たものは、なんと父親の〈ぬけがら〉。そして脱皮したらしい父親(鵜澤秀行)は20歳若返り、元気そのもの。その後も、まるでセミのように脱皮を毎日繰り返し、父親はドンドン若返ってゆく。男は、若返る父親に戸惑いを感じるしかなかったが、若返るとともに知れる父親の過去を現前にして、今まで置き去りにしてきた父親との絆を今あらためて感じるのであった。
≪ここまで≫
わざとらしい口調が気になってオープニングは少々引き気味になったのですが、年配の男優さんの身体を見ている内にどんどん愛情が湧いてきて、中盤からは「もう、大好き!」って思いながら、このお芝居とともに昭和を旅しました。
父親の人生をさかのぼっていくので、おのずと平成から昭和を辿っていくことになります。過ぎた時代を生きていた人々が現代を生きる私たちの目の前に現れ、それぞれの視点から言葉を発してくれるので、過去が等身大の事実として自分に近づいてくれるんですよね。もちろん父親に出会いながら息子は自分自身を知っていくことにもなります。なんて見事な脚本!
横浜未来演劇人シアター版はじめじめとした質感に圧倒的なリアリティがあり、ぞくぞくしながらその空間を味わいました。文学座版では夫婦について、老いることについて、人生についてなど、大きなテーマを俯瞰した状態で考える貴重な時間になりました。例えば「光陰矢の如し」をたった1シーンで表現してくださったように思います。
ストーリーをわかりやすくするヒントがいっぱいある演出で、さすが文学座だなと思いました。天井近くの梁(はり)に「5日目」などの文字を映写したり、カレンダーを使ったり。いろんな仕掛けがあったのも楽しかった~。
それにしても会場は笑いがいっぱいだったな~♪色んな世代の観客が同じ空間でそれぞれに楽しんでいました。演劇と劇場の力を感じられたのが嬉しかったです。
ここからネタバレします。
終戦直後のクソ真面目なオヤジ(柳橋朋典)と遊び人になりはじめた頃のオヤジ(佐藤淳)、そしてすっかり遊び人になったオヤジ(高橋克明)という変遷は昭和の戦後から高度成長期を映しています。「人間は変わるよね」って、素直に思いました。
一番好きだったのは黄色い照明のもと、みんなでハワイアン・ダンスを踊るところ。CoRichのクチコミにも書きましたが、ハワイアンソングの歌詞って素晴らしいですね。"The enchanting time with you makes me love you" だったかな(単語や文法を間違ってたらすみません)。
ボケて死んだ父ちゃんも、心筋梗塞でポックリ死んだ母ちゃんも、浮気発覚で妻に離婚をつきつけられ、酒気帯び(チョコレート・ボンボン3粒だけど)運転で交通事故を起こして郵便局をクビになった男も、不妊症の女もシングルマザーも、みんなニコニコ笑いながら愛のダンスを踊ります。どんな不幸な人生も、死んでから眺めたらこんな風なのかもしれない。たった一瞬のきらめきなのかもしれない。
若いお母さんと沢山のお父さんと、そして息子が一緒に冷麦を食べるシーンでは、思いっきり微笑みながら家族について考えさせられました。偶然たまたま出会って、なぜか何十年も一緒に生きてきてしまったなら、それを愛すればいい。
妻(山本郁子)「墜落じゃない。着陸よ。」
私もガンバロっ!
≪東京、尼崎、藤沢≫
第50回岸田國士戯曲賞受賞作品
出演=飯沼慧、鵜澤秀行、関輝雄、高橋克明、若松泰弘、佐藤淳、山本郁子、奥山美代子、添田園子
脚本=佃典彦 演出=松本祐子 装置:石井強司 照明:金英秀 音響効果:藤田赤目 衣裳:出川淳子 舞台監督:三上博 演出補:上村聡史 制作:伊藤正道 票券:松田みず穂
一般5,500円 ユース3,800円 中・高校生2,500円 ※ユース(25歳以下)、中・高校生は劇団扱いのみ
http://www.bungakuza.com/nukegara07/index.html
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2007年05月14日
横浜未来演劇人シアター『ぬけがら』02/08-12相鉄本多劇場
第50回岸田國士戯曲賞を受賞した佃典彦さんの戯曲『ぬけがら』を寺十吾さんが演出されます。『ぬけがら』初演は文学座アトリエの回の公演でした。⇒ただいま再演が上演中!
⇒CoRich舞台芸術!横浜未来演劇人シアター『ぬけがら』
レビューは覚書のみ。
■メルマガ2007年3月号【先月のベスト3】の第3位(21作品中)でした。
細かいところまで妥協せずにこだわり、作品を愛して手作りしてくださっているように思いました。ダンスも効果的でした。
■CoRichにクチコミした感想
「脚本はもちろん、演出も良かった」
たしかに上演時間は長い目ですが、満足できました。美術も音響も衣装も振付も・・・と挙げるときりがないほど、細かい部分を含めて総合的に高品質の作品だったと思います。5月に本家本元の再演もあるそうで、そちらもぜひ観たいです。
【ネタバレBOX】
効果音(セミの声、車の騒音、子供の歓声など)が効果的でした。まさかぬけがら全員で踊るとは!!鳥肌が立ちました。
出演=岩本幸子(イキウメ)、小林正和、高村圭、山口雅義、今井勝法、五十嵐恵美、櫻井麻樹、嶋崎諭、中野麻衣、永井若葉(ハイバイ)、浜田貴也、望月大成、安田亞希子、吉村公佑
作=佃典彦(第50回岸田國士戯曲賞受賞作品) 演出=寺十吾(tsumazuki no ishi)[指導演出家]寺十吾(tsumazuki no ishi)[企画顧問]木村健三(マシュマロ・ウェーブ)/佃典彦(B級遊撃隊) [美術]加藤ちか [照明]阿部康子(あかり組) [音響]青木タクヘイ(stage office)/岩野直人 [衣装]出川淳子 [舞台監督]小野八着(JetStream) [演出助手]岡野正一(tsumazuki no ishi) [web制作]矢野靖人 [宣伝美術]前嶋のの [制作]三村里奈(MRco.) [製作総指揮]大西一郎(横浜演劇計画)主催=横浜未来演劇人シアター実行委員会
全席自由(日時指定) 前売¥2,000/当日¥2,500
公式=http://mirai-engekijin.com/
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2007年05月12日
ヨーロッパ企画『冬のユリゲラー』05/05-15ザ・スズナリ
ヨーロッパ企画の“バック・トゥ・2000シリーズ”と銘打ったツアーは、東京でまだ上演されていなかった過去の3作を連続上演。5月は下北沢の駅前劇場とザ・スズナリを占拠して2作品が同時に上演されています!
まず、ザ・スズナリで上演されている『冬のユリゲラー』を拝見。超~~~楽しかったっ!!上演時間は約2時間10分と長いですが、いっぱい笑えるし暖かいお話だし、も~すっごく幸せになりました♪このツアーのパンフレット(700円)も購入!ヨーロッパ企画がこの世にあること、東京に来てくれたことに、感謝!
⇒CoRich舞台芸術!『冬のユリゲラー』
『苦悩のピラミッダー』も観に行きたいんですが、難しい目です(涙)。
レビューはアップできるかどうか不明。
ヨーロッパ企画2007年春ツアー ~バック・トゥ・2000シリーズ~
≪大阪、東京≫
出演=諏訪雅、土佐和成、中川晴樹、本多力、山脇唯/人羅真樹(イクイプメン)/首藤慎二(ベビー・ピー)/岡嶋秀昭、他
作・演出=上田誠 音楽= [衛星都市へのサウダージ] かせきさいだぁ≡ 美術= [苦悩のピラミッダー][衛星都市へのサウダージ]酒井善史 [冬のユリゲラー]長田佳代子 照明=松谷將弘(ART COMPLEX) 音響:[苦悩のピラミッダー][衛星都市へのサウダージ]宮田充規(GEKKEN staff room) [冬のユリゲラー] 小早川保隆(GEKKEN staff room) 衣装=舟橋真鳥 (iroNic ediHt DESIGN ORCHESTRA) 、山脇唯 舞台監督= [苦悩のピラミッダー][衛星都市へのサウダージ] 水波流(ART COMPLEX) [冬のユリゲラー]筒井昭善 演出助手=松田直樹・柳原暁子・中川有子 文芸助手=松田暢子・大歳倫弘 宣伝美術=太田洋晃・島田雄一(Marble.co) WEB=大見康裕・井上能之 制作=井神拓也・諏訪雅・本多力・吉田和睦・吉永祐子
未就学児入場不可【発売日】2007/02/24 前売3,000円/当日3,300円[全席指定]
http://www.europe-kikaku.com/
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世田谷パブリックシアター『死のバリエーション』05/11-27シアタートラム
『死のバリエーション』はノルウェーの作家ヨン・フォッセさんの2001年初演の戯曲です。演出はフランス人演出家・俳優のアントワーヌ・コーベさん。2004年に同じくシアタートラムで演出された『見よ、飛行機の高く飛べるを』は傑作でした。
期待通り、空間に触れただけで感涙。上演時間は約1時間30分弱。
⇒CoRich舞台芸術!『死のバリエーション』
レビューは後ほどアップ予定。多忙気味になってきたのでアップできるかどうか、ほんと不明です。
前知識ゼロでご覧になることをお薦めします。
ここからネタバレします。
≪Introduction≫ パンフレットより。(役者名)を追加。
「娘」(杵鞭麻衣)の死を知らせに来た「年をとった女」(高橋惠子)と、それを聞く「年をとった男」(長塚京三)。2人は共に、「娘」の死を受け入れることが出来ない。「年をとった女」は、置き去りにされたやるせない思いを「年をとった男」にぶつける。「年をとった男」はなすすべもなく、ただそこにいる。思い出されるのは遠い過去。2人が若く、純粋さと希望にあふれていた、あの頃。「娘」を産み、育てた日々。愛らしく、優しい「娘」を記憶の中で慈しみ、その思い出に2人は確かな生を実感する。けれど、思い出の中でも「若い男」(瀬川亮)と「若い女」(伊勢佳世)の心は離れていく。「娘」もまた次第に心を閉ざし、架空の「友達」(笠木誠)だけと話すようになる。そして「娘」は、「友達」に導かれるように、夜の海へと歩み入る……。
≪ここまで≫
≪東京、山口、兵庫、高知≫
出演=長塚京三、高橋惠子、瀬川亮、伊勢佳世、笠木誠、杵鞭麻衣
作=ヨン・フォッセ 翻訳=長島確 演出・照明=アントワーヌ・コーベ 美術・衣裳=イザベル・ルソー 音響=ヴァレリー・バイチャ 舞台監督=田中直明 美術補=土岐研一 照明デザインアシスタント=三谷恵子 照明オペ=西泰幸 音響オペ=遠藤憲 舞台監督助手=殿岡紗衣子 衣裳スーパーバイザー=阿部朱美 衣裳進行=森映 ヘアメイク=林みゆき(スタジオAD) プロダクションマネージャー=山本園子 通訳=堀内花子 宣伝美術=鳥井和昌 宣伝写真=野口博 イラストレーション=松尾たいこ 宣伝写真スタイリスト=遠藤百合子 宣伝写真ヘアメイク=今井純子 法務アドバイザー=福井健策 学芸=石井惠 営業=清水言一 広報=森直子 票券=金子久美子(ぷれいす) 制作=根本晴美 三上さおり 制作進行=相場未江 川辺美代 主催=財団法人せたがや文化財団 企画・制作=世田谷パブリックシアター
【発売日】2007/04/01 全席指定 一般6,000円、TSSS 3,000円 ※未就学児童はご入場いただけません。
http://setagaya-pt.jp/
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2007年05月11日
TBS/アトリエ・ダンカン『血の婚礼』05/03-20東京グローブ座
『血の婚礼』はスペインの詩人ロルカの3大悲劇のひとつです。私はtptの公演で一度拝見しました。白井晃さんが台本と演出を手がけられています。主演は森山未來さん。
上演時間は約1時間50分。短い上演時間にギュっと凝縮されたアーティスティックな空間でした。
⇒森山未來さんのメッセージ動画(イープラス)
⇒CoRich舞台芸術!『血の婚礼』
≪あらすじ≫ 公式サイトより。(役者名)を追加。
婚礼の日、花嫁(ソニン)がかつての恋人(森山未來)と逃げ出した。
花嫁と一緒に逃げた男は、花婿(岡田浩暉)の父親と兄を殺した一族の人間だった。
この因縁めいた出来事は、宿命なのか。
≪ここまで≫
なだらかな斜面の八百屋舞台が、客席の方へ大きく張り出しています。舞台上には何も置かれていません。舞台正面奥に壁のようにスクリーンが垂らされており、天井からステージへときれいにつながっています。そのスクリーンやステージに照明や映像を当てて、シンプルな舞台をさまざまな色合いに変化させていました。干からびた地面や広がっていく血の映像などは特に効果的でした。
ギターの生演奏(渡辺香津美)に合わせて、役者さんは歌ったり踊ったりされます。もちろん森山未來さんは華麗なフラメンコを披露してくださいました。役者さんがステージを歩いてまわって関係性を示したりするのは、『ルル~破滅の微笑み~』に似た感じです。衣裳の色使いがクールでおしゃれだし、白井さんの美意識が前面に出た演出だったと思います。
「さすが白井さんだわ~♪」と思う反面、だったらもっと密度の高いものになって欲しいなとも思いました。役者さんの在り方がそれぞれにバラバラで、対話もまだ浅い感じがしたんですよね。白井さんの作品はどこかに理想の頂点があって、全体(全員)がそこに向かって静かに突進していくような、そんな力強いパワーが感じられる時にものすごく感動します。今日の段階ではそういうのは感じられませんでした。
でも『血の婚礼』が表す意味は、前に観た時よりも少しはよくわかったような気がします。人間は心や身体の衝動につき動かされることがあります。でもそんな奔放さがいつも許されるわけではないのがこの世の中。ダメだとわかっていながら捨て身で突き進んでしまう姿のせつなさが、どうしようもなく美しく見えてしまいます。それが“血”の意味なのでしょう。でも、そうなると行動の原因は意志だけではなく、血筋・血統のせいだとも考えられるんですよね。
先日の『三文オペラ』には「だけど仕組みが許さない」という歌詞がありました。うーん、おとといは『藪原検校』だったし・・・なんだか私の中で同じテーマが続いてるな~。
ここからネタバレします。
蜘蛛の巣のような模様が広がる大きな赤黒い布を吊って場面転換するのが、ロマンティックで美しいです。そういえばtpt版でも布を使う演出がありましたね。
にぎやかな結婚式のシーンの裏では“死”(新納慎也)がダンスを踊っていて、常に暗い運命の影を感じさせます。こういう、何かをうっすらと匂わせるような演出が、白井作品の素晴らしいところだと思います。
良心の呵責にさいなまれながらも、互いを求めずにいられないレオナルドと花嫁は、矛盾を抱えたまま抱き合ってキスしたり、離れようともがいたりします。あのシーンは熱くて良かったな~。ただ、情熱的なソニンさんに比べて森山さんは爽やかさの方が前に出ていた気がします。もっと野太い声とか聞きたかったですね。
片足が不自由な女の子(尾上紫)が“月”の独白をしたのは妙案ですよね。彼女もまた望んでかたわになったわけではないなのに、そういう運命の中で生きていかざるを得ません。“月”が“死”(新納慎也)に犯されるシーンは男女や生死、欲望と理性など二項対立するテーマがいっぱい重なって、見ごたえがありました。
≪東京、長野、富山、大阪、名古屋、広島、福岡≫
出演=森山未來(レオナルド)/ソニン(花嫁)/浅見れいな(レオナルドの妻)/岡田浩暉(花婿)/新納慎也(死)/尾上紫(月)/池谷のぶえ(花嫁の乳母?)/陰山泰(花嫁の父)/根岸季衣(レオナルドの姑)/江波杏子(花婿の母)/渡辺香津美(ギター演奏)
脚本=フェデリコ・ガルシア・ロルカ 台本・演出=白井晃 音楽=渡辺香津美 美術=二村周作 照明=高見和義 音響=山本浩一 衣装=太田雅公 ヘアメイク=宮内宏明 振付=斉藤克己 演出助手=豊田めぐみ 技術協力=堀内真人 舞台監督=安田武司 宣伝美術=フライ はたはた 宣伝写真=田中まこと 宣伝スタイリスト=濱里ルカ 宣伝=る・ひまわり 制作=大迫久美子 吉本麻子 関口真由美 制作統括=桑原啓子 プロデューサー=池田道彦
S席9,000円/A席7,800円/B席6,800円(全席指定・税込)※未就学児入場不可
http://www.duncan.co.jp/web/stage/bloodwedding/index.html
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2007年05月09日
赤坂レッドシアター『「絢爛とか爛漫とか」モダンボーイ版』05/08-23赤坂RED/THEATER
自転車キンクリーツカンパニーの飯島早苗さんの名作戯曲(1993年初演)をスペースノイドの御笠ノ忠次さんが演出する、赤坂レッドシアターのプロデュース公演第1弾です。私は初見。
役者さんの顔ぶれがとても面白いですよね。モダンボーイ版・モダンガール版(1997年改稿版再演)の2バージョン公演で、私は男性版を拝見。良い戯曲でした~。上演時間は約2時間強。
⇒イープラスの得チケあり!全席指定 ¥4,500→¥2,250(先着受付)
⇒CoRich舞台芸術!『絢爛とか爛漫とか』
≪あらすじ≫
登場するのは昭和初期の文士たち。1年前に処女作を書いたきり2作目が全く書けない古賀(土屋裕一)の部屋に、友が集まってくる。批評家志望のリッチマン・泉(日比大介)、豪快で才気溢れる諸岡(加藤啓)、耽美な怪奇小説を志向する(及川健)。
≪ここまで≫
舞台は丁寧なつくりの日本家屋で、畳の間の奥には廊下があり、その奥に中庭があります。オーソドックスで品の有る美術でした。転換中は優しい音楽が流れる、春夏秋冬の4幕ものの正統派の会話劇です。
言葉がとても面白くてわかりやすく、登場人物一人一人の人生に感情移入することができました。特に諸岡(加藤啓)のセリフに強く勇気付けられましたね。自意識過剰とわかっていながらも、私のために言ってくれてるんじゃないかと、自分の生活にぴったりと添わせて味わいました。素晴らしい戯曲ですね。いっぱい泣きました。
役者さんが所属しているのは*pnish* 、THE SHAMPOO HAT、Studio Life、拙者ムニエルという、互いのつながりが全く見えない団体同士(笑)。プロデュース公演ならではのキャスティングです。4人それぞれが個性的でしたが、*pnish*の土屋裕一さんだけ少々見劣りしちゃったのは残念。でも土屋さんは4幕でじっくり聞かせてくださいました。
ここからネタバレします。
古賀宅の女中おきぬ(登場はしない)が花瓶の花を生けかえることで季節を表現します。これもまたオーソドックス。
「男同士で肉体関係を持てるか」という問に挑戦して、男同士で追いかけまわるシーンは元気で楽しかったです。
古賀が自分が思いついた小説の内容を泉に聞かせる最後のシーンでは、古賀が一人で長いセリフを話し続けます。器量の悪いお姫様が極楽の絵を描きたいと願い、本当に極楽に行ってしまうお話でした。念願かなって極楽に着いたけれど、極楽を絵で表すことはとてもできなかった。そこで彼女は蓮池の底の地獄を見つめて言います、「地獄に行けば絵を描けるかしら」と。横にいた父親が姫の顔を見ると、なぜかものすごく美しかった・・・そうな。
必死で書こうとするのに書けない人、特に書きたいわけじゃなかったのに書けちゃった人・・・。人生は不公平です。でも、才能があっても恵まれた境遇にあっても、自分が生涯かけてやりたいと思うことにめぐり合わなければ、それほど幸せではないんですよね。つまり執着できることを見つけられたら、それが一番幸せ。
ありがたかったセリフを下記に。正確ではありません。
泉「俺は勉強しに欧州になど行かない。俺は遊びに行きたいんだ。明治の先達は勉強しようと思って欧州に行った。だから何も学べなかったんだ。」
諸岡「お前(古賀)は泉に足を突っ込んでいるのに、のどが渇いたと水を求めている子供だ。」
諸岡「才能が書くんじゃない。人間が書くんだ。」
赤坂RED/THEATER プロデュース Vol.1
出演=【モダンボーイ版】土屋裕一、日比大介、加藤啓、及川健、【モダンガール版】沢樹くるみ、野口かおる、琵琶弓子、中谷さとみ
作=飯島早苗 演出=御笠ノ忠次 照明=津村裕子(アートブレーンカンパニー) 音響=前田真宏 美術=魚住和伸 衣装=中村洋一(東京衣裳) 演出助手=西岡知美 舞台監督=伊東龍彦 宣伝美術=藤野和美(ELENA Lab.) 写真=沼尾哲平 WEB=新藤健 票券=西川悦代 制作協力=有限会社ゴーチ・ブラザーズ 制作=佐々木康志 プロデュース=上谷忠/伊藤達哉 主催=赤坂RED/THEATER
【発売日】2007/04/07 4,500 円(全席指定)
http://kenrantoka.net/
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ホリプロ・Bunkamura『藪原検校』05/08-31シアターコクーン
『藪原検校』(Wikipedia)は1973年初演の井上ひさしさんの戯曲です。稀代の大悪党・藪原検校(やぶはらけんぎょう)を古田新太さんが演じ、蜷川幸雄さんが演出されます。
満席で立見席が販売されていますね。初日も立見席のお客様が多数いらっしゃいました。上演時間は約3時間10分(休憩15分を含む)。長かった・・・。
⇒CoRich舞台芸術!『藪原検校』
≪あらすじ≫ 地人会2005年公演サイトより。(役者名)を変更。
舞台は暗闇の中から現れる盲太夫(壤晴彦)の語りによって始まる。
時は享保年間。奥州塩釜の魚売り七兵衛(段田安則)は女房(梅沢昌代)のお産の費用欲しさに行きずりの座頭を殺して金を奪う。しかしその因果か、産み落とされた男の子・杉の市(古田新太)は盲目だった。
杉の市は幼少の頃から師匠の女房お市(田中裕子)に手を出すなど、したい放題のワルだったが、誤って母親を殺してから、主殺し、強盗殺人など悪行三昧を働く。それは、かつて己を残酷に鞭打った社会に復讐し、出世するためだった。
二度の主殺しに成功し、ついに盲人の最高位・検校の地位を得る杉の市。しかし、幸福の絶頂の彼を思わぬ落とし穴が待っていた・・・・。
≪ここまで≫
薄汚れた戸板を敷き詰めて作った壁で三方がすべて塞がれた、茶色い立方体の内部のような美術でした。隣り合う板の隙間から照明の光がもれて、細い線状にステージに落ちます。この光の線がきれいです。そして舞台を横切る何本もの“縄”が決め手の演出でした。
井上ひさし作品おなじみの音楽劇のスタイル。面白い韻を踏んだ日本語がころころとこぼれ出るように歌われる中、“悪行三昧”の主人公のその悪行が順々に行われていきます。
うーん・・・もうね、これはね、どうしようもないんですが、私は2階席からの観劇だったんです。だから臨場感があまり感じられず、達者な役者さんの小技を効かせた演技も充分には味わえず・・・。シアターコクーンはなるべく1階席で観たいですね。
歌詞は面白いと思いましたが、歌はあまりうまくいっているようには見えませんでした。ワンコーラスでいいんじゃないかと思う曲が多数。
あと、これも個人的な好みの問題なんですが、あからさまにひわいなシーンが多すぎて閉口でした。
上手手前に座って、舞台で起こるあらゆることを語って説明してくれちゃう盲太夫役の壤晴彦さん。あのセリフ量、説明量はものすごいです。必死さも伝わってきて応援したくなりました。
オープニングの赤崎郁洋さんのギター演奏が素晴らしかった~!聞き惚れました。あれは拍手したくなりますね。ただ、その前にキーンという高音のノイズ(みたいなの)が長時間鳴ったのはつらかったです。私が苦手なだけだと思います。平気な人は全然気にならないかもしれません。
ここからネタバレします。
ブレヒトの『三文オペラ』も題材になっているんですね。大悪党マクヒスは主人公の杉の市ですし、シーンの前に何が起こるのかを説明するのも、音楽劇なのも同じです。『三文オペラ』はちょうど観たばかりだったので、後半になってからすぐに重なりました。
杉の市は日本橋へと移って名前を酉の市と変え、次には藪原検校になろうとします。でも殺しそこなった女(田中裕子)のせいで、自分の正体は杉の市だってことを思い知らされます。これって歌舞伎に似てるのかな。たしか『もとの黙阿弥』もそうでしたよね
戯曲をご存知の方からお聞きしたところ、縄を使う演出や歌の歌詞などはすべて台本どおりだそうです。蜷川さんは戯曲に忠実な演出家さんなんですよね。縄のことまで書いてあるとは・・・。盲人が大勢出てくる舞台で敢えてバリアフリーでない美術になっているのは、とても効果的だと思いました。でも3時間もあるとちょっと飽きが来ちゃいますよね。戸板がはずれてババーンと屋台崩しがあるんだろうと勝手に期待していたので、そういうのがなくって残念。
最後は杉の市が三段斬り(だっけ?)の刑に処されます。古田新太さんにそっくりの人形が吊るされており、腹を真っ二つに斬られ、そして首を落とされます。こわっ!
私はてっきり古田さんが本当に吊るされていると思っていたんです。だから三段斬りを斬らずに演出してくれるものだと思い、色んな期待して待っていました。だから屋台崩しがあるのだろう思ったんですよね。でも胴体がぼとり!と落ちた時点で人形だったとわかり・・・残念でした。てゆーかあの人形、すごいですね。1階席の人も古田さんご本人だと思ったそうですよ。
≪東京、大阪≫
出演=古田新太/田中裕子/段田安則/六平直政/梅沢昌代/山本龍二/神保共子/松田洋治/景山仁美/壤晴彦 ギター演奏:赤崎郁洋
作:井上ひさし 演出:蜷川幸雄 音楽:宇崎竜童 美術=中越司 照明=原田保 衣裳=前田文子 音響=井上正弘 ファイトコレオグラファー=國井正廣 振付=花柳錦之輔 音楽助手=池上知嘉子 演出助手=井上尊晶/石丸さち子 舞台監督=小林清隆 主催・企画・製作:ホリプロ・Bunkamura
一般発売 2007/2/17(土) S¥9,000 A¥7,500 コクーンシート¥5,000(税込)※未就学児のご入場はご遠慮ください。中2階立見券:¥3,500 2階立見券:中2階立見券が売切れた場合のみ発売・¥3,000 立見券前売発売 2007/5/2(水)~
http://www.bunkamura.co.jp/
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2007年05月07日
新国立劇場演劇研修所1期生 試演会1『音楽劇「三文オペラ」』05/06-08新国立劇場 小劇場
三文オペラ
新国立劇場演劇研修所1期生の初めての試演会に伺ってきました(⇒記事)。いわば研修所自体の公のデビューの日でもあるんですよね。2005年4月の開講前から勝手に注目してきたので、ただの観客なのに超緊張しながらの観劇になりました(苦笑)。上演時間は約3時間弱(休憩15分を含む)。
CoRich舞台芸術!⇒『音楽劇「三文オペラ」』
≪あらすじ≫ 公式サイトより。(役者名)を追加。
19世紀末のロンドン。乞食の元締めのピーチャム(北川響)の娘ポリー(小泉真希)は、盗賊団の首領マクヒス(前田一世)にかどわかされ、両親に黙って結婚してしまう。ピーチャムは、仕返しのためマクヒスをロンドン警視庁に密告するが、その総監ブラウン(古川龍太)はマクヒスとは、かつての戦友で、裏で手を握っていた。そこでピーチャムは智恵を巡らし、ブラウンとマクヒスを追い詰めようとする・・。
≪ここまで≫
新国立劇場の小劇場で生演奏付きで・・・ホントに贅沢!演出の宮田慶子さんをはじめ美術は松井るみさん、衣裳は前田文子さんと、スタッフには新国立劇場の本公演を担当されるようなプロばかりが名を連ねています。これで無料なんですから1観客としては何も文句はありません。この後、今年度中にあと2回の試演会があるそうです。・・・すごい。若い役者さんは迷わず受験すべきでしょう。こんな贅沢な演劇学校は日本ではここだけです(今のところ)。
さて、小劇場をぐんと広く使ったステージでした。縦に長い長方形で、凹型に客席が囲みます。高さは最前列の客席と同じレベルで、正面奥の方に数段登れる階段はありますが、何もない床ががらーんと広がっている感じでした。役者さんは舞台で演技をするとき以外、舞台の周りに置かれたイスに腰掛けて待機するスタイルです。皆さん出ずっぱりってことですね。横側の客席後方に大道具、小道具(机、イス、衣裳など)が置いてあり、使うときだけ客席の通路を通って舞台に持ってきます。大掛かりな美術の転換などはなく、役者さんの力量がより大きく問われる空間だったと思います。
『三文オペラ』はブレヒト作、クルト・ワイル作曲の超有名な音楽劇。ストーリーが深くて面白いし、歌詞も音楽も素敵だし、個人的にとても好きな作品です。私が舞台で観るのはこれが3度目(過去レビュー⇒1、2)。有名なミュージカル俳優が出演しても、新劇の老舗劇団が上演しても満足させてもらえるとは限らない、難易度の高い作品だと思います。だから、若い研修生が発表会で上演するには、『三文オペラ』は少々荷が重かったのではないかしら・・・というのが第一の感想ですね。開幕の時のあの堅さ、驚くほどのガチガチムードでした(笑)。でも作品について新しい発見があったり、登場人物一人一人について深く味わうことができたので、観客としては充分に楽しめました。
演技については、私がよく拝見する20~30代の役者さんと何かが違いました。何なんだろう・・・。声、なんじゃないでしょうか。“澄んでいる”というのだと簡単すぎるんですよね。足の裏がぴったり地面に張り付いていて、存在に疑いがないというか・・・もともとの声以上の声が出ているように見えるんです(「あんなか細い体から、どうしてこんな凄い声が出るんだろう!?」とか)。響きの中に不思議な説得力があって、聞き入ってしまったんだと思います。
アンサンブルがとても良かったですね。2年間、毎日朝から晩まで一緒に学んできた15人ならではのコミュニケーションなのか、あ・うんの呼吸を生む訓練の賜物なのか、私には理由はわかりませんが、役者さんたちは恐る恐る探りあったり、妙な距離を持ったりすることなく、スムーズに関わりあっていました。あの呼吸はなかなか観られないものだと思います。
研修所は歌の専門学校ではないので最初から期待していませんでしたが、歌だけで感動させてくれた役者さんはさすがにいなかったですね。ルーシー役の内田亜希子さんの歌はソロで聞いてみたいなと思いました。
役者さんは皆はつらつとしていて魅力的でしたが、特に印象に残ったのはポリー役の小泉真希さん。大悪党に惚れてしまうお嬢様を無邪気な愛情たっぷりに、大胆に演じてらっしゃいました。長いソロで声が出なくて、はらはらして今にも泣き出しそうになっているように見えたんですが、それさえもすごく愛らしくて目が離せませんでした。何に例えたらいいのかしら・・・不安定でぷるぷるしてて壊れそうで、ものすごく柔らかくて透き通りそうなほど可憐で・・・。甘いプリンみたいな女の子、かな(笑)。
ソロで聞かせてくれたのは娼婦ジェニー役の河合杏奈さん。あんなに細い身体でこんなに太い声が!?
セリフは少ないんですが、娼婦フィクセン役(アイロンがけをしていた女)の高島令子さんは堂々と落ち着きのある存在感で、ただ座っているだけでも目を引きました。どんな役でもできそうな感じ。
マクヒス役の前田一世さんとピーチャム役の北川響さんは、膨大なセリフと歌を担っている大役でした。若い男優さんには大変な仕事だと思います。お二人とも言葉をとても大切にしてらしたので、意味がわかりやすかったです。
オカマの悪党ウォルター役の山本悠一さんが、きびきびした動きと艶の有る声で目を引きました。
警官スミス役(ロバート役も)の窪田壮史さんがアドリブ(おそらく)で笑わせてくださり、メタ芝居的な要素が付加されたように感じられて良かったです。演出にそういう意図はなさそうですが。
ネタバレ感想をアップする予定です。・・・と思ったんですが、曲目のみ追加(2007/10/20)。
【曲目】
「モリタート」
「そのかわりのソング」
「海賊ジェニー」
「大砲ソング」
「愛の歌」
「バルバラソング」(ポリー「ダメ!」)
「人間関係のもろさについて」
「色の道のバラード」(ジェニーとピーチャム夫人)
「ヒモのバラード」
「快適な暮らしのバラード」
「焼きもちデュエット」
「人間は何によって生きるのか?」
「心の努力の足りなさの歌」
「乞食の歌」
「墓穴からの呼びかけ」
「ソロモン・ソング」
「馬に乗る使者の登場」
「モリタート」
“光があたりゃ報われるけど やっぱり俺たちゃ真っ暗みさ”
『三文オペラ』Die Dreigroschenoper by Bertolt Brecht 初演1928年8月、ベルリン・シッフバウアーダム劇場
出演:新国立劇場演劇研修所第1期生15名:内田亜希子(ルーシー)/岡野真那美(ドリー)/河合杏奈(ジェニー)/小泉真希(ポリー)/高島令子(フィクセン)/二木咲子(ピーチャム夫人)/眞中幸子(ベティー)/北川響(ピーチャム)/窪田壮史(ロバート/スミス)/野口俊丞(ジェイコブ)/古河耕史(マティアス)/古川龍太(ブラウン警視総監)/前田一世(マクヒス)/三原秀俊(フィルチ)/山本悠一(ウォルター)
演奏:高良久美子(パーカッション)・中秀仁(サックス、クラリネット)・阿部一樹/木坂麻美(トランペット)・中條純子(ピアノ/キーボード)
作:ベルトルト・ブレヒト 作曲:クルト・ワイル 演出:宮田慶子 音楽監督:久米大作 美術:松井るみ 照明:川口雅弘 音響:福澤裕之 衣裳:前田文子 振付:夏貴陽子 歌唱指導:伊藤和美 衣裳助手:佐野友余 演出:松井美保 小松みどり 演出助手:松森望宏 舞台監督:増田裕幸 稽古ピアノ:中條純子 協力:馬場順子 演劇研修所所長:栗山民也
入場無料(予約制) 受付開始:2007年4月23日~
公式=http://www.nntt.jac.go.jp/season/updata/20000038.html
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2007年05月05日
【お知らせ】5月5日(土)夜にFM西東京「たけがき2」に出演します
FM西東京の演劇情報番組「たけがき2」に出演いたします。毎月第一土曜日のレギュラーです。
今回は青年団『東京ノート』(5/14まで!)についてお話し、5月に観られるお薦めお芝居を3本ご紹介します。
西東京市およびその周辺地域でお聴き頂けます。
5月5日(土)21:30~22:00(の内の約10分間)
FM 84.2MHz
⇒PodCastingあり!放送終了後にアップされます(数日後だったりも)。
⇒アップされました(2007/05/08)。
2007年05月04日
流山児★事務所『楽塾歌劇☆真夏の夜の夢』05/03-06本多劇場
楽塾は流山児祥さんが率いる“平均年齢55歳(48歳から65歳)の女性アマチュア集団”です(パンフレットより)。10周年記念公演なんですね。
『真夏の夜の夢』というと原作はシェイクスピアですが、翻案台本は野田秀樹さん。1992年の作品だそうです。野田さんの言葉をゆっくりと味わうことができました。素敵な脚本だな~。上演時間は約1時間45分。
⇒CoRich舞台芸術!『楽塾歌劇☆真夏の夜の夢』
≪あらすじ≫ 公式サイトより。(役者名)を追加。
創業130年、割烹料理「ハナキン」の娘・ときたまご(小森雅子)は親の決めた許婚の板前デミ(杉山智子)よりライ(高野あっこ)が好き。
恋人たちは富士の麓の「知られざる森」へ駆け落ちしてしまい、デミと彼を慕うそぼろ(いそちゆき)も夜の森へ。
そこには、ご存知パック(川本かず子)をはじめとする妖精たちのほかになぜかメフィストフェレス(桐原三枝)も。
結婚式の余興の稽古をする出入り業者も入り乱れて「真夏の夜の森」はてんやわんやの乱痴気騒ぎ。
≪ここまで≫
パンフレットの流山児祥さんのごあいさつより一部引用⇒「毎週日曜に稽古して半年前から土日稽古、本番の二週間前から夜稽古が始まるという楽塾のスケジュールはこの十年変わってない。楽塾のメンバーは皆、働いている。働きながら年に一度、ゴールデン・ウィークに演劇の公演を行う。」
中高年のアマチュアの女優さん(ヘンな言い方ですが)が元気に走る舞台でした。いわゆる“発表会”のような印象を拭うことが出来ず、中盤までは少々退屈しました。でも言葉を大切に伝えようとしている方が多く、いつもは大声の早口で駆け抜けてしまう野田さんのセリフをしっかり聞くことができたので、終演の時にはじ~んと感動することができました。野田さんというと最近の『オイル』や『ロープ』の印象が強烈なので、こんなに寓話的な戯曲に出会ったのは久しぶりな気がします。私はかなり好きでした。
最初は白いカーテンが殺風景で寂しいなと思いましたが、全面にダイナミックな動画が映写され、派手な演出効果を上げていました。最前列とかよりも舞台から少し離れた席の方が楽しめるんじゃないかしら。
昭和のヒット曲(かな?)の替え歌みたいなのがいっぱい流れて懐かしかったりも。いっぱい踊って歌って走ってらっしゃいました。
そぼろ役のいそちゆきさんが素敵でした。ときたまご役の小森雅子さんもおもちゃの人形みたいで可愛かった。メフィストフェレス役の桐原三枝さんは宝塚歌劇の男役みたいでかっこ良かったです。
ここからネタバレします。
『真夏の夜の夢』、『ファウスト』だけでなく『不思議の国のアリス』の要素も入っていました。結婚式の余興芝居とそぼろ(いそちゆき)が見ていた夢とが重なるのも上手いなと思いました。ひもじくて自分の身体を食べてしまった生き物こそ、メフィストフェレスだったというのも面白いです。
人間が声を出して言えずに飲み込んだ恨みの言葉が、具体的な憎しみとなって表れて森を破戒していきます。憎しみが木を焼くイメージは戦争そのものですよね。
妖精と人間が悪魔(メフィストフェレス)との契約を破棄する度に、森に危害が降りかかります。軽い気持ちで起こした悪事を反省して撤回しようとしても、やったことが消えるわけではありません。でも、「どうやったらこの火は消えるの?自分の命を捧げたら消えるかしら」というそぼろの言葉が、森に雨を降らせる(メフィストフェレスの涙の雨が降る)きっかけになります。映画『もののけ姫』を思い出したりもしました。※セリフは正確ではないです。
ドタバタ喜劇で開幕したかと思いきや、メルヘンな世界から人間と森林(大いなるもの)、戦争の関係を描き、決して楽観的ではないけれど希望も示された作品でした。目に見えるもの、見えないものとの関わりも“木のせい”“気のせい”などの言葉遊びで簡潔に表され、ひとつひとつをじっくり味わえました。野田さんの戯曲ってやっぱりすごいですね。
楽塾創立10周年記念公演
出演=伊藤しずよ、川本かず子、菊池磨菜、桐原三枝、小森雅子、杉山智子、高野あっこ、内藤美津枝、二階堂まり、宮沢智子、めぐろあや、柏倉太郎、木暮拓矢、武田智弘、諏訪創、いそちゆき、柏倉太郎、小暮拓矢、武田智弘、諏訪創
原作:W・シェイクスピア 翻案台本:野田秀樹 演出:流山児祥 音楽:珠水 美術・舞台監督:小林岳朗 照明:ROMI 音響:島猛 振付:竹村絵美 衣裳:鈴木真紀子 映像:浜嶋将裕 舞監補:冨澤力 宣伝美術:山中桃子 制作:米山恭子 主催:流山児★事務所
【発売日】2007/03/03 前売・予約:3000円 当日:3500円 中高生割引:2500円
http://www.ryuzanji.com/
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2007年05月03日
東京ノーヴイ・レパートリーシアター『ワーニャ伯父さん』05/03東京ノーヴイ・レパートリーシアター
エントランス
下北沢駅から徒歩80歩の小さな劇場で、半年以上にわたってレパートリーを発表し続けている東京ノーヴイ・レパートリーシアター。シアターXでの公演のリベンジ(笑)に伺いました。
上演時間は3時間15分(途中15分の休憩を含む)。
CoRich舞台芸術!『ワーニャ伯父さん、他』
≪あらすじ≫ パンフレットより。(役者名)を追加。
退官した教授(稲田栄二)が若い後妻(麻田枝里)を連れて、娘(小関敦子)の住む先妻の田舎へと帰って来た。人生の大半を、死んだ妹の夫である教授の仕送りに捧げてきたワーニャ(菅沢晃)は、教授の実態を知り、驚愕する。そのうえ教授の妻は、以前からあこがれていた女性だった。
≪ここまで≫
はじめて『ワーニャ伯父さん』のことがわかった気がしました。なんとつらくて優しい戯曲なんだと、またチェーホフ作品が好きになりましたね。観に行って本当に良かったです。客席は30席ぐらいかしら。至近距離で贅沢な体験だと思います。ただ、西洋印象派絵画を見ているようだと感じた先日の感想は変わらずでした。
装置も衣裳も本物志向で、役者さんはごく自然にその役柄として舞台で会話をされます。今を生きている日本人であることを手放して、ロシア人であることを目指しているような印象でした。だから話し方は現代日本人っぽくないというか、んー、ちょっと乱暴なたとえになるのですが、外国映画を吹き替えする声優さんの話し言葉に少々似ているようにも思いました。
非常に丁寧に、真心込めてチェーホフの世界を具現化しようとされているように思います。でも、額縁の中にすっぽりはまっていて、客席の方に意識が向けられていないように思いました。敢えてそうされているのでしょう。私は寂しかったし退屈しましたが、それは好みの問題だと思います。
なげやりで自堕落で退廃的な生活の醜さと、質素で勤勉な生活の神々しさが、おのずと対比されるのが素晴らしかったです。状況を説明したり意味を伝えたりせず、戯曲で起こる人間の関係性をそのままストイックに舞台で実演することに集中していらっしゃるから、そんな効果が出たのではないかと思いました。それって演劇の醍醐味ですよね。
ここからネタバレします。
最後の最後まで観て、やっと色んなことがわかった気がしました。教授も妻も、友達の医者(アーストロフ:渡部朋彦)も、誰もが領地から立ち去った後、ワーニャが「(胸が)痛い」と言います。あぁ、私はこの言葉のために3時間待っていたんだなと思いました。ソーニャの「誰かのために働いて、天国でゆっくり休みましょう」という言葉がこんなにすんなり受け入れられるとは、自分のことながら意外でした。前後しますが、ソーニャが父に向かって「思いやりを持ってください」という言葉も、はじめてわかった気がします。※セリフは正確ではありません。
出演=セレブリャーコフ:稲田栄二 エレーナ:麻田枝里 ソーニャ:小関敦子 ヴォイニーツカヤ夫人:西山 友子 ワーニャ伯父さん:菅沢晃 アーストロフ:渡部朋彦 テレーギン:岡崎弘司 マリーナ:山下智寿子 エフィーム:山田高康
演出=レオニード・アニシモフ
前売り3500円 当日3800円 学生2000円 シーズン通し券10,000円
http://www.tokyo-novyi.com/
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ガーディアン・ガーデン『第15回ガーディアン・ガーデン演劇フェスティバル公開二次審査会』05/02吉祥寺シアター
第15回GG公開2次審査
第15回ガーディアン・ガーデン演劇フェスティバル公開二次審査会に行ってまいりました。
超面白かった!!!
2年ぶりの開催で会場がスフィアメックスから吉祥寺シアター(CoRich)へと移り、新しいフェスティバルとして復活した感があります。この審査は何度か拝見していますが(参加もしたことがある・苦笑)、応募が例年の2倍あったそうです。おのずとレベルが高くなったんでしょうね。11個の個性的・刺激的な短編を楽しめました。審査員の方々のコメントもひとつひとつ勉強になりました(2007/05/05更新)。
⇒CoRich舞台芸術!『第15回ガーディアン・ガーデン演劇フェスティバル公開二次審査会』
公開二次審査を通過し、来年の5月に吉祥寺シアター、その後に神戸アートビレッジセンター(CoRich)で公演をするのは下記の3団体!
●ユニット美人
●クリウィムバアニー
●東京デスロック
※選ばれた順
■第1部
・冨士山アネット(東京/演劇パフォーマンス)
3組の男女が、ある会話(セリフ)をそれぞれの方法で表現し、それが同時進行するスタイル。マイクを使って言葉で対話する男女、手だけでその対話を表現する男女、ダンスで表現する男女。手には上から透明の液体が注がれ続け(エッチ目的のやつね)、その手のアップが舞台奥の巨大スクリーンに映写されている。
スタイリッシュ、でした。衣裳がかっこいいです。「一発目から完成度高いなー!」と嬉しい驚きだったんですが、大人しくまとまってしまった感、大。演出家の長谷川寧さんが、SPAC公演出演のため欠席だったのは本当に残念。長谷川さん、面白い人なのに。
●東京デスロック(東京/演劇)
横1列に並んだ若い男女14人が、ただ大笑いする。笑う、笑う、笑う、入り乱れて笑う。それだけ!?と思ったら、舞台奥の巨大スクリーンに文字映像。「ロミオとジュリエット 原作W.シェイクスピア・・・○○死亡、××死亡、△△死亡・・・そして金の像を作って和平」。全身で笑いまくっていた役者が徐々に静止して終幕。
「まさか笑うだけで終わるつもりなの!?」と怖くなって勝手にハラハラしましたが(笑)、字幕で納得。
私の解釈⇒誰もが嘘笑いをして生きる人生。だって笑うしかないぐらい悲惨だから。お互いに笑い合って、それが嘘だってことを知っててもツっこまず、本気で関わらずに、浅く広く付き合って、自分をだまして生きていく。でもそれってつらい。疲れちゃう。だんだんひきつる笑い顔。そのまま老いて、動かなくなる。そうやって必死で生きた人がお墓に入り、像になった。「あなたはがんばって生き抜きましたよ。立派でしたよ」と言う声が聞こえる(ように感じる静寂がある)。
質疑応答で、審査員の方々から細かい質問がいっぱい。「ロミジュリの1幕から5幕までのストーリーを全て追っていて、一人一人に役柄もある。段取りはすべて決まっているので、同じことを繰り返すことは可能」とのこと。多田さんの作品の素晴らしいところは、「誰が何を感じ取ってもいいし、感じ取ったことが正解だ」ということだと私は思っています。それが会場にいた人に伝わらないトークだったように感じて、もったいないと思いました。ひょうひょうとした多田淳之介さんの態度はかっこ良かったです。でも「こんなフェス受けるなよ!」「(君なら)自力で行けるって!」と言っちゃう河原雅彦さん(審査員)の気持ちもわかるなぁ(笑)。⇒多田さんの将来の夢
・男肉 du Soleil(大阪/身体パフォーマンス)
上手にぽっちゃり体型でひげもじゃの男、下手にファー素材のふんどし一丁の男、スーツ姿の男たちが身体を張ったパフォーマンスをして、流行歌の合唱もあり。なぜかレオタード的衣裳で坊主頭の男がいて、殴られキャラ。
・・・苦手、でした。私の好みの問題なんですが、男性の裸って特に必要でない限り観たくないんですよね。頭を叩いたりジャンプしてキックしたりするのも歓迎ではありません。ぽっちゃり体型の方がすごく気になったんですが、ずっと動かなかったんです。そしたら質疑応答で、その方が代表者の池浦さだ夢さんだと判明。審査員もその人が観たかったから受からせたとのこと。もったいなかったですね。
・小指値(東京/舞台)
「フラれた。彼氏の思い出を全部捨てるため、渋谷のハチ公も捨てようとしたんだけど、交番に連れて行かれちゃったから、自分の魂だけをハチ公の中に入れて、空っぽになった自分の身体を抱えて・・・」という女の独白に、男2人が身体表現をプラス。女が去って男2人のポエムのようなセリフの掛け合いから、次は派手なダンス、のようなシンクロナイズド・スイミング?
私はこの作品が一番面白かったです。まず前半の独白部分で会場を作品世界にがっつりと作り上げてくれてました。おしゃれなのかダサイのか、おバカなのかキレてるのか、アタリとハズレの境目がものすごく個性的。選曲がエックスジャパンの「紅」なんて最高でした(笑)。
質疑応答で感じたのは・・・「野放図」っていうことかしら(笑)、良い意味で。才能のあるメンバーが、それぞれの衝動で自由に活動しているようでした。影が動いていく照明装置は所属メンバーの自作だそうで、審査員からわざわざ質問が出るほどのクオリティでした。たしかにあれは素晴らしかった。
■第2部
・company izuru(東京/能楽+音楽+メディアアート)
上手にシンバルなどの打楽器とコンピューター、下手にはチェロ、中央に女流能役者。演奏した音をコンピューターを使って反復演奏(のようなこと)をして、電子音と生演奏が混ざっていきます。そして最後に能の舞。
まず、「わかる人にだけわかればいい」と思って発表しているように感じました。作品の描いている世界に興味を持たせてくれないので、何層も離れた場所から客観的にその場を眺めることになりました。本当に10分だったの?といぶかしく思うぐらい長く感じたのですが、退屈ではなかったです。技術のある(のだと思われる)美しい能役者の女性の、居心地の悪そうな空間が面白かったんですよね。ぶ厚い違和感っていうのかな。わざと生み出されたものだったら良かったんですが。
終わった直後、演出家の結城歓さんが「これでもか!?」と言わんばかりに作品について早口に、論理的に説明し続けました(聞かれてないのに)。その姿にチェルフィッチュを思い出しました。話される内容は作品の補足説明でしたから、「そんなこと言わなくてもいいのにな~」と思いました。でもあの動きや態度の流れは退屈しなかったですね。無音で見てもきっと面白いんじゃないでしょうか。
・CAVA(東京/マイム)
スーツ姿の男3人のパントマイム系ダンス。サラリーマンのオフィスから、家庭へとつながる。会社に行く夫を早く追い出そうとする妻と間男。
んー・・・“水と油”の方が面白いよな~って、ずっと思ったまま終わっちゃいましたね。ある日常の1コマをちょっとコミカルにマイムで描くだけだったので(この作品では)、私は面白みを感じられませんでした。
・ブラジル(東京/ストレートプレイ)
トランクス一丁の男が「財布返せ!」と叫びながら、女を追いかけている。女は逃げ回る。そこに買い物帰りのカップルが居合わせて・・・。
毒々しいほど個性のあるパフォーマンスが続いた後に(笑)まともなストレート・プレイが始まって、ものすごいインパクトでした。この並びは面白かったですね~。
ほぼ全裸の男が若い女を追いかけている時点で、男が変態ストーカーに見えますが、実は女は本当にスリでした。執拗に財布だけでも返して欲しいと言う男。実はその中に結婚指輪が入っていたから・・・などなど、後から後から真実がわかってきます。10分間のいわゆる“イイお話”で、簡潔なセリフできっちり作りこまれた会話劇でした。達者な役者さんが走り回り、ポシェットからタバコが撒き散らされたり、ネギを投げたり、アクシデントっぽい演出も楽しいです。でも、最後のハッピー・エンディングな音楽はちょっと・・・。
質疑応答での堤広志さん(審査員)の発言が面白かったです。「ちげ鍋にはネギよりもニラだと思うんだけど。」
・FUKAI PRODUCE 羽衣(東京/演劇)
完全暗転から開幕。男女のひわいな会話をひそひそと話しながら、客席後方から出演者が通路を歩いてくる。「電気を消して/消さないで」。白塗りに赤や青の鮮やかなメイクをし、古着をアレンジしたような派手な衣裳の役者さんが、ビニール傘を振り回しながら激しく踊って歌う。攻撃的な主張と詩的味わいのあるセリフ・歌詞を叫びながら、わーわー歌って踊る。マイクとギターあり。
最初は「ガーディアン・ガーデン名物、しのぶドン引きチームがとうとう?!(汗)」とおののいたのですが(すみません、私は客を襲うタイプのエロが苦手なので)、とっても魅力的な言葉が耳に入ってきて、「あれ、これはちょっと違うのかも・・・」と見守る姿勢になりました。決して踊りも歌も上手じゃないんだけど、全体の勢いというか色というか、ひとつにまとまった何らかのパワーがあるように感じました。最後のミラーボールの祝祭ムードが良かった。
「心と心でよろしくね」とか「脱いじゃおっかな羽衣」とか、言葉が独特だと思います。なのにほとんど聞こえない・・・。小さなスペースで活動されている分には問題ないのかもしれません。
質疑応答で前身は「劇団劇団」だと聞いて納得。第10回GG二次審査で見てました。“ミョージカル”なんですね。
■第3部
●ユニット美人(京都/演劇)
緑色のブルマを履いた2人の女の、漫才のようなオモロイ10分。“モテたい”ために“痛々しい”ことをやるという流れ。「ブルマあげてこっ!」「ブルマひとつで参りましょう!」
私も関西出身ですので・・・自分を見ているようで、痛かった(爆笑)。ここが1番に受かるとは思わなかったな~。後半のダンスはすっごく可愛くて、応援したい気持ちになりました。神本明子さんはダンスがお上手ですよね。代表者の黒木陽子さんが過去に劇団衛星として審査に参加し、落ちた時のつらさを話された時は懐かしいなと思いました。
・Giant Grammy(大阪/演劇)
ファミレスで1人の女を2人の男が取り合う、軽妙な会話劇。大人の恋愛。
大人の男女のロマンティックな駆け引き・・・みたいなことを狙ってらしたようですが、残念ながら意図どおりに成立していなかったようでした。脚本については、立ち去ることに必然性がなかったり、ご都合主義な面も。
本公演での売りは大掛かりな装置によるアっと驚く仕掛けだそうです。そういう意味ではとても残念なプレゼンテーションでした。関西からの参加ですから、なかなか難しいですよね。開演前に舞台映像が流れていたんですが、本当にすごい装置!これなら是非観てみたいと思いました。
●クリウィムバアニー(大阪/ダンス)
サーモンピンク色のロマンティックなバレエのチュチュを来た若い女の子たちが、時に激しく、時にぐったりと、踊る。2曲。
乙女の可愛さ、残酷さなどがしたたかに織りこまれた、楽しくて少々不気味なダンス。面白かった!ずっと床を後転していく女の子に爆笑しました。だって、みんな踊ってるのにその子だけだらっとしててサ(笑)。構図が面白いですよね。それと選曲が素晴らしい。2曲目は「バラライカ(?)、夢見る少女~云々」とかいう曲だった。
■審査:【票数】(手を挙げた審査員)
【4】ユニット美人(ウニタ、河原、渡辺、坂口)
【3.5】クリウィムバアニー(堤、河原0.5、渡辺、坂口)
【3】東京デスロック(堤、ウニタ、坂口)
【2.5】ブラジル(堤、ウニタ、河原0.5)
【2】小指値(河原、渡辺)
⇒河原さんが勝手に0.5を使ったので(笑)、後から多少変化した。
【4.5】ユニット美人(堤0.5、ウニタ、河原、渡辺、坂口)
【4】クリウィムバアニー(堤、ウニタ0.5、河原0.5、渡辺、坂口)
【3】東京デスロック(堤、ウニタ、坂口)
【2】小指値(河原、渡辺)
【1.5】ブラジル(堤0.5、ウニタ0.5、河原0.5)
⇒ユニット美人とクリウィムバアニーが決定した後、東京デスロック、ブラジル、小指値で争う。
「今回のパフォーマンスのみで評価する(フェスのバランスや過去公演は考慮しない)」という渡辺さんの提案が通り、再投票の結果は下記のとおり。坂口さんが選ばれた3作品がそのまま選ばれました。前回もそうだったんですよね。
【3】東京デスロック(堤、ウニタ、坂口)
【1】小指値(渡辺)
【1】ブラジル(河原)
■観終わった感想
この公開審査は何度か拝見しています。今回はレベルがかなり高いと思いました。「観ていられなくて顔を伏せる」作品が連発することも多々あるのですが(私の好みに合わないだけの話ですが)、今回はそれが非常に少なかったです。
10分間のパフォーマンスって脚本や演技が良くても、プレゼンテーション能力が高くなければ評価につながりにくですね。今回は特に皆さんのレベルが高かったので、演出力が問われたように思います。演出家フェスティバル、みたいですね。
上演中に客席であばれてる(自由に笑ったりしゃべったりしてる)人がいるなぁと思って振り返ったら、決まって小指値の人でした(爆笑)。その度量が作品に表れているんだと思います。
公開二次審査会出場団体<50音順>男肉 du Soleil・company izuru・クリウィムバアニー・小指値・CAVA・Giant Grammy・東京デスロック・FUKAI PRODUCE 羽衣・冨士山アネット・ブラジル・ユニット美人
【審査員】ウニタモミイチ(演劇エッセイスト)、河原雅彦(演出家、脚本家、俳優、HIGHLEG JESUS永久総代)、坂口真人(演劇ぶっく社代表)、堤広志(編集者、演劇・舞踊ジャーナリスト)、渡辺えり子(劇団宇宙堂主宰) <50音順・敬称略>
ガーディアン・ガーデン=http://rcc.recruit.co.jp/gg/index.html
ガーディアン・ガーデン演劇フェスティバル=http://rcc.recruit.co.jp/gg/engeki/engeki.html
記事=http://www.shinobu-review.jp/mt/archives/2007/0414221011.html
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2007年05月02日
青年団若手自主企画 西村企画『Unit』05/01-06アトリエ春風舎
青年団演出部の西村和宏さんの青年団内自主企画。『World's end』に続いて2度目になります。脚本はサラダボールの鈴木大介さん。
チラシの第一印象とはかけ離れた内容だったと思います。色んな深読みができて楽しめました。上演時間は1時間5分です。
⇒CoRich舞台芸術!『Unit』
レビューをアップしました(2007/05/05)。
≪あらすじ≫
ある新興宗教団体の事務所の地下。若い信者がぬる~い雰囲気で修行中。そこに新入りがやってきて・・・。
≪ここまで≫
青年団(とTHE SHAMPOO HAT)の役者さんによるごく自然な演技によって、カルトと呼ばれて世間からバッシングを受ける人々のある日の様子が淡々と描かれます。有名な集団のことを隠喩してることはすぐにわかります。たわいない対話やさらりと起こってしまう出来事の中に、皮肉の効いたユーモアがふんだんに織り込まれていました。爆笑ポイントがけっこうありましたね~。
でも私のように受け取った人って、そんなに多くなかったんじゃないかしら。あの集団のことを描いたパロディだと受け取るだけだと、「なんだ、それだけ?」って感想にならざるを得ないかもしれません。私は前回公演で疑問がいっぱい残っていたため、今回は観る前から懐疑的というか、裏読みをするつもりで伺ったので、運良く最初から楽しめたのだと思います。
「これは何かを暗示・隠喩しているのかも?」と観客がおのずと気づく(ひっかかる)ことになるような、演出的・演技的な工夫がもっと沢山、あからさまにあるといいんじゃないでしょうか。実在した集団のことを自己流に少々アレンジしただけだと受け取られるのはもったいないですよね。
ここからネタバレします。
モデルはオウム真理教でした。時代は地下鉄サリン事件が起こった直後あたり。教団のビルの周りには野次馬も含め、信者を糾弾する人々が集まっています。信者たちはバスに乗って違う土地へと移り住む準備をしており、部屋にはパッキング済みの段ボール箱がたくさん並んでいます。そんな危機的状況にいるにも関わらず、信者たちは呑気です。
あの地下室は地球、国、会社、学校、家など、人間が集まっている場所すべてに当てはまるように思いました。信者は国民とか会社員とか、ある集団の中で活動している人間を表します。
「嘘は破戒(ルール違反)だからね」と言いながら、自分も嘘をつきまくる信者たち。本音と建前もここまであからさまだと笑えます。
何かを街に散布して多くの人を殺したのは、おそらく自分の教団の上部の人間であることがわかってるにも関わらず、信者たちは「そうなのかもね、でも私は知らないし。」とひょうひょうとしています。自国が外国に軍隊を派遣しているのに、自分は戦争なんて知らないし関係ないと思っていること、ありますよね。
登場する女性信者は全員が青山と呼ばれおり、時々誰が誰を呼んでいるのかわからなくなります。でもそのまま放置。最終的に教団内で呼ばれる名前は本名ではないことも判明します。自分の本名を忘れてしまっている人もいました。家柄や学校、会社など、肩書きだけを振りかざして自分自身を見失っている人を表しているように思いました。
今さらなぜか入信を希望してきた女(滝沢恵)の行動がとても荒っぽく、おごそかに見守られる“聖なる火”をサクっと吹き消したのには爆笑しました。全く予想が付かないことが起こるのが、この世の中なんですよね。そんな不測の出来事に対応しようとして(対応しないでいようとして)どたばたする姿が失笑を誘いました。何もかも“金髪の男”のせいにする安直さが最高に可笑しかった。
男の信者が血液型がAB型の人をずっと探していましたが、見つかりません。なんと教祖が刺されて倒れていたというのが後からわかりますが、皆、知らん顔。「AB型の人、いませんか?」とビルの外に出て探しに行き、ボロボロにされて帰ってくる様はおおげさに演出されていました。緑色の服の男(佐藤誠)なんてズボンがビリビリに破れていて、あれには爆笑しましたね。
女性信者(山本裕子)が「人間はいつか必ず死ぬ。だからいつどうやって死んでもそれが運命。誰のせいだとかは関係ない(考える必要がない)。良い転生をするよう祈りましょう。」という意味のことをいけしゃあしゃあと言い切ります。ひどい詭弁ですよね。
出演者=村井まどか、佐藤誠、滝沢恵(THE SHAMPOO HAT)、小林亮子、山本裕子
脚本=鈴木大介(サラダボール)、西村和宏 演出=西村和宏 照明=岩城保 舞台美術=濱崎賢二 舞台監督=畑中友仁 衣装=兼松光 宣伝美術=西村和宏 制作=西村企画 総合プロデューサー=平田オリザ
【発売日】2007/04/01 予約・当日共 全席自由・日時指定1,800円
http://unit07.web.fc2.com/index.html
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2007年05月01日
メルマガ 2007年05月のお薦め舞台

お薦めお芝居をご紹介しています
2007年5月のお薦め舞台10本+αをご紹介します。
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“しのぶの演劇レビュー” Vol. 36 2007.5.1 1,108部 発行
┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏ http://www.shinobu-review.jp/
今、面白い演劇はコレ! 年200本観劇人のお薦め舞台♪
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◎ハナミズキやつつじなど、可愛らしいお花が満開の5月です。
ゴールデン・ウィークのご予定はたてられましたか?
舞台には、あなたの心を揺さぶり、
人生の輝きを増してくれる奇跡があります。
“今から観られる面白い演劇”をご紹介します。
お友達、ご家族、恋人と一緒に、どうぞ劇場を訪れてください♪
◎メルマガのバックナンバー↓は全て公開しています。
http://blog.mag2.com/m/log/0000134861
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○○ 今回のもくじ
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◆1【今月のお薦め10本+α】
◎No.1→新国立劇場/日中共同プロジェクト公演
『下周村(かしゅうそん)-花に嵐のたとえもあるさ』
05/15-20新国立劇場小劇場
http://www.nntt.jac.go.jp/season/updata/10000122.html
◆2【先月のベスト3】
◎No.1→青年団国際演劇交流プロジェクト2007
日仏合同公演『別れの唄』04/05-08シアタートラム
http://www.shinobu-review.jp/mt/archives/2007/0406165534.html
◆3【“CoRich舞台芸術まつり!2007春”開催中!】
◎5月は3作品を鑑賞します。とうとう大詰めです!
◆4【編集後記】
◎新国立劇場演劇『CLEANSKINS/きれいな肌』(公演終了)の
稽古場レポート、作家インタビューを書かせていただきました。
◎5月5日夜にFM西東京『たけがき2』に出演します。
◆5【このメルマガについての注意事項(毎月同じ内容です)】
◎はじめての方はどうぞお読みくださいね♪
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◆1 【今月のお薦め10本+α】
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▽★印がいちおし公演です(3本)。
▽初日の早い順に並べています。
▽掲載内容:主催/冠名・『題名』・日程・会場・価格・URL・コメント
▽座種の記述がない公演は全席指定。
1.TBS/アトリエ・ダンカン『血の婚礼』
05/03-20東京グローブ座
≪東京、長野、富山、大阪、名古屋、広島、福岡≫
☆出演=森山未來/ソニン/浅見れいな/岡田浩暉/新納慎也/尾上紫/
池谷のぶえ/陰山泰/根岸季衣/江波杏子/渡辺香津美
脚本=フェデリコ・ガルシア・ロルカ 台本・演出=白井晃
S席9,000円/A席7,800円/B席6,800円 ※未就学児入場不可
http://www.duncan.co.jp/web/stage/bloodwedding/index.html
白井晃さんがロルカを台本・演出。豪華キャストです。
★2.文学座『ぬけがら』
05/08-17紀伊國屋サザンシアター
☆脚本=佃典彦 演出=松本祐子
一般5,500円 ユース3,800円 中・高校生2,500円
※ユース(25歳以下)、中・高校生は劇団扱いのみ
http://www.bungakuza.com/nukegara07/index.html
第50回岸田國士戯曲賞受賞作品の再演。
演出の松本祐子さんが初演で第8回千田是也賞を受賞。
3.Bunkamura『藪原検校(やぶはらけんぎょう)』
05/08-31シアターコクーン
≪東京、大阪≫
☆出演=古田新太/田中裕子/段田安則/壤晴彦/ほか
作:井上ひさし 演出:蜷川幸雄 音楽:宇崎竜童
S¥9,000 A¥7,500 コクーンシート¥5,000
※未就学児の入場不可。立見券前売発売 5/2(水)~
http://www.bunkamura.co.jp/shokai/cocoon/lineup/shosai_07_yabu.html
井上ひさしさんの脚本を蜷川幸雄さんが演出。豪華キャストです。
4.ナイロン100℃『犬は鎖につなぐべからず』
05/10-06/03青山円形劇場
~岸田國士一幕劇コレクション~
☆出演=ナイロン100℃劇団員+豪華客演陣
脚本=岸田國士 潤色・構成・演出=ケラリーノ・サンドロヴィッチ
前売¥6,000 当日¥6,500
http://www.sillywalk.com/nylon/
ナイロン100℃メンバーが揃った本公演。
岸田國士戯曲の短編をまとめて群像劇にされるそうです。
※全ステージ追加席を販売中!
★5.大人計画『ドブの輝き』
05/10-06/03本多劇場
☆出演=阿部サダヲ、宮藤官九郎、松尾スズキ、ほか大人計画劇団員
作・演出:松尾スズキ 宮藤官九郎
前売5800円 当日6000円 ※未就学児童の入場不可
http://www9.big.or.jp/~otona/page003.html
大人計画の本公演。大人気になってもお値段据え置きの素晴らしさ。
6.世田谷パブリックシアター『死のバリエーション』
05/11-27シアタートラム
≪東京、山口、兵庫、高知≫
☆出演=長塚京三、高橋惠子、瀬川亮、伊勢佳世、笠木誠、杵鞭麻衣
脚本=ヨン・フォッセ 演出・照明=アントワーヌ・コーベ
全席指定 一般6,000円、TSSS 3,000円
その他割引あり ※未就学児童は入場不可。
http://setagaya-pt.jp/
アントワーヌ・コーベさんが永井愛さんの戯曲を演出された
『見よ、飛行機の高く飛べるを』は傑作でした。
http://www.shinobu-review.jp/mt/archives/2004/1102010428.html
7.パルコ『魔法の万年筆』
05/12-06/12パルコ劇場
≪東京、大阪≫
☆出演=稲垣吾郎、西牟田恵、三鴨絵里子、久世星佳、山崎一、
阿南健治、小林隆、河原雅彦
脚本・演出=鈴木聡(ラッパ屋)
8,400円
http://www.parco-play.com/web/page/information/maho/
SMAP稲垣吾郎さんが出演。鈴木聡さんの脚本・演出です。
★8.新国立劇場/日中共同プロジェクト公演
『下周村(かしゅうそん)-花に嵐のたとえもあるさ』
05/15-20新国立劇場小劇場
≪香港、北京、日本≫
☆脚本=平田オリザ、李六乙 演出=李六乙、平田オリザ
A席4,200円 B席3,150円 Z席1,500円 当日学生券=50%割引
http://www.nntt.jac.go.jp/season/updata/10000122.html
新国立劇場の日中共同プロジェクト。
●お薦めポイント●
新国立劇場で上演された平田オリザさんの国際共同製作というと、
『その河をこえて、五月』ですよね。
http://www.shinobu-review.jp/mt/archives/2005/0527015924.html
日本・中国の両国からキャスト・スタッフが集った今品も必見でしょう。
中国公演での舞台写真↓
http://www.nntt.jac.go.jp/release/updata/20000114.html
9.G2プロデュース&三鷹市芸術文化センター『ツグノフの森』
05/18-06/03三鷹市芸術文化センター星のホール
≪伊丹、東京、福岡≫
☆出演=片桐仁、坂田聡、福田転球、杉浦理史、権藤昌弘、
水野顕子、岩橋道子、久ヶ沢徹
脚本・演出=G2
前売4,500円 当日5,000円
http://www.g2produce.com/other/tgnf/
G2さんが作・演出される小劇場的豪華キャスト公演。
10.新国立劇場『夏の夜の夢』
05/31-06/17新国立劇場 中劇場
☆出演=村井国夫、麻実れい、チョウソンハ、細見大輔、
石母田史朗、小山萌子、宮菜穂子、ほか
作:W.シェイクスピア 翻訳:松岡和子 演出:ジョン・ケアード
S席6,300円 A席5,250円 B席3,150円 Z席1,500円 当日学生=50%割引
http://www.nntt.jac.go.jp/season/updata/10000124.html
新国立劇場が贈る豪華キャストのシェイクスピア。
演出は『レ・ミゼラブル』などを手がけるジョン・ケアードさん。
★★★――――――――――――――――――――――――――――――
前売2500円以上・4000円未満のお薦め作品を5本ご紹介します。
――――――――――――――――――――――――――――――★★★
○ヨーロッパ企画が下北沢で同時多発公演!
「ヨーロッパ企画2007年春ツアー ~バック・トゥ・2000シリーズ~」
≪大阪、東京≫
『苦悩のピラミッダー』05/03-14駅前劇場
『冬のユリゲラー』05/05-15ザ・スズナリ
作・演出=上田誠
前売3,000円 当日3,300円 ※未就学児入場不可
http://www.europe-kikaku.com/projects/e22_24/bt2000main.htm
駅前劇場とザ・スズナリで、ヨーロッパ企画をはしごできます。
○ONEOR8 B面公演『COLT GOVERNMENTS(コルトガバメンツ)』
05/19、05/23-27イマジンスタジオ
☆出演=恩田隆一、冨塚智、野本光一郎、平野圭(ONEOR8劇団員)
作・演出=田村孝裕
前売3.000円 当日3.500円 日時指定・整理番号付き自由席
http://www.mh-fujiga.com/oneor8/
※5/19(土)プレビュー公演はライター招待DAY!
http://my.formman.com/form/pc/1lcCUiBycmTnfb7M/
○燐光群『「放埒の人」はなぜ「花嫁の指輪」に改題されたか
あるいはなぜ私は引っ越しのさい沢野ひとしの本を見失ったか』
05/20-06/17 SPACE雑遊
≪東京、仙台、盛岡、名古屋、大阪≫
☆原作=沢野ひとし 作・演出=坂手洋二 美術・衣裳=伊藤雅子
前売¥3,300 当日¥3,600 ペア¥6,000(予約・前売のみ)
大学・専門学校生¥3,000 高校生以下¥2,000
http://www.alles.or.jp/~rinkogun/houratsunohito.html
○ハイバイ『おねがい放課後』
05/24-06/03こまばアゴラ劇場
☆出演=志賀廣太郎、ほか
脚本・演出=岩井秀人
5/24~5/28は前売り2500円、当日3000円
5/30~6/3は前売り3000円、当日3500円
http://hi-bye.hp.infoseek.co.jp/
○シベリア少女鉄道『永遠かもしれない』
05/26-06/03シアターグリーンBIG TREE THEATER
☆作・演出/土屋亮一
前売3,500円 当日3,800円 若者割引(25歳以下限定)前売2,800円
http://www.siberia.jp/
◎しのぶの今月の全予定(30本+α)はSCHEDULEに掲載しています。
http://www.shinobu-review.jp/schedule.html
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◆2 【先月のベスト3】
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1.青年団国際演劇交流プロジェクト2007
日仏合同公演『別れの唄』04/05-08シアタートラム
☆演劇人が国際的に活動・交流することの意味と成果を、
小さな空間で直に体験できました。
http://www.shinobu-review.jp/mt/archives/2007/0406165534.html
2.新国立劇場演劇『CLEANSKINS/きれいな肌』
04/18-28新国立劇場小劇場
☆パキスタン系イギリス人のシャン・カーンさんの書き下ろし戯曲。
3人の日本人出演者のきめ細やかな演技に何度も涙しました。
『別れの唄』と同様に、世界とつながる演劇の強さを実感できました。
http://www.shinobu-review.jp/mt/archives/2007/0419014541.html
3.風琴工房『紅(べに)の舞う丘』
04/04-11ザ・スズナリ
☆正しいこと、本当のことを求める人間の善意を堂々と肯定し、私を
勇気付けてくれました。コミカルな人物像にも愛を感じました。
http://www.shinobu-review.jp/mt/archives/2007/0406143821.html
◎メルマガのバックナンバーはこちら↓で全て公開中!
http://backno.mag2.com/reader/Back?id=0000134861
メルマガ号外は誰が観ても楽しめそうなものを選んで発行しています。
2007年4月(観劇数22作品)は残念ながら発行しませんでした。
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◆3 【“CoRich舞台芸術まつり!2007春”開催中!】
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◎グランプリ受賞団体に次回公演費用として100万円が支援される
“CoRich舞台芸術まつり!2007春”の審査員になりました。
http://stage.corich.jp/html/fes_result.html
ネット審査で選ばれた10作品を3月から5月にかけて鑑賞します。
≪既に鑑賞した公演≫
□NEVER LOSE『廃校/366.0【後日譚】』
http://stage.corich.jp/stage_detail.php?stage_main_id=701
07/18-22に東京公演あり!
□スロウライダー『Adam:ski』
http://stage.corich.jp/stage_detail.php?stage_id=1053
□KUDAN Project『美藝公(びげいこう)』
http://stage.corich.jp/stage_detail.php?stage_id=624
□ニットキャップシアター『お彼岸の魚』
03/30-04/01駅前劇場
≪大阪、東京、愛知、福岡≫
http://stage.corich.jp/stage_detail.php?stage_main_id=68
□劇団SKグループ『桜襲~さくらがさね~』
04/05-08シアターグリーン BIG TREE THEATER
≪東京、札幌≫
http://stage.corich.jp/stage_detail.php?stage_main_id=783
□風琴工房『紅(べに)の舞う丘』
04/04-11ザ・スズナリ
http://stage.corich.jp/stage_detail.php?stage_id=575
□時間堂『ピンポン、のような』
04/26-30王子小劇場
http://stage.corich.jp/stage_detail.php?stage_id=1255
≪5月に鑑賞する公演≫
■ハイバイ『おねがい放課後』
05/24-06/03こまばアゴラ劇場
http://stage.corich.jp/stage_detail.php?stage_id=1175
■快飛行家スミス『月の船』
05/13-06/05 KAWAGUCHI ART FACTORY
http://stage.corich.jp/stage_detail.php?stage_id=1035
■SUPER★GRAPPLER『西遊記~Psych-you-kick~』
05/31-06/03新宿シアターモリエール
http://stage.corich.jp/stage_detail.php?stage_id=1050
観に行かれた方は、ぜひ感想をクチコミしてください!
クロスレビューが実現すれば、ますます観劇が面白くなると思います♪
CoRich舞台芸術! ⇒ http://stage.corich.jp/
メンバー登録 ⇒ http://www.corich.jp/stage/user_register.php
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◆4 【編集後記】
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◎新国立劇場公演の稽古場レポートとインタビューを執筆しました。
『CLEANSKINS(クリーンスキンズ)/きれいな肌』(公演終了)
http://www.shinobu-review.jp/mt/archives/2007/0426112801.html
◎しのぶのゴールデン・ウィークのお楽しみはコレ♪
・『第15回ガーディアン・ガーデン演劇フェスティバル』
05/02吉祥寺シアター
公開二次審査会に出場するのは11団体です。
http://rcc.recruit.co.jp/gg/engeki/engeki.html
・新国立劇場演劇研修所1期生 試演会1『音楽劇「三文オペラ」』
05/06-08新国立劇場小劇場
出演:新国立劇場演劇研修所第1期生15名
作:ベルトルト・ブレヒト 作曲:クルト・ワイル 演出:宮田慶子
http://www.nntt.jac.go.jp/season/updata/20000038.html
◎5月5日夜にFM西東京『たけがき2』に出演します。
http://takegaki.k-free.net/
※PodCastingが始まっています↓
http://www.voiceblog.jp/takegaki842/
◎「CoRich(こりっち)舞台芸術!」で
いつ、どこで、何が上演されているのかを簡単検索!
感想も書き込めますよ♪
http://stage.corich.jp/
メンバー登録はこちら↓
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携帯サイトもあります⇒ http://corich.jp/m/s
◎地方新聞に掲載される新作邦画DVDの紹介記事を書いています。
2007年4月は下記の4作品を拝見しました。
・「木更津キャッツアイ ワールドシリーズ」←泣けた
http://www.tbs.co.jp/catseye/
・「気球クラブ、その後」
http://www.kikyuclub.com/
・「ウール100%」←詩情あふれる映像が渋いです。
http://www.klockworx.com/wool/
・「暗いところで待ち合わせ」←恋愛映画みたいで実はサスペンス
http://www.kuraitokorode.com/
◎新聞・雑誌などに執筆する仕事をしています↓
http://www.shinobu-review.jp/mt/archives/2006/0331235959.html
お仕事のご依頼はこちらへ↓お気軽にどうぞ♪
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◎「劇場に足を運ぶことが、日本人の習慣になって欲しい」
それが私の望みです。
これからもこつこつ、地道に進んで行きたいと思っております。
皆様、どうぞよろしくお願いいたします♪
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