第15回ガーディアン・ガーデン演劇フェスティバル公開二次審査会に行ってまいりました。
超面白かった!!!
2年ぶりの開催で会場がスフィアメックスから吉祥寺シアター(CoRich)へと移り、新しいフェスティバルとして復活した感があります。この審査は何度か拝見していますが(参加もしたことがある・苦笑)、応募が例年の2倍あったそうです。おのずとレベルが高くなったんでしょうね。11個の個性的・刺激的な短編を楽しめました。審査員の方々のコメントもひとつひとつ勉強になりました(2007/05/05更新)。
⇒CoRich舞台芸術!『第15回ガーディアン・ガーデン演劇フェスティバル公開二次審査会』
公開二次審査を通過し、来年の5月に吉祥寺シアター、その後に神戸アートビレッジセンター(CoRich)で公演をするのは下記の3団体!
●ユニット美人
●クリウィムバアニー
●東京デスロック
※選ばれた順
■第1部
・冨士山アネット(東京/演劇パフォーマンス)
3組の男女が、ある会話(セリフ)をそれぞれの方法で表現し、それが同時進行するスタイル。マイクを使って言葉で対話する男女、手だけでその対話を表現する男女、ダンスで表現する男女。手には上から透明の液体が注がれ続け(エッチ目的のやつね)、その手のアップが舞台奥の巨大スクリーンに映写されている。
スタイリッシュ、でした。衣裳がかっこいいです。「一発目から完成度高いなー!」と嬉しい驚きだったんですが、大人しくまとまってしまった感、大。演出家の長谷川寧さんが、SPAC公演出演のため欠席だったのは本当に残念。長谷川さん、面白い人なのに。
●東京デスロック(東京/演劇)
横1列に並んだ若い男女14人が、ただ大笑いする。笑う、笑う、笑う、入り乱れて笑う。それだけ!?と思ったら、舞台奥の巨大スクリーンに文字映像。「ロミオとジュリエット 原作W.シェイクスピア・・・○○死亡、××死亡、△△死亡・・・そして金の像を作って和平」。全身で笑いまくっていた役者が徐々に静止して終幕。
「まさか笑うだけで終わるつもりなの!?」と怖くなって勝手にハラハラしましたが(笑)、字幕で納得。
私の解釈⇒誰もが嘘笑いをして生きる人生。だって笑うしかないぐらい悲惨だから。お互いに笑い合って、それが嘘だってことを知っててもツっこまず、本気で関わらずに、浅く広く付き合って、自分をだまして生きていく。でもそれってつらい。疲れちゃう。だんだんひきつる笑い顔。そのまま老いて、動かなくなる。そうやって必死で生きた人がお墓に入り、像になった。「あなたはがんばって生き抜きましたよ。立派でしたよ」と言う声が聞こえる(ように感じる静寂がある)。
質疑応答で、審査員の方々から細かい質問がいっぱい。「ロミジュリの1幕から5幕までのストーリーを全て追っていて、一人一人に役柄もある。段取りはすべて決まっているので、同じことを繰り返すことは可能」とのこと。多田さんの作品の素晴らしいところは、「誰が何を感じ取ってもいいし、感じ取ったことが正解だ」ということだと私は思っています。それが会場にいた人に伝わらないトークだったように感じて、もったいないと思いました。ひょうひょうとした多田淳之介さんの態度はかっこ良かったです。でも「こんなフェス受けるなよ!」「(君なら)自力で行けるって!」と言っちゃう河原雅彦さん(審査員)の気持ちもわかるなぁ(笑)。⇒多田さんの将来の夢
・男肉 du Soleil(大阪/身体パフォーマンス)
上手にぽっちゃり体型でひげもじゃの男、下手にファー素材のふんどし一丁の男、スーツ姿の男たちが身体を張ったパフォーマンスをして、流行歌の合唱もあり。なぜかレオタード的衣裳で坊主頭の男がいて、殴られキャラ。
・・・苦手、でした。私の好みの問題なんですが、男性の裸って特に必要でない限り観たくないんですよね。頭を叩いたりジャンプしてキックしたりするのも歓迎ではありません。ぽっちゃり体型の方がすごく気になったんですが、ずっと動かなかったんです。そしたら質疑応答で、その方が代表者の池浦さだ夢さんだと判明。審査員もその人が観たかったから受からせたとのこと。もったいなかったですね。
・小指値(東京/舞台)
「フラれた。彼氏の思い出を全部捨てるため、渋谷のハチ公も捨てようとしたんだけど、交番に連れて行かれちゃったから、自分の魂だけをハチ公の中に入れて、空っぽになった自分の身体を抱えて・・・」という女の独白に、男2人が身体表現をプラス。女が去って男2人のポエムのようなセリフの掛け合いから、次は派手なダンス、のようなシンクロナイズド・スイミング?
私はこの作品が一番面白かったです。まず前半の独白部分で会場を作品世界にがっつりと作り上げてくれてました。おしゃれなのかダサイのか、おバカなのかキレてるのか、アタリとハズレの境目がものすごく個性的。選曲がエックスジャパンの「紅」なんて最高でした(笑)。
質疑応答で感じたのは・・・「野放図」っていうことかしら(笑)、良い意味で。才能のあるメンバーが、それぞれの衝動で自由に活動しているようでした。影が動いていく照明装置は所属メンバーの自作だそうで、審査員からわざわざ質問が出るほどのクオリティでした。たしかにあれは素晴らしかった。
■第2部
・company izuru(東京/能楽+音楽+メディアアート)
上手にシンバルなどの打楽器とコンピューター、下手にはチェロ、中央に女流能役者。演奏した音をコンピューターを使って反復演奏(のようなこと)をして、電子音と生演奏が混ざっていきます。そして最後に能の舞。
まず、「わかる人にだけわかればいい」と思って発表しているように感じました。作品の描いている世界に興味を持たせてくれないので、何層も離れた場所から客観的にその場を眺めることになりました。本当に10分だったの?といぶかしく思うぐらい長く感じたのですが、退屈ではなかったです。技術のある(のだと思われる)美しい能役者の女性の、居心地の悪そうな空間が面白かったんですよね。ぶ厚い違和感っていうのかな。わざと生み出されたものだったら良かったんですが。
終わった直後、演出家の結城歓さんが「これでもか!?」と言わんばかりに作品について早口に、論理的に説明し続けました(聞かれてないのに)。その姿にチェルフィッチュを思い出しました。話される内容は作品の補足説明でしたから、「そんなこと言わなくてもいいのにな~」と思いました。でもあの動きや態度の流れは退屈しなかったですね。無音で見てもきっと面白いんじゃないでしょうか。
・CAVA(東京/マイム)
スーツ姿の男3人のパントマイム系ダンス。サラリーマンのオフィスから、家庭へとつながる。会社に行く夫を早く追い出そうとする妻と間男。
んー・・・“水と油”の方が面白いよな~って、ずっと思ったまま終わっちゃいましたね。ある日常の1コマをちょっとコミカルにマイムで描くだけだったので(この作品では)、私は面白みを感じられませんでした。
・ブラジル(東京/ストレートプレイ)
トランクス一丁の男が「財布返せ!」と叫びながら、女を追いかけている。女は逃げ回る。そこに買い物帰りのカップルが居合わせて・・・。
毒々しいほど個性のあるパフォーマンスが続いた後に(笑)まともなストレート・プレイが始まって、ものすごいインパクトでした。この並びは面白かったですね~。
ほぼ全裸の男が若い女を追いかけている時点で、男が変態ストーカーに見えますが、実は女は本当にスリでした。執拗に財布だけでも返して欲しいと言う男。実はその中に結婚指輪が入っていたから・・・などなど、後から後から真実がわかってきます。10分間のいわゆる“イイお話”で、簡潔なセリフできっちり作りこまれた会話劇でした。達者な役者さんが走り回り、ポシェットからタバコが撒き散らされたり、ネギを投げたり、アクシデントっぽい演出も楽しいです。でも、最後のハッピー・エンディングな音楽はちょっと・・・。
質疑応答での堤広志さん(審査員)の発言が面白かったです。「ちげ鍋にはネギよりもニラだと思うんだけど。」
・FUKAI PRODUCE 羽衣(東京/演劇)
完全暗転から開幕。男女のひわいな会話をひそひそと話しながら、客席後方から出演者が通路を歩いてくる。「電気を消して/消さないで」。白塗りに赤や青の鮮やかなメイクをし、古着をアレンジしたような派手な衣裳の役者さんが、ビニール傘を振り回しながら激しく踊って歌う。攻撃的な主張と詩的味わいのあるセリフ・歌詞を叫びながら、わーわー歌って踊る。マイクとギターあり。
最初は「ガーディアン・ガーデン名物、しのぶドン引きチームがとうとう?!(汗)」とおののいたのですが(すみません、私は客を襲うタイプのエロが苦手なので)、とっても魅力的な言葉が耳に入ってきて、「あれ、これはちょっと違うのかも・・・」と見守る姿勢になりました。決して踊りも歌も上手じゃないんだけど、全体の勢いというか色というか、ひとつにまとまった何らかのパワーがあるように感じました。最後のミラーボールの祝祭ムードが良かった。
「心と心でよろしくね」とか「脱いじゃおっかな羽衣」とか、言葉が独特だと思います。なのにほとんど聞こえない・・・。小さなスペースで活動されている分には問題ないのかもしれません。
質疑応答で前身は「劇団劇団」だと聞いて納得。第10回GG二次審査で見てました。“ミョージカル”なんですね。
■第3部
●ユニット美人(京都/演劇)
緑色のブルマを履いた2人の女の、漫才のようなオモロイ10分。“モテたい”ために“痛々しい”ことをやるという流れ。「ブルマあげてこっ!」「ブルマひとつで参りましょう!」
私も関西出身ですので・・・自分を見ているようで、痛かった(爆笑)。ここが1番に受かるとは思わなかったな~。後半のダンスはすっごく可愛くて、応援したい気持ちになりました。神本明子さんはダンスがお上手ですよね。代表者の黒木陽子さんが過去に劇団衛星として審査に参加し、落ちた時のつらさを話された時は懐かしいなと思いました。
・Giant Grammy(大阪/演劇)
ファミレスで1人の女を2人の男が取り合う、軽妙な会話劇。大人の恋愛。
大人の男女のロマンティックな駆け引き・・・みたいなことを狙ってらしたようですが、残念ながら意図どおりに成立していなかったようでした。脚本については、立ち去ることに必然性がなかったり、ご都合主義な面も。
本公演での売りは大掛かりな装置によるアっと驚く仕掛けだそうです。そういう意味ではとても残念なプレゼンテーションでした。関西からの参加ですから、なかなか難しいですよね。開演前に舞台映像が流れていたんですが、本当にすごい装置!これなら是非観てみたいと思いました。
●クリウィムバアニー(大阪/ダンス)
サーモンピンク色のロマンティックなバレエのチュチュを来た若い女の子たちが、時に激しく、時にぐったりと、踊る。2曲。
乙女の可愛さ、残酷さなどがしたたかに織りこまれた、楽しくて少々不気味なダンス。面白かった!ずっと床を後転していく女の子に爆笑しました。だって、みんな踊ってるのにその子だけだらっとしててサ(笑)。構図が面白いですよね。それと選曲が素晴らしい。2曲目は「バラライカ(?)、夢見る少女~云々」とかいう曲だった。
■審査:【票数】(手を挙げた審査員)
【4】ユニット美人(ウニタ、河原、渡辺、坂口)
【3.5】クリウィムバアニー(堤、河原0.5、渡辺、坂口)
【3】東京デスロック(堤、ウニタ、坂口)
【2.5】ブラジル(堤、ウニタ、河原0.5)
【2】小指値(河原、渡辺)
⇒河原さんが勝手に0.5を使ったので(笑)、後から多少変化した。
【4.5】ユニット美人(堤0.5、ウニタ、河原、渡辺、坂口)
【4】クリウィムバアニー(堤、ウニタ0.5、河原0.5、渡辺、坂口)
【3】東京デスロック(堤、ウニタ、坂口)
【2】小指値(河原、渡辺)
【1.5】ブラジル(堤0.5、ウニタ0.5、河原0.5)
⇒ユニット美人とクリウィムバアニーが決定した後、東京デスロック、ブラジル、小指値で争う。
「今回のパフォーマンスのみで評価する(フェスのバランスや過去公演は考慮しない)」という渡辺さんの提案が通り、再投票の結果は下記のとおり。坂口さんが選ばれた3作品がそのまま選ばれました。前回もそうだったんですよね。
【3】東京デスロック(堤、ウニタ、坂口)
【1】小指値(渡辺)
【1】ブラジル(河原)
■観終わった感想
この公開審査は何度か拝見しています。今回はレベルがかなり高いと思いました。「観ていられなくて顔を伏せる」作品が連発することも多々あるのですが(私の好みに合わないだけの話ですが)、今回はそれが非常に少なかったです。
10分間のパフォーマンスって脚本や演技が良くても、プレゼンテーション能力が高くなければ評価につながりにくですね。今回は特に皆さんのレベルが高かったので、演出力が問われたように思います。演出家フェスティバル、みたいですね。
上演中に客席であばれてる(自由に笑ったりしゃべったりしてる)人がいるなぁと思って振り返ったら、決まって小指値の人でした(爆笑)。その度量が作品に表れているんだと思います。
公開二次審査会出場団体<50音順>男肉 du Soleil・company izuru・クリウィムバアニー・小指値・CAVA・Giant Grammy・東京デスロック・FUKAI PRODUCE 羽衣・冨士山アネット・ブラジル・ユニット美人
【審査員】ウニタモミイチ(演劇エッセイスト)、河原雅彦(演出家、脚本家、俳優、HIGHLEG JESUS永久総代)、坂口真人(演劇ぶっく社代表)、堤広志(編集者、演劇・舞踊ジャーナリスト)、渡辺えり子(劇団宇宙堂主宰) <50音順・敬称略>
ガーディアン・ガーデン=http://rcc.recruit.co.jp/gg/index.html
ガーディアン・ガーデン演劇フェスティバル=http://rcc.recruit.co.jp/gg/engeki/engeki.html
記事=http://www.shinobu-review.jp/mt/archives/2007/0414221011.html
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