『藪原検校』(Wikipedia)は1973年初演の井上ひさしさんの戯曲です。稀代の大悪党・藪原検校(やぶはらけんぎょう)を古田新太さんが演じ、蜷川幸雄さんが演出されます。
満席で立見席が販売されていますね。初日も立見席のお客様が多数いらっしゃいました。上演時間は約3時間10分(休憩15分を含む)。長かった・・・。
⇒CoRich舞台芸術!『藪原検校』
≪あらすじ≫ 地人会2005年公演サイトより。(役者名)を変更。
舞台は暗闇の中から現れる盲太夫(壤晴彦)の語りによって始まる。
時は享保年間。奥州塩釜の魚売り七兵衛(段田安則)は女房(梅沢昌代)のお産の費用欲しさに行きずりの座頭を殺して金を奪う。しかしその因果か、産み落とされた男の子・杉の市(古田新太)は盲目だった。
杉の市は幼少の頃から師匠の女房お市(田中裕子)に手を出すなど、したい放題のワルだったが、誤って母親を殺してから、主殺し、強盗殺人など悪行三昧を働く。それは、かつて己を残酷に鞭打った社会に復讐し、出世するためだった。
二度の主殺しに成功し、ついに盲人の最高位・検校の地位を得る杉の市。しかし、幸福の絶頂の彼を思わぬ落とし穴が待っていた・・・・。
≪ここまで≫
薄汚れた戸板を敷き詰めて作った壁で三方がすべて塞がれた、茶色い立方体の内部のような美術でした。隣り合う板の隙間から照明の光がもれて、細い線状にステージに落ちます。この光の線がきれいです。そして舞台を横切る何本もの“縄”が決め手の演出でした。
井上ひさし作品おなじみの音楽劇のスタイル。面白い韻を踏んだ日本語がころころとこぼれ出るように歌われる中、“悪行三昧”の主人公のその悪行が順々に行われていきます。
うーん・・・もうね、これはね、どうしようもないんですが、私は2階席からの観劇だったんです。だから臨場感があまり感じられず、達者な役者さんの小技を効かせた演技も充分には味わえず・・・。シアターコクーンはなるべく1階席で観たいですね。
歌詞は面白いと思いましたが、歌はあまりうまくいっているようには見えませんでした。ワンコーラスでいいんじゃないかと思う曲が多数。
あと、これも個人的な好みの問題なんですが、あからさまにひわいなシーンが多すぎて閉口でした。
上手手前に座って、舞台で起こるあらゆることを語って説明してくれちゃう盲太夫役の壤晴彦さん。あのセリフ量、説明量はものすごいです。必死さも伝わってきて応援したくなりました。
オープニングの赤崎郁洋さんのギター演奏が素晴らしかった~!聞き惚れました。あれは拍手したくなりますね。ただ、その前にキーンという高音のノイズ(みたいなの)が長時間鳴ったのはつらかったです。私が苦手なだけだと思います。平気な人は全然気にならないかもしれません。
ここからネタバレします。
ブレヒトの『三文オペラ』も題材になっているんですね。大悪党マクヒスは主人公の杉の市ですし、シーンの前に何が起こるのかを説明するのも、音楽劇なのも同じです。『三文オペラ』はちょうど観たばかりだったので、後半になってからすぐに重なりました。
杉の市は日本橋へと移って名前を酉の市と変え、次には藪原検校になろうとします。でも殺しそこなった女(田中裕子)のせいで、自分の正体は杉の市だってことを思い知らされます。これって歌舞伎に似てるのかな。たしか『もとの黙阿弥』もそうでしたよね
戯曲をご存知の方からお聞きしたところ、縄を使う演出や歌の歌詞などはすべて台本どおりだそうです。蜷川さんは戯曲に忠実な演出家さんなんですよね。縄のことまで書いてあるとは・・・。盲人が大勢出てくる舞台で敢えてバリアフリーでない美術になっているのは、とても効果的だと思いました。でも3時間もあるとちょっと飽きが来ちゃいますよね。戸板がはずれてババーンと屋台崩しがあるんだろうと勝手に期待していたので、そういうのがなくって残念。
最後は杉の市が三段斬り(だっけ?)の刑に処されます。古田新太さんにそっくりの人形が吊るされており、腹を真っ二つに斬られ、そして首を落とされます。こわっ!
私はてっきり古田さんが本当に吊るされていると思っていたんです。だから三段斬りを斬らずに演出してくれるものだと思い、色んな期待して待っていました。だから屋台崩しがあるのだろう思ったんですよね。でも胴体がぼとり!と落ちた時点で人形だったとわかり・・・残念でした。てゆーかあの人形、すごいですね。1階席の人も古田さんご本人だと思ったそうですよ。
≪東京、大阪≫
出演=古田新太/田中裕子/段田安則/六平直政/梅沢昌代/山本龍二/神保共子/松田洋治/景山仁美/壤晴彦 ギター演奏:赤崎郁洋
作:井上ひさし 演出:蜷川幸雄 音楽:宇崎竜童 美術=中越司 照明=原田保 衣裳=前田文子 音響=井上正弘 ファイトコレオグラファー=國井正廣 振付=花柳錦之輔 音楽助手=池上知嘉子 演出助手=井上尊晶/石丸さち子 舞台監督=小林清隆 主催・企画・製作:ホリプロ・Bunkamura
一般発売 2007/2/17(土) S¥9,000 A¥7,500 コクーンシート¥5,000(税込)※未就学児のご入場はご遠慮ください。中2階立見券:¥3,500 2階立見券:中2階立見券が売切れた場合のみ発売・¥3,000 立見券前売発売 2007/5/2(水)~
http://www.bunkamura.co.jp/
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