自転車キンクリーツカンパニーの飯島早苗さんの名作戯曲(1993年初演)をスペースノイドの御笠ノ忠次さんが演出する、赤坂レッドシアターのプロデュース公演第1弾です。私は初見。
役者さんの顔ぶれがとても面白いですよね。モダンボーイ版・モダンガール版(1997年改稿版再演)の2バージョン公演で、私は男性版を拝見。良い戯曲でした~。上演時間は約2時間強。
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≪あらすじ≫
登場するのは昭和初期の文士たち。1年前に処女作を書いたきり2作目が全く書けない古賀(土屋裕一)の部屋に、友が集まってくる。批評家志望のリッチマン・泉(日比大介)、豪快で才気溢れる諸岡(加藤啓)、耽美な怪奇小説を志向する(及川健)。
≪ここまで≫
舞台は丁寧なつくりの日本家屋で、畳の間の奥には廊下があり、その奥に中庭があります。オーソドックスで品の有る美術でした。転換中は優しい音楽が流れる、春夏秋冬の4幕ものの正統派の会話劇です。
言葉がとても面白くてわかりやすく、登場人物一人一人の人生に感情移入することができました。特に諸岡(加藤啓)のセリフに強く勇気付けられましたね。自意識過剰とわかっていながらも、私のために言ってくれてるんじゃないかと、自分の生活にぴったりと添わせて味わいました。素晴らしい戯曲ですね。いっぱい泣きました。
役者さんが所属しているのは*pnish* 、THE SHAMPOO HAT、Studio Life、拙者ムニエルという、互いのつながりが全く見えない団体同士(笑)。プロデュース公演ならではのキャスティングです。4人それぞれが個性的でしたが、*pnish*の土屋裕一さんだけ少々見劣りしちゃったのは残念。でも土屋さんは4幕でじっくり聞かせてくださいました。
ここからネタバレします。
古賀宅の女中おきぬ(登場はしない)が花瓶の花を生けかえることで季節を表現します。これもまたオーソドックス。
「男同士で肉体関係を持てるか」という問に挑戦して、男同士で追いかけまわるシーンは元気で楽しかったです。
古賀が自分が思いついた小説の内容を泉に聞かせる最後のシーンでは、古賀が一人で長いセリフを話し続けます。器量の悪いお姫様が極楽の絵を描きたいと願い、本当に極楽に行ってしまうお話でした。念願かなって極楽に着いたけれど、極楽を絵で表すことはとてもできなかった。そこで彼女は蓮池の底の地獄を見つめて言います、「地獄に行けば絵を描けるかしら」と。横にいた父親が姫の顔を見ると、なぜかものすごく美しかった・・・そうな。
必死で書こうとするのに書けない人、特に書きたいわけじゃなかったのに書けちゃった人・・・。人生は不公平です。でも、才能があっても恵まれた境遇にあっても、自分が生涯かけてやりたいと思うことにめぐり合わなければ、それほど幸せではないんですよね。つまり執着できることを見つけられたら、それが一番幸せ。
ありがたかったセリフを下記に。正確ではありません。
泉「俺は勉強しに欧州になど行かない。俺は遊びに行きたいんだ。明治の先達は勉強しようと思って欧州に行った。だから何も学べなかったんだ。」
諸岡「お前(古賀)は泉に足を突っ込んでいるのに、のどが渇いたと水を求めている子供だ。」
諸岡「才能が書くんじゃない。人間が書くんだ。」
赤坂RED/THEATER プロデュース Vol.1
出演=【モダンボーイ版】土屋裕一、日比大介、加藤啓、及川健、【モダンガール版】沢樹くるみ、野口かおる、琵琶弓子、中谷さとみ
作=飯島早苗 演出=御笠ノ忠次 照明=津村裕子(アートブレーンカンパニー) 音響=前田真宏 美術=魚住和伸 衣装=中村洋一(東京衣裳) 演出助手=西岡知美 舞台監督=伊東龍彦 宣伝美術=藤野和美(ELENA Lab.) 写真=沼尾哲平 WEB=新藤健 票券=西川悦代 制作協力=有限会社ゴーチ・ブラザーズ 制作=佐々木康志 プロデュース=上谷忠/伊藤達哉 主催=赤坂RED/THEATER
【発売日】2007/04/07 4,500 円(全席指定)
http://kenrantoka.net/
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