楢原拓さんが作・演出されるチャリT企画は早稲田大学演劇研究会(通称:劇研)出身の劇団です。私はこれが3度目(過去レビュー⇒1,2)。超満員の初日でした。
キャッチーな(笑)タイトルですよね。パンフレットによると上演時間は1時間30分(私は未確認)。
⇒CoRich舞台芸術!『アメリカをやっつける話』
≪あらすじ≫
場所はある大学の地下の部室。ときは新入生歓迎会がさかんに行われる4月。新入部員を獲得しようとアメリカ研究会のメンバー全員が張り切っている・・・かと思いきや、実はサークル内は分裂しており・・・。
≪ここまで≫
サークル間・内の派閥争いを主軸に、和気あいあい、喧々諤々、走って暴れて、アメリカをやっつけようとするお話。隠喩がいっぱいあるものと期待していたのですが、それほど意図されてはいなかったようです。中盤以降、予想できない展開が生まれてググっと劇空間が盛り上がるのですが、最終的に大人しく収まってしまった感、大。結果、終始ストイックに組み立てられた前作『アベベのベ』の方が私には面白かったですね。でもアイデアや設定はとても面白いと思いました。
舞台をどんどこ走り回るライブ感や役者さんがぶつかり合う熱さが、学生演劇っぽくて楽しめました。でもしたたかな狙いをもって作っているようには見えませんでしたので、できれば今後はそのあたりの洗練も観たいなと思います。
ここからネタバレします。
爆弾が落ちたような音が鳴って、部室が何度か停電します。すると本土決戦に備えて「鬼畜米英!」と叫びながら訓練する防空頭巾を被った女(内山奈々)が登場するので、昭和20年の日本と平成の今が混ざってきたのかと思いました。そしてアメリカをやっつけるための巨大ロボットを操作するリモコンを探し、奪い合う・・・というフザけた展開になります。これがすごく面白かったんですよね。ブッシュ(おそらく現ブッシュ大統領)が来日するという架空の設定、あるコミュニティ(アメリカ研究会)の崩壊、反戦モノの常套手段である過去と現在の交差に加えて、子供向け戦隊モノの王道まで盛り込まれるんですから。しかも役者さんが舞台を走り、暴れまわるので疾走感・躍動感もあります。
でも実際は爆音ではなくカミナリの音だったそうです。演劇サークル(「凶器の桜」を上演)が中庭の桜の木を切り倒したことのバチが当たり、木のそばに居た学生だけが錯乱状態になっていたということでした。んー、わかんなかったな~。爆音だと勘違いしたおかげで作品世界がものすごく広がったので(勝手な言い分ですが・笑)・・・桜の木を元に戻した(といってもアロンアルファでくっつけた程度)途端に、夢から覚めたように元の状態に戻ったのはもったいないなと思いました。あのまま突っ走ってしまって良かったんじゃないでしょうか。
アメリカ研究会はアメリカについて真面目に研究する社会部(冠仁、小杉美香、熊野善啓)と、Nintendo Wiiで遊びまくる文化部(松本大卒、秋吉孝倫、下中裕子、竹内洋介)と、語学部(角田ルミ)に分裂しており、特に社会部と文化部との間で意見が対立しています(立て看板の撤去について等)。
“アメリカをやっつける話”は文化部の米良(冠仁)、利香(小杉美香)、新入部員の阿久津(熊野善啓)の名前から来ていました。⇒阿久津のア、米良のメ、利香のリカ。
出演=松本大卒、内山奈々、伊藤伸太朗、高見靖二、冠仁、下中裕子、秋吉孝倫(乞局)、角田ルミ、竹内洋介、小杉美香、熊野善啓、楢原拓、長岡初奈(新人)
脚本・演出=楢原拓(chari-T) 音楽=YODA Kenichi 舞台監督=甲賀亮 照明=伊藤孝 (ART CORE design) 音響=島貫聡 音響操作=樋口亜弓 宣伝美術=BLOCKBUSTER 制作=チャリT企画
【発売日】2007/04/15 前売=2300円(日時指定整理番号付き) 当日=2500円 ○学生割引=前売当日共に1800円(劇団のみ取扱い・要学生証掲示) ○失業者・障害者=無料(要証明書類)
http://www.chari-t.com
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