明日図鑑の牧田明宏さんの脚本を青年団リンク・東京デスロックの多田淳之介さんが演出されます。文学座の坂口芳貞さんや毛皮族の町田マリーさん、元ク・ナウカの寺内亜矢子さんなど、演劇界(特に小劇場)の夢のタッグ、みたいなキャスティングのプロデュース公演。はてさて。
⇒CoRich舞台芸術!『バラ咲く我が家にようこそ。』
≪あらすじ≫
バラが好きだった妻がコンビニ強盗に殺されて以来、残された夫・小出(坂口芳貞)は一人娘の智美(町田マリー)と二人暮らし。犯人が捕まること待ちながらもう三年経つが、何の手がかりもない。バラが枯れたままの家に招かれざる客人たちが訪れ・・・。
≪ここまで≫
バラが咲かない家のお話なのに、タイトルが『バラ咲く我が家にようこそ。』なのが牧田さんのセンスですよね~。素敵です。
個性の強い役者さんが揃っていますから、その人なりの存在感で舞台に居てくださるだけでも退屈はしないんですが、物語の行く先やこの作品の勘所を役者さん全員で共有しているようには感じられませんでした。「まだ完成してません」って感じなのかな~。プロデュース公演ならではのバラバラ感と言えるかもしれません。
犯人探しのサスペンスなムードが出てきた時、グイっと引き込まれる感覚はありました。でもそういうのは重要じゃない気がします。ストーリーが面白いかどうかというと、特に面白くはないと思うんですよね。でもこういう戯曲の場合は筋書きの面白さが重要なのではなくて、瑣末な会話や奇妙な仕草の積み重ねなどから、人間の悲しさ、滑稽さをゾクっとくるほど感じられることが、大切なんじゃないかしら。あと、もっとカラっと笑いたかったな~。
選曲が素晴らしかった・・・!!もー鮮烈ですよ、あの女性ヴォーカル!そして歌詞もストーリーにぴったり。同じアーティストの曲がずっと使われるので、まるでこのお芝居用にサウンドトラックを作ったみたいです。
ここからネタバレします。
大切な人を誰かに殺された(と信じ込んでいる)人々の暗~いお話でした。恨みが循環してしまうんですね。小出の妻を殺したのは智美の彼氏(大口兼悟)だったと匂わせ、何かが解決したかのようにしながら、そこで終わらなかったのが良かったです。
自殺した警備員(山本雅幸)の妹(甲衣都美・弁護士?)が、兄を殺したのは小出だと思い込んで小出につきまとうようになります。ちょっとおかしいですよね、その人。そういう「それ、おかしくネ?!」って突っ込みたくなるような行動が現れる時に、ゾクっときたり、にやっと笑えたり、感情に波が立つような刺激が欲しいなと思いました。
オープニングとエンディングの演出が良かったです。シアターサンモールに備え付けの(おそらく)カーテンのような幕が上がると、登場人物全員が舞台に居て、ゆらゆら揺れていました。一人ずつぱらぱらと去っていって、静かにお話が始まります。ラストもいわば同じ演出でした。それぞれの悲惨な人生を舞台でさらしていた登場人物たちが客席に向かって立ち尽くす姿は、まるで箱庭の中の人形のように見えました。オープニングと同様に幕が降りることで、人形達の悲しいおとぎ話がパッケージにすっぽりと入れられたような効果がありました。
出演=大口兼悟、町田マリー、寺内亜矢子、吹上タツヒロ、夏目慎也、山本雅幸、本多裕香、甲衣都美、坂口芳貞
作=牧田明宏[明日図鑑] 演出=多田淳之介[東京デスロック] 舞台監督=伊東龍彦 舞台美術=鈴木健介 照明=岩城保 音響=泉田雄大 衣裳=原竹武臣 宣伝美術=宇野モンド 宣伝写真=可児保彦 演出助手=佐山和泉 web担当=高橋直人 当日票券=三村里奈(MRco.) 制作=ジェットラグ&田辺恵瑠 プロデューサー=阿部敏信 企画・製作=ジェットラグ
【発売日】2007/04/15(全席指定席・税込)前売り¥4,000 当日¥4,500
http://www.jetlag.jp/
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