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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2007年07月03日

三条会『ロミオとジュリエット』07/02千葉市美浜文化ホール

 関美能留(せき・みのる)さんが演出される三条会(過去レビュー⇒)。は、千葉県を拠点に活動する劇団です。極度の方向音痴の私ですが、三条会に会うためなら千葉まで遠征いたします(遠征って大げさだけど)。案の定スムーズには会場にたどり着けなかったのですが(涙)、開演には間に合いました。

 あまり演劇に親しみのないお客様向けの工夫と、コアな演劇ファンがにやりとする隠喩とが、奇妙だけれど良いバランスで混ぜ合わさった演出でした。三条会はやっぱり凄い!って思いました。観に行ってよかった~。

 ⇒CoRich舞台芸術!『ロミオとジュリエット
 ※南房総市シェイクスピア・カントリー・パーク/シアターホールで上演された作品の再演です。

 劇場内は客席も含めて黒色で、ほぼブラックボックスの状態です。学校の教室の勉強机が舞台の4隅に置かれ、舞台奥のスクリーンに文字映像が映し出されるシンプルな装置。

 三条会版「ロミジュリ」は、ベンヴォーリオ(中村岳人)が口上役としてあらすじをドンドコしゃべっていく4幕ものでした。セリフが部分的にスクリーンに表示され、それを朗読したりもします。三条会でこんな演出は初めて観ました。ベタなギャグもたくさんありましたね。公共ホールの開館記念公演ということで、小さなお子さま連れや演劇をよく知らないお客様のための戦略だったのでしょう。見事に機能していたと思います。

 ベンヴォーリオは前説で、客席との距離を近づけるためにダジャレを連発しますが、それはシェイクスピア作品の特徴を表現するのと兼ね合わせられています。今回もやはり邦楽のポップスが大胆に使われました。それもまた同じ効果があります。

 舞台4隅の席についている女性4人は、全員がジュリエット。ガムを噛んでいてとてもお上品とは言えない姿勢でイスに座っているジュリエットたちは、現代の若者を現しています。特に上手前でノートパソコンを触っている(文字映像のオペをしている)女の子などは、いわゆるイマドキの女の子っぽいサラリとしたふてぶてしさがありました。

 蜷川版「ロミジュリ」では若さゆえの無鉄砲さ、劇団「木花」版「ロミジュリ」では熱に浮かされてうっかり命を落とす瞬間などが特に印象に残っています。『ロミオとジュリエット』の重要なキーワードは若さと情熱、それが引き起こす人の死(殺人・自殺ともに)なのかもと感じておりました。三条会版でも同じことが描かれているように感じながら、その表現方法のスマートさに唸りました。

 残念だったのは音楽の音が大きすぎてセリフが聞こえないシーンが多かったこと。役者さんによって声が聞こえたり聞こえなかったりするのは、それが意図的な演出だったとしても、もったいない気がしました。

 ここからネタバレします。

 4人のジュリエットの衣裳は左側は赤、右側は白のドレスなので、真ん中で紅白に分かれています。特に下手前の赤いドレスの女(大川潤子)と、上手奥の白いドレスの女(寺内亜矢子)が対になっており、大川さんは人間の本性・本能(内側)で、寺内さんが人間の行動(外側)を体現しているように思いました。ロミオがいとこのティボルトを殺してしまったシーンで寺内さんは嘆き悲しみますが、大川さんはぎらぎらとした笑いを浮かべて興奮しながら、その殺人事件を楽しんでいるようでした。

 下手から上手へと走り去り、次はまた下手から登場するという演出が何度もありました。『ニセS高原から』でもありましたが、俳優の動線が時間という数直線上を走っているように見えるので、物語が過去から現在、そして未来へと時間を越えて普遍的なものに感じられます。また、俳優がありえないところから再登場するので、空間を越える効果もありますよね。

 男優さんは包丁を手にしており、戦う時に剣として使ったりしますが、ベンヴォーリオはそれをマイクに見立てたりします。マスコミの暴力(『THE BEE』でも感じました)や現代の若者がおこすナイフによる殺人事件なども連想されます。

 三幕では大声でお茶の間の家族芝居(ジュリエットのキャピュレット家)が演じられました。家族という人間関係を風刺する、いわゆる茶番劇だったと思います。ここで声が聞こえなかったのが残念。

 使われた音楽はTMネットワーク「SEVEN DAYS WAR」(映画「ぼくらの7日間戦争」主題歌)、安室奈美恵「CAN YOU CELEBRATE?」、そしてglobeのテクノ曲(曲名わからず)でした。小室哲哉シリーズですね。ミスマッチに苦笑しつつも、歌詞があまりにストーリーに合致しているため感嘆のため息が出るという(笑)、観客泣かせの選曲です。たまりまへん。
 
≪千葉市美浜文化ホール開館記念公演≫
出演=大川潤子、榊原毅、橋口久男、中村岳人、舟川晶子、立崎真紀子/寺内亜矢子(ク・ナウカ)、牧野隆二(ク・ナウカ)
原作=W.シェイクスピア 構成・演出=関美能留 照明=佐野一敏 制作=久我晴子 主催=千葉市、アートウインド運営企業体
1,000円 ※上演時間60分
http://www.sanjoukai.com

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Posted by shinobu at 2007年07月03日 17:01 | TrackBack (0)