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Shinobu's theatre review
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REVIEW

2007年07月10日

ポツドール『人間・失格』07/06-16三鷹市芸術文化センター 星のホール

 三浦大輔さんが脚本・演出されるポツドールの新作です。“太宰治作品をモチーフにした演劇第4回”ということで、タイトルどおり「人間失格」が題材になっています。「・」にはハートマークが入ります。「人間失格大好き!」っていう意味だそうです(笑)。←どこかのインタビューで読みました。

 ずいぶん昔に「人間失格」を読んだ時の感動(感傷?)を思い出しました。読んでから観に行かれる方が面白いかもしれませんね。上演時間は約1時間50分。R20ぐらい?

 ⇒CoRich舞台芸術『人間・失格

 少々ネタバレします。読んでから観に行かれても問題ない程度だと思います。

 自称25才の男・イサム(岩瀬亮)が一人暮らしをしているアパートの一室。どうやら2階のよう。イサムは1週間連続でバイトを無断欠勤し、風俗系の有料ダイヤルに電話したりして、ずーっと部屋から動かない。生活のお金は母親からせびっている・・・。
 イサムは現代日本のダメな若者の典型なのかもしれません。でも、普通に礼儀正しくて大人しい好青年な部分もあり、外見もほどほどに良いので、「人間失格」の主人公に重なります。

 絶対的に無事なところ(客席)に居ながら、すぐ隣りに居そうな若者(電車の同じ車両に乗ってたり、映画館でとなりの席だったり、コンビニの客と店員として出会っていたり)の生々しい生活を、高みの見物することになります。淡々と過ぎる、一人の若者の生活をずーっと覗き見する感覚なので、禁断の甘い蜜をすするような(笑)愉しみがありました。電話を通じての会話を耳をそばだてて聴くのは、ちょっと新しい感覚のような気がしました。

 テレビ、コンビニ、携帯電話、上っ面の会話・・・。『恋の渦』で感じたのと同じように、貧しいな~と思いました。そうやって客観的に人物や出来事を観ていられるのは、役者さんの演技がとても自然だからだと思います。
 生々しい性交シーンや乱暴な事件がいつもより控えめかと思いきや・・・。

 三鷹市芸術文化センター・星のホールという劇場を生かした装置や内容ではなかった気がして、そこは残念でした。

 ここからネタバレします。

 テレフォン・セックス(っていうのかな)するのを覗き見するのは、も~爆笑でした。テレクラ(っていうのかな)でひっかけた女(白神美央)に騙されて、ガラの悪い男(米村亮太朗)にタカられて、友達に何度も嘘をつくはめになって、イサオは目も当てられない情けない状態に陥ります。でも昔の彼女(深谷由梨香)からの勧めで小説「人間失格」を読んで、復活のきざしを見せます。

 その後に、“復活しなかった(どん底まで落ちた)場合”が描かれ、それがいわゆるポツドールっぽい残酷かつ刺激的なものでした。「来た来た~っ!」という、わくわく・どきどき&冷や冷や・おそるおそるな感覚でしたね。
 女を集団レイプして、女を助けに来た男を絞め殺し、そこに昔の彼女がばったり出くわすという、最悪の中の最悪を絵に描いたような、「うまくお膳立てされすぎだよ!」って冷ややかに笑いながら突っ込みを入れたくなるような(笑)、どん底。「人間失格」な風景。いつも思いますが、ものすごいバイオレンス、です。観ている途中で役者さんのことが心配になったりもしました。

 さらにそのシーンの後、「あの惨劇は夢だったかもしれない」と匂わせるエンディングが用意されており、「なるほどな~」と頷きながらの終演でした。そうやって腑に落ちたことは私にとっては物足りなかったですね。

太宰治作品をモチーフにした演劇第4回
出演=岩瀬亮、米村亮太朗、古澤裕介、白神美央 岩本えりが怪我のため降板し、代役は深谷由梨香(柿喰う客)。
脚本・演出=三浦大輔 照明=伊藤孝(ART CORE design) 音響=中村嘉宏 舞台監督=清沢伸也 舞台美術=田中敏恵 映像・宣伝美術=冨田中理(selfimege produkuts) 小道具=大橋路代(パワープラトン) 衣装=金子千尋 演出助手=富田恭史(jorro) 写真撮影=曳野若菜 広報=石井裕太 協力=(有)マッシュ Y.e.P 制作=木下京子 森川健太(三鷹市芸術文化センター) プロデューサー=三浦大輔 森元隆樹(三鷹市芸術文化センター) 主催・製作=(財)三鷹市芸術文化振興団体 製作=ポツドール
【発売日】2007/06/07(前売・当日共に全席指定) 前売3300円(財団友の会会員 3000円) 当日3600円(財団友の会会員3300円) 高校生以下 1500円※未就学児の入場はご遠慮下さい。
http://www.potudo-ru.com/

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Posted by shinobu at 2007年07月10日 01:12 | TrackBack (0)