ブラジリィー・アン・山田さんが作・演出されるブラジル(過去レビュー⇒1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12)。ご縁があって4年前から拝見してきました。今回の『天国』は色んな作風を経てここに到達したんだな~と感じられる作品でした。「ブラジルの演劇」としての成熟を見せていただけた気がします。
上演時間は2時間・・・より短かったような。すみません、うろ覚えです。
⇒CoRich舞台芸術!『天国』
≪あらすじ≫
自動車工場で働く男たちが美人女将(山田佑美)目当てに毎晩のように通う居酒屋。厳しい肉体労働に耐える男たちには、それぞれに人には言えないワケがあるようだ。女将にもどうやら秘密があるようで・・・。
≪ここまで≫
まず、リアルな舞台装置にプチびっくり。絵に描いたような居酒屋です(絵じゃないけど)。
身体をはったアクロバティックかつアドリブ的な演技・演出と、綿密に練り上げられた脚本とが組み合わさっていることに、ブラジルのオリジナリティを感じました。「わぁ、そうなるんだ~♪」と何かが起こる度にその面白みを味わいました。
前作『恋人たち』では役者さんの個性と個性のぶつかり合いが目玉の一つでしたが、今回は役者さんの息を合わせたアンサンブルを楽しめて嬉しかったです。
たとえば幕開け最初の、居酒屋で安酒をあおりながら、とりとめもないことをしゃべって笑うブルーカラーの男たち・・・というシーンがすごくリアルで、一瞬でその世界を信じることができました。
先の見えない男たちの吹き溜まりのような場所で、暗い話題ばかりがのぼるのに、常に明るくおどけたムードがありました。また、悲惨な状況におかれた登場人物みんなを愛することができました。
最後のひとことと、その幕切れのあっけなさが素敵。
ここからネタバレします。
マコト役のこいけけいこさんはモデルもしていらっしゃる背が高い女優さんです。ほかのキャストとの対比のためにか、さらに背が高く見えるワンピースを着て、ハイヒールを履いているのがあからさまで面白かったです。
元野球選手のコウサカ(諌山幸治)が「インターネットっ!!!」って叫んだのが可笑しいし悲しいし。
金を持って逃げた女将をサトウ(西山聡)が追わなかったのが良かったです。「追いかけても・・・」と言ってちょっと笑った西山さんの顔には、あきらめなのか安堵なのか、色んな気持ちが入り混じっていて、「あぁ、人間って可愛いな」と微笑ましい気持ちになりました。そこでサッと暗転して終幕したのもかっこ良かったです。
出演:辰巳智秋、西山聡、諌山幸治、若狭勝也、中川智明、山本了、山田佑美、こいけけいこ、本間剛
【脚本・演出】ブラジリィー・アン・山田【照明】シバタユキエ 【音響】島貫聡 【舞台監督】主侍知恵(HOZO) 【舞台美術】仁平祐也(HOZO) 【衣装】中西瑞美 【宣伝美術】川本裕之 【宣伝写真】名鹿祥史 【演出助手】岡崎貴弘(アンティークス)・伊藤雅典(劇団ガンダム) 【票券管理】スギヤマヨウ(QuarterNote) 【制作】恒川稔英・池田智哉(feblabo)・ブラジル事務局
【発売日】2007/06/16 前売2,800円 当日3,000円 ※初日・平日マチネ割引 前売/当日2,400円(全席指定)
http://www.medianetjapan.com/10/drama_art/brazil/
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