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2007年08月31日

ワールドサイエンスフィクションコンベンション参加企画『SFドラマシアター(SF Drama theater)』08/31-09/02パシフィコ横浜・会議センター419号室

 世界からSFファンが集まるというワールドコンは世界的なイベントで、日本で開催されるのは初めてだそうです。演劇企画の初日に4本全部を拝見してまいりました~♪あぁ、1日4本お芝居を見るなんて、いつ振り?いや、もしかしたら初めてかも?

 ⇒CoRich舞台芸術!『他人の気持ちがわかりません』『アカシア』『ソラリス』『孤独の惑星

 会場にたどり着くまでがけっこう大変です。展示ホールAコンコースで受付を済ませてから、会議センターに移動して4階419号室に行ってください。受付が・・・ものすごく大変そう(私はお友達のおかげでスムーズに入れましたが)。長蛇の列でした。1時間ぐらい並ばなきゃかも。レストランは6階にあります。

20070831_worldcon1.JPG
4階からの景色。SFの世界そのものですね(笑)

 ひとことで状況を言ってしまえば「会議室でのお芝居」ですね。劇場ではなかなか見かけることのないお客様(SFファンの外国人)が多数いらして、すべて英語字幕付きで、かなり貴重な体験でした。
 演劇がこういうコンベンションで上演されていることがとても楽しかったです。入場料を払えば誰でも自由に出入りできるので、フラリと立ち寄る方もいらっしゃるんです。それが刺激的~♪

 だから私にとっては、作品の良し悪しなどはあまり関係なかったかも。パシフィコ横浜のSF大会で日本人が演劇をやってること、それを世界のSFファンの方々が観ていることが、最高に面白かったです。

 なぜかG.com東京ファンタスチカ(これ以降はG.comと略します)だけ90分という長い尺でしたが、それ以外は1時間弱~1時間10分ぐらいだったかな。G.comと東京デスロックの2劇団がレム作『惑星ソラリス』を題材にしていますので、観比べると面白いですよ。その場合はG.comを先に観ることをお薦めします。東京デスロックは難解で、原作を知らないとわからないと思います。

 ここからネタバレします。

20070831_worldcon2.JPG
英語の看板を持って宣伝されていました

■箱庭円舞曲『他人の気持ちがわかりません』~Silent farce by mind reader.~
 
 刑務所の中で3人の死者が出る。ある受刑者(五十嵐祭旅)が「全員殺した」と自白し、犯罪心理学者(阿部恭子)と捜査員(爺隠才蔵)が彼を問い詰めるが、彼は「俺は人の心が読めるのだ」と言う。

 宇宙だとか近未来とかではなく、身近な誰かがエスパーかもしれないというSFなのが面白かったです。役者さんの演技は全体的におぼつかない感じ。
 受刑者の首を刑務官(田保圭一)が縄で絞めているのに、捜査員がそれを全く助けようとしないのが、どうしても腑に落ちませんでした。

 ※字幕:英文が日本語の意味を直訳したようなもので少々ヘンだった。セリフ1つごとにスライドが進むので早すぎた。


■G.O.D.system【ANDROGYNOUS】(アンドロギュノス)『アカシア 2007改訂版』

 近未来の東京。密室でクイズに答えて戦う男女。負けた方が死ぬ。

 男女2人が天才で、お互いに出題するクイズとその答えが面白すぎ(笑)。膨大なセリフをがんがんしゃべる、たった2人の役者さんのがんばりに乾杯。映像もシンプルながら効果的でした(最後のアニメを除く)。

 「これは最初から俺達2人を戦わせるために仕組まれた罠だった」とわかるまでが、少々長くてクドかった気が。最後のアニメは不要かと。せっかく役者さんががんばって作り上げた演劇空間が、ちゃちくなっちゃったような。

 ※字幕:男「・・・」女「・・・」男「・・・」のように、セリフ数個をまとめて1枚のスライドだったので、読みやすかった。でも字が小さすぎた。


■東京デスロック『ソラリス』

 先日のこまばアゴラ劇場での公演とほぼ同じ。もちろんプールはありません(笑)。
 開幕時、部屋のカーテンを上げてすぐ下げたのは、いきなり演劇ムードに転換させる、大胆で効果的な演出だったと思います。
 役者さんの存在感の確かさは4団体の中でダントツ。特にハリー役の石橋亜希子さんの美しさに目を奪われました。床に寝そべってる時にうっとり眺めてしまった。

 ※字幕:論外(笑)。舞台中央の壁のど真ん中に映写される字幕が、パカパカ早く変わるせいで気が散って、終盤まで全く集中できなかった。
 セリフ1つごとにスライドが進むので早すぎた。そもそも役者さんが早口でしゃべるので、ほんと早すぎ。ヤバイ。訳もちょっとヘン。


■G.com東京ファンタスチカ『孤独の惑星』

 もっとも劇場らしい作品に仕上げていたのがこの劇団です。たぶん「SF演劇が上演される」と聞いて足を運んだSFファンが、素直に満足できるのは4本中だとこの作品なのではないかと思います。
 舞台に向かって左側に字幕。中央の壁には青や赤のイメージ映像が写されて、見事な照明効果にもなっています。衣裳も全員がそれらしいものをそろえていて、着替えてくれたりも。配られた冊子も充実していました。

 東京デスロック版の直後だったのもありますが、ど真ん中・直球メロドラマで、私には・・・あんまりでした。「愛してる」って何度も言うんだけど、浅い。

 ※字幕:英語らしい英語に訳されているし、スピードも読みやすい。素晴らしかったです。これなら外国人の方にもお薦めできます。

World Science Fiction Convention(ワールドコン)演劇企画@会議棟419号室。各団体60~80分の作品を連日1ステージずつ上演。すべて英語字幕付き上演。
≪箱庭円舞曲≫出演:阿部恭子 爺隠才蔵 五十嵐祭旅 田保圭一 脚本・演出・前説:古川貴義 
≪G.O.D.system【ANDROGYNOUS】≫出演:野口雄介 高橋沙織 スナアセ・演出:森達也 演出助手:増山千花 映像:上理人
≪東京デスロック≫出演:夏目慎也、佐山和泉、石橋亜希子、大竹直、永井秀樹  脚本・演出:多田淳之介 
≪G.com 東京ファンタスチカ≫出演:浦河拓海 佐藤晃子 内藤羊吉 星野祐介 田谷淳 水谷渚子 袴塚真実 重盛玲架 脚本・演出:三浦剛 舞台監督:秋吉孝倫 映像:長谷川朋史(OZab) 振付:渡部あや 脚色・アレンジ:岡田久早雄 水牛健太郎 荒川直美 中田智子 小寺悠介 演出助手:大河原準介(LondonPANDA) 制作:中島みゆき 木ノ内優希
製作:新道喜一郎 舞台監督:秋吉孝倫 制作:瀬尾純子 撮影:宮内智徳 大瀧光司 協力:木元太郎 小山与枝乃 浅岡奈緒子 本田あゆみ 増戸香織 田邉恵弥 山本麦子 王子小劇場 駒場アゴラ劇場 Nippon2007実行委員会
【一日参加券】・8月31日(金) 20歳以上15000円/13~19歳10000円 ・9月1日(土)、9月2日(日) 20歳以上20000円/13~19歳16000円
※「SFドラマシアター」のみの料金はございません。ワールドコン参加料金が必要です。 ※その他、5日券(ワールドコン会期8月30日~9月3日有効)あり。
【横浜市民割引】(証明書不要・住所記入あり)
・8月31日(金)20歳以上3000円/13~19歳1500円 ・9月1日(土)、9月2日(日)20歳以上6000円/13~19歳3000円
※横浜市民割引ご利用の場合は、 当日ワールドコン受付にて口頭で申請・確認、証明書は不要です。 ※参加者に比べ、ワールドコン参加特典やサービスに制約がありますが、「SFドラマシアター」観劇には支障ありません。
ワールドコン公式=http://www.nippon2007.org/jpn/index.shtml
サポーター=http://www5b.biglobe.ne.jp/~TOWAIE/2007nen/07SFDT.htm
fringe blog= http://fringe.jp/topics/2007/07/091.html
cinra magazine vol.14【世界の劇団 が参加するイベント】=http://cinra-magazine.net/vol.14/CONTENTS/STAGE/SF.HTM

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Posted by shinobu at 21:53 | TrackBack

2007年08月29日

劇団M.O.P.『エンジェル・アイズ』08/29-09/05紀伊國屋ホール

 マキノノゾミさんが作・演出される劇団M.O.P.(エム・オー・ピー)。思いっきりウェスタン(西部劇)でした。楽しかったぁ~~~っ!!

 上演時間は約2時間40分(途中10分の休憩を挟む)。長いようで実際はアッという間でした。だって色んなサービスが満載で・・・♪ これから観に行かれる方はどうぞ遅刻しないでください!

 今回は大人気の小市慢太郎さんは出演されていませんが、劇場ロビーの物販コーナーにいらっしゃいました。ファンの方に握手までしてらっしゃって、「あぁ、劇団っていいな~」と思っちゃいました。

 ⇒空席状況
 ⇒CoRich舞台芸術!『エンジェル・アイズ

 ≪あらすじ≫1992年公演のあらすじより、途中まで引用。
 1887年、アリゾナ州トゥームストーン。かつてOK牧場の決闘が行われた街。
  寂れていく街、失われていく西部魂を惜しんで、少年新聞記者・エリオット・ホープは作家・サミュエル・クレメンズ(サム=マークトゥエイン)に手紙を書く。サムは、有名なガンマンやギャングを呼び集め、「OK牧場の決闘」を再現することを提案する。
 噂を聞いて集まってくるガンマンたち……ワイアット・アープとドク・ホリデイ。炎の女ガンマン・カラミティ・ジェーン。ビリー・ザ・キッドを撃ったと言われるパット・ギャレット。バリー・ハグレーJr.率いるバリーズ・ギャング……。その中に、記憶を失って荒野をさまよっていた謎の青年もいた。
 街の写真屋にしてギャンブラーのチャーリー・スカイの協力もあり、街は活気を呈する。苦言を呈するのはお堅い女教師のミス・サラ・ブラウンくらい。そして、夥しい見物人が見守る中、「OK牧場の決闘」が再現される……。
 ≪ここまで≫

 派手なウェスタン・ルックで拳銃をあやつる悪党。胸元が大きく開いたドレスで挑発する娼婦。スーツに帽子でカチっと決めた保安官と市長。乾いた土に閉ざされたへき地を連想させる舞台で、物語は酒屋から始まります。設定は“OK牧場の決闘”から6年経ったトゥームストーン。
 いかにも西部劇らしいムードでドンドコ盛り上がっちゃうのが楽しいです。いい大人が思いっきりガンマンになりきって、ギャグやって、本気の遊び心が痛快!東京公演初日ということで、巨大な装置が動かなくなる事故がありましたが(笑)、別に平気だったぐらい面白かったです。
 
 西部劇のスターを勢ぞろいさせるという大胆なエンタメ脚本なんですね。もしかしたらストーリーに無理がある所もあったかもしれませんが、私は深く考えることなくスカっと楽しめました。西部劇を知っていれば、それはそれで細かいところをじっくり楽しめるんじゃないかしら(残念ながら私は西部劇のことはよく知らないんですが)。
 ニセの「OK牧場の決闘」の後にも驚きの展開が待ってます。『黒いハンカチーフ』『虚飾の街に別れのキスを』を思い出しました。

 保安官ワイアット・アープ役の浅野雅博さん。イイ格好しいでズルくて情けない男なんだけど、どうしても憎めない、可愛いらしい保安官でした。笑わせてくれます。
 バーテンダーのマーシー役の片岡正二郎さん。色んな弦楽器を愉快に、軽やかに演奏してくださいました。

 ここからネタバレします。

 オープニングは出演者総出で楽器演奏&合唱!こりゃびっくり&嬉しいですよ!カーテンコールでも演奏があったんですよね~、しかもトランペットやトロンボーン、サックス、ドラム、エレキギターなど新しい楽器も多数登場して。役者さんは皆さん芸達者ですね~。

 棒に馬の首がついたギャロップ(?)と呼ばれるおもちゃをまたいで、真剣に馬に乗っている演技をするのが可笑しいです。でも最後の死闘に挑む時は、全員が横一線に並んで勇ましくパッカパッカする姿にホロリと涙するぐらい、カッコ良かったんですよ~!

 ドク・ホリデイ(神農直隆)とカラミティ・ジェーン(キムラ緑子)が助けたジェロニモ(田尻茂一)が、最後に2人を助けに来てくれたのがタイムリー。コケにしたゲイリー少尉(本郷小次郎)もちゃんと復讐に来ましたね。きちんと“お約束”をキメてくださって、素直に面白いです。
 “エンジェル・アイズ”とは、飢えてボロボロになっていた少年(木下政治)の名前で、彼の正体はビリー・ザ・キッドでした。

≪京都、東京、大阪≫ “THE LAST DAY AT TOMBSTONE”
出演=キムラ緑子 三上市朗 林英世 酒井高陽 木下政治 奥田達士 勝平ともこ 白木三保 岡村宏懇 友久航 塩湯真弓 永滝元太郎 竹山あけ美 塩釜明子 神農直隆 岡森諦(扉座) 浅野雅博(文学座) 平良政幸 田尻茂一(アクションクラブ)  片岡正二郎 海部剛史 大原やまと 斎藤栄作 藤元英樹 本郷小次郎
作・演出=マキノノゾミ 舞台美術=奥村泰彦 音楽=川崎晴美 清水一雄 音楽製作=鈴木ひさし ミキシングエンジニア=宮原弘貴 Bass=田中豊雪 振付=前田清実 振付助手=河野有紀子 照明=大川貴啓 音響=堂岡俊弘 衣裳=三大寺志保美 ヘアメイク=武井優子 ヘアメイク協力=プロメイク舞台屋 演出部=岸京子 舞台監督助手=橋本律子 舞台監督=藤吉成三 宣伝デザイン=鳥井和昌 写真=山脇孝志 制作=橋本香苗(コマンドエヌ) 制作助手=こばちえ(コマンドエヌ) 制作協力=加藤昌史(ネビュラプロジェクト) 山中歌子(ネビュラプロジェクト) 奥井美樹 主催・企画・製作=劇団M.O.P.
前売開始 2007年7月15日(日)  5,500円(全席指定・税込)
http://www.g-mop.com/

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Posted by shinobu at 23:32 | TrackBack

2007年08月28日

【情報】急な坂ゼミナール 第一期「思想ゼミ」&「企画ゼミ」09/28-01/25急な坂スタジオ

 急な坂スタジオが、「創り手」「つなぎ手」を対象とした少人数制のゼミナールを開講します。「思想ゼミ」と「企画ゼミ」の2つのプログラム。講師陣が豪華!

 詳細は公式サイトでご覧下さい。かいつまんだ情報を下記に。

 ⇒応募締め切り:2007年9月20日(木)必着 ※Eメールによる申し込み
 ⇒選考結果通知:2007年:9月23日(日)

■日時: 毎週金曜 19:00~21:30 (思想ゼミ・企画ゼミを隔週で開講)
 思想ゼミ:9/28~1/18 *1月18日のみ17:00開始
 企画ゼミ:10/5~1/25 *1月25日のみ17:00開始

■会場:急な坂スタジオ 和室およびコミュニティ・ルーム

■講師
・思想ゼミ:
 思想ゼミ長 熊倉敬聡(慶應義塾大学 教授)
 岡田利規(演出家・劇作家、チェルフィッチュ主宰)
 手塚夏子(振付家・ダンサー)
 藤原敏史(映画監督)
 高山明(演出家、PortB主宰)/ディスカッサント:宇野邦一(哲学者・立教大学教授)

・企画ゼミ:
 企画ゼミ長 市村作知雄(東京芸術大学准教授)
 高萩宏(世田谷パブリックシアター ゼネラル・プロデューサー)
 若林朋子(社団法人企業メセナ協議会・シニア・プログラム・オフィサー)
 久野敦子(財団法人セゾン文化財団 プログラム・ディレクター)
 前田圭蔵(カンバセーション プロデューサー)
 小泉雅生(建築家、小泉アトリエ主宰)
 仲原正治(横浜市開港150周年・創造都市推進事業本部課長)

■受講申込方法:お申込はメールにて受付ます。記入内容はサイトをご参照ください。
■定員:20名
 *全回参加が原則ですが、定員に空きがある場合のみ、各回参加も受け付けます。
 *応募者多数の場合は、全回参加できる方を優先します。それでも定員を上回る場合は、応募書類による選考のうえ、お電話による意思確認を行ないますのでご了承下さい。
 *欠席の回がある方は、お申込み時にご記入下さい。

■料金:20,000円(各回参加3,000円) *初回に全額頂きます。
■選考スケジュール:
 応募締め切り:2007年9月20日(木)必着
 選考結果通知:2007年:9月23日(日)
■送信先:toiawase(アットマーク)kyunasaka.jp 
■お問合せ:
 急な坂スタジオ
 Tel/045-250-5388 E-MAIL/toiawase(アットマーク)kyunasaka.jp

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Posted by shinobu at 13:59 | TrackBack

2007年08月27日

劇団競泳水着『なだれる』08/22-28王子小劇場

 劇団競泳水着は上野友之さんが作・演出(出演も)される早稲田大学出身の劇団です。初めて観たのはクライム・サスペンス、今回はトレンディ・ドラマ系の王道ラブ・ストーリーでした。

 昔の「月9」にありそうな、胸きゅんド真ん中な設定でしっかり作られていました。「こういうの観たことあるわ~」と感じるシーンも鼻についたりすることなく、純粋に楽しめました。恋愛ばかりに傾倒せず、ちゃんと人物のドラマがあったからだと思います。
 上演時間が1時間30分弱で快適!明日8/28(火)18:00の回で千秋楽です。

 ⇒CoRich舞台芸術!『なだれる
 レビューはアップできるかどうか不明。

注意報すら、のみこむ恋。
出演=川村紗也/永山智啓(elePHANTMoon)/梅舟惟永/古川侑/林清香(早大オムニバス)/上野友之/大川翔子/奈木れい/細野今日子(カカフカカ企画)
脚本・演出:上野友之 舞台監督:藤田有紀彦 舞台美術:坂亨宣(ソマリ工房) 照明:島田雄峰(lighting staff Ten-Holes) 音響:高橋秀雄(SoundCube) 音響操作:矢作璃沙 演出助手:会沢ナオト / 陶山浩乃 宣伝美術:VOID IDM 宣伝写真:中野美登樹 WEB・映像:Atelier.Logic+box. 当日運営:安田裕美(the Square of y) 制作:劇団競泳水着 企画:「なだれる」実行委員会
前売:2,300円 当日:2,500円 学割:1,800円(要学生証)
http://www.k-mizugi.com/

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Posted by shinobu at 18:42 | TrackBack

【演劇教育】参議院議員・鈴木寛さんのマニフェストに「演劇の授業の必修化」

 平田オリザさんと一緒に“「演劇教育でガッコーを面白く!」の会”をプロデュースする、参議院議員の鈴木寛さん。マニフェストに「演劇・コミュニケーション(ドラマ授業)の必修化 」が入っています。「演劇教育でガッコーを面白く!」の会で話されていたことを実行されているんですね。

 「演劇教育」について書いた記事をまとめてみました。演劇教育関連記事⇒
 これからもポジティブな興味を持って演劇教育に注目していこうと思います。

Posted by shinobu at 09:42 | TrackBack

【演劇教育】シンポジウム「コミュニケーションティーチングについて」06/19京都芸術センター・講堂

 私は行けなかったのですが、6月に京都で演劇教育についてのイベントがありました。
 ⇒シンポジウム「コミュニケーションティーチングについて
 フリンジシアタープロジェクトが企画・制作する「演劇で学ぼう!」シリーズです。報告書が公開されていますので、ご興味の有る方はどうぞご一読ください(PDFで13ページ)。

 演劇教育は「コミュニケーション・ティーチング」とも呼ばれます。「演劇」というと、つい鑑賞するものだと思いがちですものね。

 ⇒平田オリザ(文章)「コミュニケーションティチャーの普及に向けて」(2007/04/15)
 ⇒平田オリザ(映像)「コミュニケーションティーチングとは?」(2007/04/30。3分以内)
 ⇒京都新聞「授業に演劇、意思疎通能力高める 京のNPOが19日にシンポ」(2007/06/15)

Posted by shinobu at 09:14 | TrackBack

2007年08月26日

横濱・リーディング・コレクション #3『岸田國士を読む!Bプログラム』08/09-12相鉄本多劇場

 相鉄本多劇場で続いているリーディング企画の第3段。毎回1人の作家をフィーチャーするのが特徴です。今回は戯曲賞の名前にもなっている岸田國士(きしだ・くにお)の戯曲4本。私はBプログラム(上演戯曲は「かんしゃく玉」と「紙風船」)を拝見しました。

 Hula-Hooperの元気いっぱいな女の子のノリノリ・コメディと、ポかリン記憶舎のしっとりとした大人の官能空間という、超~対照的な2作品でした。すっごく楽しめました。

 ⇒CoRich舞台芸術!『岸田國士を読む!
 ⇒Hula-HooperT★1演劇グランプリ・第一次審査通過団体です。
 レビューをアップしました(2007/09/05)。

 ここからネタバレします。

 1『クニヲと俺と。(入門編)』演出:菊川朝子(Hula-Hooper) ※上演戯曲は「かんしゃく玉」

 ちょっぴりの毒と色気を感じさせるカラフルでキュートな衣裳を着たオンナノコたちが、演じる人と読む人に分かれて遊び心いっぱい・元気いっぱいに楽しませてくれました。

 俳優養成所の生徒たちがオーディション会場で本を読むという設定だったようです。その上、配役が固定されていない劇中劇という少々複雑な構造でしたが、岸田戯曲の登場人物を派手にデフォルメした演技と口調で作り上げ、客席には爆笑・苦笑がいっぱいでした。そういえば登場人者の1人は肩に乗ったぬいぐるみの鳥だったような(笑)。

 観客は配られた台本(終演後に回収)を読みながら観るという、ちょっと変わった趣向も良かったですね。「その読み方間違ってる!(沢山⇒さわやま、やっぱり⇒やつぱり等)」、「ここでその音楽ってアリ?!(筋肉少女帯「踊るダメ人間」⇒YouTube)」など、大胆な演出を加えていることがよくわかります。

 怒りが込み上げた時は、かんしゃく玉を叩きつけてうっぷんを晴らすことにしている若夫婦。隣人や友人が次々と家にやってきて2人の生活にざわめきが。妻を働きに出したくないけど仕事もしたくないダメ夫。亭主が無職なのにビフテキを買いに行かせるダメ妻。「友達じゃないか」と友情を振りかざして、実はおもしろ半分であろうダメ友達。サラっとまことしやかにダメ発言をするダメ人間たちを、馬鹿馬鹿しく可愛らしく見せながら、岸田戯曲に描かれた庶民の等身大の怒りや悲しみを伝えることにも成功していました。


 2『紙風船』演出:明神慈(ポかリン記憶舎)

 「紙風船」は大好きな戯曲です。登場するのは白い清楚な衣裳の男女2人(古屋隆太と中島美紀)。結婚して1年経ち、子供もまだ居なくて少々倦怠気味の若夫婦です。
 男は新聞を読み、女は本を読みます。台本を読んでいるのかセリフを話しているのか、微妙なラインを行ったり来たり。静かでとても官能的です。

 毎週やってくる休息の日・日曜日。家でゆったり休みたい夫と、せっかくの休日だから外出したい妻。出かけようにももう午後を過ぎています。
 鎌倉のホテルに行く空想をする2人。海辺で「お前の身体はそんなに~~だったか」と妻の身体をうっとりと眺める内に、夫が妻にくちづけ。演技では中島さんがキスされたような表情をするだけで、実際にはキスはしません。・・・てゆーか、これ、ト書きにはないですよね!?すっごーーーーーいっ!!
 そして夫は「こっちへ来いよ」と寝間に誘うけれど、妻は「あなたはちょうどいい所を知らない」と、聞きません。私は「あぁ、そういう意味だったのか・・・!」と新たな発見をした心持ちでした。
 男がしたいことをさせない女。女の願いに気づかない男。決して埋まらない溝がそこにはあり、絶望がじわりと空間に染み渡ります。

 2人が正直な気持ちを告白して(男「日曜日が恐ろしい」など)、互いに受け止めて合います。とても残酷な時間。2人は別れない(離婚しない)と決めているので、「どうしようもない」「何にもならない」という絶対的なあきらめがあり、すれちがったままの夫婦が残ります。近所の子供が遊びに来るエンディングで、その距離が狭まらない現実をさらにつきつけられました。
 短い間に、触れ幅大きく旅をしました・・・。

 古屋隆太さん。なんだあの声!あの顔!エロすぎ!たまりません!反則!(笑)
 中島美紀さん。ひやっとした(冷静な)存在感だけど、どこかコミカルな空気が漂うのが素敵です。

Project of Drama-Reading from Yokohama #3 2007
【Aプロ】脚本:岸田國士 演出:『動員挿話』楢原拓(チャリT企画)、『顔』矢野靖人(shelf)
『動員挿話』出演:松本大卒(チャリT企画)、ザンヨウコ(危婦人)、内山奈々(チャリT企画)、楢原拓(チャリT企画)、竹内洋介(チャリT企画)、小杉美香(チャリT企画)、長岡初奈(チャリT企画)、他
『顔』出演:川渕優子(shelf)、甲斐博和(徒花*)、高田愛子(ユニークポイント)、他
【Bプロ】脚本:岸田國士 演出:『クニヲと俺と。(入門編)』菊川朝子(Hula-Hooper)、『紙風船』明神慈(ポかリン記憶舎)
『クニヲと俺と。(入門編)』出演:上枝鞠生(Hula-Hooper)、上田遥、大西智子(あなざーわーくす)、沖田愛(テアトル・エコー)、鯉沼トキ、杉岡阿希子(殿様ランチ)、平川道子、高橋美貴(あなざーわーくす)、吉田麻起子(双数姉妹)、菊川朝子(Hula-Hooper)、見学監督:梅澤和美(Hula-Hooper)、
『紙風船』出演:中島美紀(ポかリン記憶舎)、古屋隆太(青年団)
[音響]島貫聡 [照明コーディネイト]伊藤孝(ARTCORE design) [舞台監督]小野八着(Jet Stream) [宣伝美術]オクマタモツ [記録撮影]升田規裕(M's Video Group)  [制作]薄田菜々子(beyond) [プロデューサー・総合ディレクター]矢野靖人(shelf) [主催]横濱・リーディング・コレクション実行委員会 [共催]横浜SAAC(横浜舞台芸術活動活性化実行委員会)・横浜市市民活力推進局
2008/07/09発売 前売2,200円 / 当日2,700円(日時指定・全席自由席)*セット券販売(前売りのみ)2プログラム(4作品)セット券・・・3,800円(1作品950円)*リピーター割引・・・半券を持ってご来場頂いた際には、各回当日料金より200円割引。
http://yokohama-reading.org/

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Posted by shinobu at 22:29 | TrackBack

デス電所『輪廻は斬りつける(再)』08/16-21駅前劇場

 竹内佑さんが作・演出されるデス電所は大阪の劇団です(過去レビュー⇒)。チラシがいつもかっこいいアニメ風イラストで惹かれるんですよね。
 客演さんを呼んでの豪華キャスト公演(ですよね?)でした。

 ⇒CoRich舞台芸術!『輪廻は斬りつける(再)

 ≪あらすじ・作品紹介≫ CoRichより
 謎の新興宗教に立向う工場作業員と少女殺人事件を追う刑事と大人に振り回される子供スターとがお互いの物語はどーでもいー感じで走り回った挙句に自分の物語すらもどーでもよくなるどーでもいー物語。これを神話と言い切ってしまってもいーですか?
 ≪ここまで≫

 私はニットキャップシアター、スクエア、劇団衛星を観たことがあったので、前説のネタ(客演さんがそれぞれの東京公演のことをしゃべったりする)のは笑えました。でも、知らない人にとってはただの内輪ウケなんじゃないかな~と、観ていて心配にもなりましたね。

 ほぼ何もないステージ。下手にはキーボードと演奏者(和田俊輔)。額縁いっぱいに動画が映されるのが迫力です。お馴染みのオープニングの歌は、今作のために新たに追加された部分が特にカッコ良かったな~。

 上演時間はたしか2時間ぐらいだった気がするんですが、やっぱり長く感じました。ストーリーは全然覚えていられないぐらい、ぐるぐるとひっくり返ったり、いきなり新しいエピソードが加わったりして、終盤になると「わかんないや、もういっか」みたいな心境でした。
 作品紹介に「どーでもいー」と書いてらっしゃいますし、ほんとにストーリーはどーでもいーんだと思います。だったら上演時間はもっと短い方がいいんじゃないかしら。

 紙本明子さん(劇団衛星・ユニット美人)は白いワンピースで美しくて、魅力がよく出ていたと思いますが、北村守さん(スクエア)はあんまりだったような。スクエアでの繊細な呼吸が忘れられないんですよね。

 ここからネタバレします。

 終盤に入るかどうかのところで、「●●だと名乗っていたが、実はその人は●●じゃなかった」的な大転換があって、そこが面白かったです。んー、もう覚えてないです、すみません。

≪大阪、東京≫ 芝居流通センターデス電所
出演=豊田真吾、山村涼子、田嶋杏子、丸山英彦、福田靖久、米田晋平、松下隆、竹内佑
北村守(スクエア)、岡部尚子(空晴)、ごまのはえ(ニットキャップシアター)、紙本明子(劇団衛星)、根田あつひろ
作・演出:竹内佑 作曲・演奏:和田俊輔 舞台監督:中村貴彦[大阪公演] 岡一代[東京公演]/舞台美術:池田ともゆき/照明:西山茂、加藤直子/音響:三宅住絵/衣裳:田中秀彦(iroNic ediHt DESIGN ORCHESTRA)/映像:松下隆、本郷崇士/振付:豊田真吾/宣伝美術:渕野由美/写真:イトウユウヤ/協力:空晴、キューブ、劇団衛星、スクエア、ニットキャップシアター/制作協力:金田明子、細川展裕(ヴィレッヂ)[東京公演]、柴原智子(ヴィレッヂ)[東京公演]/制作:小林みほ、西川悦代/主催・企画製作:デス電所
全席指定/前売¥2,800/当日¥3,000 学生 前売¥2,000/当日¥2,300(大学生以下・要学生証提示) (19日6:00・21日2:00) 前売\2,000/当日¥2,300
http://www.deathtic.com/

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Posted by shinobu at 21:25 | TrackBack

パルコ『LOVE 30 vol.2~女と男の物語~』08/15-24パルコ劇場

 「3人の作家(ライター)によるオリジナルドラマ。男女2人×3組の男女(カップル)による30分一本勝負。」という企画の第2弾です(第1弾は観てません)。
 小劇場ファンには嬉しい限り。だって脚本家が青木豪さん(グリング)、赤堀雅秋さん(THE SHAMPOO HAT)、田村孝裕さん(ONEOR8)なんですから!

 ⇒CoRich舞台芸術!『LOVE 30 vol.2

 3「箪笥の行方」はうまくいってたようですが、1と2は愛することが難しい登場人物がいて(2人のうちの1人がそうだとつらい)、期待通りには楽しめませんでした。

 あらすじは公式サイトより引用。ここからネタバレします。

1「北向きの女」脚本:青木豪(グリング) 出演=純名りさ、内田滋
 ≪あらすじ≫
 とあるマンションの一室。男はこの部屋を女に売り込もうと必死だが、女につっこまれてしどろもどろである。「降参です、先輩」男が女に向かって言う。そう、実はこの二人は不動産屋の元同僚で先輩後輩の仲だった、先輩の女性に呼び出されて、やってきた男だったが、思い出話をしているうちに変な方向に話が曲がっていき・・・
 ≪ここまで≫

 純名りささんは美人でスタイル抜群で歌も踊りもできる女優さんですよね。お姫様のような役をやられるのがいいんじゃないかな~と思いました。“必死に強がってる、超弱い女”であることがわかれば、内田さん演じる後輩の優しさも伝わると思うのですが。


2「アルゼンチンにて」脚本:赤堀雅秋(THE SHAMPOO HAT) 出演=鈴木砂羽、尾美としのり
 ≪あらすじ≫
 高校の同窓会の二次会だったカラオケボックスの一室。何故か最後に残った女と男。
 実はこの二人は一時は結婚まで考えた仲である。しかしひょんなことから別れて数年、この同窓会で別れて以来初めて顔を合わせたのだった。歌わないカラオケボックスの個室は、微妙に沈黙が痛い。そんなときに男が取り出した一枚の写真とは・・・。
 ≪ここまで≫

 カメラマンになる夢をあきらめたタクシー運転手の男に、もっと可愛らしさが欲しかったです。でないと女が彼の方になびく理由が見つからない。
 カラオケボックスの名前が「アルゼンチン」であることの面白みが、もっと出せたんじゃないかなって思いました。「アルゼンチン」という言葉が出る度にクスっと笑えるとか、そういう仕組みがあるんじゃないのかな~。


3「箪笥の行方」脚本:田村孝裕(ONEOR8) 出演=小西美帆、羽場裕一
 ≪あらすじ≫
 引っ越しの荷物が散らばっているアパートの一室。この部屋で男と女は3年間一緒に暮らしていたが、今日限りで同棲を解消するようだ。それぞれに引っ越すようで、荷物の仕分けもすんでいる・・・ようだが、たったひとつ何の変哲もない箪笥を巡って、結論が出ない。まもなく運送屋もやってくるのに、お互いに何故相手がそんなに箪笥にこだわるのか探ろうとするが・・・。
 ≪ここまで≫

 「あの羽場さんがこんな3枚目をやるなんて!(笑)」という、「羽場さんがやるから笑える」という域をはるかに超えるオバカをやってくださって、私も気持ちよく笑わせていただきました。わかってるのに先を知りたくてドキドキするし、ラブコメの王道をしっかり見せてくださったように思います。

≪東京、福岡、愛知、大阪≫
「北向きの女」出演=純名りさ、内田滋 「アルゼンチンにて」出演=鈴木砂羽、尾美としのり 「たんすのゆくえ」 出演=小西美帆、羽場裕一
演出:宮田慶子 音楽:稲本響 脚本:青木豪(グリング)「北向きの女」/赤堀雅秋(THE SHAMPOO HAT)「アルゼンチンにて」/ 田村孝裕(ONEOR8)「箪笥の行方」 美術:松井るみ 照明:中川隆一 音響:長野朋美 衣裳:前田文子 ヘアメイク:西川直子 演出助手:髙野玲 舞台監督:瀧原寿子 林和宏 制作助手:長沢弥生 宣伝美術:東學 宣伝写真:谷敦志 プロデューサー:佐藤玄 深沢義啓 尾形真由美 製作:山崎浩一 企画・製作:(株)パルコ
【発売日】2007/07/22 7,000円(全席指定・税込)★=平日マチネ料金6,000円(全席指定・税込)
http://www.parco-play.com/web/play/love30_02/

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Posted by shinobu at 14:51 | TrackBack

【ワークショップ】「時間堂ワークショップ」参加者募集(2007年8月28日〆切)

 時間堂CoRich)の黒澤世莉さんのワークショップ参加者募集です。詳細はこちら
 『おやつの時間堂「proof」』の折り込みチラシに入っていた情報です。黒澤さんはアクターズワークスの柚木佑美さんに師事し、新国立劇場演劇研修所で演出助手などもされています。

■WS詳細(公式サイトより部分引用)
[日時] 2007年9月1日(土) 14:00~21:00
[場所] 東京都北区王子近辺(JR王子駅より徒歩10分)
[費用] 4,200円
[内容]
 前半: 基本的なエクサイズ、シアターゲーム
 後半: 即興、あるいはテキストを用いた短いシーン稽古
 (後半のメニューは参加者の希望に応じて決定します)
[備考]
・ 〆切:2007年8月28日(火)
・ 定員に達し次第、募集は締め切らせて頂きます。

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Posted by shinobu at 09:06 | TrackBack

にしすがもアート夏まつり'07・子どもに見せたい舞台vol.1『オズの魔法使い』08/25-09/01にしすがも創造舎 特設劇場

 Ort-d.dの倉迫康史さんが演出する『オズの魔法使い』。子供(おそらく幼児から小学校低学年)向けのお芝居です。客席にはお子様連れの家族がいっぱい。なんと子供0円、大人500円という超破格公演なんです!

 役者さんも、装置も、衣裳も、照明も・・・あ~ん、素晴らしかったです。もー500円でこんなに充実した演劇体験をさせていただいて感謝感激♪ 豊島区の主催公演なんですね。かっこいいよ!豊島区!!舞台芸術ができる社会貢献ってこういうことなんじゃないかと思います。

 上演時間は約1時間50分(休憩10分を含む)。けっこう長時間ですが、子供たちはしっかり静かに鑑賞していました。
 発売するやいなやネットでは完売ステージが続出しましたが、まだ残席のあるステージもあります。当日券も毎ステージ出るそうです。

 ⇒初日舞台写真(公式ブログより)
 ⇒CoRich舞台芸術!『オズの魔法使い
 レビューは後ほどアップ予定。

にしすがもアート夏まつり'07 子どもに見せたい舞台 vol.1
【出演】ドロシー/前田幸恵 かかし/大高浩一 ブリキ/岡田宗介(Ort-d.d) ライオン/山田宏平(山の手事情社) トト/井上貴子(双数姉妹) よい魔女/三橋麻子(Ort-d.d) わるい魔女/スズキハルヨ 緑男/キャスター/小林至(双数姉妹) オズ大王/村上哲也(Ort-d.d) アンサンブル/金子由菜 小林紀貴 杉村誠子 平佐喜子 谷口直子 凪景介 森山冬子 渡辺麻依
原作:フランク・ボーム(訳/幾島幸子) 台本構成:山田裕幸(ユニークポイント)台本・演出:倉迫康史(Ort-d.d) 振付:井手茂太(イデビアン・クルー) 音楽:棚川寛子 美術:伊藤雅子 衣装:竹内陽子 音響効果:藤田赤目 音響:村上真紀 照明:佐々木真喜子(ファクター) 小道具:清水克晋(ファクター) 演出助手:佐藤泰紀 音楽協力:藤居進斗 舞台監督:寅川英司+松下清永+鴉屋 演出部:青木規雄 引光哲也 照明操作:木下尚己 萩原翔太 柗本理恵 舞台監督助手:森岡美希 衣裳助手:若菜裕子 河淵梨恵 馬場江梨子 川田佳代 古館友貴子 装置:C-COM 音響協力:オタリテック(株) 宣伝美術:Flatroom イラスト:吉田ユニ 記録映像・写真:篠塚智子 プロデューサー:蓮池奈緒子 堤康彦 制作統括:武田知也 制作:宮浦宣子 内川恵理 五十嵐洋子 広報:宮崎あかり 総務・票券:堤久美子 経理:渡辺知子 制作アシスタント:櫻井由佳 松嶋瑠奈 インターン:村井裕実子 飯島悠 齋藤咲 にしすがも創造舎特設劇場:引光哲也 サウンド・ウィーズ ファクター 企画・製作:NPO法人アートネットワーク・ジャパン(ANJ) 主催:豊島区 NPO法人アートネットワーク・ジャパン(ANJ)・NPO法人芸術家と子どもたち
【休演日】8/29(水)【発売日】2007/07/07 おとな500円(65歳以上は無料) 子ども(3歳以上~中学生)無料(全席自由)
http://sozosha.anj.or.jp/natsumatsuri2007/oz_top.html

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Posted by shinobu at 00:52 | TrackBack

2007年08月25日

THE フォービーズ『夏海とツバサの離婚★旅行』08/24-26笹塚ファクトリー

 THE フォービーズ吉本興業に所属される方々が旗揚げした劇団のようです。第11回公演ということで、2005年の旗揚げからかなりの本数を上演されているんですね。

 お笑い芸人さんがゲスト出演されたり(配役があって演技もされます)、開演前に芸人さんが前座をつとめたり。上演時間は約2時間。客席はほぼ満員。空調がちょっと寒かったかな。

 ⇒CoRich舞台芸術!『夏海とツバサの離婚★旅行
 ⇒T★1演劇グランプリ・第一次審査通過団体です。
 レビューをアップしました(2007/08/26)。

 ≪あらすじ・作品紹介≫ CoRichより。とても詳しいあらすじです。
 幼馴染の夏海とツバサは、高校時代に付き合い、そのまま結婚。しかし、結婚から10年後・・・夫婦関係は冷め切っていた。仕事が忙しく、妻の夏海に構ってやれないツバサ。会話は朝と夜の挨拶のみ。夜の営みは半年に一回にまで激減。いつまでも新婚のようなラブラブ生活を夢見る夏海は、現在の夫婦関係に不満を抱いていた。そんな2人がひょんなことがキッカケで離婚することになる。二人は夏海の親に離婚の報告をするために故郷へ帰る。しかし、皮肉にも夏海の親は結婚記念の旅行へ行っていた。ボウリング場とショッピングモールくらいしかない田舎町。東京へ帰る電車はなく、二人はしぶしぶ同級生のごっさんが経営するその町、唯一のホテルに泊まることに・・・

 ごっさんはテンションアゲアゲで大歓迎!しかし、ごっさんに離婚したことがバレたくない夏海とツバサは仲のいい夫婦を演じる。が、ごっさんがいなくなった途端、気まずい雰囲気・・・翌日、朝一番の新幹線で町を出ようと決意する2人だが、ロビーにいたのはノリノリごっさん!思い出の地を巡る懐かしツアーを企画したからみんなでまわろう!と、張り切っていた。夏海とツバサは渋々、ごっさんに乗っかることに・・・

 思い出の地を巡りながら、過去の夏海とツバサ、そしてその2人に関係してくる同級生たちのバックボーンを掘り下げていき、夏海とツバサがどういう経緯で付き合うようになり、結婚まで至ったかを現在と過去のカットバックでみせていきます。過去を掘り下げていくうちに次々と新しい事実が明るみになっていき、離婚旅行をすすめる夏海とツバサは、再度互いの愛をみつめなおすのであった。果たして夏海とツバサは離婚旅行を終えたとき、何を感じ、2人の関係はどうなるのか?そのポイントが今回のストーリーの見所でもあります。

 ゲストには、吉本の若手芸人、アップダウンを招き、吉本新喜劇とは一味違う、笑い+感動芝居をお送りします。
 ≪ここまで≫

 「笑っていいとも!」な感じのセットで、役者さんがコスプレっぽい衣裳をどんどこ着替えて登場します。体操みたいなダンスがあったり、とにかく大声で客席に向かって叫んだり、急展開する時に皆がそろって同じポーズで床で足を鳴らしたり。BGMがめちゃくちゃ多かったですね。何か説明するようなメロディアスな音が常に鳴っているような状態。

 離婚を決心した結婚歴10年のカップルの現在と過去(高校時代)とが交差するドタバタ恋愛コメディーで、お笑いのネタのためのシーンが盛り沢山でした。セリフは容易に次の展開が予想できる使い古された言葉の連続で、わかりやすさを狙っている以上のわかりやすさでした。全く何も考えないで観て、脈絡に関係なくその時どきのネタで笑うことを意図しているのかなと思いました。

 「テレビ的」で「キャラクターが個性的」という劇団の特徴を生かすべく、今回は「マンガ」をキーワードにして作品作りをされたそうです(パンフレットより)。私はテレビをあまり見ないので、どこが「テレビ的」なのかははっきりとはわからなかったですが、間髪居れずに何かしらドカドカとやり続ける状態は、バラエティ番組に似ているのかもしれません。だとしたら上演時間が長すぎますよね。再現ドラマの連発のようでもあったので、せめて1時間30分弱であって欲しかったです。

 若い頃の夏海役の岡田亜矢さんはモーニング娘。の安倍なつみさんに似てるな~って思いました(一緒に観た人は「モー娘。なら藤本美貴の方が似てる」って言ってたけど)。可愛らしいんですが、膝が外向きに開くのが気になっちゃいました・・・。

 クスリとも笑えない私をよそに、客席には笑いがいっぱい起こっていました。
 終演後に次回公演の宣伝映像が流されました。タイトルも内容も主役も決まっているようで、そういう観客へのアピールは良く出来ているなと思いました。

 ここからネタバレします。

 例えば白鳥財閥の一人娘・白鳥桜が登場する時は、その手下2人も含めて3人で「オーーっホッホッホッ!」と必ず言います。キャラクターの味付けがくどかったですね。個性的なのではなくステレオタイプなのだと思います。

 設定やセリフにひっかかることが多々あり。結婚して10年も経つカップルが「新婚時代の新鮮さを保ちたい」なんて思わないよな~(せめて結婚して3年とかなら納得できるかも)。10年も経ってるならまず子供が居るでしょう。子供が居ないなら、妻は何より子供について悩んでいるんじゃないかな~。「PTAよりお知らせです」と、PTAが学校放送をするのはありえないよな~。「母子家庭!(笑)」ってセリフは、母子家庭を思いっきり蔑視してるよな~・・・などなど。遊び半分のような状態で差別発言が出てきて、それを観客も笑うっていう状況が恐ろしかったです。

~MAJIで恋するフォービーズ~
出演=青柳佑弥、アッハー小泉、阿山真也、いぐちしおり、伊藤真奈美、今村聡、及川勝、岡田亜矢、高平圭、宮本徳子、一ノ瀬亮太、藤原透、水野以津美、若原富実男、石垣枝里、倉田あすか、藤原玲子、阿部浩貴(アップダウン)、竹森巧(アップダウン)
【脚本】小杉四駆郎 【演出】堀江B面 【企画・制作】吉本興業 【音響】眞澤則子(パーツスタジオ) 【照明】日高勝彦(日高舞台照明) 【映像】関純子 【チラシデザイン】上屋敷拓巳 【イラスト】藤内愛子 【ホームページ】新浦大蔵 【美術】馬場克之(ビーステージ) 【舞台監督】MR. UZAI 【プロデューサー】萩原靖高(吉本興業)
【発売日】2007/07/01 前売り2500円、当日3000円。全席自由。
http://www.the4b.com

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Posted by shinobu at 13:32 | TrackBack

2007年08月23日

こまつ座&シス・カンパニー共同プロデュース『ロマンス』08/03-09/30世田谷パブリックシアター

 今年最大の目玉公演と言っても過言ではない、超豪華キャスト&スタッフの公演です。ちゃんと初日に幕も開いて(笑)良かったですよね。

 井上ひさしさんが描くチェーホフの人生。もっぱらヴォードヴィル(Wikipedia)。上演時間は約3時間(途中15分の休憩を含む)

 平日夜は18:30開演ということもあってか、当日券は完売していませんでした。ご興味ある方は早めに観に行かれることをお薦めします。後半になると当日券も争奪戦になるでしょうから。

 ⇒CoRich舞台芸術!『ロマンス

 井上ひさしさんの生きた言葉が味わえることが、とにかく嬉しいです。ありがたいです。やはり今作でもチェーホフのセリフで何度も涙が流れました。

 チェーホフの妹マリア・チェーホワを松たか子さん、妻オリガ・クニッペルを大竹しのぶさんが演じ、男優さん4人全員がチェーホフを演じます。少年(井上芳雄)、青年(生瀬勝久)、壮年(段田安則)、晩年(木場勝己)という風に。松たか子さん以外の役者さんはその他にも色んな役をかわるがわる演じられて、歌がいっぱいの音楽劇としてリズミカルに展開していきます。※松さんは前半に警官役がありましたね。

 無意識にこまつ座の作風を期待していたようで、全体的に私には物足りなかったですね。光輝くような歓待の気持ちが伝わってこず、演技も予定通りにこなしているように感じ、サラっと通り過ぎることが多かったです。

 私個人の感覚ですが、役者さんの中では井上芳雄さんと段田安則さんが良かったな~と思います。

 ここからネタバレします。

 人間だけが生み出せるもの、それは「笑い」。「チェーホフが愛したのはヴォードヴィルだった」ということから、この作品自体もすっかりヴォードヴィルとして作り上げるという趣向だったようですね。でも私が笑えたのは最後のトルストイ(生瀬勝久)ぐらいだったかな~。役者さんが笑わせるための得意技を披露されているように感じることが多かったです。

 モルヒネ自殺をしてしまった役人の遺言「感嘆符~~~」で泣いちゃいました。
 奔放なオリガの登場でマリアの心がゆらぎ、オリガの「たばこの煙の歌」が響く中のマリアの後ろ姿が良かった。※歌のタイトルは知りません。
 壮年チェーホフ(段田安則 )が女優オリガと出会って「三人姉妹」の話をするところの、段田さんの演技が素敵でした。

出演=大竹しのぶ 松たか子 段田安則 生瀬勝久 井上芳雄 木場勝己 ピアノ演奏=後藤浩明
作=井上ひさし 演出=栗山民也 音楽=宇野誠一郎 美術=石井強司 照明=服部基 音響=秦大介 衣裳=前田文子 振付=井手茂太 歌唱指導=伊藤和美 演出助手=豊田めぐみ 舞台監督=三上司 プロデューサー=北村明子(シス・カンパニー)、井上都(こまつ座) 制作=高林真一・谷口泰寛(こまつ座)、荻原朱貴子・李銀京(シス・カンパニー) 提携=世田谷パブリックシアター 企画・製作=こまつ座&シス・カンパニー
【発売日】2007/06/16 全席指定 S席8400円 A席6300円
http://www.komatsuza.co.jp/
http://www.siscompany.com/03produce/18romance/

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Posted by shinobu at 23:19 | TrackBack

2007年08月22日

【写真レポート】福岡&北九州・劇場めぐりの旅08/18~19(2日目)

kitakyushu_iron1.JPG
これ↑な~んだ!?

 福岡&北九州に観劇&劇場めぐりの旅、2日目のレポートです。1日目はこちら。福岡でマチネ観劇し、新幹線よかよか切符で北九州へ。かけ足の1日でしたが、超充実!ご案内くださった皆様、本当にありがとうございました。

 宿泊したのはキャナルシティ博多内のグランド・ハイアット・福岡。何らかの事情で部屋がシングルではなく2名用のスタジオに変更になり、1人で超ゴージャスな夜になりました♪(笑)

 朝食をすませてチェックアウトして、待ち合わせまでの時間はキャナルシティ博多の中をぶらぶらとウィンドウ・ショッピング。おしゃれなお店がいっぱいでSALEもしてるし、いろいろ目移りしたんですが結局なにも買わず・・・うーん、貧乏性だ。

fukuoka_canalcity1.JPG

 ↑キャナルシティ博多は名称どおり運河の町なんですね。噴水のショーが涼しげです。ぽんプラザホールはここから歩いてすぐ。連絡通路でつながっています。

 昼食は川端商店街の中にある福岡ラーメン「しばらく」に連れて行ってもらいました。チェーン店なんですね。

fukuoka_shibaraku.JPG

 ↑普通のラーメンをいただいたんですが、とんこつスープでこってりなはずなのに、意外にあっさりで、満足。お値段はたしか500円ぐらい。

 劇団ぎゃ。『無題』の会場である大博多ホールへ。車がいっぱい通る大きな通りを歩きましたが、かなり暑かった。でも東京都心の暑さに比べたら快適なんですよね。ただ純粋に暑いだけだからじゃないかな~。東京の不快さには太陽の暑さ以外の要素があるように思います。

fukuoka_daihakata.JPG

 ↑大博多ホールは大博多ビルの12階。古いコンサートホールのような劇場でした。福岡ってビルの中の劇場が多いですよね。

 福岡駅で新幹線よかよか切符(福岡・北九州往復で3000円)を購入し、出発の時間まで喫茶店で談笑。昨日からずっとお付き合いくださったFPAPの高崎さん、本当にありがとうございました!

 福岡駅から小倉駅って新幹線で20分足らず。近っ!自由席が満席だったので通路に立ってたんですが、全く苦痛はありませんでした。
 小倉駅で谷瀬未紀さんと待ち合わせして、北九州芸術劇場をご案内いただきました。北九州芸術劇場はリバーウォークという商業施設に併設されているんですね。

kitakyushu_fukinuke.JPG

 ↑吹き抜けが絵になる!劇場には“日本の色”を使っているそうです。たしかにこの黄色と赤の濃さには和の印象がありますね。建築デザイナーはキャナルシティ博多と同じ方だとか。

 まずは約1300人収容の演劇専門劇場、大ホールへ。マホガニーを思わせる赤茶色の品の良い壁とシックな青いクッションの客席・・・ゴージャスです。なんと1席に1つずつ空調が設置されていました!!「必要な部分だけを冷やす(暖める)ので省エネになりますし、快適です」(劇場広報の加久さんより)。ふわ~・・・ぜひぜひ座って観たいっ!
 そして、ロビーの窓は絶景でした!

kitakyushu_dai.JPG

 ↑中央に見えるのは小倉城。春のお花見シーズンは最高らしいですよ♪

 次はぐっとムードの違う中劇場(約700席)へ。

kitakyushu_chu.JPG

 ↑宇宙船のコックピットみたいな印象も。黒・灰色を基調にしたモダンな客席でかっこ良かったわ~。座席は大ホール同様、各席空調でした・・・!ストレート・プレイとか観たら最高だろうな~。

 劇場主催事業ダンスラボ2007「迷路のつくりかた」(2007年9/8~9@小劇場)の稽古場を見学させていただきました。振付・演出は水と油のじゅんじゅんさん。ラボ参加メンバーのお友達・明石修平さん(picoLoop%)と久々の再会を果たしました。

 創作現場は、とにかく・・・見た目が地味!(笑) でもね、しばらくじーっと眺めていると、同じ振付を何度も繰り返すうちに新しい空間が生まれていくのがわかるんです。みんなの汗と揺れる髪、演技(ダンス)をしている時にキュっと締まる呼吸を感じて、クリエイションの瞬間を目の当たりにしていることを嬉しく思いました。男の子と女の子の2つのグループに分かれてのお稽古で、女の子グループのシーンは・・・思わずクスって笑ってしまう、ユーモラスなダンス(?)でした。

 15分ほど見学してから次は小劇場(約200席)へ。青年団の山内健司さんのワークショップが開催中でした。ん~、稽古場といい小劇場といい、東京と北九州はつながってるね!!

 そして、今回の北九州行脚の目的のひとつだった、“飛ぶ劇場20周年記念展示!「飛ぶ劇場アーカイブ~20年間の軌跡~」”を拝見(2007年8/30までやってます)。劇場内で飛ぶ劇場の泊篤志さんにばったりお会いできたので、一緒に会場に行きました。

kitakyushu_tobugeki.JPG

 ↑過去公演のポスターや衣裳、小道具、劇団ゆかりの品々などが盛りだくさん。
 なかでも私が飛びついたのは舞台装置の模型!!

kitakyushu_iron2.JPG

 ↑『IRON』の舞台。悲しい卓球部の人々。小さな家が動くんです。民族舞踊の熱いシーンが胸によみがえります。あのシーンをもう一度観たい。

kitakyushu_mimokokoromo.JPG

 ↑こちらは私が飛ぶ劇場に初めて出会った演目『ミモココロモ』の舞台。窓の外をヘルメットと棒を持った若い男たちが駆け抜けました。

 飛ぶ劇場の創立20周年記念公演『あーさんと動物の話』はなんと全国7ヶ所縦断ツアー。東京公演は1/31~2/3@こまばアゴラ劇場です。

 飛行機の時間が迫り、かけ足でJR西小倉駅へ。滞在時間は1時間30分ぐらいだったかな~。短時間でギュっと凝縮した劇場の旅でした。谷瀬さん、ありがとうございました!

 帰りの飛行機ですっかり棒になった足をいたわりつつ(苦笑)、この2日間を振り返りました。インターネットによって軽々と距離や国境を越えられた感がありましたが、やっぱり人と人とのつながりが大切ですね、今更ですが。何かを生み出すのは人間なんだな~と改めて実感できました。
 九州の作り手および観客の方々と実際にお会いして交流できて、視野が広がったように思います。旅行が苦手な私ですが、九州にはまた来年も行くかも♪今度は北九州芸術劇場で観劇したいですね~。

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Posted by shinobu at 14:14 | TrackBack

【写真レポート】福岡&北九州・劇場めぐりの旅08/18~19(1日目)

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ぽんプラザホール看板

 8/18(土)~19(日)に福岡&北九州に観劇&劇場めぐりの旅に行ってまいりました。九州の作り手および観客の方々と実際にお会いして交流できて、とても充実した1泊2日となりました。

 新しく買ったカメラで嬉しそうにいっぱい写真を撮ってきましたので(笑)、写真付き旅行レポートを書いてみました。

 ※このページは1日目のレポートです。2日目はこちら(後ほどアップ)。

 今回の旅行のきっかけを作ってくださったのはFPAP(エフパップ)事務局長の高崎大志さん。運営されているぽんプラザホールにお邪魔しました。高崎さんはCoRich舞台芸術!で活発にクチコミをされている、福岡こりっちメンバーの方々との交流会も企画してくださいました。こりっちの掲示板にレスがいっぱいついてますよ~♪

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 ↑大野城まどかぴあ主催・FPAP共催「扇田昭彦の劇評ワークショップ」(2007年9/30~11/23)の打ち合わせ中。

 まどかぴあで3度に渡って開催される「Link Theater2007 ~エンゲキ上映×パネルトーク~」もとっても面白そうな企画ですね。ラインアップが素敵です。9/30(サードステージ『僕たちの好きだった革命』)、10/13(NYLON100℃『フローズン・ビーチ』)、11/23(劇団M.O.P.『ズビズビ。』)。

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本田範隆さん

 ←元気いっぱいのFPAPの本田範隆さんは、「6大学演劇部合同公演」(2007年10/11~14)のプロデューサーです。東京のシアターグリーン学生芸術祭の福岡版かしらと思いきや、チラシに「6つの大学演劇部が、1つの戯曲で一つになります。」というキャッチコピーが!これは面白そうだっ!!戯曲は何になるのかしら?

 ぽんプラザホールの中も見学させていただきました。108席のゆったりした客席で、どこに座っても見やすそう。野平日報には「この劇場凄い恵まれすぎて意味が分からない。」(2006年12/16の記事)というコメントも。MONOの土田英生さんの脚本を上演する『遠州の葬儀屋』(9/11~16@ぽんプラザホール)には惹かれるな~。

 そして、福岡劇場めぐりの旅に出発! てくてく歩いて回れるのが嬉しいです。

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 ↑まずは、なぜか仏壇屋さんがいっぱいあるという(笑)、活気のある川端商店街をとおり抜けて、

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 ↑博多座へ。デカい!きれい!!ビル全部が博多座だそうです。


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 ↑博多座1階に「演劇書の店」(紀伊國屋書店)があったので嬉しくなって撮影。


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 ↑あじびホールが入っている福岡アジア美術館。絵本のイベントが開催中で親子連れでいっぱい。あじびホールでは「ごんぎつね」の絵本調アニメが上映されていました。

 文化芸術情報館アートリエで福岡演劇事情に触れ、食事(瓦焼きそば&鯛茶漬け)をしてから、ギンギラ太陽’S公演を思い出しつつ(笑)西鉄巡回バスに乗って、円形ホールのあるアクロス福岡へ。

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 ↑アクロス福岡は段々畑みたいに緑がいっぱいでした。そういえば窓すべてにアサガオのつるが伸びていたビルもありました(役所のエコ対策アピールらしい)。

 5月に私の大好きなチェルフィッチュ『三月の5日間』が上演された、イムズホールが9階に入っているビルへ。

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 ↑札幌福岡演劇交流プロジェクト「Meets!2007」参加・イナダ組『コバルトにいさん』の大きな垂れ幕がかかっています。1日だけの公演のためにこんな垂れ幕が!

 ビルの吹き抜け部分では、巨大な「不思議の国のアリス」のインスタレーション展示がありました♪

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 ↑絵本関連のイベントが同時多発に行われていたんですね。夏休みの子供が大喜びでしょう。私も大はしゃぎ(笑)。

 本日の最終目的地・西鉄ホールに到着して藍色リスト『ハルカナ』観劇。その後はホール向かいの居酒屋「御膳屋・奥離」でこりっち福岡オフ会でございました♪

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 ↑作り手と観客の両方が集まって、ざっくばらんに演劇談義。藍色りすとの太田美穂さんもお忙しい中いらしてくださり、上演後の濃ゆ~い交流にもなりました。熱いネ!福岡演劇界!

 2次会は福岡演劇人御用達の居酒屋「ふとっぱら・天神店」へ。

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 ↑焼きラー。ヤキソバならぬ焼きラーメン。普通にソース味なんですが、麺が福岡ラーメンの麺なのです。美味しかった!

 ⇒福岡&北九州・劇場めぐりの旅(2日目)に続く

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Posted by shinobu at 09:35 | TrackBack

2007年08月21日

青年団若手自主企画vol.34・あなざ事情団『ゴド侍』08/17-21アトリエ春風舎

 あなざ事情団は松田弘子さん(青年団)、倉品淳子さん(山の手事情社)、わたなべなおこさん(あなざーわーくす)の3人のユニットです。ユニット名はそれぞれが所属する劇団名を足しているんですね。大胆な参加型演劇を体験するのは2度目です(⇒1度目)。

 今回もいっぱい参加して、いっぱい笑いました。女優さん2人のはちきれんばかりのパワーと、海のような寛大さに胸がいっぱいになりました。

 ⇒CoRich舞台芸術!『ゴド侍
 ⇒T★1演劇グランプリ・第一次審査通過団体です。
 レビューをアップしました(2007/08/26)。

 サミュエル・ベケットおよび彼にまつわる事柄を材料に、観客を巻き込んで楽しむ約1時間30分。2人の女優さんが「ゴドーを待ちながら」の登場人物やベケットの妻、愛人などを演じられますが、その内容が大事なのではないんですよね。ワハハと笑ってる内にたち現れる、不条理な劇空間を楽しむ(味わう)という趣向だったように思います。だからベケットのことを知らなくても全く問題なし(笑)。もちろん、知っていた方が細かく楽しめますが。

 2畳ぐらいのステージの四面を客席が囲みます。最前列の人はほとんど出演者のような扱いで、セリフを話したり、質問に答えたり、大活躍(笑)。お客様がまた、進んで面白いことをされるんですよね~。開演前のリラックスした大歓迎ムードやフレンドリーで落ち着いた導入の賜物だと思います。

 倉品さんの暑苦しいぐらいの熱演と、松田さんの体型を生かした声量が可笑しかったな~。計算して道化をやってらっしゃるのが凄い。

 ここからネタバレします。

 チャッカマンのキャンプファイアーを中心に(笑)、「燃えろよ 燃えろよ 炎よ 燃えろ~♪」とみんなで合唱した時は、本当に感動しちゃいました。
 1粒のチェルシーを手の甲に乗せて、それが落ちない様に動くように指示(命令・笑)された時は、まるで演劇のワークショップみたいでわくわくしました。みんなで心を合わせて動きました。緊張したけどめちゃくちゃ嬉しかったです。

出演=松田弘子(青年団)、倉品淳子(山の手事情社)
脚本=わたなべなおこ 照明=岩城保 総合プロデューサー=平田オリザ イラスト=松田弘子 宣伝美術=松田弘子 わたなべなおこ 当日運営=鈴木智香子 撮影=小口宏 高橋里江子 協力=松井周(おそらくラジオの声の出演) 山の手事情者 あなざーわーくす 主催:(有)アゴラ企画 こまばアゴラ劇場 企画制作=青年団 (有)アゴラ企画 こまばアゴラ劇場
【発売日】2007/07/14 一般:予約2,000円/当日2,500円 中学生以下:予約1,500円/当日2,000円
http://www.letre.co.jp/%7Ehiroko/threesisters/

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Posted by shinobu at 23:36 | TrackBack

劇団ぎゃ。『無題』08/19大博多ホール

 劇団ぎゃ。は中村雪絵さんが作・演出・出演される福岡の劇団です。藍色リストに続いて翌日に拝見しました。

 福岡ウインドアンサンブルという吹奏楽団との、たった1日2ステージだけの競演です。オーケストラと演劇とのコラボレーションは、先日のルームルーデンス『サロメ オーケストラ版』で拝見して以来ですが、生演奏の美しい音楽の贅沢だけでなく舞台装置としての効果も大きかったです。上演時間は1時間20分弱。

 ⇒CoRich舞台芸術!『無題

 ≪あらすじ≫
 絵画のオークション会場。ある画家が頭の中で想像した絵に値がついていく。
 ≪ここまで≫

 舞台の額縁全体を覆う紗幕が、舞台のおそらく中央付近にかかっています。紗幕の奥にはオーケストラがガツンと居て、役者さんは紗幕の手前で演技されます。装置は可動式の食卓とイス以外にはほぼ何も無かったですが、生演奏と楽器と奏者が居るだけで、豪華なオークション会場と画家の夢の中の世界が成立していました。

 受付や会場案内のスタッフも白いシャツに黒い蝶ネクタイという衣裳で揃えていましたし、生演奏と最初の「オークションへようこそ!」の導入にはわくわくしました。画家と対話するオークション主催者の言葉が、紗幕にスライド文字で映写されます。字幕操作の方と役者さんの息が合っていて、このやりとりが面白かったですね。日本語字幕の下(上?)になぜかフランス語のサブタイトルも入っていて(笑)、セレブな雰囲気がプラスされていました。
 画家が思い描いたことが舞台に現れて、それに(その状況を描いた絵画に)値がついていきます。頭の中が舞台にさらされるという構造が面白いし、演技も筋書きも自由自在なので楽しんで観られました。

 劇団ぎゃ。は笑いを積極的に取りにいく作風なんですね。ボケてツっ込むタイプの、いわばベタでサービス精神大盤振る舞いなギャグが連発され、会場には大きな笑いが何度も起こっていました。
 私は全くと言っていいほど笑いませんでしたが、笑えなかったことには不満も疑問もありません。客席で笑いが起こることで役者さんが安心したり、「笑ってる観客は面白いと思っている」と解釈するのは寂しいことだと思います。笑わなくても楽しんでいる人はいますし、笑っていても物足りさを感じて帰る人もいます。笑い(ウケ)を取るための言葉や展開に重点が置かれ、作品の核になる部分が曖昧になっている気がして残念でした。

 クライマックスからラストへの着地点がとても面白かったです。セリフがない空間で雄弁に劇世界を作り上げてくれていました。

 お値段は1000万円以上からで、「10000000円」「50000000円」などになります。桁区切りの「,(コンマ)」をつけて欲しかったですね~。

 ここからネタバレします。

 スクール水着を着た女性がいかにも“痛さ勝負”みたいに(笑)、ネタとして登場しました。その役者さんのことを知っている観客にとっては、「そこまでやるか!?」とか「あの人、またやってるよっ!」などと笑えるポイントになるのでしょう。でも初めての観客にとっては痛いだけの可能性もあり・・・。やるなら1人だけでもきちんと成立するぐらいの役作りをしてもらいたいですね(スクール水着キャラだけに限定した話ではありませんが)。

 大きな声でがっちり演技をしている時に、たまに素(す)の状態(を装って)でセリフを言うシーンがありました。笑いを取る意味で効果が出ていたこともありましたが、ひとつの手法(テクニック)として使うだけなのはもったいないと思います。ある役柄を徹底して演じて、そのプラスアルファとして使うぐらいのバランスにした方がいいのではないかと思いました。演技については全体的におぼつかなかったですね。

 何でも自分の思い通りになるので、画家は「俺は神だ!」と狂い始めます。想像上の人物ら(王様、お妃様、王子など)が無差別の殺し合いを始めて、舞台はすっかりデカダンなムードに染まり、画家もろとも破滅に向かいます。登場人物が皆んな死んでしまって誰も動かなくなった舞台に、ただオーケストラの音楽だけが響きました。このシーンで値段がどんどん上がって落札に至ったのは痛快でしたね。人間の範ちゅう(意味やことば、物語など)を超えて生まれたものにこそ価値があるという主張のようにも受け取れました。

出演=中村雪絵、堺雅記子、三坂恵美、木村佳南子(非・売れ線系ビーナス)、田坂哲郎(非・売れ線系ビーナス)、富田文子、三原宏史((劇)池田商会)、矢ヶ部哲、福岡ウィンドアンサンブル有志
作・演出:中村雪絵 演出補助:古賀つばさ 舞台監督:栗原雅樹(万能グローブガラパゴスダイナモス) 舞台装置:三坂恵美 照明アドバイザー:糸山義則 照明プラン:下川綾 照明操作:永井辰弥 演奏:福岡ウインドアンサンブル 衣裳作成:古賀つばさ 後藤真郁子 選曲:中村雪絵 柳田智子 小道具・字幕:林良子(非・売れ線系ビーナス) 字幕操作:広瀬由依 中原智香 振付:富田文子 パンフレット・チラシデザイン:堺雅記子 チケットデザイン:児玉真名美 制作:古賀つばさ 上野藍 三坂恵美 広瀬由依
【発売日】2007/06/01 前売り1500円、当日2000円 ペアチケット(予約・前売りのみ)2400円 ぎゃ。グッドプライス券(劇団予約のみ) 中村雪絵の肖像画を持参された方 500円(油絵・サイズ指定有り・10号〔530×455mm〕)
http://gya01.fc2web.com/

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Posted by shinobu at 17:10 | TrackBack

藍色りすと『ハルカナ』8/18-19西鉄ホール

 藍色りすと(あいいろ・りすと)は福岡の劇団です。2001年設立で、今作は西鉄ホールのgrow up企画に選ばれた公演です。

 西鉄ホールは客席数が最大464席で本多劇場よりちょっと大きめですね。デパートが入ったビルの最上階にあって、劇場の中は全労災ホール/スペース・ゼロみたいでした。「本多劇場みたいなところかな~」と勝手に想像していたので、ちょっと意外でした。

 ⇒劇評『FPAP高崎の「さくてきブログ2」
 ⇒CoRich舞台芸術!『ハルカナ
 ⇒T★1演劇グランプリ・第一次審査通過団体です。

 ≪あらすじ≫
 木下カナタ(井田直美)は精神病院に入院している。病院の医師や看護士ともぎくしゃくするし、たった一人の肉親である姉ハルカ(白井晶子)ともうまくいかない。カナタはいつも、昔一緒に遊んでいた“ゆうと”(峰尾かおり)という少年のことを思い出していた。
 ≪ここまで≫

 病院らしい白を基調にした具象と抽象がまざった美術でした。下手に“ゆうと”が登場する2階分の高さのロフトがあり、上手奥には巨大な観覧車がそびえていました。いつもはキャパ約100席(ぽんプラザホールなど)の劇場で公演をしているようなので、大きな劇場で横幅も高さも奥行きもがんばって使っているなと思いました。

 病院が舞台になっている時点で私の苦手ジャンル・・・。深刻すぎるわけではなかったので不快感はゼロでしたが、都合よく話が進みすぎるし役者さんの演技がおぼつかないしで、退屈しました。なかなか観客の予想可能な域を超えてくれないんですよね。気持ちや状況などを言葉で説明しすぎだと思いました。

 でも、最後の最後にすべてが夢の中の出来事だったかのようにひっくり返す演出があり、作品がふんわりとパッケージ化された気がして、「なるほどな~」と落ち着くことが出来ました。

 主役のカナタを演じられた井田直美さんの声の響きが良かったです。

 ここからネタバレします。

 父親に捨てられ母親は早くに逝ってしまい、2人で生きてきた姉ハルカと妹カナタはいわば一心同体(になりたがっている)の姉妹なはずなんですが、その関係が薄かったですね。タイトルも『ハルカナ』になっているのに残念。
 藍色リストは女性キャストの中に1人だけ男性キャストを入れるというやり方を続けられていて、今回は医師役(上瀧昭吾)がそうでした。でもあまり効果が感じられませんでした。カナタがハルカと医師の恋愛関係の間にむりやり入り込んで、悲しい三角関係になるシーンもありましたが、それには前半からもっと伏線が必要でしょう。

 カナタは患者仲間と姉のおかげで自殺を思いとどまります。すると次の病院のシーンでは黒いエプロンをしてロボットのように動いていた看護士たちが普通のナース服に変わっていました。患者の服も濃い青色のスモッグ(?)から薄い水色のシャツに変わり、衣裳と美術全体が柔らかなパステル調にまとまります。演技もいわゆる幸せな病院の風景とマッチした優しいものになるので、これまで描かれてきたことは全てカナタの心の中のできごとだった(のかもしれない)と受け取れます。そうなると“ゆうと”もカナタの想像の産物だったかもしれないんですよね。

 最後のカナタの独白で、この作品を通じて作者が言いたかったことがはっきりと述べられたようです。「姉が変化したのでこれからはうまくいくと思ったが、やっぱり以前のような関係に戻ってしまった。でも、私はここに居ます!」(セリフは大意を汲んだもので、正確ではありません)という、前向きで思いっきりハッピーに演出された結末でした。
 現状を認め、将来の不安も受け入れて、今ここで生きていることを表明するという考えには大賛成ですが、全部ことばで説明してしまったのはもったいないと思います。舞台奥の大きな観覧車がガタガタに崩れたままハッピーエンドになったのは救いでしたが(幸せの裏側が見えている)、役者さんの演技や美術、照明、音楽などの存在がセリフの意味を伝えるための道具(脇役、引き立て役)であり続けるのは残念です。

 ≪ポスト・パフォーマンス・トーク≫
 出演:今企画プロデューサー/劇評フリーペーパー発行者(?)/太田美穂(藍色りすと主宰)

 太田さんご自身がADHD(注意欠陥・多動性障害/Wikipedia)だという告白には驚かされました。今作品では感じていることをストレートに表現したということでした。
 私は私戯曲が悪いとはまったく思いません。でも自分のことを題材にする時は、より鋭い客観性を求められると思います。この公演で自らをさらすことで、色んな面で苦労し、勉強されたことと思います。それをホップ、ステップにして、次はぜひジャンプしてくれたらいいなと思います。

西鉄ホールgrow up 企画
出演=一ノ宮亜葵、井田直美、今村映子、宇ノ木靖子、沖静香、白井晶子、永幡桂子、中村公美、ヒガシユキコ、峰尾かおり、上瀧昭吾
作・演出:太田美穂 舞台監督:権藤智海(U.J.Channel) 照明:鳥原淳(SLI) 音響:菊池純哉(西鉄ホール) 音響オペ:一ノ宮寛子 大道具:大隈謙司・兄弟船 衣裳:オーイシヤスヨ メイク:BE-STAFF MAKE UP UNIVERS 制作:土肥聖子 受付協力:烏山茜・萩原あや・劇団PA!ZOO!! 託児協力:はらっぱSUN 主催 : 藍色りすと / 提携 : 西鉄ホール(西鉄ムーブ98) 後援 : 福岡県・福岡市・福岡市教育委員会・(財)福岡市文化芸術振興財団 製作 : 藍色りすと / 企画 : 西鉄ホール / 協力 : 劇団PA!ZOO!!
【発売日】2007/07/01 前売:2000円 / 当日:2500円 2劇団共通チケット:3000円 未就学児童のご入場はご遠慮ください。
http://aiiro.jp/

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Posted by shinobu at 12:03 | TrackBack

2007年08月20日

MU『きみは死んでいる/その他短編』08/15-20 OFF OFFシアター

 ハセガワアユムさんが作・演出されるMU(ムー)。3話のオムニバスで2バージョン公演。私はBバージョンを拝見。平日マチネなのに満員でした。上演時間は約2時間5分。下北沢で駅貼りポスターもあったんですね。

 ハセガワさんのブログ「プチレビュー地獄。」のパンクなノリが、舞台でもはじけてて楽しかったです。

 ⇒こりっち舞台芸術!『きみは死んでいる/その他短編
 レビューはアップできるかどうか不明。

A=『きみは死んでいる(男×男)』『×』『変な穴』
B=『きみは死んでいる(女×女)』『90%VERGIN』『戦争に行って来た』
出演=古市海見子(メタリック農家) 佐々木なふみ(東京ネジ) 橋本恵一郎 渡辺裕也(クロカミショウネン18) 杉木隆幸(play unit-fullfull) 中川智明 平間実貴 藤本真弓 田中涼子 熊野善啓(チャリT企画) 印宮伸二(劇団神馬) 山内一生 小松君和(神様プロデュース) 酒巻誉洋(elePHANTMoon)
脚本・演出=ハセガワアユム(MU) 照明=元吉庸泰(エムキチビート) 音響=岡田悠(SoundCube)舞台美術=袴田長武(ハカマ団) 舞台監督・太田守信(ギリギリエリンギ)宣伝美術=石井誠(united.)アドバイザー=西山聡(ブラジル) 演出助手=友寄隆一郎 制作協力=池田智哉(feblabo) 企画/制作=MU
【発売日】2007/07/07 前売・当日 2500円(全席自由・日時指定) セットチケット(全席自由・日時指定) [A][B]2枚セット販売 ※通常価格(2500円×2枚)5000円が→なんと3500円と非常にお得!リピーター割引あり 半券持参の方に限り、もう1バージョンを1500円で御覧になれます。
http://www.mu-web.net/

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2007年08月18日

tpt『ここからの距離~The Distance From Here』08/17-26ベニサン・ピット

 ニール・ラビュートさんの2003年の戯曲『ここからの距離』を、昨年『スラブ・ボーイズ』で読売演劇大賞優秀演出家賞を受賞したばかりの千葉哲也さんが演出されます。上演時間は約2時間10分(休憩なし)。

 ワークショップで選ばれた若い俳優との新製作で、本邦初演なんですね。ニール・ラビュート作品は同じくtptで『バッシュ』(千葉さん出演)を拝見しました。

 ⇒CoRich舞台芸術!『ここからの距離』 

 ≪あらすじ≫
 携帯電話やiPodがまだなかった頃のアメリカ。ワシントン高校3年のダレル(土田祐太)は、悪友のティム(小谷真一)と学校をさぼってモール(ショッピングセンター)で万引きをしたり、動物園で悪態をついたり、夜は遅くまで街を徘徊する日々を送っている。ダレルには父親がおらず、家には母親(植野葉子)の新しい恋人(千葉哲也)が出入りしているが、それなりに仲良く暮らしてきた。しかし、恋人ジェン(小林夏子)のある秘密を知った瞬間、彼の世界は変わってしまう。 
 ≪ここまで≫

 コンクリートの四角い柱が並ぶ、黒いがらんどうのような空間。無機質な白いテーブルが上手奥から下手前に向かって、舞台を斜めに横切るように配置されています。そのテーブルの周囲に大きなゴミ箱、飲料水のボトル、銀色のショッピングカート、安っぽいカラフルな毛布など、現代のアメリカを象徴する物が雑然と置かれ、ごみごみした都会の片隅をイメージさせます。

 「くそ!」とか「どうでもいい」とか、汚い言葉ばかりが発せられる戯曲です。でも伝わってきたのは子供達の純粋な怒り、悩み、悲しみ・・・。悪口を言い合ったり、殴り合いのケンカをしたり、彼らの関係は醜くて貧しいものに見えるのですが、汚い言葉の後にすぐに笑い声が響き、言葉の意味とは逆の暖かい感情が生まれていました。実は彼らは小突きあいながら無邪気に甘えて、お互いを支えあっているんですね。殺伐とした空気に支配されることなく、人間の弱さを可愛らしさとして見せた演出が素晴らしいと思います。 

 登場する若者たちは、感じていることを的確に表す言葉を持っていないだけなんじゃないかと思いました。パンフレットに書かれたニール・ラビュートさんの言葉を一部引用します。
 「『ディスタンス・フロム・ヒア』は、私が昔からよく知っていながら、意識的に、常に脇に追いやっていた人たちをちゃんと認めようという私なりの努力だ。私は、あの子たちの服装や、聞いている音楽や、話し方が好きだと思ったことは一度もなかった。だから、そもそも最初から、彼らは本質的に私にとって死んでいたのだ。これは、彼らをよみがえらせようとする私なりの試みだ。」

 若い役者さんは、初日だということもあるでしょうが、やっぱりおぼつかない印象です。でも、役柄についての理解が浅かろうが演技の技術が少なかろうが、それは仕方が無いことで、ありのままの自分で舞台上に居ようとする姿がすがすがしかったです。小手先の悪あがきなどせず、ただそこに居ることで勝負してくれているように感じ、私も一人一人と対峙するような気持ちで観ていられました。全体的には女優さんが弱かったように思います(若い役者さんの中では)。

 ダレル役の土田祐太さんの、恐れずまっすぐに飛び込んでいく存在感は見ごたえがあります。乱暴な言葉ばかり話すキャラクターだけれど、挨拶代わりの罵声は彼が命からがら発する小さな、小さな願いにも聞こえました。にらみつける鋭い眼差しにも、すがるように救いを求める気持ちが映ります。どんなにひどく怒鳴っても暴れても、澄んだ心が悲鳴を上げているように見えました。
 ティム役の小谷真一さんの、ちょっとコミカルで頼り無さそうな佇まいも可愛らしかったです。

 ビニール製の半透明の布に舞台奥から照明を当てるのがかっこ良かったです。緑色の蛍光灯も効いていました。最後に流れた曲(Rock?)も良かったな~。

 ここからネタバレします。

 15歳でダレルの子供を妊娠したジェン(香子)は、ある男に腹部をなぐってもらうことで堕胎をしていました。ジェンがその男に性的な奉仕をしたことと、その事実をティムと2人で隠していたことにダレルはショックを受けます。逆上したダレルは、人質として鞄に入れて持って来ていた義理の姉・シャリ(小林夏子)の赤ん坊を、動物園のペンギンのプールに投げ込んでしまい・・・。なんとも悲惨な結末です。
 氷が張った水の中に赤ん坊が沈んでいるイメージは、そのままダレルたちに重なります。映画「KIDS/キッズ」を思い出しました(怖くて観てないんですが)。

 ダレルの義理の姉・シャリ(小林夏子)が、義理の母親の恋人リッチ(千葉哲也)と身体を重ねながら、夢を語ります。それは“2人でわがまま放題に生きて、世の中に見捨てられて食料も水も何もかも失ったら、家の中でずっとセックスしていたい”というようなことでした。また映画の場面が浮かびました、「愛の嵐」の(「愛の嵐」は観てます)。

 リッチが湾岸戦争に行った頃のことをダレルに話す、2人だけのシーンが素晴らしかったです。テレビの明かりだけで照らすのも良かった。サウジアラビアの空に美しい凧を揚げたエピソードは凄かったですね。若い米兵が“サダムのクソ野郎の仲間ども”と一緒に、無邪気に遊んだんだよな・・・そう思うと涙が出そうになりました。

TPTフューチャーズ -Summer 2007
出演=土田祐太、小谷真一、植野葉子、小林夏子、千葉哲也、香子、関鐘美、龍弥、小川祐弥
脚本=ニール・ラビュート 訳=常田景子 演出=千葉哲也  装置=萩野緑 照明=笠原俊幸 衣裳=原まさみ ヘア&メイクアップ=鎌田直樹 舞台監督=村田明 アクション=渥美博 演出部=大島朋子 板倉麻美 深瀬元喜 照明オペ=三輪弓子 音響オペ=熊野大輔 衣裳部=胡桃澤真理 森映 ヘア&メイクアップ=梅澤裕子 照明=(株)沢田オフィス 大道具=(有)C-COM 桜井俊郎 武田寛 背景美術=(有)美術工房拓人 松本邦彦 小道具=高津映画装飾 烏城きよし 衣裳製作=砂田悠香理 横田裕二 COODINATOR=マーチン・ネイラー
【発売日】2007/07/22 全席指定 一般:5,000円 学生:3,000円
http://www.tpt.co.jp/

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2007年08月16日

Oi-SCALE『ロールシャッハ』08/16-19シアタートラム

 林灰二さんが作・演出されるOi-SCALE(オイ・スケール)。シアタートラムでは2度目の公演ですね(⇒1度目)。

 まだ完成していないんだな~・・・と探り探りだった約2時間20分。でも林さん独特の世界は健在でした。

 ⇒CoRich舞台芸術!『ロールシャッハ

 ≪あらすじ≫
 車で人をはねてしまった女・節子(さとうやすえ)。同じく交通事故の加害者の男・弌哉(いちや:村田充)。病院で一緒になった2人の世界は少しずつリンクしていく。
 ≪ここまで≫

 どうしようもない不良青年たちの行き止まりの日々。抜け出せる希望が持てない病院生活。若者の吐き捨てるような言葉の中に、皮肉なユーモアが散りばめられます。さらり、ぽつりと語られる言葉に林さんらしい可愛らしさや子供っぽさを見つけて、クスっと笑ったり、寂しさに共感したり。

 複数の場所と時間がどんどん入れ替わるのは、やはり映画的だな~と思いました。もっとテンポが良くなるといいですね。

 真っ黒な世界の中にさし色の赤が効いているシンプルな抽象舞台でした。テレビモニターが数台配置されていて、グラフィック映像(文字や動画)を流します。照明は全体的に暗く、変化も少ない目です。いつもながら音楽が良かったですね。でも照明や映像、音響などのスタッフワークは、全体的にもっと洗練させられると思いました。

 ここからネタバレします。

 死体を樹海に埋めに行く若者たちと、事故(?)で人を殺してしまった病人たちの世界が交錯します。2つは徐々に近づいて交わり、現実から幻想的なものに変わっていきます。
 節子(さとうやすえ)がブレーキを踏まずにつっこんで殺したのも、節子の元恋人(三浦知之)が殺して埋めようとしているのも、同じ稲田(かあきじいんず)という男だったかもしれない。弌哉(村田充)が車ではねたのは、同じ病院に入院しているる少女だったかもしれない。車椅子に乗っているけど歩くことができた弌哉だが、本当は全く歩くことができない精神病患者だった・・・かもしれない。

 サラリーマンがゴミ袋の中から出てきたり、動物園の檻の中にいたり、コミカルな風刺がありました。面白いと思うので、もっと効果が出て欲しいですね。

出演=さとうやすえ/星耕介/村田充/林灰二/三浦知之(InnocentSphere)/中泉裕矢(経済とH)/トモヒカン/川崎賢一/大政知己(サモ・アリナンズ)/小坂萌/大林小夏/吉田テツタ/かあきじいんず(Rel-ay)/河合咲/西畑聡(劇団ボスカレ)/清水慎太郎/中野博文/利斗流t.k.o/小山待子/加藤芙実子
作・演出:林灰二 舞台監督:高橋大輔+至福団 照明:杉本公亮 音響:田島誠治(Sound Gimmick) 映像:八木雄一郎 小道具:中島香奈子 當間英之(野鳩) 演出協力:かあきじいんず(Rel-ay) 演出部:福本朝子 戸田美江 加藤芙実子 映像記録:原口貴光(帝斗創像) 大道具:C-COM舞台装置 小道具協力:至福団 高津映画装飾 映像機材協力:帝斗創像 ヘアメイクアドバイザー:武井優子 宣伝美術・WEB:清水慎太郎 楽曲提供:DEADPHONES(tuba...disk) 制作:堀田末苗 企画・製作:Oi-SCALE 僕AREA←Spectators〔B.A.S.〕
【発売日】2007/07/01 一般3,300円/当日3,500円 友の会会員割引 3,000円 世田谷区民割引 3,100円
http://www.oi-scale.com/oiweb/rorschach/rorschach.html

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Posted by shinobu at 23:44 | TrackBack

大人の麦茶『ちがいますシスターズ』08/15-19紀伊國屋ホール

 塩田泰造さんが作・演出される劇団、大人の麦茶。私は初見です。塩田さんはテレビのCMを作られている方のようですね。ハロプロ所属の可愛い女の子が出演されていて、ファンらしき男性客でいっぱい。
 上演時間は2時間10分休憩なし。満員の客席でカーテンコールが間髪居れずに3回ありました。んー・・・。

 受付に長蛇の列。チケット受け渡しにも不手際あり。紀伊國屋ホールに初進出する若いカンパニーの公演では、お約束のようになっています。残念ですが、小劇場から中ホールに進出する難しさを、観客の視点からまた実感することになりました。

 ⇒CoRich舞台芸術!『ちがいますシスターズ

 もんじゃ焼き屋さんのお話、でした。こういう演劇を今まさに新作として作っている人がいるんだな~と、少々驚きをもって観ることになりました。吉本新喜劇のような、テレビで見る再現ドラマのような、小学校の体育館で観た民話演劇のような・・・。

 「演技」についての考え方が違うのでしょうね。きまった振付をなぞるように繰り返す役者さんが舞台に居ました。

 私はそのように感じましたが、客席では笑いがいっぱい起こっていましたし、拍手もいっぱいでした。

出演=池田稔・大澤桂子・久保木秀直・辻久三・中神一保・並木秀介・眞賀里知乃・アヤカ(ココナッツ娘。)・小飯塚貴世江(俳優座)・永岡佑・長澤素子・保田圭
作・演出=塩田泰造 美術=田中敏恵 照明=今野恵美子(大庭照明研究所) 音楽=たいせい 音響=尾林真理 舞台監督=松嵜耕治(至福団) スタイリスト:加藤高子 加藤実穂 ヘアメイク=菅沼栄畿(boo-ga-loo) 演出助手=千野ありさ(GirlsPop) 宣伝美術=小中志展 スチール=YUKI-TO 当日運営=三村里奈(MRco.) プロデューサー=高橋直彦(AUN PUENTE)  
【発売日】2007/06/15 前売指定席4200円 当日券4500円
http://www.otomugi.com/frame.html

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Posted by shinobu at 14:15 | TrackBack

2007年08月15日

【演劇教育】芸団協シンポジウム『子どものための「演劇教科書」は可能か? ~演劇と教育の今日的課題を整理するための公開編集会議』08/07芸能花伝舎

 演劇教育に興味津々の私。シンポジウム『子どものための「演劇教科書」は可能か? ~演劇と教育の今日的課題を整理するための公開編集会議』を拝聴してまいりました。

 考えてみたら、私が小学校で観た人形劇(人形劇団クラルテの作品でした)も、毎年行われていた学芸会も、学校教育の中の「演劇」なんですよね。

 つづきをアップしました(2007/08/27)。

 ■パネリスト=ふじたあさや(劇作家・演出家)/水野久(晩成書房代表)/川村ミチル(俳優・劇団うりんこ)/熊谷保宏(日大芸術学部演劇学科准教授)

 心に残ったトピックなどを下記に。敬称略。

 ・「演劇“を”教える」のか「演劇“で”教える」のか。
 ・シアター教育(作品を作ることから学ぶ)とドラマ教育(演劇のメソッドを通じて学ぶ)
 ・ワークショップとは「車座」の意味。ひとりひとりが同じ関係になる。
 ・学芸会指導(無料)で子供達が“あてぶり”の演技をする(とても残念)。

 ・ふじた「新国立劇場演劇研修所の試演会2に行った。今までにない俳優が育ってきている。久保田万太郎のセリフに命が通っている俳優も居た。授業の内容は見学できないから知らないけれど、ケタ違いの金を使っている。」
 ・日本は俳優教育の入り口にやっと立ったところ。


 ずーっと児童演劇や演劇教育に携わってきた方々が、どんなに苦労を重ねてこられたのか(今もそれは続いている)。そのお気持ちがよく伝わってきました。実際にお顔を見て話を聞くことができて良かったです。
 ふじたあさやさんが編集長をつとめられている「児童・青少年演劇ジャーナル げき」(晩成書房)のバックナンバーを購入し、定期購読も申し込みました。

 最終的には「(たたき台になる)教科書と、専門家と、予算が必要」という結論だったように思います。3時間弱の話し合いが「演劇教育でガッコーを面白く!」の会のシンポジウムのスタート地点に到達したように感じました。

 私がなぜ学校教育に演劇を取り入れてほしいかというと、それが子供達にとってきっと幸せだと思うからです。演劇教育は、演劇のためではなく子供達のために行われるべきだと思います。それが実現されれば、結果的に演劇界にも幸せがやってくるのだと思います。

 司会のふじたあさやさんが「果てのない泥沼のようになってしまいましたが」等、ネガティブな発言を度々されるのが残念でした。私には明るい未来しか見えてませんよ~!

8月7日(火)[14:00-16:30] [P-1 プログラム1 シンポジウム]
『表現教育指導者養成 2007年夏の講座「表現教育の現在と未来Ⅱ」』
パネリスト=ふじたあさや(劇作家・演出家)/水野久(晩成書房代表)/川村ミチル(俳優・劇団うりんこ)/熊谷保宏(日大芸術学部演劇学科准教授)
受講料1,500円 定員60名
http://www.geidankyo.or.jp/12kaden/04pro/hyogen/hyogen07.html

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Posted by shinobu at 16:55 | TrackBack

東京FLC主催「シンポジウム『ロングランを行う意義について』」08/13(月)19:00~千本桜ホール

 小劇場ロングラン運動を提唱する東京FLC主催のシンポジウムです。パネリストのメンバーに惹かれてお邪魔しました。

 シンポジウムとしてはうまくいってなかったんじゃないかな。でも司会のよこたたかおさんは若干21歳だそうで、そのお年でこんな企画を立ち上げて主催されたことには頭が下がる思いです。

 ロングラン公演の経験がある劇団(ひょっとこ乱舞)、これからロングラン公演を実施する劇団(劇団サーカス劇場)、いつかロングラン公演をやりたいと思っている劇団(劇団土下座)の制作さんが、それぞれの正直な思いを語られました。これは聞いてるだけで楽しかったです。

 荻野達也さん(fringeプロデューサー)と木元太郎さん(cinra magazine STAGEコンテンツ)の発言には重みがありましたね。

 小劇場界で劇団をたちあげて自主公演をしている人たちに対して、私から何かを伝えられるとしたら・・・。まず、他の劇団の作品をもっと観るべきなんじゃないかな~。「動員が伸び悩むのはなぜか」とかを考える前に。

パネリスト(向かって左から):森澤友一朗(劇団サーカス劇場)/荻野達也(fringeプロデューサー)/木元太郎(cinra magazine STAGEコンテンツ)/ツカネアヤ(ひょっとこ乱舞)/古屋太朗(劇団土下座)
司会:よこたたかお(東京FLCプロデューサー/青年団演出部)
入場料無料
http://nudo.main.jp/tokyo-flc/event/fes07.html

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Posted by shinobu at 16:18 | TrackBack

【お知らせ】青年団リンク・東京デスロック『unlock#2:ソラリス』の舞台写真をいただきました!

 「装置が凄い!」という噂が広がってはいたけれど、ネタバレになるからそれが何なのかは言えなかった、青年団リンク・東京デスロック『unlock#2:ソラリス』の舞台写真を頂戴しました。

 やっとこさ最後まで書けたレビューに載せましたので、どうぞご覧くださいませ♪ 超~かっこいーですよっ!!

Posted by shinobu at 15:24 | TrackBack

富士ロック『恋愛』08/10-12王子小劇場

 メタリック農家の葛木英(くずき・あきら)さんとクロムモリブデンの板倉チヒロさんの2人芝居。恋愛をテーマにした短編の4本立てです。脚本家が豪華ラインナップですよね。

 色の違う4本で、2人の俳優さんの個性を楽しむことができました。

 ⇒CoRich舞台芸術!『恋愛

 公演終了していますので、ネタバレします。

1.「たちはだかるもの」
 脚本:池田鉄洋(猫のホテル/表現・さわやか) 演出:森下亮(クロムモリブデン)
 客席に向かってガツンと面白キャラをやりきってくださったのが痛快。

2.「月とルチオ」
 脚本・監修:山中隆次朗(スロウライダー)
 4作品の中で一番、演劇ならではの世界が生まれそうな脚本だったんじゃないかしら。もったいなかったですね~。衣装も疑問。

3.「月に一度だけ~Only Once a Month~」
 脚本・監修:渡邊一功(リュカ.)
 男女の2人芝居でテーマが「恋愛」ですからね、こういう大人の不実な恋愛ものが組み込まれていて嬉しいです(笑)。

4.「泡-ユニットバスの人魚-」
 脚本・演出:葛木英(メタリック農家)
 介護される男と介護する女の恋愛。いわばベタなラブ・ストーリーなんですが、男の足が魚の尻尾(=人魚)になっているというアイデアが素敵!

葛木英×板倉チヒロ 二人芝居企画=富士ロック 第1回公演
恋愛をテーマにした珠玉の短編20分×四本!!
舞台企画・出演=葛木英(メタリック農家)  出演=板倉チヒロ(クロムモリブデン) 
劇作家=池田鉄洋(猫のホテル/表現・さわやか) 山中隆次朗(スロウライダー) 渡邊一功(リュカ.) 葛木英(メタリック農家) 演出助手+舞台監督=北川大輔(カムヰヤッセン) 舞台監督補:山下知子(劇団地上3cm) 音響=平井隆史(末広寿司) 中村嘉宏 照明=床田光世(クロムモリブデン) 舞台美術=袴田長武+鴉屋 映像=浦島啓(PURE DUST) 映像監修=登米裕一 特殊衣裳=man ドラマターグ=森下亮(クロムモリブデン) ヘアメイク=増田加奈 宣伝美術=金属女王 宣伝モデル=三宅夫妻 舞台写真=石澤知絵子(paqlab) 制作=塩田友克(クロムモリブデン) 大内知子 企画・製作=富士ロック
幕間映像「フェロえもん」脚本・監修:登米裕一(キリンバズウカ) イラスト:板倉チヒロ 声の出演:葛木英/板倉チヒロ/北川大輔(友情出演)
【発売日】2007/07/07 前売り2500円/当日2800円(日時指定・全席自由)
http://fuji69.no-blog.jp/

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Posted by shinobu at 00:10 | TrackBack

2007年08月14日

時間堂『おやつの時間堂「proof」』08/13-19王子小劇場

 黒澤世莉さんが演出される時間堂メルマガでも紹介いたしましたが、なんと、稽古場と本番を全て公開するという企画です。上演するのは2001年にトニー賞最優秀作品賞とピューリッツァー賞を受賞した戯曲『proof/証明』(→過去レビュー)。

 初日にお稽古(14:00~17:30)を拝見して、翌日の夜に通し稽古(19:00開始/前半70分+休憩15分+後半60分)を拝見しました。

proof2.JPG
エクササイズ

 これは、舞台の作り手の方にはぜひぜひ観に行っていただきたいですね。特にお稽古が始まってから1~2時間のワークショップ(エクササイズ)は面白いです。こういう機会はなかなかないと思います。予約方法などの詳細はこちら。確認してから劇場に行かれることをお薦めします。最終日の本番は予約する方がいいみたい。

 キャサリン役の清水那保さんがとてもキュートです。若いのにすごい。

 ⇒CoRich舞台芸術!『おやつの時間堂「proof」
 ⇒T★1演劇グランプリ・第一次審査通過団体です。
 レビューをアップしました(2007/08/16)。

■8/13(月)14:00~17:30 エクササイズとシーン稽古 参加者:6~7人
 エクササイズがひとつ終わるごとに必ずフィードバック(「今のはどうでしたか?」と聞かれて、答える)をします。

 14:00~ 「あなたは今、なにを感じていますか?」各自が発表
 14:15~ おにごっこ。ルールをいろいろ変更。
 14:30~ 空間の確認をしながら歩く。
  黒澤「空間全体を使って歩いてください」「自分ひとりでやらないで」「全員で空間を共有する」
 14:35~ ラジコン。2人1組。1人が目をつぶる。もう1人が背中を押して操作。
  黒澤「感じることを止めないで」「呼吸を止めないで」
 15:05~ イス取りゲーム。1つ空席。鬼を座らせないように全員で協力。
 15:20~ キスをすることへの抵抗をなくすために、距離感のエクササイズ。
  黒澤「これは演劇です」「変化を感じてください」「集中が切れる気がしたら、呼吸に意識を向けてください」
  黒澤「今、何を感じていますか?ヤダ?恥ずかしい?楽しい?」「息を止めないで」「顔を緩めて」
  黒澤「相手は何を感じていますか?」「自分の変化と相手の変化を観察すること」
 15:55~ 休憩『おやつの時間』
  ロビーで観客も一緒におやつを食べながら談笑。感想を話し合う。
 16:10~ Zip Zap
 16:20~ 『Proof』について感じたことを話し合う。キャスト4人と演出で。  
  黒澤「この戯曲をひとことで言うと?」⇒「愛」「濃密」「孤独」「おだやかな絶望」
  第1幕シーン1の稽古へ。

proof1.JPG
シーン・スタディ

 ≪感想≫
 演劇は、人と人との間に生まれているんだということが、よくわかりました。キスのエクササイズにはうっとりだったわ~♪ やっぱり人間は言葉なしで深いコミュニケーションをしているんですよね。
 夜は通し稽古なので、14時から19時までの5時間の内の半分以上が脚本を使わないお稽古なんですね。作り手の方々にぜひご覧いただきたいです。観客ばかりが観に行ってるのって、もったいないですよ~。


■8/14(火)通し稽古 (19:00開始 前半70分+休憩15分+後半60分)

 【あらすじ】天才数学者の父(根津茂尚)を持つ姉妹(姉:足立夕夏/妹:清水那保)。父と妹が暮らす家に、父の生徒だった青年(玉置玲央)がやってくる。

 大道具は白いテーブルとイスが2脚。衣裳は稽古着のままで、小道具もありません。役者さんの存在と演技そのものを味わう時間でした。

 『proof』は一度観たことがあるのですが、やっぱり面白い戯曲ですね~。ほれぼれします。でもセリフを憶えていない役者さんがいる時点で、この作品を満足するほど味わうことは不可能です(涙)。「まあ、途中段階だから仕方がないね」というところでしょうか。

 セリフもばっちりで演技も前のめりにガツンと攻めてくる、妹キャサリン役の清水那保さんがとても魅力的です。舞台で何度か拝見していますが(過去レビュー⇒)、ものすごく成長されていますよね。やはり毎週のようにワークショップに参加されていることが大きいのだと思います。

出演=根津茂尚(あひるなんちゃら)/玉置玲央(柿喰う客)/清水那保(DULL-COLORED POP)/足立夕夏(InnocentSphere)
脚本=デイヴィッド・オーバーン(David Auburn) 翻訳=谷賢一 演出=黒澤世莉 演出助手=谷賢一(DULL-COLORED POP) 佐伯風土 制作=田中沙織 境広子 大和美由紀 ビデオ撮影=大澤大介(大澤大介事務所) $堂 提携:王子小劇場 主催:時間堂
【発売日】2007/08/13 自由席1,800円 ※8月13日(月)から18日(土)までの公開練習と、19日(日)の公演まで、7日間会場を自由に入退場できるフリーパス
【タイムテーブル】
2007年8月13日(月)~18日(土)公開リハーサル
 14:00~18:00:公開制作
 19:00~22:00:通し稽古/ポストパフォーマンストーク
2007年8月19日(日)14:00~公開ゲネプロ 19:00~公演/ポストパフォーマンストーク。
http://blog.livedoor.jp/jtc2007/

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Posted by shinobu at 23:58 | TrackBack

2007年08月11日

La Compagnie An『御母堂伝説(ごぼどうでんせつ)』08/03-08シアターイワト

 女優の明樹由佳さんと西山水木さんが1999年に結成したパフォーマンスユニット・La Compagnie An(ラ・カンパニー・アン)。明樹さんと西山さんのことは何度か舞台で拝見していましたが、La Compagnie An作品は初めて。

 上演時間は約1時間55分。久々に最前列の桟敷席で死ぬかと思いましたが(苦笑)、涙が溢れて止まらなくなるシーンも沢山あり、この作品を体験できたことの喜びで胸が一杯になる家路でした。

 韓国人のJung TaeHyoさんの音楽(DJスタイル)が素晴らしく、同じく韓国人の俳優兼ダンサー・Kwon YoungHoさんにもすっかり見とれてしまいました~。ほんと、すごかった。

 ⇒CoRich舞台芸術!『御母堂伝説
 レビューをアップしました(2007/08/30)。

 最初にサミュエル・ベケット作『ゴドーを待ちながら』を知らないお客様をステージに呼び出して、個別に戯曲の意味を教え始めました。・・・どうしたらいいのかよくわからない雰囲気でした。最前列で耳をそばだてて内容を聞く限りでは、かなりいい加減な気がしたので(笑)。で、説明が終わったか終わらないかもよくわからない状態で勝手に開幕。元気いっぱいに「うん、不条理!」ってことかな、と♪

 エスニックなムードのちょいと露出の激しい衣裳を着たピチピチの女優さんたちが、元気に歌って踊って演技して、なんだかわかんないんままに白熱して盛り上がっちゃいます。だって音楽(DJ)が超~素敵だし!でも伝わってくるのは、すっかり狭くなった地球を漂流する私たちと、戦争を経験した私達のご先祖様とのつながり。

 記憶が定かでない部分もあり、下記はシーンの順番が前後してると思います。セリフも完全に正確ではありません。お許しを。

 戦争を経験した女・オソボ様(西山水木)は言います。
 「血は受け継がれるのに、私の気持ちは? aporogize(謝罪)でもなくregret(悔恨)でもない、私のこの気持ちは(受け継がれているの)?」
 ・・・この言葉だけで涙がこぼれました。

 今を生きる若い女たちが、腕を伸ばして手に持った携帯電話を宙にかざすシーンがありました。「気持ちは伝わるよ」と言っているような気がしました。私もそう信じています。
 でも後でこんなセリフ↓を群読するところもありました。これまた泣けちゃった。
 「自分に降りかかってくるまで、私達は気づかない。」「いつ、私の子供(息子)は(兵隊に)取られたの?」

 ホトエ(立花あかね)が喫茶店で彼氏(向後信成)にこっぴどくフラれるシーンのマンガチックな演出には爆笑でした。恋敵(多田直子)に「泥棒ネコ!」「メスブタ!」など、ステレオタイプな罵詈雑言の連発(笑)。そういえば何のシーンだったかは忘れましたが、「プロセニアム!」「アヴァンギャルド!」と、明らかにヘンな状況で叫ぶのもサイコーに可笑しかった。

 男にフラれてパリに演劇留学したホトエが、同じ留学生の韓国人男子(役名失念・クウォン・ヨンホ)と出会います。はじめましての挨拶をして"I'm Korean, too!"と言われたホトエは「tooって?」と驚きます。すると返事は「だって同じアジア人でしょ」。悲しい歴史がある日本と韓国だけど、ヨーロッパに来たら同じアジア人だ。同じ人間だ。

 演劇学校に来たけどフランス語もおぼつかないし、「一体私は何やってんだろうな」と悩むホトエに対して、韓国人留学生が応えたのは、
 "Here is my body. Body is theatre!" 
 あぁ、ヨンホさんが言うとなんて説得力があるんだっ!「ここにある身体そのものが演劇だよ」って。人間は身体で何もかも生み出します。ものも作るし、恋もするし、命も生む。そしてその身体に、ご先祖様の記憶も入っているんですよね。

 明樹由佳さんとクウォン・ヨンホさんのペアのダンスシーン。明樹さんからヨンホさんが生まれて、ヨンホさんに明樹さんがもたれて、2人がぐるぐると絡み合い続けます。男女の交わりから命が生まれて、互いに支えあって生きて、また男女が出会って命が生まれる、その繰り返しのようでした。生まれる命、支える命。涙が溢れて止まらなかった。まさに身体が演劇だった。

 そのBody(身体)を持って、ホトエは元気に母(明樹由佳)の待つ家に帰ります。「ただいま!」
 オソボ様「いつもあなたの帰りを待っている母親が“お国”だとしたら、“お国”があなたの死など望むはずはない。」
 ホトエと韓国人留学生が熱いキスを交わしました。私の中では完全に祝祭ムード。過去と現在という縦軸と、日本と韓国(世界)という横軸が、同時に繋がったように思いました。

 涙が出るほど感動したところを書いてみましたが、退屈したところもいくつかありました。たとえば留学から帰ったホトエが、日本で待っていた劇団員に不条理演劇について解説するシーンとか。理由は・・・たぶん演技、かな。桟敷席でつらかったのもあり、「絶対に必要だ」と思えるシーン以外は急に不機嫌になっちゃいました。すみません。

 クウォン・ヨンホさん。冒頭でも書きましたが、めっちゃくちゃ素敵な男優さん・ダンサーさんでした。写真あり⇒(清木場直子さんのブログより) あのー・・・こんなこと書いちゃうと「しのぶアホちゃう?気が触れたか?」って言われてもしょーがないと思うんですが・・・久しぶりにね、「抱かれたい」って思ったねっ!!!(爆笑) だってすげーよ、あのジャンプ!マッチョなのにはちみつみたいな甘い笑顔するし!もー・・・奇跡ですねっ(←ひとり興奮)。いや、ミーハーな気持ち抜きでも、必見のアーティストだと思いました。“劇団旅行者”観に行きたいよ。

 ホトエの彼氏を横取りする役(ヒメ?)などを演じられていた、多田直子さんの演技が面白くて、きれいでした。※お名前を間違ってたらすみません。

御母堂伝説-Waiting for GOBODOT-
出演=明樹由佳・立花あかね・清木場直子・西山水木/Jung TaeHyo(チョン・チヒョ/DJ.TEYO)/Kwon YoungHo(クウォン・ヨンホ/劇団旅行者 Yuhangza)/清田直子/竹田まどか/入交恵(ラズカルズ)/成本千枝/蜂須みゆ(elephant heat)/多田直子/向後信成(ヒンドゥー五千回)
作・演出=西山水木 音楽=-electric music & DJ-:Jung TaeHyo (DJ.TEYO)/-倭唄-:吉良知彦(ZABADAK) 振付:明樹由佳
【発売日】2007/08/01 3,500円 全席自由
http://a-n.fem.jp/

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Posted by shinobu at 22:07 | TrackBack

財団法人埼玉県芸術文化振興財団/ホリプロ『エレンディラ』08/09-09/02彩の国さいたま芸術劇場 大ホール

 ガルシア・マルケスさんの小説を坂手洋二さんが戯曲化し、蜷川幸雄さんが演出。そして音楽がマイケル・ナイマンさんという、超豪華スタッフが集結した公演。何年も前から話題になっていた企画ですよね。

 上演時間は約4時間10分(途中10分、15分の休憩を含む)・・・長っ!第3幕では朦朧としてしまいましたが、作り手の方々と一緒に『エレンディラ』を旅することができたことに満足です。
 オープニングが素晴らしかった!ほぼ10分間、涙が流れっぱなしでした~。

 ⇒CoRich舞台芸術!『エレンディラ

 ≪あらすじ≫ 公式サイトより。一部改行を変更。
 砂漠に風が吹くとき、その娼婦のテントは突然あらわれる。
 伝説の美しい少女娼婦エレンディラを求め、今日も男たちの行列は続く。
 翼の生えた老人が語り始める、彼が生涯愛し続けて女性の思い出・・・。
 彼の名はウリセス(中川晃教)。そしてその女性とはエレンディラ(美波)。
 美少女エレンディラは、冷酷な祖母(瑳川哲朗)に召使のように酷使されていた。ある日、彼女の過失から祖母の家が全焼する。祖母はその“借り”を返させようと、エレンディラを娼婦に仕立てて一日に何人もの客をとらせる。彼女はたちまち砂漠中の評判となり、そのテントの前には男たちが長蛇の列をなす。ある日、彼女はウリセスと出会い、恋に落ちる。駆け落ちするも、祖母に追いつかれて遠く引き離される二人。恋するウリセスは不思議な力を身につけ、彼女を探し当てる。結ばれるために、二人は祖母を殺そうと企てるのだが・・・。
祖母の運命と恋人たちのその後の物語をマルケスと思しき作家(國村隼)が、語りついでいく・・・。
 ≪ここまで≫

 薄くて白い幕で三方をぐるりと囲まれた、何もない広大な舞台。正面を見つめると、その奥は果てしなく遠くまで続く(ように見える)深遠。マイケル・ナイマンのあの力強い音楽(感情に直接的に訴えかける情熱的な旋律と、機械のように確実で単調な繰り返し。露骨な性的イメージとともに冷徹な知性も感じられます。「ピアノ・レッスン」は大好きな映画です。)が満ちる世界で、深い闇から小さく点るように登場する登場人物たち・・・。

 不幸なヒロイン・エレンディラ(美波)とその恋人ウリセス(中川晃教)が見つめ合うシーンでは、まぎれもない熱い恋の感情が2人の瞳の間に存在しているように感じて、自然と涙がこぼれ続けました。美波さんが舞台で全裸になることはニュースになっていましたが、必要な演出だったと思います。壊れそうなほど細くて美しい若い女の肢体は、娼婦エレンディラの悲惨な人生をその存在だけで雄弁に説明し尽くしていました。

 赤や青などを大胆に使った照明が、スモークがたかれた舞台をしっかり染め上げていました。何もないステージに次々と大道具・小道具が繰り出され、自在に場面転換します。4時間以上に及ぶ長時間の舞台で、これでもか!これでもか!と次々と仕掛けが!最後の最後まで「わぁっ・・・♪」という驚きと喜びがまざった声が、私の心の中で響きました。

 正直、長いです(苦笑)。2幕、3幕と開幕の時の音楽が鳴る度に「また始まっちゃったよ~、ウム、行くぞ!」と腹をくくる!!・・・みたいな。もうヘトヘトなのに「出演者と一緒に長い旅に挑むゾ!」・・・みたいな。ある意味マラソンのような(笑)体育会系な観劇環境でした。でも観られて良かったと心から思っています。

 名セリフの宝庫だったな~。乱暴な言い方をすると、物語としては普通のお芝居の3~4本分の内容だったんじゃないかしら。エレンディラの話、ウリセスの話、エレンディラの祖母の話、そして3幕に登場する作家の話などなど。

 祖母役の瑳川哲朗さん。大・大・大・大活躍。ひどいバーちゃんだけど愛嬌があって決して嫌いにはなれません。この公演、マチソワ(1日に昼と夜の2公演)の日もありますね・・・凄い(汗)。

 ここからネタバレします。

 幕開けから10分間が至福でした。突然マイケル・ナイマンの音楽。はかなく破れた白くて薄い幕(緞帳)に、もやもやとした映像が写されます。徐々に舞台の中が明るくなってくると、大きい透明な塊(中が光っている・ダイヤモンド)、エキセントリックな表情の魚、猫足のバスタブが、ふわふわと上手から下手へと舞台を横切って飛びあがりました!奥から登場する人々はまるで蜃気楼のよう・・・。幻想的なカーニバル(パレード)にも心躍りました。

 エレンディラとウリセスの恋のシーンでは、必ず胸にグっと来て泣かされました。2人とも儚いんですよね。シーツを両端から畳んでいって2人が徐々に近づいていくところなんて、ホントにうっとり♪互いに上半身裸になって抱き合うベッド・シーンは、カラッカラに乾いた喉を潤すために無心になって1滴の水の求め合うようで、その必死さが美しかったです。真っ赤な照明に包まれたのも、愛の象徴であることがわかりやすかったです(後から同じ照明が使われますし)。

 3幕で作家(國村隼)が「エレンディラ」の真相を探り当てます。祖母にお金を返すためにこき使われていたエレンディラは、こっそり飼っていた白い孔雀をウリセスと呼んでいました。つまりウリセスはエレンディラの想像の産物であり、実在の人物ではなかったのです。それまでに描かれた全て(一目ぼれの一夜、恋ゆえの逃避行、2人協力しての祖母殺しなど)が、可哀想なエレンディラの想像でした。この顛末には・・・悲惨さがさらに上乗せされたので、びっくりしました(汗)。でも全てが明らかになった後に、海と空で2人が互いを求め合うシーンが続いたのが凄かったですね。「全ては嘘(夢)だった、でも、愛は本物だった」と言ってくれているような気がしました。ちょっとポール・オースターみたいだな~と思ったり。

 エレンディラ「永遠なんてない。あるのは瞬間だけよ。」

 さすがに4時間以上ともなると、少々退屈したところもありました。2幕のカーチェイス(笑)は平板すぎたような。3幕では(もう疲れきっていたのもありますが)、祖母の歌が長すぎるように感じました。横で抱き合うエレンディラとウリセスが手持ち無沙汰に見えたのも原因だと思いますが。

≪埼玉、大阪、愛知≫
出演:中川晃教、美波、瑳川哲朗、國村隼、品川徹、石井愃一、あがた森魚、山本道子、立石涼子、藤井びん、日野利彦、青山達三、戸井田稔、冨岡弘、新川將人、今村俊一、福田潔、堀文明、井面猛志、野辺富三、佐々木しんじゅ、田芳鴇紀、羽子田洋子、難波真奈美、太田馨子、今井あずさ、山崎ちか、川﨑誠司、石田佳央、さじえりな、本山里夢、安齋芳明、明石伸一(翼の男)、Juggler Laby、しゅうちょう、松延耕資、大口俊輔、木村仁哉、舩坂綾乃
原作:ガブリエル・ガルシア・マルケス(「無垢なエレンディラと無情な祖母の信じがたい悲惨の物語」鼓直訳 新潮社刊「ガルシア・マルケス全小説」より)  脚本:坂手洋二 演出:蜷川幸雄 作曲:マイケル・ナイマン(Michael Nyman) 美術:中越司 照明:原田保 衣裳:前田文子 音響:井上正弘 ヘアメイク:佐藤裕子 振付:広崎うらん 音楽助手:阿部海太郎 演出助手:井上尊晶/石丸さち子 舞台監督:小林清隆 主催:財団法人埼玉県芸術文化振興財団、ホリプロ、テレビ朝日、朝日新聞社 企画:ホリプロ 制作:財団法人埼玉県芸術文化振興財団、ホリプロ
【発売日】2007/04/14 S席12,000円 A席 7,000円
ホリプロ公式=http://www.horipro.co.jp/ticket/kouen.cgi?Detail=92
公式=http://hpot.jp/erendira/ ←音が鳴ります
公式ブログ=http://blog.e-get.jp/eren/
イープラス=http://eplus.jp/sys/web/theatrix/special/erendira.html

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Posted by shinobu at 20:13 | TrackBack

青年団リンク・東京デスロック『unlock#2:ソラリス』08/10-14こまばアゴラ劇場

 多田淳之介さんが作・演出(時には出演も)される東京デスロック。unlockシリーズの第2弾です(⇒第1弾レビュー)。脚本全文が掲載されたチラシが話題になっています。

 『ソラリス』はとても有名な作品です(⇒小説『ソラリスの陽のもとに』、⇒映画「惑星ソラリス」 ⇒映画「ソラリス」)。タルコフスキー版の映画をいつか観ようと思って結局観ていなかったので、チラシの脚本を読んでから伺いました。

 びっくりさせられましたね・・・いつものことながら(笑)。前知識はあった方が絶対に良いです。チラシをお持ちの方はぜひ読んでから劇場へ!

 ★2日目から、開演前にあらすじの説明をされているそうです!前知識なしでもOKかも?!(★は2007/08/12加筆)

 上演時間は約1時間40分。私は最前列に座ったんですが、たぶん3列目以降がお薦め。空調が控えめな状態なので、暑いのが苦手な人ほど前の方に座られると良いと思います(後方上部の席が暑かったみたい)。

 役者さんが皆さん素晴らしかったです。男性はかっこ良くて、女性は美しかった。

 ⇒CoRich舞台芸術!『unlock#2:ソラリス
 レビューをネタバレ感想以前までアップしました(2007/08/13)。
 最後までアップしました(2007/08/15)。★舞台写真追加!

 まず、舞台は黒い緞帳で隠された状態。上下にあるパネルに『ソラリス』のあらすじ解説する文字映像が流れます。

 そして幕が開くと・・・!

 役者さんが発する言葉は普通の日本語(現代口語)ですが、暴力的に投げやりだったり、脈絡なく何かを面白がったり、空虚な心でヘンに盛り上がったり、語られる言葉から予想される感情や状況からは導き出せないような演技をします。言葉に対して反応はちゃんとするので、会話は起こっているのですが、全員が常に何か別のことにとらわれたままでいるように見えて、“対話”という意味では成り立っていません。でも、そのまま会話は続きます。
 目の前に現れるのは、一部を除いて疲労困憊した人々。未来および今に絶望している様子です。少~しずつ『ソラリス』の中の誰が話をしているのかがわかってきます。

 ≪あらすじ≫ チラシより引用。story from:スタニスワフ・レム『ソラリスの陽のもとに』
 ケルビンは研究のため惑星ソラリスへやって来ました。すると死んだはずの妻ハリーが現れました。驚いたケルビンはハリーをロケットに押し込み宇宙に放ちました。先にソラリスに来ていたスナウト、サルトリウスによると、ここでは頭の片隅にある現実にはなってほしくない事が、人間の形で何度も現れるとの事です。研究者達は、目の前の、海が作った「者」について悩み、その無意味さ、自分たちの無力さについて悩みます。ケルビンとハリーの不毛とも思える愛の生活が続き、研究者達は、その「者」を消すために研究を進めます。研究者達と、その「者」達の運命やいかに。
 ≪ここまで≫

 不思議な感覚でした。誰も何も話さない時間や、コミュニケーションが成り立っていない、意味不明の(に近い)会話が続くので、退屈してくるんじゃないかと少し探り気味に観ていたのですが、一向に退屈する気配なし(笑)。予想外のことが起こるというのがその原因であることは明らかですが、それ以外にも色んな要素がありました(ネタバレしますのでここでは控えます)。

 最初から平行線だとわかって話したり、すれ違ったままの状態で放置したり、通じ合えないコミュニケーションが延々と続きます。その中で一瞬だけ、どうしても対峙せざるを得なくなった2人が、言葉ではぎこちなくはぐれて行ってしまうのだけれど、互いの心の中では相手を求めていることがわかるシーンがあって、「あぁ、なんてロマンティックなんだろう・・・♪」と、じんわりと胸が温かくなりました。平たく、ずーーーーっと広がっていく容赦ない絶望の中で、生まれた瞬間に死ぬことが運命付けられている、愛を見つけることができました。

 役者さんは皆さん素晴らしいと思います。「演技」という言葉自体が「嘘」であることを表していますから、役者さんがやってることは当然ながら全て嘘なんですよね。それを了解した上で、そこでありのままに生きているように見えます。でも同時に、周到な技術で嘘をついてくれているようにも見えるんですよね。両立しています。いったい、これは、何なんだろう。

 何が嘘で、何が本当なのか。私は、何を本当だと思うのだろうか。それは私にしかわからないことだし、自分で感じた時にしか気づくことができないんでしょうね。だから、自分ひとりで決めるしかない。それぐらい「本当(真実)」は不確かなものなんだと思います。
 
 ここからネタバレします。アップしました(2007/08/15)。写真は主催者よりいただきました。

 舞台には水が張られていました。中央には8角形の島が浮いています。登場人物は舞台上手に空いた穴から出入りします。穴から島までは、細い板が橋のように掛けられているのみ。水はソラリスの「海」を表しており、照明で青、赤、緑などに変化します。浮かんでいるのはウルトラマンの人形や地球儀、いるか(サメ?)の形のビーチボールなど。

soralis1.jpg
青年団リンク・東京デスロック『unlock#2:ソラリス』
   役者さんは自由に水の中に入ったり、水を掛け合ったりしますので、足はひたひた、服の裾はポタポタと、つねに身体は動く水とともにあります。当然のことながら水は演技をしませんから、予想不可能な動きがあるんですよね。役者さんが美しく、セクシーに映ったのはそのせいも大きいと思います。

 また、本番の舞台に近い状態(水を入れた状態)でお稽古をされてきたことが、この作品の成功の要因であることは間違いありません。1度だけアトリエ春風舎でのお稽古にお邪魔させて頂きました。ものっすごい湿気で不快指数100%以上じゃなかろうかと思うような地下室で(苦笑)、1つのシーンを何度も何度も、ずぶぬれになりながら繰り返されていました。生半可な気持ちでは舞台は作られないんだなと、芸術って凄いよねと、今更ながら思い知らされました。ほんと、役者辞めてよかったワ!(笑) 私の名前は「しのぶ」だけど、あんなに忍耐強くはないですぅ。

20070806_soralis_keikoba.JPG
プールで稽古@アトリエ春風舎

 自殺したはずの元恋人・ハリー(石橋亜希子)が何度も生き返ってきて、ケルビン(夏目慎也)は戸惑いますが、徐々にニセモノのハリーの愛に応えたい気持ちになってきます。でもハリーの方は、自分が人間ではないことに気づいてくるんですよね。2人は近づけば近づくほど、お互いが結ばれない運命にあることを知っていきます。これが切ない。
 イスと机をすべて「海」の中に放り込んで、何もなくなった島の上に大の字になって寝転び、ふざけるハリー。彼女が消えた後にケルビンも同じように大の字になったシーンで、「あぁ、ケルビンはあの(ニセモノの)ハリーを愛してしまったんだ」とわかりました。サルトリウスが自殺した後にハリーがまた戻ってくると、ケルビンはハリーを連れて一緒に退場します。2人は心中するんだろうなと思いました。

 スナウト(大竹直)だけが最後に残ります。彼は「海」の産物だったんですね。彼のところには「海」の作ったニセモノが1度しか現れなかったという発言がヒントになっています(他にも明らかな証拠になる出来事があるのですが、今作では演出で曖昧になっていました)。スナウト本人にそっくりのニセモノ(大竹直)が出てきて、ニセモノが本人を殺したか、本人が自殺してしまったのかしら・・・。

 サルトリウス(永井秀樹)の子供の頃の気持ちが、彼の父親(役名:レム)の形で現れます。でもそれを演じるのが女優さん(佐山和泉)なのが面白いですね。佐山さんが大胆に水に飛び込んで、むせながらセリフを言うのが面白かったな~。ハプニングなのか予定通りの行動なのかはわかりませんが、どちらにしろ「むせる」のは演技ではなく身体の反応そのものなので、ライブなのです。

 最も対峙したくないものが現れるからか、登場人物たちは自分の本当の気持ちをそのまま顔や動きには表しません。突然叫んだり、笑ったり、奇妙な語り口になったり、目を合わせなかったり、言葉の意味からかけはなれた行動をしたり・・・。でも、思いつきで(アドリブで)やってるわけではないことはわかります。どういうさじ加減なのかな~・・・。空気の密度が濃かったです。

 ステージを取り囲む「海」に誰もが入るので、全員が「ニセモノ」かもしれないんですよね。そう思わせる演出が面白いです。自分が本物かどうかなんて、誰にもわからないのかも。

 ≪8/10金 ポスト・パフォーマンス・トーク≫ 記憶に残った言葉を書いておきます。2007/08/16加筆。
 出演:多田淳之介・堤広志

 堤「演劇はここから5年が勝負かなと思う。過去5年で色んなジャンルが増えてきたし、制度も改善されてきた。公共ホールが増えたり、レパートリー・システムやレジデンシャル・アーティストが生まれたり。でも、内野儀さんがおっしゃっているように“演劇はなるようにしかならない”のかもしれない。誰も全体を見渡していないから。現場に携わる人が、モチベーションの高い人が、それぞれがベストと思うことをがんばってやるしかない。」

 堤「公共事業が増えることは諸刃の刃。まともに批評が出来ない。事業を酷評すると、次の年から“そんなにダメならやめよう”となってしまうかもしれないから。」

 堤「“静かな演劇”以降、リアリズム劇とも言えるような新しいジャンルが生まれた。例えばポツドールやサンプルのような、暗部をさらけだすような演劇。カタルシスがないし、ハッピーエンドでもない。でも、ある一定の共感を呼んでいる。」

 堤「(多田くんがやっているのは)原作のエッセンスを違うところから引き出していく手法。演劇を手立てとして人間を考える、というような。ルネ・ポレシュ(ドイツ人演出家。⇒過去レビュー)に似ていると思う。まっとうなモラルが働いていたらやらないことだから(笑)、それを(多田くんが)やっちゃうことに期待しています。そうすればつまらない演劇も面白くなる。」

 多田「演劇は、俳優がいて、役を演じるもの。」
 多田「疲れた感じを出したかった。(たとえば)腕立て伏せをいっぱいして、疲れれば、そこにストーリーが生まれる。」
 多田「ネガティブなもの(今作では疲れた身体)を描くことで、そこからポジティブなものが生まれる」

 多田「動物電気は観客に情報を与える演劇。青年団の(今、自分がやっている)ようなものは、観客が情報を獲得する演劇。」


 ≪8/12日ポスト・パフォーマンス・トーク≫ 記憶に残った言葉を書いておきます。
 出演:多田淳之介・生田萬

 多田「身体の状態がどうあるかに興味がある。どういう身体で(言葉を)発するか。今回は俳優に『絶望的な身体でいてほしい』『できるだけ疲れた身体で居て』と伝えました。」

 生田「キラリ☆ふじみを、演出家が好きなように実験できる場にしたい。」
 生田「“人間はこんな風に変わるんだぜ”と見せるのが演劇。あるシチュエーションで、人間の可変性と出会う事件。それが演劇だと思う。」

 生田「小劇場が増えて貸し小屋経営を始め、60年代の小劇場運動から「運動」の文字がなくなっていた。こまばアゴラ劇場を拠点に活動することで「小劇場」に「運動」の文字を復活させたのが、平田オリザさんだと思う。運動のルネッサンス。」
 多田「アゴラは日本の中のフランスみたいな場所。」

 多田「現代口語演劇をやることで、俳優のコミュニケーション能力がものすごく上がっている。」

夏のサミット2007参加作品
出演:夏目慎也、佐山和泉、石橋亜希子、大竹直、永井秀樹(増田理は体調不良のため降板。代役に永井秀樹)
作・演出:多田淳之介 舞台美術:鈴木健介 照明:岩城保
8/10金 19:30の回終演後ゲスト 堤広志氏 (編集者、演劇・舞踊ジャーナリスト)
8/12日 19:00の回終演後ゲスト 生田萬氏 (キラリ☆ふじみ芸術監督)
【発売日】2007/07/01 予約2000円 当日2500円(日時指定・整理番号付自由席)
http://www.specters.net/deathlock

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Posted by shinobu at 09:44 | TrackBack

2007年08月10日

【情報】「T★1演劇グランプリ」第1次審査結果発表!

 「T★1(ティー・ワン)演劇グランプリ」第1次審査結果が発表されました!
 ⇒第1次審査結果発表ページ ⇒関連記事:
 79団体の中から20団体が通過!おめでとうございます♪

 本日発売の「TOKYO★1週間」にも記事が掲載されていますので、どうぞお買い求め下さい。私の写真もチョコっと載ってます(笑)。 

Posted by shinobu at 10:18 | TrackBack

2007年08月09日

Bunkamura展覧会「ルドンの黒~眼をとじると見えてくる異形の友人たち~」07/28-08/26ザ・ミュージアム

 オディロン・ルドン(Odilon Redon)の展覧会「ルドンの黒」に行ってきました。絵画展に行くのは昨年春以来かな~・・・。ゆるり、ふらりと歩いて、気軽な子一時間でした。

 ルドンというと一つ目のバケモノが出てくるクリムトみたいな色彩の絵だという覚えがあったのですが(小学生の頃に観た本の影響)、「ルドンの黒」といわれるこの黒の世界の方が、彼の描いたものを捉えやすかったような気がします。

 「コレは素敵!」と惹かれた絵は残念ながら特にありませんでしたが、ボードレールなどの同時代の作家と関わってきたことがわかったのは収穫でした。やっぱりアーティスト同士は響きあい、ともに作品を作るんですね。

 下記は公式サイトより引用。

■オディロン・ルドン Odilon Redon
1840年、フランス ボルドー生まれ。ボルドー近郊のペイルルバードで孤独な少年期を過ごす。20歳の頃植物学者アルマン・クラヴォーと知り合い、顕微鏡下の世界に魅せられるようになる。後にルドンが制作した版画には植物学の影響が見られる。1864年パリに出てジャン=レオン・ジェロームに入門するが数か月でやめ、ボルドーに戻って銅版画家ロドルフ・ブレスダンの指導を受ける。また、1878年頃にアンリ・ファンタン=ラトゥールから石版画転写法の指導を受ける。1879年、初の版画集『夢の中で』を刊行した。1890年頃からそれまでの作品と打って変わって、豊かな色彩を用いるようになる。1916年、パリで死去。

■岐阜県美術館
1982年開館。郷土ゆかりの作家たちの作品と、ルドンを中心とした象徴主義の作品を中心とした作品収集を行う。開館当時、他の美術館がこぞって印象派を中心とした人気作家の収集につとめている中で、独自の姿勢を打ち出す方向性を模索している時期に、 国内のルドン・コレクション132点を一括購入したことか ら、「岐阜のルドン」の収集の歴史が始まった。そしてルドンが岐阜の西洋美術コレクションの中心になったことによって、その周辺の作家(象徴主義 系統の作家たち)の作品も集まり、今日に至る。現在200点を超えるルドンの作品群は、質・量ともに世界有数のコレクションとして国際的に高く評価されている。

一般1300円 高校・大学生900円 小・中学生600円
公式=http://bunkamura.co.jp/shokai/museum/lineup/07_redon/index.html

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Posted by shinobu at 18:51 | TrackBack

新国立劇場オペラ『新国立劇場こどものためのオペラ劇場「スペース・トゥーランドット」』07/28-30新国立劇場 中劇場

 昨年見逃していた新国立劇場こどものためのオペラ劇場「スペース・トゥーランドット」。再演をしてくれたので伺えました。第一弾「ジークフリートの冒険」ではメルマガ号外を出したんですよ~。

 子どもたち(小学校低学年以下)が初めてオペラを体験するには最高のイベントだと思います。上演時間は約1時間15分。そもそも『トゥーランドット』の音楽の大ファンの私は、幸運なことに前から3列目で、すんばらし~歌声に涙が流れっぱなし! 

 ⇒CoRich舞台芸術!『スペース・トゥーランドット

 ≪ものがたり≫ 公式サイトより。原作オペラとは違うオリジナル・ストーリーです。
 はるかかなたの大宇宙。氷でできた惑星、ジェラート星の女王トゥーランドットは美しいけれど、心は氷のように冷たく、自分が一番美しくなければがまんできません。そこで、自分よりも美しいといわれるフローラ星に住むラベンダー姫をつかまえて、自分が宇宙一の美女になろうとします。トゥーランドットは、三人のギャング、ペペ、ロン、チーノにラベンダー姫をさらってくるよう命令。ラベンダー姫は18歳の誕生パーティで、先祖代々伝わるふしぎな鏡を王様からプレゼントされます。そこへ三人のギャングがあらわれ、助けにやってきた宇宙警備隊のロケットが墜落したすきにラベンダー姫をさらっていきます。宇宙警備隊のヒーロー、キャプテン・レオは、体にコンピューターが内蔵されたサイボーグのタムタムと宇宙船に乗って、ワープしながらラベンダー姫を助けに旅立ちます。寒くて不気味なジェラート星についたレオとタムタムは、カプセルに閉じ込められたラベンダー姫をみつけます。レオとラベンダー姫はひとめで恋に落ちます。そこにあらわれたトゥーランドット女王は、「この娘を助けたかったら、三つの謎ときに挑戦して全て正解しなければならない」とレオに言います。1問でも間違えると、女王の冷凍銃で殺されてしまう危険な謎解きです。愛するラベンダー姫のためにピンチに立ち向かうヒーローの運命や、いかに!
 ≪ここまで≫

 歌と演技、そしてプロのサービス精神については、満足を通り越すほど堪能させていただきました。作品の一番の特徴は、中劇場の額縁をまるまる覆う巨大なスクリーンに映写される宇宙空間の映像でしょう。「スペース(宇宙の)トゥーランドット」の世界は、最先端の技術とそれを使いこなす人間の豊かな知恵で支えられていました。プロフェッショナルのオペラ関係者の大人たちが、子供のためのエンターテインメント・オペラ作りに徹していることを嬉しく思いました。

 「トゥーランドット」の音楽をアレンジしたものが何度も流れます。もーその音楽が流れる度にグっと熱く胸にこみあげるものがあり、また、メインのキャストの方々の歌が素晴らしくて、音だけで身体がシビれましたね。極上の幸せってこういうこと!やっぱりオペラは素敵~♪

 ただ、前作「ジークフリートの冒険」と比べると、ストーリー展開や演出は残念な結果だったと言わざるを得ません。「小さな子供に見せる舞台芸術はこうあって欲しい」という具体的な考えが、台本・演出を手がけられた田尾下哲さんと私とでは、ちょっと違うのかもしれません。

 ここからネタバレします。

 開演直前に「無事に家に帰れると思うなよ~!」という、トゥーランドット女王の怖い声が客席に響き、そばに居た可愛らしい男の子が「こわい~・・・」と横に座るお母様の顔を覗き込んでいました(笑)。

 サイボーグのタムタム(直野容子)が幕開けからストーリー・テラーのような役割で導入をしていましたが、タムタム以外の役についても言葉による説明が多すぎましたね。ペペ(高橋淳)、ロン(米谷毅彦)、チーノ(峰茂樹)の3悪党がフローラ星に乗り込んできてラベンダー姫(中村恵理)を奪うシーンで、やっと音楽と歌、演技がぶつかって調和していく舞台芸術の醍醐味が出てきました。

 キャプテン・レオとタムタムが宇宙船に乗って、ラベンダー姫がさらわれていったジェラート星に向かいます。宇宙空間の映像の中にサッカーボールが浮かんでいたり、サイコロが転がってきたりと、そこまでは良かったのですが、Nintendo DS Liteが出てきたのには首をかしげましたね。
 宇宙船に乗っているところをパシャっと何者かに隠し撮りされ、降車したらその写真が1500円で販売される(ディズニーランドなどのテーマパークでありますよね)というネタには閉口でした。

 日常生活と舞台の世界をつなげることで子供の気を引くことは有効な手段ですし、子供たちも喜びの歓声を上げます。でも、現実のことはほんの触りで使うぐらいにして、「スペース・トゥーランドット」自体の世界の面白さで勝負してもらいたいんですよね。空想の世界を安易な発想で壊して媚びることはないと思いますし、子供は底抜けに豊かな想像力で物語の世界にざぶんと飛び込んでくれるはずです。

 オペラ歌手って、歌も歌って踊りも踊って、しかも演技もできなきゃだめなんて、なんて偉大な職業なんでしょう。タムタム役の直野容子さんはダンサーのように足を高く上げて、サイボーグのおサルっぽい少年をキュートに熱演。その他にも全身全霊でユーモアたっぷりにおどけたキャラクターを演じきってくださる方が多数いらっしゃいました。

 最大の爆笑ポイントはやはり3つのエニグマ(謎)でしょう!
 謎1:「タロウさんが風邪を引いて学校を休みました~~牛&蝶々~~さて、タロウさんはなぜ学校を休んだのでしょうか?」
 答え:レオ(小原啓楼)「(盲腸ではなく)それは、風邪だ~~~っ!!」
 小原さんの歌声があまりに堂々とした麗しいものだったので、おマヌケな答えとのギャップに笑いが止まりませんでした(笑)。あ、でも子供たちは真剣に聞いていたようですよ。3問目はキャプテン・ネオにしか解けない難しい問いだったのが良かったですね。
 謎3:「これは私にもわからないことだが、このジェラート星の氷を溶かすことができるものがある。それは何だ?」
 答え:「それは、女王の涙!」

 トゥーランドット女王(高橋知子)が改心して涙を流したことで、ジェラート星の氷が溶け始めます。トゥーランドットが純白から真紅のドレスに早替えしたのは見事!音楽はサンバっぽくアレンジされたものになり、風船を組み合わせて作った大きなフルーツもいっぱい登場して、劇場全体がトロピカルな祝祭ムードに変身します。キャストがみんな楽しそうに歌って踊りますし、子供たちも明るい顔になっていました。でも私には、地球温暖化が進んだせいで、南極がブラジルになったようなイメージばかりが浮かんできてしまって・・・。ちょうど『小泊の長い夏』を観たばかりでしたしね(苦笑)。

 最後は無数の銀色のテープがパーン!と客席に向かって放たれ、子供たちの歓声が響きました。劇場を出ると、長い銀色のテープを体中に巻きつけて歩く幼稚園児ぐらいの女の子がいて、もー可愛くってたまんなかったです♪

オペラ「トゥーランドット」(プッチーニ作曲)による 全1幕【日本語上演】
出演=【フローラの王】大澤建 【ラベンダー姫】中村恵理 【タムタム】直野容子 【キャプテン・レオ】小原啓楼 【氷の女王トゥーランドット】高橋知子 【ペペ】高橋淳 【ロン】米谷毅彦 【チーノ】峰茂樹 【合唱】新国立劇場こどもオペラ・ヴォーカルアンサンブル 【管弦楽】新国立劇場こどもオペラ・アンサンブル
【編曲・指揮】三澤洋史 【台本・演出】田尾下哲 【美術】増田寿子 【衣裳】ひびのこづえ 【照明】八木麻紀 【音響】渡邉邦男 【振付】佐藤ひろみ 【舞台監督】高橋尚史 【主催】新国立劇場 【共催】朝日新聞社 【協力】ヤマハエレクトーンシティ渋谷
全席指定 2,100円
http://www.nntt.jac.go.jp/season/updata/20000042.html

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2007年08月07日

【演劇教育】めぐろティーンズプログラム2007『演劇コース発表会』08/05めぐろパーシモンホール小ホール

 (財)目黒区芸術文化振興財団が主催する中学生・高校生を対象とした舞台芸術のワークショップ・コース。演劇コースの発表会を拝見しました。

 講師は前半(1日のみ)が平田オリザさん、後半(5日間と発表会)は明神慈さん(ポかリン記憶舎)と木並和彦さん(公式サイト←音が鳴ります)です。

 めぐろパーシモンホールには初めて伺いました。都立大学駅から徒歩7分ぐらいのところに、こんなに優雅な公園があるなんて・・・♪真っ青な芝生を眺めながらカフェでお茶をして、休日の昼下がりを堪能いたしました。

 小ホールに入ると薄暗い照明に木並さんの音楽・・・ポかリン記憶舎の世界でした。まさかこんなにしっかりとした“公演”だとは予想外で、「親御さんがビデオ撮影とかするんだろうな~」と思っていた私は、客席に座るなり姿勢を正しました。

20070731_persimon1.jpg
お子様を連れたお散歩にも最適

 白い上着に灰色のボトムスのおしゃれな衣裳を着た少年・少女たちが、丁寧に一歩ずつ踏み出します。一挙手一投足に明神さんの演出の目が注がれているのがわかりました。
 ちょっぴり胸きゅんの10代の男女の恋愛エピソードをはさみつつ、身体表現で簡潔に男と女を対比していきます。ピーンとした緊張感が持続する45分でした。最初のセリフが凄かったわ~。2人で温泉旅館に来ちゃった高校生の会話だったんですよ!
 男「後悔してる?」
 女「ううん」

 男の子が四つんばいになってぎこちなく歩くだけのシーンが何度か挟まれます。それに対して女の子は白い日傘を差してふらりと立っているだけ。じたばたと努力する男とそれを高みの見物する女。男は不恰好でも必ず前に進みますが、女は静止したまま停滞しているのかもしれません。

20070731_persimon3.jpg
贅沢な芝生スペース

 女2人がゆっくりと紙飛行機を飛ばして去ります。その飛行機を四つんばい歩行の男が拾うと、男はその飛行機を手に持って起き上がり、元気に走り去りました。女のおかげで飛べた男、なのかなと思いました。
 女が紙飛行機を飛ばす前の仕草が素晴らしかったですね。ゆっくりと起き上がってサンダルを履き、ポシェットから飛行機を取り出します。女は飛行機を飛ばしますが、小さな翼は力なく床に落ちてしまう。いのちを生み出す女、生まれて死ぬいのち、生死を冷静に見つめる女・・・という具合に、ささやかな動きに色んな意味が含まれているように受け取りました。だからひとつひとつを見逃せないんですよね。

 最後は星空サイクリング。1組の男女が寝転がり、下半身を腰から空に向かって上げて、自転車をこぐように足をぐるぐる回します。海の底のようにも感じる青い星空の照明の中、天の川を渡る恋人たち。ロマンティックでさわやかな幕切れでした。

20070805_smallhallentrance.JPG
小ホール入り口

 ≪ポスト・パフォーマンス・トーク≫
 【出演】講師:明神慈/木並和彦 参加者(左から):河上隼大/鈴木康太郎/佐藤麻央/木崎千温

 中高生と講師のお2人の会話から、かなり厳しいワークショップであったことがひしひしと伝わってきました(笑)。「明神さんに弟子入りした5日間だった」とか「がんばったっていう言葉で表せないほどがんばった」とか。

 観客は満足を通り越して感激しちゃうほどの体験をさせていただきましたが、作る方にとっては尋常じゃない環境だったようですね。「初心者が5日間で45分間の作品を作る」ということが、いかに大変な(無謀な)ことか。講師の方々はそれを必死で伝えようとしてらっしゃるようにも見受けられました。

 子どもたちに「来年もこのコースを受講したい」と思ってもらうことが大切だと思います。今回の経験をもとに、来年の企画をより良いものにしていただきたいですね。

■めぐろティーンズプログラム2007『演劇コース発表会』
出演:浅川咲耶/木崎千温/佐藤麻央/高橋賢功/守川美来/河上隼大/今朝丸和歌/鈴木康太郎/田中絵里/湯谷幸大/川本美森/小林奈央/住田淳/福島建士
演出・指導:明神慈 音楽:木並和彦 照明:木藤歩 演出助手・出演:中島美紀/浦壁詔一 協力:(有)アゴラ企画 区民サポーター:梶実千枝/徳永美穂子/松崎智子/山本郁子 総合プロデュース:平田オリザ
発表会入場料300円 
■めぐろティーンズプログラム2007「演劇入門ワークショップ」07/01目黒区立中目黒小学校(13:00~20:30)
講師:平田オリザ(演出家・劇作家・青年団主宰)
対象:中学生・高校生 定員:各回とも30名 参加費1000円
■めぐろティーンズプログラム2007「演劇コース」07/31-08/05めぐろパーシモンホール小ホール(7月31日~8月4日は13:00~17:00/8月5日は9:30集合予定)
講師:明神慈(劇作家・演出家・ポかリン記憶舎 舎長) 木並和彦(作曲家・音楽監督・プロデューサー)
対象:中学生・高校生 定員:20名 参加費2500円 参加条件:前半の入門ワークショップ、または昨年5月28日または7月16日の平田オリザ氏によるワークショップの 出席者で、6日間参加できること。 主催:(財)目黒区芸術文化振興財団 後援:目黒区教育委員会 助成:(財)地域創造
http://www.persimmon.or.jp

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Posted by shinobu at 11:26 | TrackBack

2007年08月06日

マーク義理人情『俺たちはマシンガンじゃないって。』08/01-05王子小劇場

 マーク義理人情は舞台芸術学院出身の男優4人の劇団です。前々回よりも私は楽んで拝見できました。題材も仕上がりもかなりソフトだったようです。上演時間は約75分(だったと思う)。

 ⇒CoRich舞台芸術!『俺たちはマシンガンじゃないって。

 ≪あらすじ≫
 小学生の時よく遊んだ河原に帰ってきた。幼い頃の思い出がよみがえる。大好きな仲間達とこんな遊びをしてたっけ・・・。小学生の本気の遊びが始まる。
 ≪ここまで≫

 思いっきり小学生ルックの若い俳優さんがハイテンションで見せる、ノスタルジックで超はずかしい幼い頃の思い出の世界。
 ただギャグを並べていく作風なのかと思いきや、ネタ披露に留まらない役者さんの“やりきる”演技に圧倒されたり、演劇ならではの面白い演出も出てくるので、気が抜けません(笑)。

 チラシに書かれた「『おもしろくて、かげがえのない劇団』はマーク義理人情しかありません。妥協なし。ペース配分なし。」(抜粋)という王子小劇場代表・玉山悟さんの言葉に納得。たしかに「かけがえがない」と思います。だって、こんなこと(失敬)をものすごく地道な努力を積み重ねて実現している劇団は他にないと思います(笑)。

 ここからネタバレします。

 外国というとアメリカしか思い浮かばなかったりとか、全く関係ないところで「USA!USA!」って連呼したりとか、ほんとバカみたい。でも私も小学校の時、あんな風にやってた気がする・・・(笑)。

 自転車を追いかけるうちに全員が「飛んだ~っ!」時はミラーボールもぴっかぴか。大胆に夢の世界へと飛ばせてもらってちょっと嬉しくなりつつ、馬鹿馬鹿しさも最高潮に達したため、切なくなりました(苦笑)。さらに今井千恵さんがオモシロ発音でプラネタリウムのアナウンスをしたのでダメ押しされた気分になり、切なさから呆れへ、そして「そこまでやるか!?も~ぉ、かっこいーゼっ!」ってなっちゃいました(笑)。

出演=竜沢孝和、岡崎智浩、成瀬功、高橋康則、今井千恵、瀬戸口のり子
照明=増田瑞穂(インパラプレパラート) 音響=大矢場智之(インパラプレパラート) 宣伝美術=村山素子(時間堂)
前売り・当日ともに2000円 学割1000円
http://www.geocities.jp/ninjou2005/

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Posted by shinobu at 23:07 | TrackBack

TBS『すけだち』08/05-14新宿コマ劇場

 筧利夫さんと松浦亜弥(あやや)さんが主演する音楽劇。音楽はつんく♂さん。脚本は劇団鹿殺しの丸尾丸一郎さんと菜月チョビさん。
 上演時間は約2時間20分(途中20分の休憩ふくむ)。

 ⇒CoRich舞台芸術!『すけだち

 ≪あらすじ≫ 固有名詞は間違ってる可能性あり。すみません。
 人気テレビ番組「鎖鎌戦士ザクザクムーン」主演のトップアイドル(松浦亜弥)と、時代劇「秒殺仕事人・中村もずく」主演の売れない男優(筧利夫)が、宇宙人ら(北村有起哉ら)に救世主だと勘違いされ、誘拐されてしまう。知らない星に連れて行かれた2人は、悪者(宮川大輔)に支配された星の人々を救うことができるのか?(・・・みたいな感じの勧善懲悪的ストーリー)
 ≪ここまで≫

 開幕して20分ぐらいはおフザけのぬるさにちょっと困ってしまったのですが、途中休憩に入る前にはしっかりとエンタメ活劇になっていました。面白かったかと問われたら「面白くは無かった」と応えざるを得ませんし、脚本はエピソードを盛り込みすぎな気もします。でも最後まで楽しんで拝見できました。スターはやっぱり華があるな~ってしみじみ思いました。
 悪者の手下役にかっこいい男の子がいるな~と思ったら、物販でブロマイド(生写真?)がSOLD OUTしてました。

 装置は3重になった回り舞台がぐるぐる回って(意味わかりませんよね、すみません)、高さもスピードもあって迫力がありました。大きな公演ではおなじみになった電光掲示板のようなカーテン式動画装置(名前は知りません)が大活躍。音楽は歌謡曲っぽくておぼえやすく、すぐに口ずさめそうなものばかりでした。さすがはつんく♂さん、ということなのでしょう。

 筧利夫さん。最近の筧さんの舞台ってこんな感じの役が多いですよね。安心して観てられますが、物足りなさも。
 松浦亜弥さん。テレビなどで見たまま、はちきれんばかりの元気キュート。
 宮川大輔さん。悪者ハーデス役。怖い大阪弁でしっかりと、いかにもなヒール役。お笑い芸人さんってほんとに肝が据わってると思います。
 時東ぁみさんって、初めて動いている姿を拝見したんですが、ああいう、その、お色気な人なんですか?(ヘンな質問だ) お尻と胸(大きい)と、腰と足(細い)のバランスがすごくエッチで見ごたえがありました(私オンナなんですけど)。
 KAKUTAの成清正紀さんがおじいさん役で笑いをしっかり取ってて頼もしかったです。

出演:筧利夫/松浦亜弥/北村有起哉/宮川大輔/富岡晃一郎/森山栄治/大口兼悟/時東ぁみ/青谷優衣/三浦涼介/鷲尾昇/篠田光亮/青柳塁斗/Takuya/成清正紀/中川真吾/たくませいこ/ギャル曽根/小堀裕之(2丁拳銃)/川谷修司(2丁拳銃)/他
脚本:劇団鹿殺し(丸尾丸一郎・菜月チョビ) 演出:岡村俊一 音楽:つんく♂ 舞台美術*河口夏江 照明:松林克明 音響:山本能久 舞台監督:腹だ譲二 宣伝美術:東學 宣伝写真:谷敦志 制作助手:岩間多佳子(RUP) 三浦瞳 制作:鈴木優子(RUP) 島袋潤(RUP) プロデューサー:松田誠(ネルケプランニング) 寺井禎浩(ジェイピィールーム) 頭取:つんく♂ 制作協力:ジェイピィールーム 制作:ネルケプランニング/アール・ユー・ピー 主催:TBS 製作:ネルケプランニング/TNX/ アール・ユー・ピー
【発売日】2007/06/17 S席 \9.000 A席 \8.000 
http://www.nelke.co.jp/stage/sukedachi/

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Posted by shinobu at 22:32 | TrackBack

2007年08月03日

東宝ミュージカル『レ・ミゼラブル』06/08-08/27帝国劇場

 ご存知、超有名・人気ミュージカル『レ・ミゼラブル』(通称レ・ミゼ)。今年で日本初演20周年なんですね。恥ずかしながらワタクシ、初めて最後までちゃんと観ました・・・!シアターテレビジョンでチケットをゲットしたところ、ありがたいことに前から2列目!!

 めぇ~~~っちゃくちゃ、良かった!!!
 びっくりした!!

 ⇒CoRich舞台芸術!『レ・ミゼラブル

 作品については充実の公式サイトでどうぞ。

20070627_flower.JPG
ゲットした花束です♪

 あのカーテンコールの回数は何っ!?スタンディングするまでに2回か3回、立ってから何回!?憶えてないぐらいずっとやってました。おそらく席が前から2列目だったっていう幸運も大きいと思いますが、全く苦にならなかったです。

 イープラス貸切公演(2007/06/27)だったので、カーテンコールではイープラス・ネタまで披露してくださり(キャストが全員で「e」の体型になってジャンプ!)、しかも私、なんと最後にキャストが投げるお花までゲットしちゃったですのよっ!!こんなの初めて♪

 たまたまキャストが良かったのか、座席が良かったからなのか、原因は他にもあるかもしれませんが、私はめちゃくちゃ感動しました。 
 出演者の中では特にエポニーヌ役のシルビア・グラブさんの演技が素晴らしかったです。

 メルマガ2007年7月号に書いたコメントです。

  東宝ミュージカル『レ・ミゼラブル』
  06/08-08/27帝国劇場
  ≪東京、福岡≫
  ☆恥ずかしながら、最後までちゃんと観たのは初めてでした。
   一度聴いたらしっかり耳に残る音楽。豪華な装置、衣裳、キャスト。
   「赦すこと」の偉大さを見せ付けられ、何度も涙しました。
   リピートされる方々のお気持ちがよくわかりました。
    http://www.toho.co.jp/stage/lesmis/top.html
   8/27まで東京で上演中!福岡・博多座公演は9/4から10/24まで。

 ここからネタバレします。

 あいかわらず泣きっぱなしでしたね、私。そうなんですよ、ハマるともうね、ダメなんですよ~。だってジャン・バルジャンが神父さんに「金の燭台も持って行きなさい」って言われたところでもー号泣。
 
出演=山口祐一郎:ジャン・バルジャン/岡幸二郎:ジャベール/新妻聖子:エポニーヌ/シルビア・グラブ:ファンテーヌ/菊地美香:コゼット/泉見洋平:マリウス/駒田一:テナルディエ/森公美子:テナルディエの妻/坂元健児:アンジョルラス/
〔子役ル〕ガブローシュ:新井海人 リトル・コゼット/リトル・エポニーヌ:大下夕華 加藤ゆらら
〔男性アンサンブル〕伊藤俊彦/清水裕明/中本吉成/菊地まさはる/松原剛志 /中井智彦/櫻井太郎/藤田光之/野島直人/赤座浩彦/梶雅人
〔女性アンサンブル〕わたりあずさ /折井理子/浅野実奈子/歌納有里/児玉奈々子/穂積由香/吉岡里奈/本田育代
作=アラン・ブーブリル クロード=ミッシェル・シェーンベルク 原作=ヴィクトル・ユゴー 音楽=クロード=ミッシェル・シェーンベルク 作詞=ハーバート・クレッツマーオリジナルのフランス語テキスト=アラン・ブーブリル ジャン=マルク・ナテル 資料提供=ジェームズ・フェントン 編曲=ジョン・キャメロン 音響=アンドリュー・ブルース/オートグラフ 衣裳=アンドリュー・ネオフィトウ 照明=デイビッド・ハーシー 装置=ジョン・ネピア 潤色・演出=ジョン・ケアード/トレバー・ナン  翻訳=酒井洋子 訳詞=岩谷時子 プロデューサー=田口豪孝/坂本義和 製作=東宝株式会社 製作協力=キャメロン・マッキントッシュ(オーバーシーズ)リミテッド
S席13500円 A席9000円 B席4000円
http://www.toho.co.jp/stage/lesmis/top.html

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Posted by shinobu at 15:09 | TrackBack

Studio Life『孤児のミューズたち』07/25-08/05シアターX

 男優集団Studio Lifeの小規模公演。The Other Lifeというシリーズです。ミシェル・マルク・ブシャールさんの戯曲を上演するのは、『LILIES』につづいて2度目なんですね。

 私はいちおしの林勇輔さんが出演される【borne】バージョンを拝見。※舟見和利さんが体調不良で降板されたため、両バージョンともイザベル役は林勇輔さんになっています。上演時間は約2時間20分(15分の休憩を含む)。

 メルマガでもご紹介しておりました「カナダ現代演劇祭2007」ですが、結局行けたのはこの作品だけ(涙)。やっぱりカナダ戯曲って素晴らしい~っ!!(過去レビュー⇒

 ⇒CoRich舞台芸術!『孤児のミューズたち

 ≪あらすじ≫ パンフレットより。(役者名)を追加。
 1965年4月、カナダのケベック州、ラク・サン・ジャン地方の小さな村。カトリック教会の保守主義が色濃く住民の意識を染め上げているそんな村で、小学校教師として勤めるカトリーヌは弟妹の行動に日々頭を抱えていた。周りじゃら知恵遅れと白い目で観ら得ている三女・イザベル(林勇輔)。母親の格好を真似してスカートを履き続け、10年間も小説を書きつづけている自称作家の長男・リュック(小野健太郎)。それぞれの勝手気ままな言動に振り回されながら「この家族はまともじゃない。それを受け入れて生きていくしかないわ!」と諦めにも似た心境の長女・カトリーヌ(楢原秀佳)。そんな時、カナダ軍大尉でドイツに駐屯中の次女・マルティーヌ(倉本徹)が帰ってきた。リュックの葬式に出席するために・・・。
 ≪ここまで≫

 舞台中央には木製のダイニングテーブルとイス数脚。舞台奥の黒い壁にチョークで書かれた窓枠や飾りぶちが素敵。

 密度の高い4人の会話劇を、音楽や照明の工夫で飽きさせないように工夫されていました。楽曲のジャンルが広かったですね~(ポップスやオペラ、賛美歌など)。すべてが作品にフィットしていたわけではなかったと思いますが、いつもの大規模公演よりもセンシティブな使い方で、私はかなり楽しめました。こんなにも悲惨な話を軽い感覚で、前向きな気持ちで味わえたという点で、演出の倉田さんに感謝です。

 生半可な気持ちでは取り組めない戯曲ですよね。役者さんの演技には少々差が出てしまってはいましたが、充分満足できる、内容の濃い4人芝居でした。
 母親が彼らのミューズ(インスピレーションの源)であり、実は彼ら自身も互いのミューズで、そして次の世に生まれる子どももミューズになるんですよね。
 あと、やっぱり人間を動かすのは恋なんだな~とも思いました。

 林勇輔さんの素晴らしいこと!いつも期待どおり魅せてくださいます。今作では期待以上だったかも。「知恵遅れ」(27歳なのに知能は11歳)とバカにされる三女イザベル役。とてつもなくキュートで、大らかな愛情に満ちていました。言葉が舞台で生きてるように感じます。コメディのセンスもさすが。
 イザベル「私はメンソール(のタバコ)が好き♪」

The Other Life vol.7 カナダ現代演劇祭2007 "Les Muses Orphelines"
出演=【abri】坂本岳大、石飛幸治、岩崎大、舟貝和利 【borne】楢原秀佳、倉本徹、小野健太郎、林勇輔 ※abri(アブリ)チーム 、borne(ボルヌ)チームのダブルキャスト公演。
作 : ミシェル・マルク・ブシャール 訳:佐藤アヤ子 上演台本・演出 :倉田淳 美術:松の潤 照明:森田三郎 山﨑佳代 舞台監督:土門眞哉 音響:竹内亮(OFFICE my on) 衣裳:竹原典子 美術助手:渡辺景子 演出助手:平河夏 荒川真寿恵 宣伝美術:及川健 小道具:高津映画装飾 デスク:釣沢一衣 揖斐圭子 大野純也 制作=稲田佳雄 中川月人 麻場優美 大田香織 那須千恵子 制作協力=東容子 縄志津絵 宮澤有美 小泉裕子 八木美穂子
【発売日】2007/06/24 前売 4,800円、当日 5,000円 ※「カナダ現代演劇祭2007」4本通しチケット:10,000円
http://www.studio-life.com/stage/muses/index.html

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Posted by shinobu at 14:11 | TrackBack

【お知らせ】8月4日(土)夜にFM西東京「たけがき2」に出演します

 FM西東京の演劇情報番組「たけがき2」に出演いたします。毎月第一土曜日のレギュラーです。

 今回はハイリンド『幽霊はここにいる』についてお話し、8月に観られるお薦めお芝居を3本ご紹介します。

 西東京市およびその周辺地域でお聴き頂けます。
 8月4日(土)21:30~22:00(の内の約10分間)
 FM 84.2MHz

 ⇒PodCastingあり!放送終了後にアップされます(数日後だったりも)。

Posted by shinobu at 13:33 | TrackBack

2007年08月01日

ハイリンド『幽霊はここにいる』08/01-05 THEATER/TOPS

 ご縁があって旗揚げ公演から通っているハイリンド。第4回公演にしてTHEATER/TOPSに進出です(関連記事、レビュー⇒)。ハイリンドは俳優だけで構成された劇団で、公演ごとに脚本を選び、それにふさわしい演出家を迎えるという独自のスタイルを持っています。

 今回の戯曲は安部公房の1958年岸田國士戯曲賞受賞作『幽霊はここにいる』。ハイリンド演出が2度目になる西沢栄治さん(JAM SESSION)が演出を手がけます。上演時間は約2時間。

 いや~・・・戯曲の世界を堪能できました。公演パンフレットも劇団オリジナルTシャツも買っちゃいましたよ♪

 ⇒CoRich舞台芸術!『幽霊はここにいる

 ≪あらすじ≫ ぴあの特集コラムより引用。(役者名)を追加。
 (略)戦争が終わった混乱の空気が色濃く残る町が舞台。ひとりの詐欺師(伊原農)が、そこで朴訥とした男(多根周作)に出会うところから話は始まる。その男には幽霊が見え、今も連れて歩いていると聞いた詐欺師は、ひともうけ企む。そして、幽霊の身元を捜すめため、死んだ人間の写真を買うという商売を始めるのだが、これが大当たり。だが、やがてそれは詐欺師のもくろみを超え、町中を混乱させる事態に発展して……というもの。リアリティがあるような、ないような、不思議な空気をはらみながらも、身勝手さ、ずるさ、善意、愛らしさを通して、人間という存在をとらえようとする安部の戯曲。(略)
 ≪ここまで≫

 2002年の鴻上尚史さん演出版しか観たことがなかったので(⇒レビュー)、ストーリーも何もかも忘れてしまっていたらしく(すみません)、最初っから最後まで展開にわくわくしながら拝見することができました。素晴らしい戯曲ですね~(って、私が言うことないんですが)。

 初日でドタバタしていたり、役者さんがかなり緊張して顔がひきつっていたり(笑)、完璧な出来ではないことは見て取れましたが、そういうことを差し引いても、良い演劇作品を観せてもらえたなと満足しています。

 『幽霊は・・・』が書かれたのは1958年(昭和33年)、つまり今から約50年前の戯曲です。かなり昔ですよね。10~20代、もしくは私を含む30代の人間にとっても“古典”になるかもしれない作品です。それを無理なく現代劇として受け入れることができました。そりゃ~「言葉づかいが昔っぽいな~」ぐらいには感じますけど、描かれている世界はまさに今の資本主義社会にも当てはまりますし、演じている役者さんが「古典をやってます」という立ち位置ではなく、自分の役柄を自分のものとして生きているから、観客は信じてその世界に入って行けるんだと思います。

 観客に向かって話したり、大きな声で少々戯画的な演技をしたり、大勢でひとつのセリフを群読したりしますので、最近の若い劇団でよく見られる“日常のままの自然な存在感”をベースにした演技ではありません。でも舞台上で戯曲の世界を(役者さんが)自分の感覚のままに生きられたら、どんな手法であっても説得力のある演劇になるのではないでしょうか。それをあらためて確認できたように思います。

 ここからネタバレします(2007/08/03アップ)。

 まず、多根周作さん演じる深川啓介は、隣に“幽霊さん(名前は吉田・・・だったかな)”を連れて登場します。でも実際には誰の目にも(観客の目にも)幽霊は見えません。だけど私は「あぁ、幽霊が居るんだな」と、すっかり深川のとなりに幽霊がいるものだと思って観始めました。それは多根さんの演技がまさに幽霊を連れているものに見えたからであり、それに対する他の役者さんの演技に無理がなかった(「幽霊が見えると主張するおかしな男・深川に優しく接する」という演技をちゃんとしていた)からだと思います。

 実在しない幽霊に関連する商売がどんどん生まれていく様は、健康食品ビジネス(アガリクス茸など)やネットバブル(ライブドア事件など)と重なりました。幽霊衣裳とか幽霊保険とか、そんなのよく思いつくな~、安倍公房さん凄いな~って、素直に感心したり(笑)。

 深川(多根周作)は南方の戦場で一緒だった戦友“吉田”の幽霊を連れていると言っていましたが、実は深川は本物の“深川”ではなく、残り少ない水筒の水を争って気が狂ってしまった“吉田”の方だったのです。吉田(多根周作)は深川を見殺しにしてしまったことの自責の念から自分を封印し、“深川”として生きていた・・・ということが、本物の深川(浅井伸治)が登場して判明します。
 戯曲を読んでいればわかっていることだし、最初から予想がついている人も大勢いらっしゃったことと思いますが、私は「ええっ!!そ、そ、そうだったの!?」とフツーに驚き、涙してしまいました。戦争が残した傷を実感できたことも大きいと思います。

 ミサコ(はざまみゆき)は正義感の強い女性であることも大事ですが、ヒロインなのだから、もっとキュートな女の子らしいキャラクターにしてもいいんじゃないかと思いました。

出演=伊原農、枝元萌、多根周作、はざまみゆき、浅井伸治、荒井志郎、内田尋子、小林高之、島村比呂樹、福田英和、村田一晃、森アキ、竹下ヨシユキ、鍋谷ナナオ
[脚本]安部公房 [演出]西沢栄治 [舞台監督]井関景太(るうと工房)[照明]五十嵐正夫(シアターブレーン)[音響]高橋秀雄(SoundCube)[舞台美術]向井登子[衣裳]阿部美千代[宣伝美術]西山昭彦[スチール]夏生かれん[撮影ヘアメイク]田沢麻利子[Webデザイン]古川健司・藪地夏子[制作]ハイリンド[制作補佐]石川はるか・鈴木由香里・竹内佐江
【発売日】2007/07/02 前売 3,500円 当日 3,800円(全席指定) ※平日マチネ(木曜14:00の回)割引き 前売3,000円/当日3,300円 ※「三人寄れば文殊のTicket」9,900円(3枚セット)
http://www.hylind.net/

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Posted by shinobu at 23:24 | TrackBack

新国立劇場演劇研修所1期生 試演会2『「あぶらでり」/「かどで」』07/27-29 新国立劇場Cリハーサル室

20070727_aburaderi_kadode.JPG
あぶらでり/かどで

 新国立劇場演劇研修所1期生の2回目の試演会を拝見しました(⇒試演会1)。久保田万太郎戯曲(⇒過去レビュー)の2本立てです。A、Bのダブルキャスト公演だったので初日と千秋楽に伺いました。

 前回の『三文オペラ』とは打って変わって、ビシッと和の世界♪ 若い女優さんの着物姿が美しく、目にも嬉しい舞台でした。久保田万太郎の世界をじっくり堪能できて満足です。上演時間は約2時間40分(15分の休憩を含む)。

 レビューは途中です。アップしました(2007/08/09)。

 美術(中根聡子)はちょっと抽象の日本家屋。箪笥などの道具は本物が出てきますが、壁が灰色で柱と床が黒(に近い灰色?)なのでシックなイメージで統一されています。壁を抜いて窓やふすまに変えるので、シンプルながらダイナミックな場面転換を見せてくださいました。
 そして音楽はなんとスタンダード・ジャズなんですよ!かなり驚きました(笑)。でも意外にしっとりと大人のムードでフィットするんですね。

 一人で話すセリフが長い目なので、役者さんによっては途中で退屈してしまうこともありましたが、演劇学校の試演会なのでそういったことは気にしませんでした。日本の国立の俳優学校の生徒が在学中に体験しておくべきこととして、久保田万太郎作品が選ばれた意味を受け取ろうと思いました。

 作業(着物を仕立てる、革に漆で模様をつける等)をしながらの会話や、その時代の日常の所作など、普段の生活ではもう体験しないであろうこと尽くしの舞台でした。まず道具(おひつ、お膳、こて、火鉢など)に触れることがないでしょう。所作についてはすっかり自分のものに出来ている人と、まだおぼつかない人がいらしたように見えました。
 着物姿はずいぶん板についていて、日本の粋を感じましたね。特に「あぶらでり」の芸者役(高島令子)は何度も着替えて登場し、その度に見とれました。白と紺の浴衣に白い帯、そこに赤い帯締め!超かっこいいです。かつらも変えてましたね~。

 基本的にここの研修生さんたちは、存在感がものすごく爽やかできれいなんです。そこに居る姿が、それだけで愛らしい。若いからというだけではないと思います。そして、言葉に嘘がない(人がほとんど)。本物の感情に裏付けられた言葉の説得力というのは、私が普段の劇場で出会う20代中盤の俳優さんにはめったに見られないものです。

 「あぶらでり」では切ない恋心と報われない思いやりにほぼ号泣。「かどで」ではたわいないおしゃべりが全て伏線になっているという構造の見事さに感服。久保田万太郎の世界・・・素晴らしかったです。

■「あぶらでり」
 ≪あらすじ≫ パンフレットより
 若くして寡婦になったおみつ。母親と子どもひとり抱えての苦しい生活だが、その人柄もあって、亡き夫の弟や、亡き夫の親方に支えられ、なんとか生きている。そこへおみつには願ってもない縁談がもちあがるのだが、盛り上がる周囲とは裏腹におみつひとりは、人知れず悩んでいる……。
 ≪ここまで≫

 突然夫を失って義理の弟・民治に息子ともどもすっかり養ってもらうことになり、罪悪感に苦しむ未亡人・おみつ。亡き夫の親方とおみつの義理の母らが、無口で働き者で、誰からも一目置かれる立派な男・民治とのおみつの仲をとりもとうとするのですが・・・。

 働く女(芸者)と嫁いだ女(おみつ)や、親方と母親の1対1の対話などから、その時代の風俗や習慣などが自然と伝わるようになっています。
 常に話題にのぼる民治の登場シーンが少ないのが素晴らしいですね。三幕の終わりに民治が出てきた瞬間の顔や息遣いで、全てが解けるようにわかり、涙がしぼりだされました。

 ここからネタバレします。

 「おみつと民治が夫婦になれば誰もが幸せになれる」という筋書きに対して、おみつは「民治さんの幸せが考えられていない」と頑なに反発し、結婚に同意しません。本当は民治の方も、ものすごくおみつのことを好きなのに。
 最後は芸者がカゴの中で松虫が既に死んでいたことを告げます。「おみつもサ、民治もサ、だまってないで好きなら好きって言っちゃいなYO!そのままだと松虫みたいに死んぢゃうYO!」って言いたいところなんですが(苦笑)、そうはいかないのが大正の人々。あぁ、じれったい、あぁ切ないっ!

 できれば最後はおみつが松虫を見てどう感じたかまでを見せてほしかったですね。「松虫のように私も死んでしまおう」なのか「やっぱり民治さんが好き!」なのか。観客が自由に受け取れるようにとの演出意図だとしても、あまりに何も起こらなさ過ぎなんじゃないかな~と思いました。

 特に心に残ったのは芸者役の高島令子さんと、親方・茂八役(A)の山本悠一さん。母親役の二木咲子さんは、三幕でしょぼくれて泣きそうになっていたところが良かったですね(初日)。
 千秋楽では、初日の硬さが解けたせいもあるかと思いますが、おみつ役の内田亜希子さんがとても色っぽくなられていて驚きました。息子の寝床に蚊帳をかけた後、そのそばで小さく泣き崩れる姿がなんとも切なかった。欲を言えば、おみつが自分で言う“継子(ままこ)根性”をもっとどぎつく感じたかったですね。これは演技ではなく演出意図かもしれませんが。

■「かどで」
 ≪あらすじ≫ パンフレットより
 今日は印伝屋(近常〔きんつね〕)の職人、秀太郎の年季が明けるめでたい日。ところが同じ日、以前に女中として「近常」で働いていたおせんが、遠くで働くことになったとおのぶに別れを告げに来る。それぞれの人生模様に思いを馳せるおのぶだが、秀太郎は思いもかけない事実を告げられて帰ってくる……。
 ≪ここまで≫

 舞台は袋物屋(ふくろものや・印伝屋のこと)の作業場とその主人の部屋。「真面目に働いていれば幸せになれる」わけではなくなった近代日本で、社会の荒波にもまれゆく人々の数時間を描きます。

 “職人の三”(前田一世)の「労働?」というたった一言のセリフが、この公演での私の宝物になりました。しばらく笑いが止まらなかったんです(笑)。「親方の息子が労働をしている」という噂を耳にして、とっさに出てしまった一言なんですよね。「あのドラ息子が“労働してる”だって?やつが“労働”の何を知っているっていうんだ?もしかしたら、本当に心を入れ替えて“労働”ができるようになったのか!?」という、驚きと怒り、疑問などが複雑に混ざった気持ちの表れだったと思います。「労働?」と言った前田さんの姿には、“職人の三”の頑固な職人気質とそれゆえの素直さがにじみ出ていました。それが微笑ましくって愛らしくって、笑いがこみ上げてきてしまいました。東京ノーヴイ・レパートリーシアター『かもめ』を思い出しました。役者さんの存在がリアルであればあるほど、笑いを狙ってないところで笑ってしまうことがあるんですよね。久保田万太郎作品にも笑える部分はいっぱいあるんだと思います。

 ここからネタバレします。レビューは途中です。アップしました(2007/08/09)。

 情報に疎いだけで大きな財産を失ったり、機械の出現のせいで手についた職を失ってしまう、弱肉強食の資本主義の時代。気づかない内に社会の変化にすっかり取り残されてしまった市井の人々の、飾らない日常を生き生きと描きます。それによって冷酷な現実を生々しい感情とともに立体的なものとして受け止められるようになっているんですね。なんともしたたかでスマートな戯曲です。もちろん人々への暖かい眼差しも感じられます。

 袋物屋をたたんで大屋になった彦市(北川響)は、「近常」で女将さんに食事とお酒を振舞ってもらい、しまいにはその客間で寝てしまいます。実はその彦市こそ、手工業の袋物屋には未来がないことを知っていながら、「近常」の人々にはだまっていた、非情な人間(いわば裏切り者)だったんですよね。冒頭のシーンで話題にのぼっていた、“登記ができなくなることをわざと土地の持ち主には黙っておいて、相手が気づいて困った時にさらに値切ろうとする輩”と同じです。

 「初めて強盗に入った若者が、入った家の主人に切り殺された」事件について、職人たちが新聞に載った顔写真を見ながらわいわい騒ぎます。これも新聞を読んだ者だけにわかることであって、情報化社会に乗り遅れ、取り残されるかどうかが端的に表されています。
 夫がストライキに参加したため職を失い、北海道に行くしかなくなった元・女中のエピソードも、“ストライキ”とは何なのかを知らなかったことが、彼らの運命を変えたのでしょう。

 洋服を着た親方の息子から、袋物屋(手工業)には未来が無いことを聞かされて絶望した秀太郎(窪田壮史/野口俊丞)と、そのことをしっかりと聞きながらも手を休めずに作業を続ける“職人の三“(前田一世)との対比が鮮やかで、その静かで残酷な風景が目に焼きつきました。

出演:新国立劇場演劇研修所第1期生15名と第2期生2名と子役
「あぶらでり」出演=内田亜希子(おみつ:未亡人)/高島令子(おつる:芸者)/二木咲子(おまき:母親)/山本悠一(民治B:死んだ大工の弟・茂八A:親方)/古川龍太(民治A:死んだ大工の弟・茂八B:親方)/小泉真希(おきみB:芸者の妹)/眞中幸子(おきみA:芸者の妹)/柴田秀(勝太郎:子役)
「かどで」出演=北川響(彦市:大屋さん)/岡野真那美(Aおのぶ:女将さん・B女中)/河合杏奈(Bおのぶ:女将さん・A女中)/小泉真希(Aおせん:北海道へ行く)/眞中幸子(Bおせん:北海道へ行く)/三原秀俊(職人の一:一番えらい職人)/窪田壮史(B職人のニ:上手奥・A秀太郎)/野口俊丞(A職人のニ:上手奥・B秀太郎)/前田一世(職人の三:最後まで残る)/古河耕史(職人の四:意見を言う)/阿川雄輔(職人の五:掃除する)※第2期生/角野哲郎(職人の六:職人の四にちゃちゃを入れる)※第2期生
作=久保田万太郎 演出=西川信廣 美術=中根聡子 衣裳=中村洋一 照明=田中弘子 音楽=上田亨 音響=吉澤真 所作指導(和裁)=本山可久子 所作指導(印傳職人)=関輝雄 演出助手=黒澤世莉 演出部=中山宣義 松森望宏 衣裳操作=梅山茂 制作助手=金子紘子 夢工房(専修定雄) 高津映画装飾(烏城清) 東京衣裳 新国立劇場技術部 TCS レンズ 研修所所長=栗山民也
http://www.nntt.jac.go.jp/training/drama/index.html

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今、面白い演劇はコレ!年200本観劇人のお薦め舞台
   
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Posted by shinobu at 15:24 | TrackBack

【情報】新国立劇場演劇研修所「研修所説明会」2007年08/25(土)

 新国立劇場演劇研修所(関連記事⇒101112)にて、研修生選考試験の受験をお考えの方に向けた研修所説明会が8月25日(土)に開催されます。無料。事前申込必要です。⇒詳細

 応募〆切:平成19年8月20日(月)ファックス到着分
 ※応募者数の状況によって、先着順により参加者を限定する可能性あり。

 新国立劇場演劇研修所は18才以上、30才以下の俳優のための学校です。授業の見学は一般には受け付けられていませんので、どうぞこの機会を逃さないで下さい。

Posted by shinobu at 12:18 | TrackBack

メルマガ 2007年08月のお薦め舞台

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お薦めお芝居をご紹介しています

 2007年8月のお薦め舞台10本+αをご紹介します。
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 “しのぶの演劇レビュー” Vol. 39     2007.8.1  1,154部 発行

┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏ http://www.shinobu-review.jp/

   今、面白い演劇はコレ! 年200本観劇人のお薦め舞台♪
                   
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 ◎蒸し暑い日が続きますね。ちょうど選挙も終わって(?)心機一転!
  夏休みは劇場で涼みながら楽しい演劇体験を!
  去年は京都でしたが、今年は私、福岡に行きますよ~!

    舞台には、あなたの心を揺さぶり、
      人生の輝きを増してくれる奇跡があります。

  “今から観られる面白い演劇”をご紹介します。
  お友達、ご家族、恋人と一緒に、どうぞ劇場を訪れてください♪

 ◎メルマガのバックナンバー↓は全て公開しています。
     http://blog.mag2.com/m/log/0000134861


○○ 今回のもくじ
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 ◆1【今月のお薦め10本+α】
   
   ◎No.1→こまつ座&シス・カンパニー『ロマンス』
       08/03-09/30世田谷パブリックシアター
       http://www.siscompany.com/03produce/18romance/

 ◆2【先月のベスト3】

   ◎No.1→NODA MAP番外公演『THE BEE(ロンドン・バージョン)』
       07/12-29シアタートラム
    http://www.shinobu-review.jp/mt/archives/2007/0717234257.html

 ◆3【T★1(ティー・ワン)演劇グランプリ開催中!】

   ◎79団体の応募がありました!第一次審査の発表は8/10(金)!
    http://stage.corich.jp/t1/

 ◆4【時間堂(東京)がお盆に稽古全公開イベントを開催!】

   ◎時間堂『おやつの時間堂「proof」』08/13-19王子小劇場
    http://blog.livedoor.jp/jtc2007/archives/50284906.html

 ◆5【編集後記】

   ◎風琴工房・100万円スポンサード公演のチケプレ実施中!
   ◎8月4日夜にFM西東京『たけがき2』に出演します。
   ◎9月は秋田のたざわこ芸術村に行きます♪

 ◆6【このメルマガについての注意事項(毎月同じ内容です)】

   ◎はじめての方はどうぞお読みくださいね♪


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 ◆1 【今月のお薦め10本+α】
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 ▽★印がいちおし公演です(3本)。
 ▽初日の早い順に並べています。
 ▽掲載内容:主催/冠名・『題名』・日程・会場・価格・URL・コメント
 ▽座種の記述がない公演は全席指定。


★1.こまつ座&シス・カンパニー『ロマンス』
  08/03-09/30世田谷パブリックシアター
  ☆出演=大竹しのぶ/松たか子/段田安則/生瀬勝久/井上芳雄/木場勝己
   作=井上ひさし 演出=栗山民也
   S席8400円 A席6300円 補助席8000円
    http://www.siscompany.com/03produce/18romance/
   井上ひさしさんの新作を栗山民也さんが演出。超~豪華キャスト。
   ※当日券は全ステージ、開演時間の1時間前から劇場入口にて販売。
    先着順・事前予約なし・お一人様2枚まで

   ●お薦めポイント●
   「大竹しのぶ」「松たか子」という名前が並んだ仮チラシに、
   劇場ですっかり目を奪われた覚えがあります(笑)。
   今年最大の目玉公演と言っても過言ではないかも。
   そして井上さんの新作です。今回は初日の幕、開きますよね・・・?


2.ホリプロ『エレンディラ』
  08/09-09/02彩の国さいたま芸術劇場 大ホール
  ≪埼玉、大阪、愛知≫
  ☆出演:中川晃教、美波、國村隼、瑳川哲朗、ほか
   原作:ガルシア・マルケス 脚本:坂手洋二 演出:蜷川幸雄
   音楽:マイケル・ナイマン
   S席12000円 A席7000円
    http://www.horipro.co.jp/ticket/kouen.cgi?Detail=92
   豪華スタッフが揃った数年越しの企画。坂手さんの脚本を
   蜷川さんがどう演出するか。マイケル・ナイマンの音楽も贅沢。


★3.パルコ『LOVE 30 vol.2~女と男の物語~』
  08/15-24パルコ劇場
  ≪東京、福岡、愛知、大阪≫
  ☆「北向きの女」脚本=青木豪 出演=純名りさ、内田滋 
   「アルゼンチンにて」脚本=赤堀雅秋 出演=鈴木砂羽、尾美としのり 
   「たんすのゆくえ」脚本=田村孝裕 出演=小西美帆、羽場裕一
   演出=宮田慶子 音楽=稲本響 
   7,000円 平日マチネ料金6,000円
    http://www.parco-play.com/web/play/love30_02/
   男女2人芝居の3本立て。各30分の小品集です。
   今注目の若手作家の脚本が楽しみ!


4.劇団☆新感線2007年夏休みチャンピオン祭り
  『犬顔家の一族の陰謀~金田真一耕助之介の事件です。ノート』
  08/11-09/09サンシャイン劇場
  ≪大阪、東京≫
  ☆出演=古田新太、宮藤官九郎、勝地亮、池田成志、木野花、橋本じゅん、
      高田聖子、小松和重、粟根まこと、他
   作・演出=いのうえひでのり
   S席9500円 A席8000円
    http://www.vi-shinkansen.co.jp/
   劇団☆新感線のお笑いネタもの。大人が本気でふざけるのがカッコいい。


5.ホリプロ『ヴェニスの商人』
  08/17-09/30天王洲銀河劇場
  ☆出演=市村正親、藤原竜也、寺島しのぶ、京野ことみ、西岡徳馬、他
   作=ウィリアム・シェイクスピア 演出=グレゴリー・ドーラン
   S席10,500円 A席8,400円 立見券(2階客席 最後列両サイド)5,000円
    http://www.gingeki.jp/
   RSCのグレゴリー・ドーラン演出の豪華キャストのシェイクスピア。


6.TPTフューチャーズ -Summer 2007
  『The Distance From Here~ここからの距離』
  08/17-26ベニサン・ピット
  ☆出演=ワークショップで選ばれた若手俳優、植野葉子、千葉哲也
   脚本=ニール・ラビュート 訳=常田景子 演出=千葉哲也
   一般:5,000円 学生:3,000円
    http://www.tpt.co.jp/
   千葉哲也さんは2006年のtpt『スラブ・ボーイズ』で
   読売演劇大賞・優秀演出家賞を受賞されています。


7.キャラメルボックス2007チャレンジシアターVol.5
  『猫と針』08/22-09/09俳優座劇場
  ≪東京、福岡≫
  ☆出演=岡田達也/坂口理恵/前田綾/石原善暢/久保田浩
   作=恩田陸(小説家) 演出=横内謙介(扉座)
   5,800円
    http://www.caramelbox.com/
   演劇集団キャラメルボックスの小規模公演。
   恩田陸さんが戯曲に初チャレンジし、横内謙介さんが演出。


8.劇団M.O.P.『エンジェル・アイズ』
  08/29-09/05紀伊國屋ホール
  ≪京都、東京、大阪≫
  ☆出演=キムラ緑子/三上市朗/林英世/酒井高陽/木下政治/奥田達士 
      岡森諦(扉座)/浅野雅博(文学座)/他
   作・演出=マキノノゾミ
   5,500円(全席指定)
    http://www.g-mop.com/
   マキノノゾミさん率いる劇団M.O.P.の新作。
   客演も多数呼んでのウエスタン(?)作品。


9.メジャーリーグ『シラノ・ド・ベルジュラック』
  08/29-09/09青山円形劇場
  ≪東京、兵庫≫
  ☆出演=市川右近/安寿ミラ/加納幸和/坂部文昭/たかお鷹/桂憲一/
     市川猿弥 アコーディオン:大田智美 バイオリン:廣川抄子
   作:エドモン・ロスタン 翻訳:辰野隆/鈴木信太郎 
   演出:栗田芳宏 音楽:宮川彬良 企画・台本:笹部博司
   6500円 プレビュー公演5000円 ※未就学児の入場不可
    http://www.majorleague.co.jp/kouen/shirano/index.html
   市川右近さんと安寿ミラさんが名作『シラノ・・・』に挑戦。
   素敵な音楽劇になることを期待。


10.シアターナインス『シェイクスピア・ソナタ』
  08/30-09/26パルコ劇場 ※8/30(木)はプレビューオープニング
  ☆出演=松本幸四郎/高橋克実/緒川たまき/松本紀保/長谷川博己/
     豊原功補/岩松了/伊藤蘭
   作・演出=岩松了
   9,000円 プレヴュー料金:8,500円
    http://www.parco-play.com/web/page/information/shakespeare/
   松本幸四郎さん企画・主演シリーズ。今回は岩松了さんの作・演出。

 ★★★―――――――――――――――――――――――――――――― 
  前売3000円台以下の気になる作品を5本ご紹介します。
 ――――――――――――――――――――――――――――――★★★ 

【1】ハイリンド『幽霊はここにいる』
 08/01-05 THEATER/TOPS
 ☆出演=伊原農/枝元萌/多根周作/はざまみゆき/他
  脚本=安部公房 演出=西沢栄治
  前売3,500円/当日3,800円
  平日マチネ割引き 前売3,000円/当日3,300円 
  「三人寄れば文殊のTicket」9,900円(3枚セット)
   http://www.hylind.net/
  俳優だけの劇団ハイリンドがシアタートップスに進出。


【2】横濱・リーディング・コレクション #3
 『岸田國士を読む!』08/09-12相鉄本多劇場
  演出:『動員挿話』楢原拓(チャリT企画)
     『顔』矢野靖人(shelf)
     『クニヲと俺と。(入門編)』菊川朝子(Hula-Hooper)
     『紙風船』明神慈(ポかリン記憶舎)
  前売2,200円 当日2,700円(日時指定・全席自由席)
  セット券・リピーター割引などあり
   http://yokohama-reading.org/
  4人の演出家による岸田國士(きしだ・くにお)戯曲リーディング公演。
  バラエティに富んだ4作品を味わえそう。1回で2本観られます。


【3】青年団リンク・東京デスロック『unlock#2:ソラリス』
 08/10-14こまばアゴラ劇場
 ☆出演:夏目慎也、佐山和泉、石橋亜希子、大竹直、永井秀樹
  作・演出:多田淳之介
  予約2000円 当日2500円(日時指定・整理番号付自由席)
   http://www.specters.net/deathlock
  脚本全文掲載のチラシに驚いた人も多いはず。何が起こるのかしら!?


【4】Oi-SCALE『ロールシャッハ』
 08/16-19シアタートラム
 ☆出演=さとうやすえ/村田充/星耕介/林灰二/清水慎太郎/川崎賢一/他
  作・演出:林灰二
  一般3,300円/当日3,500円 その他会員・世田谷区民割引などあり
   http://www.oi-scale.com/oiweb/rorschach/rorschach.html
  林灰二さん独特の世界を再びシアタートラムで。
  さとうやすえさんも前回に続いて出演されます。


【5】POTALIVE『駒場編 vol.2「LOBBY」』
 08/04-09/02こまばアゴラ劇場待ち合わせ
 ☆作・演出=岸井大輔
  プログラム作家=兼盛雅幸/米光一成/木室陽一/垣内友香里/井上こころ/
          笠木真人/愛川武博/村井美樹/青山るり子/神村恵
  前売・当日共1,000円/2作通し券1,200円(好きな作品2つ)/3作目以降500円
   http://www.agora-summit.com/2007s/06j.html
  ポタライブは案内人と一緒に散歩をしながら味わうお散歩演劇です。
  今回は各プログラム作家ごとに10作品のラインアップ。
  1回の参加者は10名前後なのでご予約はお早めに。完売続出中です。
  POTALIVE『駒場編vol.1「museum」』レビュー
   http://www.shinobu-review.jp/mt/archives/2007/0525230853.html


≪夏休み・子供向け≫

★◎ANJ・子どもに見せたい舞台 vol.1『オズの魔法使い』
 08/25-09/01にしすがも創造舎 特設劇場
 ☆出演:前田幸恵/大高浩一/岡田宗介/山田宏平/井上貴子/
     三橋麻子/スズキハルヨ/小林至/村上哲也/他
  原作:フランク・ボーム(訳/幾島幸子) 演出/倉迫康史
  振付:井手茂太 音楽:棚川寛子 美術:伊藤雅子 衣装:竹内陽子
  音響:藤田赤目 照明:佐々木真喜子 舞台監督:松下清永+鴉屋
  全席自由 大人500円(65歳以上は無料) 子ども(3歳以上~中学生)無料
   http://sozosha.anj.or.jp/natsumatsuri2007/oz_top.html
  にしすがも創造舎の子ども向け舞台。早くも売切れ日続出です!
  小劇場の実力派キャストに豪華スタッフが勢ぞろい。


 ◎しのぶの今月の全予定(27本+α)はSCHEDULEに掲載しています。
   http://www.shinobu-review.jp/schedule.html


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 ◆2 【先月のベスト3】
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1.NODA・MAP番外公演『THE BEE(ロンドンバージョン)』
  07/12-29シアタートラム
  ☆日本バージョン、ロンドンバージョンの2作品連続公演だったことに
   大きな意義があると思いました。野田秀樹さんに心からの敬意を。
    http://www.shinobu-review.jp/mt/archives/2007/0717234257.html


2.椿組07年夏・花園神社野外劇『花火、舞い散る』
  07/13-22花園神社
  ☆夏の野外劇ならではの作品を体験させてくださいました。
   田村孝裕さん(ONEOR8)の脚本・演出が素晴らしかったです。
    http://www.shinobu-review.jp/mt/archives/2007/0714002755.html


3.小指値『mrs,mr.japanease』
  07/25-30王子小劇場
  ☆若くて元気で自由!演劇、ダンス、パフォーマンスなどのジャンルを
   勝手に飛び越えて、等身大のリアルなエンタメ舞台になっていました。
    http://www.shinobu-review.jp/mt/archives/2007/0727151137.html


 7月はオペラ鑑賞を少々復活させまして、新国立劇場の『蝶々夫人』と
 『スペース・トゥーランドット』で美声を堪能いたしました。

 ◎メルマガのバックナンバーはこちら↓で全て公開中!
   http://backno.mag2.com/reader/Back?id=0000134861
  メルマガ号外は誰が観ても楽しめそうなものを選んで発行しています。
  2007年7月(観劇数31作品)は残念ながら発行しませんでした。

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 ◆3 【T★1(ティー・ワン)演劇グランプリ開催中!】
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 ◎フジテレビ、TOKYO★1週間、こりっちによる
  「T★1(ティー・ワン)演劇グランプリ」が開催中です!
   http://stage.corich.jp/t1/

  応募した79団体の中から第1次(ネット)審査を通過した約10団体が
  決勝大会「お台場SHOW-GEKI城」(2007年12月~2008年1月)に進出します。
  私は第1次、第2次審査の審査員をさせていただいております。   

  第1次審査の発表は8/10(金)!

  こりっちメンバー(登録無料)のクチコミも審査の対象になりますので
  観客の皆さんもぜひ参加してくださいね♪

  CoRich舞台芸術!⇒ http://stage.corich.jp/
  メンバー登録⇒ http://www.corich.jp/stage/user_register.php
  携帯サイトもあります⇒ http://corich.jp/m/s

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 ◆4 【時間堂(東京)がお盆に稽古全公開イベントを開催!】
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 ◎「深呼吸の出来る演劇」「そこにちゃんと存在する演劇」を提唱する
  時間堂(東京)が、稽古場&リハーサル&本番を全公開します。
  『おやつの時間堂「proof」』
   http://blog.livedoor.jp/jtc2007/archives/50284906.html

  上演するのは4人芝居『proof(証明)』。
  2001年にトニー賞最優秀作品賞とピューリッツァー賞を受賞した戯曲です。
  ひょうご舞台芸術『プルーフ/証明』レビュー(2001年)
   http://www.shinobu-review.jp/mt/archives/2001/0608160448.html

  時間堂の前回公演『ピンポン、のような』は、
  「CoRich舞台芸術まつり!2007春」の最終審査作品で大変好評でした。
   http://stage.corich.jp/html/fes_grand_prix07.html

  時間堂を主宰する演出家・黒澤世莉さんのインタビュー
   http://cinra-magazine.net/vol.14/CONTENTS/STAGE/T2.HTM

  演劇の作り手にとっては、違う劇団の稽古場を堂々と覗く良い機会ですし、
  観客にとっては、稽古場とあわせて最終日の本番を観ることで、
  演劇をより深く味わえるイベントになると思います。
  それに『proof(証明)』はとっても素晴らしい戯曲ですよ!


 ◎時間堂『おやつの時間堂「proof」』
  08/13-19王子小劇場
  ☆出演=根津茂尚/玉置玲央/清水那保/足立夕夏
   脚本=デイヴィッド・オーバーン 翻訳=谷賢一 演出=黒澤世莉
   自由席1,800円  
    http://blog.livedoor.jp/jtc2007/archives/50284906.html

 【タイムテーブル】

  8月13日(月)~18日(土)
   公開リハーサル ※詳細はお問い合わせ下さい。
  8月19日(日)
   14:00:公開ゲネプロ
   19:00:公演
   終演後にポストパフォーマンストークあり。

 【チケット】

 ・当日 1,800円(全席自由)
  ※8月13日(月)から18日(土)までの公開練習と、
   8月19日(日)の公演までの7日間、自由に入退場できるフリーパス。

 ・予約 
  電話:070-6659-3841(時間堂)
  メール:jikando(アットマーク)seriseri.com
   ※名前、希望日時、人数、連絡先を明記のこと


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 ◆5 【編集後記】
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 ◎“CoRich舞台芸術まつり!2007春”グランプリは風琴工房!
   http://stage.corich.jp/html/fes_grand_prix.html
  100万円スポンサード公演特設サイトがオープンしています。
   http://stage.corich.jp/html/grand_prix_sponsored.html
  『砂漠の音階』8月に北海道、10月に東京で上演されます。
  CoRichによるチケット・プレゼント実施中!


 ◎8月4日夜にFM西東京『たけがき2』に出演します。
   http://takegaki.k-free.net/
  ※PodCastingブログに↓アップされます(放送終了数日後)。
   http://www.voiceblog.jp/takegaki842/


 ◎9月は秋田のたざわこ芸術村に行きます♪
   http://www.warabi.or.jp/
  わらび座『ミュージカル「小野小町」』を鑑賞して温泉・観光も♪


 ◎劇評サイトwonderlandに寄稿しました。
  岡田利規 × 中野成樹
  「チェルフィッチュ、世界的超感染力のゆくえ」
   http://www.shinobu-review.jp/mt/archives/2007/0714125532.html


 ◎地方新聞に掲載される新作邦画DVDの紹介記事を書いています。
  2007年7月は下記の4作品を拝見しました。
  ・「鉄コン筋クリート」←怖い、面白い、凄いアニメ
   http://www.tekkon.net/
  ・「酒井家のしあわせ」←ナチュラルな関西弁炸裂
   http://plaza.rakuten.co.jp/sakaike/
  ・「バブルへGO!!」←おバカ&シニカルで楽しめました
   http://www.go-bubble.com/
  ・「松ヶ根乱射事件」←小劇場の俳優が多数出演
   http://www.matsugane.jp/ (←音が鳴ります)


 ◎新聞・雑誌などに執筆する仕事をしています↓
   http://www.shinobu-review.jp/mt/archives/2006/0331235959.html
  お仕事のご依頼はこちらへ↓お気軽にどうぞ♪
   http://www.shinobu-review.jp/contact/


 ◎「CoRich(こりっち)舞台芸術!」で
  いつ、どこで、何が上演されているのかを簡単検索!
  感想も書き込めますよ♪
   http://stage.corich.jp/
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  携帯サイトもあります⇒ http://corich.jp/m/s


 ◎「劇場に足を運ぶことが、日本人の習慣になって欲しい」
  それが私の望みです。
  これからもこつこつ、地道に進んで行きたいと思っております。
  皆様、どうぞよろしくお願いいたします♪


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Posted by shinobu at 10:36 | TrackBack