相鉄本多劇場で続いているリーディング企画の第3段。毎回1人の作家をフィーチャーするのが特徴です。今回は戯曲賞の名前にもなっている岸田國士(きしだ・くにお)の戯曲4本。私はBプログラム(上演戯曲は「かんしゃく玉」と「紙風船」)を拝見しました。
Hula-Hooperの元気いっぱいな女の子のノリノリ・コメディと、ポかリン記憶舎のしっとりとした大人の官能空間という、超~対照的な2作品でした。すっごく楽しめました。
⇒CoRich舞台芸術!『岸田國士を読む!』
⇒Hula-HooperはT★1演劇グランプリ・第一次審査通過団体です。
レビューをアップしました(2007/09/05)。
ここからネタバレします。
1『クニヲと俺と。(入門編)』演出:菊川朝子(Hula-Hooper) ※上演戯曲は「かんしゃく玉」
ちょっぴりの毒と色気を感じさせるカラフルでキュートな衣裳を着たオンナノコたちが、演じる人と読む人に分かれて遊び心いっぱい・元気いっぱいに楽しませてくれました。
俳優養成所の生徒たちがオーディション会場で本を読むという設定だったようです。その上、配役が固定されていない劇中劇という少々複雑な構造でしたが、岸田戯曲の登場人物を派手にデフォルメした演技と口調で作り上げ、客席には爆笑・苦笑がいっぱいでした。そういえば登場人者の1人は肩に乗ったぬいぐるみの鳥だったような(笑)。
観客は配られた台本(終演後に回収)を読みながら観るという、ちょっと変わった趣向も良かったですね。「その読み方間違ってる!(沢山⇒さわやま、やっぱり⇒やつぱり等)」、「ここでその音楽ってアリ?!(筋肉少女帯「踊るダメ人間」⇒YouTube)」など、大胆な演出を加えていることがよくわかります。
怒りが込み上げた時は、かんしゃく玉を叩きつけてうっぷんを晴らすことにしている若夫婦。隣人や友人が次々と家にやってきて2人の生活にざわめきが。妻を働きに出したくないけど仕事もしたくないダメ夫。亭主が無職なのにビフテキを買いに行かせるダメ妻。「友達じゃないか」と友情を振りかざして、実はおもしろ半分であろうダメ友達。サラっとまことしやかにダメ発言をするダメ人間たちを、馬鹿馬鹿しく可愛らしく見せながら、岸田戯曲に描かれた庶民の等身大の怒りや悲しみを伝えることにも成功していました。
2『紙風船』演出:明神慈(ポかリン記憶舎)
「紙風船」は大好きな戯曲です。登場するのは白い清楚な衣裳の男女2人(古屋隆太と中島美紀)。結婚して1年経ち、子供もまだ居なくて少々倦怠気味の若夫婦です。
男は新聞を読み、女は本を読みます。台本を読んでいるのかセリフを話しているのか、微妙なラインを行ったり来たり。静かでとても官能的です。
毎週やってくる休息の日・日曜日。家でゆったり休みたい夫と、せっかくの休日だから外出したい妻。出かけようにももう午後を過ぎています。
鎌倉のホテルに行く空想をする2人。海辺で「お前の身体はそんなに~~だったか」と妻の身体をうっとりと眺める内に、夫が妻にくちづけ。演技では中島さんがキスされたような表情をするだけで、実際にはキスはしません。・・・てゆーか、これ、ト書きにはないですよね!?すっごーーーーーいっ!!
そして夫は「こっちへ来いよ」と寝間に誘うけれど、妻は「あなたはちょうどいい所を知らない」と、聞きません。私は「あぁ、そういう意味だったのか・・・!」と新たな発見をした心持ちでした。
男がしたいことをさせない女。女の願いに気づかない男。決して埋まらない溝がそこにはあり、絶望がじわりと空間に染み渡ります。
2人が正直な気持ちを告白して(男「日曜日が恐ろしい」など)、互いに受け止めて合います。とても残酷な時間。2人は別れない(離婚しない)と決めているので、「どうしようもない」「何にもならない」という絶対的なあきらめがあり、すれちがったままの夫婦が残ります。近所の子供が遊びに来るエンディングで、その距離が狭まらない現実をさらにつきつけられました。
短い間に、触れ幅大きく旅をしました・・・。
古屋隆太さん。なんだあの声!あの顔!エロすぎ!たまりません!反則!(笑)
中島美紀さん。ひやっとした(冷静な)存在感だけど、どこかコミカルな空気が漂うのが素敵です。
Project of Drama-Reading from Yokohama #3 2007
【Aプロ】脚本:岸田國士 演出:『動員挿話』楢原拓(チャリT企画)、『顔』矢野靖人(shelf)
『動員挿話』出演:松本大卒(チャリT企画)、ザンヨウコ(危婦人)、内山奈々(チャリT企画)、楢原拓(チャリT企画)、竹内洋介(チャリT企画)、小杉美香(チャリT企画)、長岡初奈(チャリT企画)、他
『顔』出演:川渕優子(shelf)、甲斐博和(徒花*)、高田愛子(ユニークポイント)、他
【Bプロ】脚本:岸田國士 演出:『クニヲと俺と。(入門編)』菊川朝子(Hula-Hooper)、『紙風船』明神慈(ポかリン記憶舎)
『クニヲと俺と。(入門編)』出演:上枝鞠生(Hula-Hooper)、上田遥、大西智子(あなざーわーくす)、沖田愛(テアトル・エコー)、鯉沼トキ、杉岡阿希子(殿様ランチ)、平川道子、高橋美貴(あなざーわーくす)、吉田麻起子(双数姉妹)、菊川朝子(Hula-Hooper)、見学監督:梅澤和美(Hula-Hooper)、
『紙風船』出演:中島美紀(ポかリン記憶舎)、古屋隆太(青年団)
[音響]島貫聡 [照明コーディネイト]伊藤孝(ARTCORE design) [舞台監督]小野八着(Jet Stream) [宣伝美術]オクマタモツ [記録撮影]升田規裕(M's Video Group) [制作]薄田菜々子(beyond) [プロデューサー・総合ディレクター]矢野靖人(shelf) [主催]横濱・リーディング・コレクション実行委員会 [共催]横浜SAAC(横浜舞台芸術活動活性化実行委員会)・横浜市市民活力推進局
2008/07/09発売 前売2,200円 / 当日2,700円(日時指定・全席自由席)*セット券販売(前売りのみ)2プログラム(4作品)セット券・・・3,800円(1作品950円)*リピーター割引・・・半券を持ってご来場頂いた際には、各回当日料金より200円割引。
http://yokohama-reading.org/
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