柿喰う客(かきくうきゃく)は中屋敷法仁(なかやしき・のりひと)さんが作・演出される、旗揚げから3年の若手劇団です。私が観に行った回が通算100ステージ目だったそうで、年間30ステージ強のペースで公演を打ってこられたんですね。
がっつり下ネタ路線全開のチラシに躊躇していたのですが、チラシ通りでありつつ(笑)、ものっすごく面白かったです。私の尺度ではR18。でも実際はR15でもいいのかな。
私はノリが悪い目の観客なのですが(一緒に歌ったり手拍子するのは苦手)、あの歌のシーンでは、恐る恐るですが手拍子しちゃいましたね。この劇団の魅力にヤられちゃいました。高天原が出てくるのが最もツボ。
⇒CoRich舞台芸術!『性癖優秀』
⇒T★1演劇グランプリ・第一次審査通過団体です。
受付の制作さんが劇団マスコット「めこちゃん」と同じネコ耳のメイド服姿で歓迎。シアターモリエールの劇場入り口に小さなクーラーが置いてあって親切!そのクーラーやトイレットペーパー・ホルダーの上にちょこんと「めこちゃん」が乗ってます(チラシを切ったもの?)。「T★1演劇グランプリ」情報もロビーに大きく貼り出して下さってました。
当日パンフレットには似顔絵付きの登場人物紹介と人物相関図が載っているのも嬉しいです。あの役者さん良かったな~と思っても、後から誰なのかがわからないことが多いんですよね。開演前と終演後、そしてトーク終了後に昼ギャザの説明もしっかりされていました。600円のキャッシュバックだったようです。
≪あらすじ≫
12歳の有之介(伊藤淳二)は両親が離婚したため、母と一緒に母の実家の国津神村へ引っ越すことに。古くからの独特のしきたりがあって過疎が深刻な国津神村は、進歩的な考えを持つ人々が暮らす天津神ニュータウンと合併されて高天原市となるが、国津神村の村民と天津神ニュータウンの住民はあからさまに対立する。両方の町の子供が通う高天原市立まんなんか中学校では、性教育に重点を置いた教育へと大転換した。そこには大きな陰謀(?)が・・・。
≪ここまで≫
いわゆる元気な小劇場演劇ですね。客席に向かって大きな声で早口でセリフをしゃべりまくり、大人数(29名)がところ狭しと舞台を走り・飛び回り、歌うし踊るし脱ぐし(笑)。そして下ネタ炸裂です。何の躊躇もなく、男も女も年齢も関係なく、明るくセックスセックス言いまくり。レビューに書けない言葉ばっかりだよ(笑)。そんな言葉が頻繁に出て来すぎて、観てる方が麻痺しちゃうぐらい。ここまで開けっぴろげだと、いい意味で洗脳されます。劇場の魔法のひとつ。
大胆に場面転換するし登場人物も多いですが、混乱することなく物語について行けました。風習・信仰の違いから始まる戦争とか、保身のために理想を捨てて私欲に走るとか(老後の心配をして市長に負ける校長)、「生殖のためだけのセックス」と「快楽のためだけのセックス」の対立とか、実は社会的なテーマに深く切り込んでいて、自分なりの主張もしていたように思います。最後のセリフ(忘れちゃったけど)が良かった。はず。
笑わせる仕掛けもいっぱい。これでもか!これでもか!!と責めれられる気分(敢えて「責」という漢字で・笑)。少年ジャンプ(「ドラゴンボール」)、少年マガジン(「はじめの一歩」)、テレビゲーム(「スト2」)など、男の子が大好きなホビー・ネタとか、TVコマーシャルのことも言ってたかな。軽薄そうでいてシェイクスピアの引用まで出てくるから驚きの面白さです。
80年代風のまっすぐ叫ぶような演技だけでなく、生っぽくおしゃべりするのもあって、演出には色んなジャンルの手法が組み合わされていました。中屋敷さんは青森県の高校演劇を経て、ただいま桜美林大学に在学中。平田オリザさんに教えてもらった世代なんですね。次回公演もとても楽しみです。
ここからネタバレします。
『古事記』でイザナギとイザナミが出会って子供をつくるくだりは、ものすごくあからさまな描写なんです。「高天原」が出てきたことで、日本の神話のむき出しの性とばっちり重なりました。
最初に本気で笑えたのは出来本泰史さんの「イ●ポの何が悪いんだよっ!」。新劇みたいな演技でこのセリフなんだもの(汗)。ボールペンが頭に刺さった時の叫び声も良かった。
緑色の髪の弁護士役の玉置玲央さん。Tバックの下着一丁で走りまくり。目のやり場に困りましたが(笑)、子供の無邪気ないたずらみたいだし、可愛いです。さらけ出すだけでなく、ちゃんと笑う対象になっているのも良いですね。
巫女(実は山の精?)とセックスして童貞を捨てる12歳の有之介役の伊藤淳二さん。力を抜いた演技が良かった。TOKIOの『LOVE YOU ONLY』の熱唱、いい声でお上手でした。
性教育を乱暴に施す金八先生役の七味まゆ味さん。猫背椿さんみたい。素敵でした。
「数国社理(すうこくしゃーりー)教育」から「ほほーいほほほーい教育」に方針転換。「ほほーい」って保健体育の「保(ほ)」はわかるけど、「い」は何?(笑)
※「ほほほ~い」はお笑い(ココリコの遠藤章造さん)のギャグかも、とのこと(2007/09/06加筆)。
≪ポスト・パフォーマンス・トーク≫ 全公演で実施。備忘録。※←以降は私のつっこみ。
出演=中屋敷法仁(作・演出)、玉置玲央(緑色の髪の弁護士役)
玉置「今回のテーマは?」
中屋敷「柿喰う客では公演ごとにテーマを決めています。今回は自分(中屋敷法仁)です。」
玉置「いつものことなんですが、なぜこんなに性的なことが前面に出ているのでしょうか?」
中屋敷「それはたぶん“童貞”という言葉を知った時に、既に自分が童貞じゃなかったからかもしれません。“Hしたいけどできない”みたいな悶々とした時期っていうのが、僕にはなかったんですよね。」←いいのか、そんな赤裸々な(笑)。
玉置「今回で記念すべき100ステージを達成しました。3年で100回なので1年に30回ペースですね。」
中屋敷「(こんなハイペースでやってきたのは→)演劇がやりたくて上京したんだけど、才能がないなら早く辞めて就職したいのもあって、嫌われるなら早く嫌われたいってことで(笑)、ドンドンやってるんだと思います。」
玉置「まあ、もうちょっと(続けて)がんばろうよっ。」
観客1「方言はどこの方言ですか?」
中屋敷「高天原市は東海地方という設定ですが、国津神村の言葉は僕の出身地の青森県南部地方の南部弁です。標準語をちょっとなまらせたぐらいの言葉なので、テレビでもよく使われています。」
観客2「高天原市はなぜ東海地方なのですか?」
中屋敷「僕のお芝居には必ずと言っていいほど高天原という場所が出てくるんですが、高天原は『古事記』に出てくる“神様がいる場所”です。神に近い(高い)場所ってことで、僕にとっては富士山のある静岡県富士市ってことになってます(だから東海地方)。富士市出身の人には怒られましたけど。富士はそんな場所じゃないって(笑)。」
中屋敷「僕の作品はいわばギリシア神話の世界みたいなもので、出てくる人はみんな神様なんです。みんな変態なんですけど(笑)。神様たちが高い場所でわーわーやってる感じ。」
観客3「玉置さんの髪はなぜ緑色なんですか?」
中屋敷「玉置くんは・・・黒髪だと男前すぎるからでしょうね。僕の黒髪もかっこいいって評判だったんですが、彼が出るようになってから誰にも言われなくなっちゃって。だから僕のジェラシーが生み出した髪形ですっ(笑)。」
玉置「役は決まってないのに髪の色だけ先に決まってたり(笑)。」
出演:浅見臣樹、出来本泰史、古里美穂、花戸祐介、大石憲、目崎剛、高橋洋平、土井貴之、丸山彩智恵(劇団アルターエゴ)、武藤心平(7%竹)、堀越涼(花組芝居)、高木エルム(柿喰う客)、七味まゆ味(柿喰う客)、玉置玲央(柿喰う客)、コロ(柿喰う客)、本郷剛史(柿喰う客)、中屋敷法仁(柿喰う客)、斗澤康秋、大森茉利子、石橋宙男、目黒茂、石黒淳士、村上誠基、伊藤淳二、本田けい、小西綾香、加藤槙梨子、太田望海、伊佐美由紀
脚本・演出=中屋敷法仁 舞台監督:佐藤恵 舞台美術:濱崎賢二(青年団) 音響:上野雅(SoundCube) 照明:富山貴之 演出助手:寺田千晶 前園あかり 映像:高橋希望 映像記録:山川淳平 宣伝美術:山下浩介 票券管理:清水美峰子 制作:田中沙織 OTHER MEMBER:半澤敦史 深谷由梨香
※日時指定・全席自由 前売券2,200円 学生券2,000円(要予約・要学生証提示) 団体券5,400円(要予約・3名でご来場のお客様対象) 当日券2,500円 昼ギャザあり。
http://kaki-kuu-kyaku.com/
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