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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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2007年09月13日

イキウメ『散歩する侵略者』09/12-16青山円形劇場

 イキウメは前川知大さんが作・演出される劇団です。『散歩する侵略者』は劇団による初めての再演で、初演にすごく感動したのでメルマガ9月号で1番にお薦めしていました。初演の感動ふたたび。やはり同じシーンで涙がこぼれました。上演時間は約2時間。

 『散歩する侵略者』はこれで3度観たことになりますが(⇒初演G-up版)、3種類それぞれが全く違う作品になっていたように思います。今回はしっとりとした会話劇で構成され、“侵略者”が登場する見た目のSFらしさの奥に、文学的な広がりを感じました。

 残席は今のところまだあるようです。初日は満席のようでした。ご予約はお早めに。大阪公演もありますよ!

 ⇒雑誌「ダ・ヴィンチ」で『散歩する侵略者』小説版が連載中!
 ⇒CoRich舞台芸術!『散歩する侵略者
 レビューをアップしました(2007/09/14)。

 ※あらすじは初演のレビューでどうぞ。ネタバレ部分にどうぞ気をつけて!

 円形劇場をほぼ円形に使った抽象的な舞台美術。方向性は初演と似ていますが、全体の印象はすっかり変化したように感じました。初演はストーリーを正確に伝えるために、若い俳優が強く、太く、一直線にがんばっていましたが、今回は2~3人の少人数の会話を丁寧に成立させることで、じわじわと虚構の世界に現実味を帯びさせていくような、演劇空間を味わう醍醐味が増した演出でした。空間が広くなったのもあるでしょうが、透明感とさわやかさがあって良かったです。衣裳が豪華になっていたのも印象に残りました。靴が素敵♪

 私が観た回は笑いがいっぱい起こっていて、ちょっと驚きながらも自分も笑わせてもらって楽しみました。笑いを狙いに行っているわけではなく、舞台上の人物の素直な反応が可笑しさを生んでいたのだと思います。
 そして、やはり、あのシーンで、涙がポロポロ~・・・!円形劇場なので困りましたよ、正面に舞台だけじゃなくって客席もあるんだもの!恥ずかしっ!なのにハンカチ忘れたから(汗)はなかみで涙を拭いつつの鑑賞でした(情けない)。

 青山円形劇場という広い立派な中劇場で、会話劇中心の演出になったせいもあると思いますが、役者さんの演技の技術の差が気になりました。サンモールスタジオでは大丈夫だったけれど、中劇場で演出も大人っぽくなると、どうしても小劇場っぽさが目に付いてしまうんですね。私は初日に拝見しましたので徐々に良くなっているのだろうと思います。

 20歳のアマノ役の日下部そうさんの登場シーンにはゾクゾクしました。語尾が面白い。
 はしゃぐ若者2人(浜田信也&瀧川英次)のシーンは見ごたえがありました。役者さん2人ががっぷり四つに組んで空間の奪い合い(演技合戦とも言う?)をしているように見えて、そういう楽しみがありました(笑)。2人とも衣裳が可愛かった~。

 ここからネタバレします。

 “概念を奪う宇宙人”というアイデアはやっぱり凄いですね(宇宙人が意図的に奪っていないのもミソ)。知的好奇心をくすぐりつつ、今生きている世界を違った視点から見つめるよう導いてくれます。殺人事件の犯人探しのサスペンスであり、夫婦のせつないラブ・ストーリーであり、いつの間にか突然始まる戦争に問題提起をする社会派であり、「スターウォーズ」や「スタートレック」などのように見た目に明らかではありませんが、ちゃんと宇宙人が登場するSFです。

 ラストは初演と同じく「人間からどんな概念を奪えば、戦争はなくなるの?」と問いかけるシーンがありました。でも演出は全然違っていて、私は今回の方が受け入れやすかったです。宇宙人という事件に遭遇し、何か大切なものを奪われたことを自覚した人間が、とうとう本気で動き出すという希望的な未来が、薄くですが見えたように思いました。

 動きがぎくしゃくしていて、言葉の嘘っぽさで人間離れした風体をかもし出していた、宇宙人3人組(安井順平、日下部そう、内田慈)の存在が面白かったです。ただ、ナルミ(岩本幸子)から“愛の概念”をもらった後のしんちゃん(安井順平)は、もうちょっと大きく変化してもいいんじゃないかと思いました。

≪東京、大阪≫
出演=岩本幸子、浜田信也、盛隆二、國重直也、宇井タカシ、安井順平、瀧川英次、内田慈、日下部そう、町田晶子
作・演出=前川知大 舞台監督=谷澤拓巳+至福団 美術=土岐研一 音響=鏑木知宏(soundgimmick) 照明=松本大介(enjin-light) 衣裳=今村あずさ(SING KEN KNE) ヘアメイク=前原大祐(BRIDGE) 楽曲提供=安東克人(MARS NEON) 演出助手=矢本翼子 舞台監督=谷澤拓巳+至福団 演出部=棚瀬巧 大道具=(有)C-COM舞台装置 輸送=マイド 宣伝美術=末吉亮(図工ファイブ) 宣伝写真=田中亜紀 運営協力=サンライズプロモーション東京 制作協力=エッチビイ(株) 中島隆裕 制作=吉田直美
【発売日】2007/07/21 前売3,200円 当日3,500円 (全席指定・税込み) *未就学児入場不可
http://www.ikiume.jp

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Posted by shinobu at 2007年09月13日 11:14 | TrackBack (0)