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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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2007年09月13日

流山児★事務所『観世榮夫「新劇」セレクション vol.1 流山児★ザ新劇「オッペケペ」』09/04-17ベニサン・ピット

 今年6月に亡くなられた観世榮夫(かんぜ・ひでお)さん(Wikipedia)が企画された公演です。「新劇を《現代劇》として読み直す」試みの第1弾で、取り上げたのは44年前の戯曲「オッペケペ」。作者である福田善之さんご自身が、この公演のための改訂をされています。

 上演時間は約2時間30分休憩なし。長かったですが、今を生きている演劇人の身体を通じて、半世紀前の躍動を受け取れたように感じられて良かったです。

 ⇒CoRich舞台芸術!『オッペケペ
 ⇒流山児さん、読んでくださってありがとうございます(2007/09/16加筆)。

 ≪あらすじ・作品紹介≫ 公式サイトより
【壮士劇を演じる新劇団という趣向の、虚実交えた福田善之の傑作群像劇!】
 緋の陣羽織で、自由民権を時の権力風刺と共にうたって一世を風靡した川上音二郎の「オッペケペ節」。戯曲『オッペケペ』は川上音二郎や貞奴、伊藤博文、幸徳秋水と言った人物を想起させるが、実録モノではなく作者のオリジナルな人物像で書かれた60年安保闘争時の敗北と挫折を活写した名作『真田風雲録』と並ぶ福田善之の傑作群像劇。
 自由、民権といった志で始まった「壮士劇」が、権力にとりまかれ「戦争高揚劇」へと至る流れを、様々な役者や政治家の思惑、男女の恋模様も交えて描く歴史群像劇。「壮士劇を上演する劇団の舞台稽古」という多重劇(メタ・シアター)構造で福田善之が「自由とは何か」を問う戦後演劇の代表作。原戯曲では「演出家」が登場するという構造を、2007年版は「作家」が登場して『オッペケペ』の世界を語るという改訂版上演となる。
 ≪ここまで≫

 日清戦争(Wikipedia)開戦前後の明治時代。袴や着物、軍服姿の役者さんが元気に走り回ります。オープニングの疾走感がかっこ良かった~。でも2時間半はさすがに観客も疲れますね。
 舞台は芝居小屋。あらすじにありますように劇団の稽古場を描くメタ・シアターです。舞台上を通って客席に行くようになっていたのも気の利いた演出でした(装置の構造上そうなっただけかもしれませんが)。

 作家(さとうこうじ)が「作者です」と言って登場し、俯瞰する立場で発言してくれることで、ちょっと知的な観客でいられた気がします。「あの時の観客はどこへ行ったんだ?」と、観客にも強く問いかけるお芝居なので、キュっと気を引き締める思いもありました。

 ここからネタバレします。

 ある志をもって活動していた集団が、有名になって規模が拡大する内に、初心とは違う方向へと進んで全く別のものに変わり果てる姿は、身近なところでもよく目にすることです。
 数年前に「壮士劇」で謳っていたオッペケペ節(“心に自由の種をまけ~”)を、「戦争高揚劇」終演後に1人で舞うシーンでは涙がしぼり出されました。「時代が変わったんだ」「戦争はもう始まったんだ」「今、観客が求めているのは戦争劇だ」と、目的がすりかわって行く様にはゾっとします。人事ではないです。

 保村大和さん演じる文士が語った「虚は実ではないけれど云々」のお話が良かったな~。現実になりえない空想(虚)こそ、現実と対等に向き合えるのではないかという視点・・・だったかな。もう曖昧です。すみません。

出演=河原崎國太郎(劇団前進座) 町田マリー(毛皮族) 塩野谷正幸 さとうこうじ 保村大和 奈佐健臣(快飛行家スミス) 沖田乱 加地竜也 伊藤弘子 栗原茂 上田和弘 里美和彦 冨澤力 柏倉太郎 木暮拓矢 阪本篤 坂井香奈美 武田智弘 石井澄 諏訪創 熊谷清正 阿萬由美
【企画】観世榮夫 【作】福田善之(作者自身による2007年改訂版) 【演出】流山児祥 【音楽】本田実 【美術】水谷雄司(王様美術) 【照明】沖野隆一(RYU CONNECTION) 【音響】島猛(ステージオフィス) 【振付】北村真実 【殺陣】岡本隆 【映像】濱島将裕 【舞台監督】吉木均 【衣裳】大野典子 【演出助手】畝部七歩 【大道具製作】王様美術 【宣伝美術】アマノテンガイ 【制作】岡島哲也 青山恵理子 米山恭子 【制作協力】ネルケプランニング 【主催】流山児★事務所
全席指定 前売り:4,800円 当日:5,000円 学生割引:3,500円 プレビュー割引:4,000円 ※学生割引、プレビュー割引のチケットは流山児★事務所のみの予約
http://www.ryuzanji.com/

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Posted by shinobu at 2007年09月13日 19:47 | TrackBack (0)