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Shinobu's theatre review
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2007年09月21日

中野成樹+フランケンズ『遊び半分』09/20-24赤坂RED/THEATER

 横浜を拠点に活動されている中野成樹+フランケンズが東京にやってきてくれました(過去レビュー⇒)。
 赤坂レッドシアターという新しくてきれいな劇場にぴったりの、おしゃれでピリっと風刺の効いた翻訳劇。言葉や演技の細やかさをゆったりと味わいながら、クスッと何度も笑わせていただきました。会社帰りのサラリーマンのデートにぴったりなんじゃないかしら~。上演時間は約1時間45分。

 “フランケンズ”とよく呼ばれるこの劇団ですが、今回から“ナカフラ”と呼ばれたいそうです(終演後のトークより)。よし、これからはナカフラって呼びましょうか(笑)。

 ⇒「映画芸術」に中野成樹さんの充実のインタビューあり!
 ⇒CoRich舞台芸術!『遊び半分』 

 ≪あらすじ≫
 アイルランドの酒場。知人の通夜で一晩中飲み明かそうと思っている父親(福田毅)は、一人娘(石橋志保)に店の留守番を頼むが、娘は夜に1人になるのは怖いと嫌がる。そこに見知らぬ不気味な男(村上聡一)がやって来て・・・。
 ≪ここまで≫

 原作はJ.M.シング(John Millington Synge)の『西の国のプレイボーイ(The Playboy of the Western World)』です。中野さん独自の誤意訳で、ふんわり柔らかい日本語のコメディになっています。「原作を壊して得意げな顔をすることなく、原作に恋してほんの少し先走る程度」と劇団紹介に書かれていますが、まさにその通り。

 衣裳がいつもながらすっごくおしゃれで、音楽も粋!クールってこういうことなんじゃないかなって思います。今回は装置がシンプルながらダイナミックに転換し、色んな表情を見せてくれました。演劇ファンだけが楽しむのはもったいないと思います。ファッションや音楽に敏感な人にもぜひお薦めしたいですね。

 役者さんは箱庭の中の人形みたいに見えることもありますし、感情を吐露したり交換したりする、色んなヴァリエーションの演技もされていて、一人一人に見ごたえがありました。
 娘の婚約者役の松崎史也さん(アフロ隊)。『QUO VADIS』『西遊記~Psych-you-kick~』『小さなお茶会』で拝見していたので、ナカフラに出てらっしゃってびっくり(だってジャンルが違う・・・?)。超ハマリ役でした。今ドキの若者の身体で可哀想げなボケをとばしながら、「こいつムカつく奴だな~」とか「あは、可愛い♪」とか思っちゃって、いっぱい笑わせていただきました(笑)。

 ここからネタバレします。

 バロック風弦楽曲、ピアノ、テクノ、ラップなど、色んなジャンルの音楽がスパイシー。良い服をプレゼントすると言って持ってきたのがUNITED ARROWSの紙袋。三角の壁で出来た小さな家がパタパタと開いて平面になったかと思ったら、グイっと持ち上げられて高くそびえる大きな家になったり。壁のせい見えなかったり、壁の穴(ドアの枠部分)から奥をのぞいたりする効果も奥行きがあって面白いです。

 不気味な男とは、斧で父親を殺して11日間(?)も逃げ回っていた若者でした。村の人々は勇敢な異邦人を最初はちやほやするのですが、本当は殺していなかったとわかった途端に、サっとその熱を冷ましてしまいます。がっかりされたと思った若者は、自分を追って来た父親を今度こそ本当に殺してしまったところ、村の人々は全員そっぽを向いてしまいました。「人殺しは縄にかけて縛り首にすればいい」と。
 ですが、それもまた若者の芝居で、また父親が生きて帰って来てしまうのです。
 若者が最後に言い残した言葉が胸にべったりと残ります。
 「一時の感情に流されて人をくたくたにするのは、お互いこれで終わりにしたいですね。」

 若者は野球のユニフォーム(上着のみ)を着ていました。背中には背番号「7」とNISHIという名前のアルファベット。「西の国のプレイボーイ」を意味してるんですね。父親(ゴウタケヒロ)も野球帽を被っていて可笑しかった。


 ≪ポスト・パフォーマンス・トーク≫ メモしたことの覚書です。
 出演=中野成樹/藤崎周平(日本大学芸術学部演劇学科教授)

 藤崎「原作は100年前の近代劇。演技を意識(および感情)と言葉と身体に分けるとすると、中野くんはそれを分解して組みなおしている。細かい作業がなされていると思った。」
 中野「今まで以上に細かくなってます。役者への負担は増えているかも。日常の身体をキープして翻訳劇のセリフをきちんとしゃべるのは、簡単そうでいてけっこう難しい。僕はそれが面白いなと思う。」

 中野「『遊び半分』というタイトルを考えたところで、見え隠れする感じが思い浮かんだ。最初は黒だけどだんだん白になって、今度は白の中の黒を覗くような。嘘と本当を行ったり来たりして。あるものに集中してもすぐに冷めたりする。そして冷めたことに未練があったりする。」
 中野「工作で、牛乳パックを斜めに切るとかっこよかったりする。美術はそのイメージから。」

 藤崎「世間には『お互いに気持ちよくなろう!』と観客に呼びかけるような、カラオケ的芝居も多いよね。」
 中野「純粋に演劇を考えてやっているけど、それは必ずしも優しいことではない。観客がいなければ演劇は成立しないし、観客がいるその場で生まれるものが演劇だから。そこ(お互いに気持ちよくなろうと呼びかけるかどうか)は迷うところです。でも喜ばせるためだけには、やりたくない。演劇がやるべきじゃない。卑怯なことなんじゃないかと思うから。」

出演=村上聡一、福田毅、野島真理、石橋志保、ゴウタケヒロ、松崎史也、藤達成、竹田英司、大澤夏美、斎藤淳子
原作=J.M.シング作「西の国のプレイボーイ」 誤意訳・演出=中野成樹 舞台美術=大平勝弘+細川浩伸(急な坂アトリエ) 照明=大迫浩二 音響=竹下亮(OFFICE MY ON) 舞台監督=山口英峰 演出助手=門田純(背番号零) 制作=コ・フランケンズ 特別協力=急な坂スタジオ 協力=STスポット横浜 提携=赤坂RED THEATER 主催=中野成樹+フランケンズ
前売3,500円/当日3,800円 (全席指定) ★プレビュー(9/20)のみ2,500円均一
http://www.frankens.jp/

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Posted by shinobu at 2007年09月21日 23:51 | TrackBack (0)