大好きな『三文オペラ』を、これまた大好きな演出家・白井晃さんが演出されるということで、スタッフも豪華ですし、楽しみにして初日に伺いました。
上演時間は3時間10分ぐらい(休憩1回ふくむ)。んー、まだ完成していない感じがしましたね。これから観に行こうかと思ってらっしゃる方は、もうちょっと後に行くのがいいかも。
⇒CoRich舞台芸術!『音楽劇「三文オペラ」』
≪作品紹介≫ 公式サイトより
20世紀最大の演劇の革命家、ベルトルト・ブレヒト。
~1928年、代表作「三文オペラ」は初演された。
舞台は19世紀のロンドン。資本主義社会の矛盾を痛烈に皮肉った。
演劇の枠組みをぶち壊し、脱オペラの手法を打ち立てた。
~2007年、21世紀の今。
時代はハイパー資本主義へと拍車がかかる。
人々の欲望は、見境なしに膨張する。
舞台は現代、どことも知れぬアジアの街!
翻訳も歌詞も大胆不敵にニューヴァージョン!
クルト・ヴァイルの音楽が華麗に炸裂する!
貫くエネジーで、現代社会のカオスを切り開く。
白井版「三文オペラ」!
世田谷パブリックシアターをぶっ飛ばす。
≪ここまで≫
『三文オペラ』を観るのはこれで4作品目になります(⇒1、2、3)。今年の新国立劇場演劇研修所第1期性の試演会1で、ぞっこんに大好きになりまして、音楽の前奏を聴くだけでもわくわくするぐらい。かなり期待していたせいもあり、今作は残念な仕上がりだったように思います。
たまたま劇場でお会いした「『三文オペラ』は何百回も観たことがある」とおっしゃるベテランの演出家さんが、「今上演してもなかなか成功しないものなんだよ」と教えてくださいました。
アジアが舞台とありますが、特に「アジア」とは感じなかったですね。今の日本人が出てるから現代日本で通用している言葉が出てくる、というぐらいで。役名も原作のままだし。
薄汚れたコンテナなどを高く建て込んだ装置(松井るみ)は、最初は「すっごーい!」って思ったんだけど、持続せず・・・。役者さんが落ちるんじゃないかと心配になることが多々ありました。たぶん装置と照明の演出はかなり凝ってると思います。でも初日ではそのクオリティーがわからなかったな~。
歌詞(ROLLY)は面白い言葉が並んでいて、今までに聞いたことのある歌詞を比べるのが面白かったです。スカンチっぽいんだな~、やっぱり。セリフも新たな翻訳(酒寄進一)なので、言葉の意味を聞いて「なるほど~」と思う分には楽しめました。
役者さんは・・・セリフもよく間違ってましたし、まだ自信がなさそうに見えました。そして寄せ集め感は拭えず。濃いコミュニケーションが見えないんですよね。
ジェニー(ROLLY)が働く娼館にいる娼婦たちは若い女優さんが演じられるんですが、めーーーーっちゃくちゃスタイルが良くって、ダンスがうまい!(と思う) しかもほとんど下着姿で出てきますから、男性には目の保養間違いなし(笑)。私は美しい女性の裸が大好きなので(危険発言か?)、めっさ見とれました。あーもー彼女たちをもっと観ていたかった。
ちょっとネタバレになるのですが、どうしても書いておきたいのでひとこと。最初の「休憩」は休憩にはなりません。おそらくトイレに行ってしまったのであろう可哀想なお客様がいらっしゃいました。どうぞ1回目は座っていてください。
ここからネタバレします。セリフは正確ではありません。
オープニングの「マック・ザ・ナイフ」は素晴らしかったです。編曲がメロディーと全然違うんだもの!普段着姿のROLLYが素なのか演技なのか曖昧な状態で歌いだすのも、導入としては最高でした。
客席にぐっと近づいて高くそびえる装置は3階立て。2階部分に歌のタイトルなどを表示する電光掲示板(LEDスクリーン?)があります。4階部分はコンテナのような四角い箱が天井に張り付いている状態で、その壁にくっついた細い蛍光灯が光るのもかっこ良かったです。
メッキー(吉田栄作)の死刑シーンで、メッキーが電気イスで本当に殺されてしまいます。ビリビリと身体が震えて叫び声まであげるので、ちょっと怖かった。そしてピーチャム(大谷亮介)が「別のエンディングをご用意しました」「女王の使いがやってくる」等と言って、つかの間のハッピーエンド。助かったメッキーが「台本読んでたから助かるのは知ってたのさ!」と言ったのはびっくり(笑)。しかし一瞬でハッピー・ムードは消え、厭世的な歌を大合唱して幕。
「人は悪を手立てに生きる」は、その部分だけNNTドラマスタジオ版と歌詞が一緒でした。いい言葉ですよね~、悪を手立てに生きるって。やっぱり好きですよ、三文オペラ。
出演=吉田栄作 篠原ともえ 大谷亮介 銀粉蝶 佐藤正宏 猫背椿 ROLLY 六角慎司 細見大輔 内田紳一郎 富岡晃一郎 櫻井章喜 田島俊弥 杉崎真宏 大林洋平 篠原功生 鈴木良一 金世一 岡寛恵(赤いスリップ) 中澤聖子(ジーンズ) もたい陽子(豹柄) 冨岡真理央(黄色いキャミソール)
作=ベルトルト・ブレヒト 音楽=クルト・ヴァイル 翻訳=酒寄進一 演出=白井晃 音楽監督=三宅純 歌詞=OLLY 美術=松井るみ 照明=齋藤茂男 音響=福本荘一 衣裳=太田雅公 振付=井手茂太 技術監督=眞野純 プロダクション・マネージャー=堀内真人 舞台監督=勝康隆 歌唱指導=満田恵子 演出助手=中村太郎 石内エイコ 音楽監督助手=荻野清子 学芸=小宮山智津子 制作=根本晴美 相場末江 宣伝美術=タカハシデザイン室 宣伝写真=ニ石トモキ スタイリスト=青柳美智子 ヘアメイク=神﨑美香 CGオペレーション=Studio Gumbo 撮影協力=Bee OMIYA
【休演日】月曜休演 全席指定 A席7,500円/B席5,500円 TSSS 各一般料金の半額 友の会会員割引(A席)7,000円 世田谷区民割引(A席)7,300円
主催=財団法人せたがや文化財団/ぴあ/朝日新聞社 企画・制作=世田谷パブリックシアター
http://setagaya-pt.jp/theater_info/2007/10/post_90.html
※クレジットはわかる範囲で載せています。必ずしも正確な情報ではありませんので、ご了承下さい。
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