東北の大自然を満喫できる楽しい観光旅行をさせていただきながら、わらび座についてお聞きすることができました。
ミュージカルというと日本では一般的に、劇団四季、東宝ミュージカル、宝塚歌劇の名前がまず挙がりそうですが、オリジナルのミュージカルを全国規模で上演しているカンパニーもけっこうあるんですよね。その中でも独特の事業展開をしているのがわらび座です。
わらび座は大小あわせて7チームが全国・海外を回っており、学校公演を含めて年間約1,200ステージを上演しています。海外公演はアメリカ、ヨーロッパ、アジア、ブラジルなど広く16カ国で行なっており、ロシアや韓国には毎年のように渡っているそうです。
わらび座が海外へ行くだけでなく、海外からわらび座へと、劇団経営システムを学ぶために視察に来られることもあります。今年はこれまでに数回、韓国から20人以上の団体ツアーがたざわこ芸術村に訪れており、韓国とのつながりは年々深くなっているそうです。
ホテルやショッピング・モールなどの複合レジャー施設と併設される形で、わらび座ミュージカル上演劇場が2006年に誕生しています。愛媛県東温市見奈良のレスパス・シティ内にある「坊っちゃん劇場」です。こけら落としはジェームズ・三木さん作・演出の『坊っちゃん!』(昨年の約300公演を経て現在全国ツアー中/東京公演は11/10~29に北千住のシアター1010にて)。海外だけではなく地方自治体からの、たざわこ芸術村視察が増加していることにも大いに納得です。
国際的な芸術活動をしつつ、ホテル経営や地ビール製造・販売などでも成功し、企業とビジネス面で積極的に関わりながら、地元のお祭には毎年必ず無償で参加したり・・・。この資本主義社会の日本において芸術と経済を両立させた、地に足のついた営みを実現されています。
最も感動したのは子供2人に1人の保育士がつく、24時間体制の保育所があることです。小さなお子様がいる役者さんやスタッフさんが、安心して全国ツアーに行けるんですね。女性にとっての結婚・出産が、芸術活動を辞めるきっかけにならないのが凄いことだと思います。既に50年の歴史があるそうです。
今舞台に立っている役者さんの中には、ご両親ががわらび座のメンバーという“わらびっ子”も大勢いらっしゃいます。私が観た『小野小町』主役の椿千代さんも、『坊っちゃん!』主役の三重野葵さんも“わらびっ子”です。日本のオリジナル・ミュージカルの世界で、芸術が親から子へと受け継がれていっているんですね。
保育所ではわらび座関係者だけでなく、一般の方の子供も預かっているそうです。わらび座が始めることは何でも公(おおやけ)に近づいていくという、芸術が生活に結びついているひとつの成功モデルなのではないでしょうか。
いくつものプロジェクトが並行して進んでいるわらび座ですが、来年4月から全国ツアーが始まる新作ミュージカル『火の鳥~鳳凰編~』は、その中でも大きなものになりそうです。原作は皆さんご存知の手塚治虫の名作漫画。演出の栗山民也さんほか、豪華スタッフが揃っています。キャストはわらび座メンバーを含めて現在オーディション実施中だそうです。わらび座による純日本製の新作オリジナル・ミュージカルの誕生が、今からとても楽しみです。
※注意を払って記事を掲載していますが、正確な情報は公式サイトでご確認ください。
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