谷賢一さんが作・演出されるDULL-COLORED POP(ダル・カラード・ポップ)の第5回公演です(過去レビュー⇒1、2、3、4、5)。タイトルの読み方は「セシウムベリー・ジャム」。
意外に超シリアスだった約2時間。入場に少々手間取りました。これからご覧になる方は早めに行かれると良いと思います。
⇒CoRich舞台芸術!『Caesiumberry Jam』
レビューをアップしました(2007/10/13)。
≪あらすじ・作品紹介≫ 公式サイトより
乾いた砂埃が舞い上がる廃村、崩落しかけた農家の木戸を蹴破ると、一人の子供がジャムを食っていた。見たところ白痴である。ゴーグル越しに飛び込んでくる締まりのないガキの笑顔にいらいら、イライラする、けど人は撃たない。一匹の猫を射殺すると、シチューを煮ていた女やもめが姿を現し、もう遅いから泊まっていけと言う。こんな汚い、危険な村に泊まれって? ここがどんな場所だか、わかってるのか、お前は。
史実への取材で得たマテリアルをグロテス・ポップな空想力で舞台化する、DULL-COLORED POPにしては初のロシア民謡風フォトダイアリー。
≪ここまで≫
1991年から現在まで、ロシアのある村を数年おきに取材したカメラマンの回想。彼からインタビューを受けた村民の独白で導入しながら、村で起こったエピソードを紹介していきます。
「くさいものに蓋」をしようとする人類に対して(自戒の念も込めつつ)、至極まっとうに向き合っている脚本でした。力作だと思いましたが、2時間は長かったです。
演技がおぼつかない役者さんが少なくなく、脚本が伝えようとしていることに追いついていない印象でした。谷さんのギャグがとても面白いと思っている私にとっては、あまりギャグが機能していなかったのが残念。カメラマン役の菅野貴夫さんは静かで落ち着いた演技が良かったです。
日替わりゲストがいかにも「日替わりゲストですよ」という感じで登場するのはもったいない。でも玉置玲央さんの破壊力は楽しかった。
知りたいと思うこと、知ってそれを広く伝えたいと思うこと。愛すること、愛していることを伝えたいと思うこと。それはただのエゴかもしれないけど、私は何か(誰か)に対する何らかの思い(気持ち・心・感情・意志など)が存在するだけで愛(私はそう呼んでますが)だと思っています。だから価値も意味もあると思います。
ここからネタバレします。
1985年のチェルノブイリ原発事故によって汚染された村を、カメラマンが数回取材に訪れます。カメラマンが撮った写真を壁に映写するのは効果的でした。衣裳や舞台の土に「汚れ」のイメージが付加される工夫も面白いです。タイミングはよく理解できなかったですが、THE BEATLESの『SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND』が流れた(よね?違う?)のは、ミスマッチな雰囲気がかっこ良かった。
奇形児が生まれるシーンは出産のリアリティに欠けるので必要性を感じず。甲状腺ガンで亡くなった少女のように、口紅を首に塗りつける演技で出来事を象徴する方向の方が良かったのではないかと思いました。
「ゴドーを待ちながら」のシーンを入れるのは面白いアイデアだと思いますが、ハードルが高かったですね。
舞台上に役者さんが待機しており、出番でない時もその役柄の演技をしています。「そして誰もいなくなった」ラストシーンの意味がよくわかりました。
アリスフェスティバル2007参加
出演=堀奈津美(DULL-COLORED POP)、清水那保(DULL-COLORED POP)、太田守信(劇団ギリギリエリンギ)、菅野貴夫、危村武志(巌鉄)、滝井麻美、ハマカワフミエ(3WD)、待村朋子(第弐牡丹)、和知龍範(fool-fish)、片山響子、澁谷美香(騒動舎)
日替わりゲスト=12日(金) 玉置玲央(柿喰う客)/13日(土) 富所浩一/14日(日) 猫道(猫道一家党首)/15日(月) 吉田ミサイル(吉田ミサイルの世界)
作・演出=谷賢一 舞台監督=鮫島あゆ 照明=松本大介(enjin-light) 音響=長谷川ふな蔵 演出助手=永岡一馬(第弐牡丹) 宣伝美術・舞台美術=鮫島あゆ&グラマラスキャッツ 役者顔写真撮影=秦達夫 映像=荻原かやの(騒動舎) 制作=黒澤ナホ&クレイジービーンズ
前売:2000円 当日:2300円(学割: 前売当日ともに大学生500円・高校生1000円引き。要学生証提示) 昼ギャザ実施: 12(金)14:00~・15(月)14:00~ 椅子席予約オプション:+500円
http://www.dcpop.org/
※クレジットはわかる範囲で載せています。必ずしも正確な情報ではありません。ご了承下さい。
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