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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2007年10月26日

ペンギンプルペイルパイルズ『ゆらめき』10/17-28吉祥寺シアター

 倉持裕さんが脚本・演出を手がけるペンギンプルペイルパイルズの新作です。上演時間は約1時間50分。美術が素敵でした。

 ⇒CoRich舞台芸術!『ゆらめき

 ≪あらすじ≫ 公式サイトより
高宮進とわたるはお互い30代後半になって一緒になった夫婦。現在二人の生活にこれといった問題もなく、幸福といっていい。
ある日、休業中のスタイリストであるわたるに断りきれない仕事の依頼が入る。
その現場で、わたるは江尻という歳下のスタッフに口説かれる。既婚者だと明かすと江尻は大人しく引き下がった。
そんな出来事をわたるは半ば笑い話として夫に話す。進はからかい混じりに笑う。
その場に居合わせた進の旧友・仙波も、わたるの友人・塔子も笑う。
しかし次第に進は、わたるが江尻を「正確に」振ることが出来たのかどうか不安になってくる。
江尻に遺恨はないか? たまりかねて進は江尻を家に招くことを提案。当然わたるは反対するも、進は一歩も譲らない。
数日後、江尻がびくびくしながらやって来る。一人では心細く、学生時代の先輩である朝比奈という男を伴って……。
ちゃんと諦められたのか、と進に睨まれ委縮する江尻。そこで朝比奈が助け舟を出してやる。
「あれから江尻には彼女が出来たんです」
ようやく安心する進の横で、わたるは不機嫌になっていく。
(まだ何日もたっていないのに……そもそもこれは知らずに済んだ情報のはず)
わたるの胸の内で夫に対する憎悪の炎が燃え上がる……。
覚悟や責任から遊離した<現代の夫婦像>に関する物語。
 ≪ここまで≫

 公団の古いマンションをおしゃれにリノベーションしてるっぽい、子供のいない夫婦(戸田昌宏&坂井真紀)の家。隣人や友達がひっきりなしに出入りして、簡単に済みそうな些細な出来事が、なぜかおかしな方向に進んだり、立ち消えたり。

 舞台美術が素晴らしかった~♪マンションの部屋が斜めにばっさり切り落とされていました(笑)。排水管(のような筒)がびゅんびゅん天井に伸びているのも面白いです。壁が切れて低くなっているので、奥の部屋での演技が見えたり見えなかったり。そのバランスがかっこいいです。

 なんでもないことをわざと誇大にしてみたり、もめる必要ないのに火種を作ったり。生きることに一心不乱になる必要がない状態って、平穏で幸せなはずなんだけど、物足りないんですよね、どうしても。平和ゆえのざわざわした気持ちには共感。

 倉持さんの書くセリフには独特の風合いがある気がして、言葉自体を味わう楽しみがあります。でも演技については、予定通りのことをやっているような印象を受けたりもして(わざと気持ちを熱く盛り上げたり等)、全体的にはちょっと退屈だったかな。でも最後の最後は笑っちゃったし、じ~んと来ました。

 ここからネタバレします。

 夫は昔、好きになられた女にナイフで刺された経験があって、それがトラウマになっています。開幕してすぐの、黒い服の女(内田慈)が寝室でべったりと夫にしなだれかかるシーンが良かったです。香りたつような何かが感じられました。

 ラストは「鎌倉に行きたい」と言っていた妻を、またもや夫が「買い付けがあるからNG」と裏切ります。とっくみあいの大喧嘩になって妻が夫に台所用品をじゃんじゃか投げつけたら、なんと夫の背中にナイフが刺さっちゃった。「ざまあみろ!」って勢いで全く夫をいたわらない妻。だけど夫が「(バンソウコウを)貼ってよ!」と甘えてきたら、妻はちょっと嬉しくなっちゃって、小さな笑みを浮かべて終幕。大喧嘩が生々しくて不恰好で可愛かったし、最後の小さなハッピーが優しいなと思いました。

≪東京、大阪≫
出演=戸田昌宏、坂井真紀、小林高鹿、ぼくもとさきこ、玉置孝匡、内田慈、近藤智行、吉川純広
脚本・演出=倉持裕 照明=清水利恭(日高照明) 音響=高塩顕 舞台美術=中根聡子 音楽=SAKEROCK 衣裳=今村あずさ(SING KEN KEN) 舞台監督=橋本加奈子(SING KEN KEN) 舞台部=武藤晃司(SING KEN KEN)、金子晴美 衣裳部=嶋田亜夕美 演出助手=渡邊千穂(至福団) ヘアメイク=栗原由佳 大道具=C-COM、オサフネ製作所 小道具=高津装飾美術 運搬=マイド 宣伝美術=坂村健次、鈴木健朗 樋口大(C2デザイン) 宣伝写真=江隈麗志 宣伝ヘアメイク=山下まきえ、山本絵里子 WEB製作=いのくちあきこ 舞台写真=引地信彦 制作助手=新貝美奈子 制作=土井さや佳 後援=TOKYO FM 主催=ペンギンプルペイルパイルズ、財団法人武蔵野文化事業団
前売り開始7月16日(日) 指定(いす席)前売3,600円 当日3,900円 自由(前方ベンチシート、日時指定、整理番号付)前売3,400円 当日3,600円 
10/18 アフタートーク男性編:ゲスト岩松了さん×戸田昌宏さん+小林高鹿+玉置孝匡+倉持裕 10/19 アフタートーク女性編:ゲスト水野美紀さん×坂井真紀さん+ぼくもとさきこ+倉持裕
【発売日】2007/09/16 前売3800円 当日4000円
http://www.penguinppp.com/

※クレジットはわかる範囲で載せています。必ずしも正確な情報ではありません。
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Posted by shinobu at 2007年10月26日 00:38 | TrackBack (0)