マキノノゾミさんが初めて文学座に書き下ろされたそうです。演出は西川信廣さん。『殿様と私』って映画『王様と私』から来てるんですよね?(笑)
出演者が8人だけの文学座公演で劇場が紀伊國屋サザンシアターというのは、すごくリッチな気分(なぜかしら)。
上演時間が2時間45分(休憩15分を含む)と長かったですが、退屈せず楽しむことが出来ました。安心してリラックスして、あまり何も考えないで笑っていられたからかもしれません。こういう観劇、久しぶりだったかも。
⇒CoRich舞台芸術!『殿様と私』
≪あらすじ≫ 公式サイトより
1886年(明治19年)、東京・麻布鳥居坂の白河義晃子爵邸。当主の白河義晃は急速に西洋化する日本になじめず、酒浸りの日々を送っていた。ある日、外務卿・井上馨の書生と白河家の家令雛田源右衛門の間に一悶着が起きた。雛田は時代遅れのちょん髷をからかわれたばかりか、因循姑息な白河子爵は華族の資格なしと罵倒されたのである。それを聞いた義晃は怒り心頭に発し、これまた時代遅れの討ち入りを決意。しかし、〈白河家を守るには鹿鳴館に乗り込み、見事なダンスを披露して和魂洋才の手本を示すこと〉という息子義知の提言に、お家のためならやむを得ずと渋々承知の義晃。米国人のアンナ・カートライト夫人を指南役に、義晃のダンス修行が始った。さて、その成果は・・・。
≪ここまで≫
華族である白河家の居間は和洋折衷の美しいお部屋。衣裳も豪華で、役者さんが着物の所作もきっちりこなしてくださいます。時代物のストレート・プレイはこうでないとね~♪と嬉しくなりました。
英語がわからない華族当主(たかお鷹)と、日本語がわからない米国人ダンス教師(富沢亜古)の会話ですから、当然成立しません。すべて日本語で話すのが面白いです。
ちょうど映画『長州ファイブ』を見たばかりだったので、私にはタイムリーだったかもしれません。文明が必ずしも人を幸せにするわけではないことをしみじみ感じておりましたので、カートライト夫人が話すリベラルな意見を、引いたところから客観的に受け取ることができました。目新しいものに飛びついて昔を切り捨てていくことって、自分も無自覚にやっているなと振り返りました。
白河家当主・白河義晃役のたかお鷹さんがすごくキュートで、ワハハと笑わせていただきました。
陸軍中尉(義晃の息子)役の城全能成さんと英国海軍大尉役の星智也さん(背高っ!)が、絵に描いたような美男子として登場し、いかにもなエリート2枚目路線をガツンと演じられていたのが面白かったです。宝塚歌劇のヒーローなみでした(笑)。
ここからネタバレします。
部屋の奥は廊下で、廊下の向こうには中庭があります。紅葉がものすごくきれいでした。いっせいに、でもゆっくりと灯るランプも良かった。
わかりあえない者同士(義晃とカートライト夫人)が自らの母国語で交互に話し合うシーンでは、お互いに意味は全くわからないのだけれど、人種の優劣などない対等な関係が見えました。
ただ、お話には少々疑問も残りました。例えば娘(松山愛佳)がアメリカに行くことを、義晃があんなに簡単に許すわけないんじゃないかと思いました。
≪東京、兵庫、新潟≫
白河義晃(子爵 白河家当主)……たかお鷹/白河義知(義晃の息子 陸軍中尉)……城全能成 /白河雪絵(義晃の娘)……松山愛佳/雛田源飢右衛門(白河家の家令)……加藤武/雛田カネ(源右衛門の妻)……寺田路恵/熊田三太郎(アンナ専属の車夫・通訳)……浅野雅博/ジョン・ラング(英国海軍大尉)……星智也 /アンナ・カートライト(米国人 鉄道技師の妻)……富沢亜古
【脚本】マキノノゾミ 【演出】西川信廣 【美術】奥村泰彦 【照明】金英秀 【音楽】上田亨 【音響効果】中嶋直勝 【衣裳】山田靖子 【振付】室町あかね 【舞台監督】寺田修 【演出補】北則昭 【制作】伊藤正道 【票券】松田みず穂
【発売日】2007/10/01 一般5,500円 ユース3,800円 中・高校生2,500円 ユース(25歳以下)、中・高校生は劇団扱いのみ
http://www.bungakuza.com/tonosama07/index.html
※クレジットはわかる範囲で載せています。必ずしも正確な情報ではありません。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
★“しのぶの演劇レビュー”TOPページはこちらです。
便利な無料メルマガも発行しております。