虚構の劇団とは、鴻上尚史さんがおよそ20歳ぐらい年下の役者さんたちと設立した劇団です。
今回は旗揚げ準備公演。旗揚げ公演は来年5月だそうです。中野のザ・ポケットは通路席まで満席でした。上演時間は約1時間50分。
⇒CoRich舞台芸術!『監視カメラが忘れたアリア』
≪あらすじ≫ 公式サイトより
近未来、この国のあらゆる場所には監視カメラが置かれていた。
人々は見られることで安心した。が、見てしまったことで人生が変わってしまった人物がいた。
その男は、監視カメラの映像に何を見たのか……!
≪ここまで≫
穴あきチーズのように丸い穴がぽこぽこ空いたパネルが3枚釣り下がってるシンプルな装置。劇場の壁がそのまま見えていたり、役者さんが開演前から舞台上で準備運動をしていたり。がっつりと物語の世界を作りこむのではなく、「これは演劇ですよ」という演出が開場時から始まっています。
客席に向かって大きな声でセリフを言う若い役者さん、はっきりとしたきっかけで変化する音響と照明、原色多い目のカラフルな衣裳。ちょっと懐かしいような気持ちになりました。なぜか2000年の『ララバイまたは百年の子守唄』を思い出したりして。石田ゆり子さん、佐藤アツヒロさんのクリーンなイメージが似てるのかも。
監視カメラにまつわるお話は、監視されることを被害者の視点から描くだけでなく、「見られる」「見る」「見せる」など、さまざまな角度から細かいエピソードに分けて伝えてくれました。見られて困ると思っているようで、実は見られたくてしょうがないのかもしれない。見る方が実は見られているのかもしれない。・・・などと、「見る」ということについて考えたりしました。
動きが機敏で声もよく出る元気な役者さんが説明のためにしゃべっているように感じたのは残念。
20代の若くてピチピチした役者さんが踊るダンスは観てて楽しくないわけではないですが、ちょっと恥ずかしくなりました。たぶん踊りだすタイミングとか、振付や表情などが私の好みじゃなかったんだと思います。
「ここから盛り上がります!」みたいなきっかけで鳴る音楽とか、「驚かしてやるゾ♪」と言いたげにパっと白く照らす照明とかも、どうもしっくり来なくて集中できませんでした。これらはすべて好みの問題だと思います。
ここからネタバレします。
新宿、渋谷などに隠れる場所が全くなくなるほど設置された監視カメラ。大学構内に設置された監視カメラ。好きな彼女の家にこっそり設置した盗撮カメラ。劇団の活動を生中継するために劇団員自ら設置したライブカメラ。
「中学生の時、援助交際目的のオヤジに裸を見られたことがトラウマになっている女が、大人になってからテレビで偶然そのオヤジを見つけたので会いに行く」というエピソードは、“見る”という点で監視カメラと関連付けていますが、バランス的にもったいないような気がしました。これだけでも1本のお芝居になるぐらい重たいテーマなので、どうせならもっと掘下げて欲しかったな~。
「監視カメラを監視する会」のはりきり女子大生役の大久保綾乃さんと、監視カメラに映ったものを見る警察官役の山﨑雄介さんに目が行きました。お2人とも何度か拝見したことがある役者さんです。
劇団員募集は続けられるようなので、本公演はまた顔ぶれが変わるのかもしれませんね。
出演:内海正考、大久保綾乃、小沢道成、小野川晶、佐江木れいみ、杉浦一輝、高橋奈津季、三上陽永、山﨑雄介、渡辺芳博
作・演出:鴻上尚史 美術:池田ともゆき 音楽:HIROSHI WATANABE 照明:伊賀康 音響:オフィス新音 衣裳:小池れい 振付:安達桂子 舞台監督:中西輝彦 牧野剛千 音響操作:小田淳也 演出助手=松村悠実子 映像編集:新生璃人 映像操作:Yumilet 小道具製作:川岸真由美 大道具:C-COM舞台装置 小道具:高津映画装飾 記録写真:阿部章仁 記録映像:板垣恭一 宣伝美術:冨田中理 制作:中山梨沙 プロデューサー:細川展裕 企画製作:サードステージ 主催:サードステージ
チケット代金:前売 2900円/当日 3200円 (全席指定・税込)
http://www.thirdstage.com/k/
※クレジットはわかる範囲で載せています。必ずしも正確な情報ではありません。
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