関美能留さんが構成・演出される三条会。千葉を拠点に活動されていますので、東京のザ・スズナリ公演はありがたいですよね。
ギリシア悲劇の『メディア』は何度か拝見していますけど、やっぱり三条会ならではの、オリジナルな『メディア』でした(笑)。上演時間は約1時間25分。パンフレットに書かれたあらすじを読んでからご覧になると良いと思います。
⇒CoRich舞台芸術!『メディア モノガタリ』
今回は・・・音楽、が、見どころ?(笑)
メディア役の大川潤子さんが大奮闘(観客の目から見て、ですが)。「大川さんだから出来ることだよな~、すごいな~」と圧倒されつつ、めちゃくちゃ頑張ってる大川さんを見れば見るほど、「バカだな~♪」って笑っちゃいながら、いとおしくなったりもしました。
一見、深刻なのか本気でバカをやっているのかが判断しづらいんですよね(笑)。でも、「笑っていいのか、な??」と迷いが生まれても、どうしても可笑しくってたまらなくなって、吹き出してしまう瞬間がすぐにやってきます。自分の感覚にまかせて、ストーンと身を投げ出してしまっていいんだと思います。最初は不安になるかもしれないけど、三条会はちゃんと最後までやりきって責任を取ってくれます。大人なんだよなー。
観ていて感じたことは:
・人はみな、自分だけの世界で自分ならではの生き方をしている。誰に断りもなく、勝手に。自由気ままに。傲慢に。
・そんなバラバラの人間たちが、あるルールにのっとって生活しているのがこの世界。
・同じ場所で同じ空気を吸って、同じルールで動いているんだけど、よく観察すると全く違う動きで違うことを考えてるのがわかる。でも、空間全体で見るとそれが調和している。
・女は、男に翻弄されているように思っているが、実は男に頼って、利用して、うま~く生き残っている。
・生き抜くために手段を選ばず、あさましく、もがく女は滑稽。でも愛らしい。
・生まれて、勝手に生きて、調和して、パタっと死ぬ。人生はその繰り返し。
などなど・・・。
今回は、「頭がぐちゃぐちゃになって、どうしていいのかわからなくなって、なぜか涙が溢れ出てくる・・・!」というような体験ではなかったですね(例:『ひかりごけ』)。筋が1本ビシっと通ったような、比較的シンプルな演出だったように思います。
ラストは完全に「シテヤラレタ!」と感じて、そこで流れていた音楽を聴きながら、しばらくは席を立たずにじーっと座っていたくなる余韻がありました。
ここからネタバレします。
パンフレットに記載されていた劇中使用曲はこちら。
・globe「FACE」(1997年)
・JUDY AND MARY「DAY DREAM」(1994年)
・森高千里「雨」(1990年)
・戸川純「蛹化の女」(1983年)
・山口百恵「スター誕生again~メドレー」(1980年)
・小室哲哉「genesis of next」(orchestra version)
これらの楽曲が流れる中、メディアがほとんど1人でずーーーっとセリフを言い続けます。
他のお芝居で何度か聞いて耳に残っている『メディア』のセリフですが、「そこを、そう言うかっ?!」ってツっこみたくなるぐらい解釈が違っていて可笑しかった(笑)。
最も面白いのは『メディア』のセリフが音楽と歌詞に合わさっていくところですよね。「あぁ、女って・・・もうっ!(どうしようもなくバカだ/ズルくて汚い/など)」と共感したり、あきれたり。
劇場の正面の壁にデジタルに時間が表示されます。最初に表示されているのは1時間で、1秒ずつ減っていくんです。お芝居が進むのと同時進行で分数は減っていって、最後に「0」が表示された瞬間にぴったりお芝居が終わるという・・・なんともアメイジング!な終幕。見世物として面白いですし、人間の身体の可能性を感じますよね。どうやってお稽古してるのかしら・・・(笑)。
出演:大川潤子、榊原毅、立崎真紀子、橋口久男、中村岳人、牧野隆二(ク・ナウカ)
原作:エウリピデス(ギリシャ悲劇『メディア』) 構成・演出:関美能留 照明デザイン:佐野一敏/関美能留 照明オペレート:佐野一敏 音響オペレート:山下真樹 宣伝美術:京 制作:久我晴子 主催:三条会
【発売日】2007/11/09 一般 前売3,000円 当日3,500円 学生 前売2,000円 当日2,500円 ※学生券をお求めの方は、学生証を携帯ください
http://homepage2.nifty.com/sanjokai/
※クレジットはわかる範囲で載せています。必ずしも正確な情報ではありません。
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