マーク・メドフ作『ちいさき神の、作りし子ら』(Wikipedia)は1980年トニー賞受賞作です。映画『愛は静けさの中に』の原作で、聾唖の女優マーリー・マトリンがアカデミー賞主演女優賞を受賞しています。私は『愛は・・・』を中学生の頃に観たんです。共演したウィリアム・ハートとのロマンスなどもあって(懐かしいっ)、色々考えさせらた覚えがあります。
舞台の上下には観やすい字幕モニターがありました。耳の不自由な方向けに台本の事前貸出サービスもあります(事前連絡必須)。
主役の男女は見事に手話で会話しており、手話がわかる人にしか笑えない瞬間もあったりして、暖かい気持ちになりました。
⇒CoRich舞台芸術!『ちいさき神の、作りし子ら』
≪あらすじ≫ 公式サイトより
ろう学校に赴任して来た口話教師のジェームス・リーズは、サラ・ノーマンという若く美しい先天性ろうの女性と出会う。
校長から依頼され、サラに口話を教えることになったジェームスだが、彼女は口話を全く受け付けない。そんな彼女に興味を抱いたジェームスは、かたくなに心を閉ざす彼女をなんとか救おうとする。やがて彼女を愛し始めるジェームス。そしてジェームスに惹かれ始めるサラ。
しかし、お互いの愛が強くなるにつれて、二人の間には少しずつろう者の世界と聴者の世界の壁が立ちはだかり始めていく―――
≪ここまで≫
ろう学校の生徒や教師を演じるので、役者さんはしっかり手話で会話されます。それが大きな見どころだと思いました。手話って体全体を使ったことばなんですね。役者さんによって同じ手話でも全く違うように見えるのが面白いし、客席の反応もいつもとは違っていて新鮮で、普段は特に気に留めていないようなことに気づいたりもします。手話を学んで芝居を作るということが、まず尊いことだとも思いました。
障害を持つ人と健常者とが共同創作するワークショップや公演を拝見したりして(関連レビュー⇒1、2、3)、自分が少しは変わったような気もしているのですが、心の中のバリアフリーがちゃんと達成されているかというと、恥ずかながらまだまだ先が長いなぁと思いました。ゴールなんて決してないのでしょうけど。これからもこういう作品に出会うごとに学んでいけたらと思います。
登場するのは7人だけですが、大勢の人が暮らす町の中での小さな出来事だと感じられたのが良かったです。なぜかにぎにぎしい町の喧騒がずっと聞こえているような気がしていました。
役者さんが説明のためにセリフをしゃべっているように感じたり、ストーリーを次に進ませるために時間が過ぎていくように感じた時は、ちょっと残念でした。
ここからネタバレします。
サラがろう者の生きる世界のことを「音であふれた静寂」と表現したのにうっとり。想像してとても心地よくなりました。
最後のセリフはたしか、
サラ「私はあなたを助ける。あなたが私を助けるなら。むすばれる。」
だったと思います。「むすばれる」は原作だと「join」だそうです(関係者に質問して聞きました)。
"Children of a Lesser God"
出演:岡田達也(演劇集団キャラメルボックス)、津田絵理奈、樋渡真司、伴美奈子、大橋ひろえ(SAP.AZN)、石曽根有也(らくだ工務店)、長野里美、ほか
作者:マーク・メドフ 翻訳:平田綾子 板垣恭一 演出:板垣恭一 美術:尼川ゆら 照明:正村さなみ(RISE) 音響効果:末谷あずさ(OFFICE my on) 音楽:北村紀子 衣裳:金田実香 映像:谷友彦(Trough film) 字幕操作:牧野みゆき ダンス指導:オクムラ・ダンス・スクール 演出部協力:主侍知恵(HOZO) 舞台監督:野口研一郎 舞台監修:藤崎遊 手話監修:米内山明宏 手話コーディネート:妹尾映美子 イラスト:間瀬英正 宣伝美術:垣内敏秀(コマンドエヌ) 舞台写真:田中亜紀 撮影協力:theatre plateaux 小道具協力:RESTRANTE BOUNO 制作助手:奥井美樹 こばちえ 制作:橋本香苗 プロデューサー:赤沼かがみ 企画・製作:プレタポルテ
【発売日】2008/01/13(全席指定・税込):前売5,000円 当日5,500円 ※オープニングナイトプライス(2/8)のみ前売4,000円 当日4,500円 リピーターズチケット(当日料金より1,500円引き)
http://www.pret-a-porter.jp/
※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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