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Shinobu's theatre review
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2008年02月22日

世田谷パブリックシアター+コンプリシテ共同制作『春琴(しゅんきん)』02/21-03/05世田谷パブリックシアター

 5年前に村上春樹の『エレファント・バニッシュ』を舞台化したサイモン・マクバーニーさんが、再び日本文学を日本人キャストとともに舞台化。今回は谷崎潤一郎の『春琴抄』です。

 プレビュー初日は開演1時間遅れでした(笑)。開演前の「マタ、ヤッチャイマシタ~ゴメンナサイ!」というサイモンさんのとてもキュートなご挨拶で不満はゼロ!「観客も作品に参加しているんだ」という言葉をすんなり信じて、共犯者になった気持ちで観る事が出来ました。

 上演時間は1時間50分ぐらい、かしら。これからどんどん変わっていくことと思います。初日は2/26(火)です。
 パンフレット(1000円)は読み応えありまくり!

 ⇒サイモン・マクバーニーさんインタビュー(朝日新聞)
 ⇒深津絵里さんインタビュー(産経新聞)
 ⇒CoRich舞台芸術!『春琴

 今作は谷崎潤一郎の『春琴抄』と『陰翳礼賛』をもとに創作されたそうです。あくまでもプレビュー初日の感想ですが、すっご~くわかりやすかったですね。開演までの待ち時間にくりっくチケットセンターで文庫本の『春琴抄』を買って、ファーストフードのお店で読んでいたんですが、予習する必要は特になかったかな~と思いました(もちろん読んでから観るのも面白いと思いますが)。

 しっとりと暗い目の明かりの中、日本を思わせる衣裳、小道具等を使いながら、フィジカル・シアターと呼ばれる所以がよくわかる演出によって、淡々と物語が進みます。
 シーンのひとつひとつを「へーっ、なるほど~、こんな風に表現するのか~っ。」と味わいながら、ただ後を付いて行くような気持ちで舞台を眺めていたんですが、とうとう終わるという時の、佐助役(ヨシ笈田)のセリフでじわっと涙がこぼれました。幕が開いて降りるまでの世界、すなわち舞台で起こることの全体が、谷崎ワールドになっているんだな~と思いました。

 ヨシ笈田さんのセリフが心にしみこんで来ました。関西弁もたおやか。
 立石涼子さんの朗読が素晴らしすぎる!うっとり聞き惚れます。

 三味線の演奏は本條秀太郎さん(←音が鳴ります)。ただの演奏だけじゃなくて、演出面でかなり大きな役割を担っていらっしゃいました。

 ここからネタバレします。

 ラジオ放送用に『春琴抄』を録音しているという設定で、立石さんが原作をずっと朗読し続けました。それに添ってストーリーが忠実に描かれます。ちょうど真ん中あたりで彼女自身のラブ・アフェアー(いわゆる不倫愛)についてのエピソードが挟まれたのも、凄く面白かった。

 細長い棒を何本も使って、部屋、ふすま、樹木などなど、色んな物体を表現。動きと音が刺激的です。役者さんの動作がとてもきびきびしていて、観ていて飽きません。
 舞台奥全面に映像が映されます。ろうそくの炎が度々登場。全体的に暗いイメージです。パラパラと手でゆらす紙に映る顔。それが鳥になって飛んでいくのがかっこ良かった。

 最初、春琴は人形で、深津さんが頭部を持って操りながらセリフを言ってらっしゃいました。人形浄瑠璃みたいに。中盤で女優さんが春琴を演じますが、動きはあくまでも人形。最終的には深津さんが着物を着て春琴として動くようになります。

 春琴と佐助は師弟関係で、いわばSMの関係でもあります、佐助役の男優さん(チョウソンハ&高田惠篤)が上半身裸になり、人形の春琴にいためつけられるシーンは官能的です。裸の背中がグニャッと曲がるのが良かったなー。 
 
 「はっきりしない」という言葉がキーになっていました。何が真実かって、全然はっきりしないですよね。春琴と佐助の関係もそうだし、それを観ている私だってそうです。ぼんやり、浮いたり沈んだり、急に光って燃えたり。それが豊かで色っぽい。

 いわゆる日本らしいものを使っているのは(鼓とか)海外では喜ばれるだろうと思いました。日本人にとってはちょと可笑しいなと感じる部分にもなっていて、それはそれで私は楽しめましたが、もっと進化して欲しいとも思いました。まあプレビュー初日ですから、文句は全くありません!

谷崎潤一郎「春琴抄」「陰翳礼讃」より
[出演]深津絵里、チョウソンハ、ヨシ笈田、立石凉子、宮本裕子、麻生花帆、瑞木健太郎、高田惠篤、本條秀太郎(三味線)
原作:谷崎潤一郎 演出・構成:サイモン・マクバーニー 作曲: 美術:松井るみ+マーラ・ヘンゼル 衣裳:クリスティーナ・カニングハム 照明:ポール・アンダーソン 音響・音響操作:ガレス・フライ 映像・映像操作:フィン・ロス 人形製作:ブラインド・サミット・シアター 演出助手:カースティ・ハウズリー 演出家付助手:ジョー・アラン プロダクション・マネージャー:福田純平 舞台監督:山本園子 キャス・ピンクス 技術舞台監督:ロッド・ウィルソン 舞台監督助手:桐山知也 エマ・キャメロン 照明操作:加藤学 プロデューサー:穂坂知恵子 制作:相場末江 佐野晶子 広報:森直子 和久井彩 票券:金子久美子(ぷれいす) 営業:清水言一 企画制作:世田谷パブリックシアター コンプリシテ 主催:(財)せたがや文化財団
【休演日】2/23、24、3/3 【発売日】2007/12/09 SS席(整理番号付指定席)7,000円/S席7,000円 A席5,000円/B席3,000円 ▼=プレビューSS席(整理番号付指定席)6,000円/S席6,000円 A席4,000円/B席2,000円 友の会会員割引など ※プレビューの割引はございません
http://setagaya-pt.jp/theater_info/2008/02/post_103.html

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2008年02月22日 00:29 | TrackBack (0)