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しのぶの演劇レビュー
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2008年02月23日

日本ペンクラブ主催『朗読劇「リトル・ボーイ、ビッグ・タイフーン~少年口伝隊一九四五~」』02/22-25全労済ホール/スペース・ゼロ

 『世界P.E.N.フォーラム「災害と文化」~叫ぶ、生きる、生きなおす~』というイベントの中の企画です。井上ひさしさんの書き下ろし朗読劇を栗山民也さんが演出。新国立劇場演劇研修所の第2期生が朗読します。

 予想通り大泣き(涙)。研修生の皆さんは爽やかで清楚。声もきれいに通るし言葉もはっきり。演技にもわざとらしさがありません。研修所のレパートリーとして上演し続けていって欲しいと思いました。2/24(日)19:00の回で東京公演は終了(当日券あり)。次は川崎公演(3/7と3/8)があります。

 大江健三郎さんの姿をお見かけしました。そういえば数日前の朝日新聞のコラムにこの公演のことを書かれていました。

 ⇒舞台写真(新国立劇場)
 ⇒CoRich舞台芸術!『リトル・ボーイ、ビッグ・タイフーン

 ≪作品紹介≫ 公式サイトより
 広島に原爆が落とされた数週間後、被爆地を猛烈な台風が襲った。人間が現出させたこの世の悲惨を、すさまじい雨が打ち、激しい風が打ちすえた。戦争と災害、この双方の不条理に翻弄される人間の弱さと強さを描く、書き下ろし朗読劇。新国立劇場第2期研修生による初めての集団朗読の試み。演出は栗山民也。
 ≪ここまで≫
 ≪あらすじ≫ 新国立劇場サイトより・(役者名)を追加。
 昭和20年8月6日、リトルボーイと呼ばれた一発の原子爆弾が広島の上空で炸裂した。一瞬にして広島は壊滅。そして多くの孤児が産まれた。かろうじて生き延びた英彦(宇井晴雄)・正夫(遠山悠介)・勝利(阿川雄輔)の3人の少年は、やはり運よく生き延びた花江さん(藤井咲有里)の口利きで中国新聞社に口伝隊として雇われる。新聞社も原爆で印刷も配達も出来ないからだ。人々にニュースを伝えながら、彼らは大人たちの身勝手な論理に振り回される。やがて正夫が原爆症を発症、そこへ台風が広島を襲う。
 ≪ここまで≫

 戦時中の学生服を思わせる衣裳・髪型の若者14名が登場。横一列に並んだ1人掛けの木のイスに腰掛けて朗読をします。舞台中央手前にダンボール等で作られた広島の町の模型が置かれており、出演者の後方、舞台中央奥にギター奏者(宮下祥子)がスタンバイ。少々の映像とギターの生演奏、シンプルだけれども雄弁な照明と演技の演出で、重厚な演劇作品になっていました。

 1945年8月6日の朝から1ヶ月半ぐらい(だったと思います)の広島の出来事を、生き残った小学6年生の少年3人の姿を通じて描きます。
 知っていたことも知らなかったことも、再び知りなおして、今の自分自身として原子爆弾が投下された広島、そこに居た人々に思いを添わせました。序盤は苦しくて悲しくて涙がポロポロ。中盤以降は生き残った人々のひたむきさをまぶしく見つめがら、原子爆弾の残虐さ、戦争の矛盾について静かに考えました。

 主な登場人物はあらすじにある4人と、哲学者のおじいさん(西村壮悟)。皆さんとても良かったです。

 ここからネタバレします。

 広島にアメリカ軍が入ってくることを知って、少年が手榴弾で復讐しようと心に決めるシーン。日本政府が戦中とは全く逆の、手のひらを返したような外交をしていったんですね。人間を「捨てる」ってこういうことだなと思います。

 勝利が台風で行方不明になり、その翌日には闘病の末に正夫が死亡。おじいさんに「お前は死んでいった少年たちになれ、彼らがやりたかったことをしろ、代わりに生きろ」と説得された英彦も、15年後(だったかな)に原爆症で亡くなったという結末でした。

世界P.E.N.フォーラム「災害と文化」~叫ぶ、生きる、生きなおす~
出演=新国立劇場演劇研修所 第2期研修生14名(岩澤乃雅 熊澤さえか 佐々木抄矢香 滝香織 保可南 深谷美歩 藤井咲有里 吉田妙子 阿川雄輔 宇井晴雄 角野哲郎 西原康彰 遠山悠介 西村壮悟) ギター:宮下祥子 
作=井上ひさし 演出=栗山民也 音楽監督:後藤浩明 模型作成:尼川ゆら 照明:服部基 衣裳:中村洋一 音響:秦大介 映像:小林倫和 方言指導:大原穣子 ヘアメイク:林節子 演出助手:田中麻衣子 制作進行:長山泰久 舞台監督:田中伸幸 企画:日本ペンクラブ 制作:新国立劇場 主催: 日本ペンクラブ 後援:国際ペン
参加券:1イベント1000円
http://www.japanpen.or.jp/katsudou/saigai/program22-4.html

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2008年02月23日 21:14 | TrackBack (0)