永井愛さんが作・演出される『歌わせたい男たち』は、2005年の初演で朝日舞台芸術賞グランプリ・読売演劇大賞最優秀作品賞・秋元松代賞(戸田恵子)を受賞しました。今回が待望の再演で、キャストもそのまま!大盛況の初日に伺いました。
最初から笑わせてくれます。安心して観客になって楽しめます。そして、なぜかものすごく悲しくなって涙があふれたりします・・・。カーテンコールでは紀伊國屋ホールが暖かい拍手に包まれました。上演時間は約1時間50分。
★ポストパフォーマストーク開催!ゲストは→3/6(木)夜:秋元康さん 3/21(金)夜:野田秀樹さん
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≪あらすじ≫ 公式サイトより
仲ミチルは、ある都立高校の音楽講師。
四十代の半ばまでを“売れないシャンソン歌手”として気ままに過ごしたミチルだが、仕事は激減、そろそろカタギになろうと、ようやく今の仕事にありついたのだった。
今日はミチルが初めて迎える卒業式。国歌斉唱の際、伴奏をするようにと校長の与田から命じられていた。だが、ミチルはピアノが大の苦手、おまけにアガリ性でもある。「私のせいで厳粛な式が台無しになっては……」と、ミチルは早朝から音楽室にこもり、伴奏の稽古に励んだ。
だが、極度の緊張のせいか、指が震えだし、おまけに眩暈までしだした。保健室に飛び込み、ベッドに横たわるミチル。「本番で間違えたらどうしよう」と、焦りはつのる一方だ。
与田が保健室へやって来た。英語教師の片桐、社会科教師の拝島も出入りして、ミチルはおちおち寝ていられない。
実は、今日「君が代」の伴奏が無事に行われることは、ミチルだけの問題ではなかった。都議会委員、教育委員会関係者も列席する中で、「君が代」の斉唱を拒否し、着席してしまう者が出たら、校長の指導力が問われかねない。与田や、「君が代・日の丸」推進派の教師にとって、肝心のピアノ伴奏者に不調が生じてはまずいのだ。しかし、教師の中には、「君が代」斉唱に反対の者や、全く無関心の者もいて、今回のハプニングに対する彼ら・彼女らの反応は様々である。
それぞれの思惑が交錯する中、卒業式の時間は刻一刻と迫ってくる。
≪ここまで≫
三月。卒業式。もだえ苦しむ教師たち・・・。おかしなことだと思います。歌を歌う・歌わないでこれだけ苦しまなきゃだめなんて。少なくともこの作品を観れば、そういう視点を持つことができます。
「歌ってチョ~っ!」と懇願する男たち。あぁ、まさに、何が何でも、いやがおうにも、「歌わせたい」んだなぁ、この人たちは・・・と思って、情けないし可笑しいしで、妙~な心境になりました(苦笑)。
ここからネタバレします。セリフは完全に正確なわけではありません。
退職したサクラバ先生(登場しません)が校門前でビラ配り※をしていると、警察がやってきてつかまってしまいます。サクラバ先生のもとへ行こうとする拝島先生(日本史の教師・近藤芳正)を、校長先生(大谷亮介)と片桐先生(英語科教師・中上雅巳)が取り押さえるシーンで、なぜか、ぼっろぼっろと涙が流れました。なんてみっともないんだろう、なんて醜いんだろうって思ったんです。客席は笑いの渦でもあったんですが。
拝島「どんな言葉も追いつかない」
拝島「本当のことが聞きたい、本当の気持ちが聞きたい、僕にはもうそれだけだ!」
最後の校長先生の「内心の自由」についての演説に爆笑!初演では笑えなかったんですけどね、も~~~痛快!でした(笑)。
※サクラバ先生が撒いていたビラは「内心の自由」についての文章で、校長先生が若い頃に書いたものでした。ものすごい皮肉です。でも、そうやって人は180度変わります。変わらざるを得ない状況に、無理やり追い詰められることってありますものね。それが国家権力によるものだから問題なのです。
≪東京・新宿、埼玉、富山、滋賀、大阪、東京・亀有、愛知県、静岡、神奈川、鹿児島、福岡、山口、北海道≫
出演:戸田恵子、大谷亮介、小山萌子、中上雅巳、近藤芳正
作・演出:永井愛 美術=大田創 照明=中川隆一 音響=市来邦比古 衣裳=竹原典子 舞台監督=菅野将機 演出助手=鈴木修 宣伝美術=マッチアンドカンパニー 宣伝写真=ノニータ 宣伝ヘアメイク=武井優子 制作担当=弘雅美・安藤ゆか
【発売日】2008/01/26 一般5,000円 学割3,000円
http://www.nitosha.net/
※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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