当サイトで度々ご紹介しております、赤坂RED/REVOLUTION第一弾『東京』初日を拝見しました。上演時間は約2時間。⇒告知、⇒fringe blog ⇒最終オーディション・レポート ⇒稽古場レポート
劇場で配布されるパンフレットに寄稿させていただきました。パンフレットが入ったチラシ束は客席のシートの裏側のポケットに入っていますので、ぜひご覧ください。
⇒CoRich舞台芸術!『東京』
≪あらすじ≫
関西の港町から東京に出てきた高校時代の同級生3人組。東京に行きさえすれば何かがあると信じていたが・・・。
≪ここまで≫
客席のムードが独特でした。その、演劇界で有名な方々が、いっぱい・・・!シアターコクーンのような大劇場だったら気にならないんですが、赤坂RED/THEATERは小さい劇場なので、開演前に客席で無駄に緊張しちゃいました(汗)。
そして開幕した時に早速驚かされました。THE SHAMPOO HATっぽくないんです。赤堀雅秋さんの作・演出作品はこれまでに10作品以上拝見していますが、そのどれにも似ていません。そして、なぜか映画みたいだったんですよね。
書きかけの油絵のキャンバスのような壁が、舞台の三方を囲みます。色合いはブルーグレーを基調にした少々暗いイメージ。舞台奥の壁に空いた2つの四角い穴は、部屋の窓になります。でも枠の形がいびつで、斜めに倒れ掛かった上手側の壁とともに、危うさや居心地の悪さなどを感じました。
役者さんは大きな声で話しますし(つまり“静かな演劇”ではありません)、客席に向かって独白したり、薄暗い明かりの中で大道具を運んで場面転換したり、いわばスタンダードな演劇的演出でした。なのに私はずっと、映画を観ているように感じていました。そんな不思議な感覚が終演まで続き、カーテンコールで出演者全員が舞台に並んだ時に、アハハと笑いがこぼれました。あぁ、何か得体の知れない、新しいものが生まれたんだって思ったんですよね。
『東京』は、有名・無名に関わらず、色んな業界から集まった若い俳優による青春群像劇です。赤堀さんが戯曲やご自身の得意とされる作風にこだわらず、この企画に最適だと考える作品像を示されたのではないかと思いました。
オーディションで選ばれた役者さんはそれぞれに、演じる役ならではの個性を発揮してらっしゃいましたが、初日は硬さも感じました。まだまだこれから伸びていくのだろうと思います。
主役の元・ひきこもり少年を演じた清水優(しみず・ゆたか)さんの存在に独特の空気を感じました。舞台ではあまり観ないタイプの男優さんだなと思ったら、やっぱり映像関係の方でしたね。また舞台に出られることがあったらぜひ観たいです。
自分が関西出身なので努力中の関西弁は少々気になりました。でも気にしない方が楽しめるのはわかってますから、序盤に「方言は気にしないモード」に頭を切り替えて(笑)、最後まで問題なく楽しみました。
ここからネタバレします。
まず驚いたのは開幕の時の音楽です。メロディアスな曲が大音量で流れます。ユーミンの「春よ、来い」(←音が鳴ります)に似た、切なさを高めていくような音楽をバックに、高校生時代の回想シーンで幕開け。そして現在のシーンへと移る時には、波が打ち寄せる音がこれまた大音量で劇場を埋め尽くします。ここでグっと引き込まれました。THE SHAMPOO HATでは味わったことの無い感覚です。
映画みたいだと感じた原因は1つではないと思いますが、照明の効果が大きかったと思います。全体的に暗く感じる舞台で、役者の顔にわざと光が当たらないようになっているのです(そう感じました)。でも2つの窓からさす光は床に反射して少々眩しくも感じます。つまり、セリフを言っている役者の顔は見えないんだけど、目に光は感じている、そして言葉は大きな声で耳もとまで届いてくる・・・。だから舞台は遠いんですが、言葉は近いんです。それが映画っぽかったのかなと考えています(あくまでも私個人にとってですが)。
小さな劇場だというのもありますが、いつもステージ全体が視界に入っている状態でした。特定の誰かに注目することが少なかったです。華の有る役者をわざと目立たせたり、露骨にストーリーを説明したりすることなく、作品そのものを舞台上に生み出すことを重視した演出意図の成果でもあったんじゃないかと思います。
ラストは、元ひきこもり劇団員(清水優)が隣の犬にエサをあげる事で自分の殻をやぶり、好きになったキャバクラ嬢にキスしちゃいます。全身の力がストンと抜けたようになって、お腹から笑ってしまいました。すごく可愛らしくて、滑稽なんだもの。そしてすっきりしないムズムズ感と、ひりひりとした痛みも残してくれました。これって青春ですよねっ!(笑)
赤坂RED/REVOLUTION第一弾!
出演:いせゆみこ、井筒大介、井端珠里、海老原礼子、粕谷吉洋、木村悟、小林愛、佐藤幾優、佐藤晴彦、清水優、新田めぐみ、野本光一郎、松永裕子、ゆかわたかし、吉牟田眞奈
作・演出:赤堀雅秋 照明:杉本公亮 音響:田上篤志(atSound) 舞台美術:福田暢秀 照明操作:高円敦美 音響操作:井上直裕(atSound) 衣裳進行:熊井絵理 演出助手:相田剛志 演出部:戸田美江 舞台監督:棚瀬巧 稽古場代役:佐藤皓 演出部協力:根岸みさき 音響協力:田島誠治 大道具製作:F.A.T STUDIO 衣裳協力:山本有子(ミシンロックス) 運搬:帯瀬運送 稽古場:本多スタジオ 宣伝写真:長谷川洋三 宣伝美術:いちのへ宏彰 WEB:新藤健 票券:西川絵悦代 制作助手:井手江夢 山田裕美 制作:佐々木康志 制作協力:HOT LIPS 企画・製作:上谷忠(J-clip) 伊藤達哉(ゴーチ・ブラザーズ) プロジェクトメンバー:山家かおり(Me&Her コーポレーション) 石井久美子(石井光三オフィス) 田窪桜子 主催:赤坂RED/THEATER パンフレットデザイン:いちのへ宏彰 パンフレット寄稿:高野しのぶ 稽古場写真:引地信彦 印刷:グラフィック
【発売日】2008/02/16 前売4,200円 当日4,500円(全席指定・税込)
http://www.tokyo-red.net/
※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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