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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2008年03月18日

みつわ会『螢/暮れがた』03/13-19六行会ホール

 みつわ会は久保田万太郎作品を上演し続けているカンパニーです(⇒過去レビュー)。
 第11回目を迎えた今回は「螢」と「暮れがた」の2本立て。上演時間は約1時間45分(途中15分の休憩を含む)。

 しっとりと明治と昭和の日本人の心を味わえました。久保田万太郎作品は本当に素敵。装置も衣裳も本格的だし、座席のクッションもゆったり。贅沢な観劇になりました。明日3/19(水)14:00の回で千秋楽です。

 ⇒CoRich舞台芸術!『蛍/暮れがた

 昨年よりも今回の方が面白かったです。理由はたぶん役者さんの演技の違いだと思います。今回はセリフがある時間もない時間も、しっかりとお芝居の世界が生まれていたように感じました。

 今は平成20年・・・平成になってからあっという間に20年なんですね。久保田万太郎作品は、初演された時は“現代劇”だったんですよね。明治~昭和の現代劇がいま上演されることで、平成を生きる私たちがその時代の生活や人々の心を、体から感じ取れるのだと思います。演劇だから出来ることですよね。
 役者さんは言葉も所作も一から勉強しなくてはならないでしょうし、美術や小道具だって現物をそろえ続けるのは簡単ではないはずです。ありがたいことだと思います。

 ここからネタバレします。セリフは正確ではありません。

 ■「暮れがた」(明治45年初演・久保田万太郎23歳)
 5月の夕方5時ごろ。町は祭りの真っ最中。舞台は浅草の三味線屋。

 経営に失敗して貧乏になり、気の進まない肉体労働に明け暮れる元・若旦那が、三味線屋の女将から丁寧なもてなしを受けます。ふさぎこんでいた若旦那の気持ちが、女将の思いやりに触れて明るくなるのを、今にも大雨が降りだしそうな曇り空が、すっかり晴れて星空になるのと重ね合わせます。
 若旦那「ご近所さんにお酒をすすめられて、ここを離れたくなくなった」

 同じ土地(同じ町内・同じ商店街)で長年一緒に暮らしていることって、人間にとってとても大切なことですよね。今、私の家の周辺では大規模な再開発(?)が行われていて、気づかない内によく知っていたはずの家やお店が更地になっています。「あらら、なくなってるな~」と軽くやり過ごしてしまうことで、実は大きなものを失っているんだと思います。

 ■「蛍」(昭和10年発表、昭和14年に文学座にて初演)
 昭和2~3年ごろ。6月。浅草鳥越付近。

 夫(鈴木)の浮気に傷ついた妻(よし子)が、義理の姉夫婦(とき&舟木)に相談に行きます。「飲んだくれで博打好きでしかも浮気するなんて、なんてひどい夫なの!」と思わせておいて、実は・・・って展開がめちゃくちゃ上手い!しかも色っぽいのです~。じんわり、うっとりですよっ♪

 夫・鈴木は前科者でした。刃物沙汰で刑務所に入り、前妻のときと離縁します(ときはわかりづらいのでトキとします)。職場の親方に「トキを誰かまっとうな奴と結婚させてください」と頼んだため、トキは鈴木の弟分・舟木と再婚しました。
 無期懲役になるだろうと思って入所した鈴木でしたが、恩赦もあって5年で出所。鈴木は親方のありがたい計らいで、舟木とトキが探してきたよし子とすぐに再婚します。

 真面目に働いていた鈴木でしたが、親方が死んでからまた酒に溺れ、賭け事にはまり、仕事に精を出さないようになります。さらに髪結いの女・しげ(以下シゲ)のところに入り浸って、よし子が待つ家には帰らないようになります。その理由は・・・
 鈴木「つっかい棒が折れればどうしようもなくなるのだ。親方は俺のつっかい棒だった。」
 そして髪結いのシゲと一緒になる理由も、
 鈴木「つっかい棒のいる者同士が互いのつっかい棒になるんだよ。」
 さらにラストシーンでダメ押し!シゲがトキにそっくりなんです!!もー泣けるっ!!

 まさか舞台がぐるりと回転して、居間の裏側(=玄関)が見えるようになるとは思いませんでした。豪華!
 トキとシゲを1人の女優さんが演じているのも良いですね。着物の早替えが見事です。

「暮れがた」出演:片岡静香 伊和井康介 蔵一彦 松原美穂 中平良夫 田村勝彦 袴塚真実 大根田良樹 吉岡健二 浅川麗心 榊原悠祐 佐堂克実 
「蛍」出演:大原真理子 世古陽丸 菅野菜保之 佐藤麻衣子 前田真里衣
作:久保田万太郎 演出:大場正昭 美術:中嶋八郎 照明:古川幸夫 効果:泰和夫 舞台監督:藤森條次 宣伝美術:美香(Pri-graphics) 制作協力:Habanera 企画製作:みつわ会 
前売4,000円 当日4,500円 学生2,500円※要学生証・Habaneraのみ扱い(税込)
http://www.habanera-pr.com/

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2008年03月18日 22:33 | TrackBack (0)