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2008年03月31日

わらび座『ミュージカル「火の鳥~鳳凰編」プレビュー』03/28-29パルテノン多摩 大ホール

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(C)フォト スタジオ アクア

 秋田県角館を拠点に、全国でオリジナル・ミュージカル公演を行っているわらび座の新作です。
 演出家の栗山民也さんらビッグなスタッフ陣を向かえ、手塚治虫の名作漫画『火の鳥~鳳凰編』をミュージカル化するという、わらび座史上最大のプロジェクトのプレビュー初日に伺いました。
 ⇒制作発表 ⇒稽古場レポート ⇒わらび座の拠点・たざわこ芸術村レポート

 まっすぐに響く澄んだ歌声に圧倒され、何度も涙しちゃいました~・・・!
 洗練されたおしゃれなミュージカルというより、地に足のついた、飾らない愛情がこもったミュージカルです。上演時間も2時間弱とコンパクト!

 本公演は4/25(金)に新宿文化センター大ホールで開幕します。セリフも歌詞も易しい日本語なので、言葉の意味は聞き取りやすいですし、お子様(小学校中学年以上推奨)も問題なく理解できる作品だと思います。

 ⇒CoRich舞台芸術!『ミュージカル「火の鳥~鳳凰編」

 ≪あらすじ≫
 舞台は8世紀、奈良時代の日本。盗賊の我王(パク・トンハ)と仏師・茜丸(戎本みろ)は、不老不死の神の化身“火の鳥”を探す道中、数奇な出会いを繰り返す。彼らと彼らを支える2人の女(速魚:碓井涼子、ブチ:今泉由香)を軸に物語は進む。
 ≪ここまで≫

 オープニングの大合唱でいきなりノックアウトされました↓ 役柄の身分をはっきり示す衣裳(着物)を着た役者さんたちが、まっすぐ客席を向いて“火の鳥”を追う気持ちを歌い上げます。ポロポロ流れる涙を拭う気もおきないまま、会場全体を圧倒する歌声に浸りました。
 素直で、邪心のない、清らかな声の波が、舞台から観客へと(1人の人間から世界へと)放射されます。自分の出番だからじゃなく、作品のために、歌のために歌ってる役者さんによって作られているミュージカルだと思いました。↓写真提供:フォト スタジオ アクア
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 壮大な物語が2時間弱にまとまっているため、ストーリーが畳み掛けるように進むこともありますが、2人のカップルに焦点が絞られているので問題なくついていくことが出来ました。4人のメインの登場人物の葛藤を自分に重ねながら、輪廻転生するいのちを描く『火の鳥』の世界に入り込みました。
 「いのち」とか「愛」とかって、文章にするちょっと恥ずかしい気もするのですが、それを素直に受け入れさせてくれるのがミュージカルの力だと思います。

 我王役のパク・トンハさん↓麗しい王子様役のイメージが強かったので、最初はトンハさんだと受け入れづらかったです(笑)。役柄について細かく作りこんでらっしゃると思います。がらがら声のセリフとか、全くもってトンハさんっぽくなくて(笑)新鮮。写真提供:わらび座
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 茜丸役の戎本みろさん↓ 清廉潔白な好青年の印象。コミカルな演技も魅力です。声は真っ直ぐ、とにかく真っ直ぐに伸びて来ます。正直さ、真面目さがビシビシ伝わってきて「あぁ、私なんて不真面目でズルくって、勇気が無くって、ホントごめんなさいっ!」って反省しちゃいました(笑)。写真提供:わらび座
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 速魚(はやめ)役の碓井涼子さん↓ もーーーーー・・・めちゃくちゃ可憐!!NHK朝ドラのヒロインになって欲しいタイプ!高く澄んだ声ははかなさと憂いも含んでいて、胸がせつなくなるほど。声量もばっちりです。速魚の登場を待ちわびてしまいました。写真提供:フォト スタジオ アクア
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 ブチ役は今泉由香さん↓ 東京での大規模ミュージカルに出演歴がある方なんですが、私は初めて拝見して、すっかりファンになってしまいました。バネのある健康的な身体と、すいすいと呼吸をつかむ演技で、彼女が登場すると空気が弾むんです!歌と演技と素(?)の境目が見当たらないんですよね。だから歌っても踊ってても、怒っても恋しても、いつも“ブチ”なんです。鈍感な茜丸と単刀直入なブチのコンビが微笑ましかったです。写真提供:フォト スタジオ アクア
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 今までに観た栗山さん演出のミュージカルや音楽劇に比べると、歌い出す前の前奏や、場面転換などにちょっとした余裕を持たせている気がしました。例えば豪華キャストで高額なチケット代のミュージカルのように、次々とスターが登場して見せ場が連発するのではなく、作品世界を伝えるためにシーンがコツコツ積み上げられていきます。だから作品全体のリズムはゆったり目に感じました。秋田県でじっくり創作するから生まれる、わらび座ならではの味わいなのかもしれません。
 4/25(金)の新宿公演開幕日にも伺うつもりです。あと約3週間でどんな進化を見せてくれるのか、楽しみに待ちたいと思います。↓写真提供:フォト スタジオ アクア
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 ここからネタバレします。漫画「デスノート」についてのネタバレもあります。セリフは完全に正確ではありません。

 速魚とブチという対照的な2人のヒロインが、一体になるシーンが凄かった。聖女と娼婦が神(火の鳥)になるんです。

 焼け死んだ茜丸が「俺は死んだのか。死んだらもう何も彫ることはできない」と気づくことで、死の意味が伝わります。死は無なんですよね。漫画「デスノート」のキラの死と同じ、真っ黒な闇なんだと思います。
 それに対して生には無限の可能性があります。黒幕がバサっと落ちて表れた空を見て、両腕を失った我王が「世界は美しい」とつぶやくシーンでは、会場中が静まり返りました。客席は小さなお子様がとても多かったんですよ。大火の後の焼け野原におとずれた心の静寂を、太陽の光と空の神々しさを、全身で味わうことができました。

手塚治虫生誕80周年記念企画
出演(わらび座):椿康寛/岡村雄三/長掛憲司/戎本みろ/平野進一/森下彰夫/飯野裕子/遠藤浩子/碓井涼子/田郷真友/小林すず(小林涼子あらため)/末武あすなろ/山口貴久子
客演:パク・トンハ(2008年4/25~5/15まで)/内田勝久/中山城治/本間識章/森山晶之/渡部徹/今泉由香(2008年4/25~5/15まで) 声の出演(火の鳥):新妻聖子
原作:手塚治虫 演出:栗山民也 脚本:齋藤雅文 音楽:甲斐正人 美術:妹尾河童 演出助手:栗城宏 振付:田井中智子 振付助手:高田綾 歌唱指導:矢部玲司 歌唱指導助手:紫竹ゆうこ 舞台監督:石井忍・板子光男 稽古場助手:黒木いづみ 制作:渡辺澄子 広報:押久保陽子/尾﨑隼 協賛:手塚プロダクション・角川書店
プレビュー公演:一般2000円 小・中学生1000円 東京本公演:S席6000円 A席5000円
http://www.warabi.jp/hinotori/

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2008年03月31日 23:27 | TrackBack (0)