三浦大輔さんが作・演出されるポツドールの新作は、ずばり“顔の美醜”がテーマ。外見最重視の若者たちのリアルな同時進行会話劇です。上演時間は約2時間30分(休憩なし)と長い目ですが、内容が充実しているので不快感ゼロでした。
私はここ数年で免疫ができたのか(笑)、過激な性描写も平気で観ていられましたね。平気どころか徹底した生々しさがかっこいいと思いましたし、終わった時はすごくスカっとしました。
⇒CoRich舞台芸術!『顔よ』
レビューをアップしました(2008/04/14)。
顔に傷が出来たら一生が台無しになる、ブサイクと付き合ってるのがバレたら恥ずかしい、かっこいい人とセックスしたい・・・など、顔について人間が抱く思いを次々と暴いていきます。
登場人物たちは感情にまかせて軽薄な言葉を吐き出します。あまりにみっともない会話にムっとしたりしつつ、馬鹿さ加減があるレベルを超えると情けなくなってきて、思わず笑いがこぼれてしまいます。役者さんの演技がとても自然で、別々の場所で同時に交わされる会話のコンビネーションが見事です。
ここからネタバレします。
下手の一軒家では子供が居ない夫婦と、夫の妹の3人が暮らしており、妹は顔にひどい火傷を負っています。1階がリビングで2階が妹の部屋。上手には古いアパートがあり、1階には外見がさえないフリーター、2階には顔はかっこいいけれど得体の知れない男が住んでいます。
第一章「傷」、第二章「醜」・・・と章ごとに暗転し、明転する毎に4つの部屋の壁が1枚ずつ開かれていくのにわくわくしました。4つの部屋で起こることが同時に描かれ、観客は他人の日常生活を覗き見するような感覚で舞台を眺めます。『恋の渦』の舞台も同じような構造でしたが、『顔よ』はその手法の先に進んでいたと思います。
下手の一軒家の人妻(内田慈)は、アパートの2階の若い男(米村亮太朗)と浮気をします(てゆーか基本的に自慰なんだけど)。最終章「顔よ」の最後に一番初めのシーンに戻ってくるのですが、玄関を掃除していた女(内田慈)を、内田さんではない女優さんが演じていました。その方が内田さんほど美人ではないので、この作品で描かれたことは全てその女の妄想だったことがわかります。
その女の視点から改めてこのお芝居全体のことを思い返してみると、顔にコンプレックスを持つ女の心理が見事に織り込まれているんですね。自分にきつく当たる義理の妹の顔に火傷を負わせたり、隣のアパートの2階に住む男が自分の外見に夢中だから自分を盗撮していることにしたり、夫とセックスレスなのは自分が夫を拒んでいるせいで、夫の浮気相手を自分よりもブサイクな女にしていたり。考えれば考えるほど思い当たることがいっぱいで、終演後、「う~ん、凄い!」っと何度もうなづきながら帰りました。
ポツドール vol.17
出演:米村亮太朗、古澤裕介、井上幸太郎、脇坂圭一郎、岩瀬亮、横山宗和、後藤剛範(害獣芝居)、白神美央、内田慈、松村翔子(チェルフィッチュ)、片倉わき、安藤聖、新田めぐみ、梶野晴香(国分寺大人倶楽部)
脚本・演出:三浦大輔 照明=伊藤孝(ART CORE design) 音響=中村嘉宏(atSound) 舞台監督=矢島健 舞台美術=田中敏恵 大道具製作=夢工房 映像・宣伝美術=冨田中理(selfimage produkts) 小道具=大橋路代(パワープラトン) 衣装=金子千尋 演出助手=富田恭史(jorro)・尾倉ケント(アイサツ) アドバイザー=安藤玉恵 写真撮影=曳野若菜 チラシイラスト=桔川伸 宣伝美術=two minute warning 制作=木下京子 広報=石井裕太 運営=山田恵理子(Y.e.P) 制作助手=安田裕美(the Square of y) 石井舞 企画・製作=ポツドール
【休演日】4/7【発売日】2008/02/23 全席指定/前売¥4,200/当日¥4,500
http://www.potudo-ru.com
※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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