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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2008年04月23日

青年団若手自主企画 岩井企画『おいでおいでぷす』04/22-30アトリエ春風舎

 青年団若手自主企画としての岩井秀人さん(ハイバイ)の新作です。岩井さんは青年団演出部にも所属されているんですね。

 古典を今の視点から書き換えて、しゃべり言葉で上演するという試みです。タイトルからもわかるように題材は『オイディプス王』。松井周さん(サンプル・青年団)が出演されるのも見どころですね。シアターガイドのウェブサイトに岩井さんと松井さんのインタビュー記事が掲載されています。

 『オイディプス王』と関係があるとは思えない設定で始まりますが、思いっきり『オイディプス王』でした(笑)。上演時間は約1時間25分。前半料金は予約2,000円とお得!(4/24まで) 

 ⇒CoRich舞台芸術!『おいでおいでぷす

 チラシのビジュアルどおり、四角い枠の中に役者さんが1人ずつスタンバイ。だらだらと今時のしゃべり言葉で『オイディプス王』の幕が開いたような、どうなんだか・・・このぬるさが刺激的です。
 字幕であらすじが全て説明されるので原作を知らなくても意味はわかりますが、あらかじめ内容をわかっている方が楽しめると思います。⇒『オイディプス王』(Wikipedia

 ≪あらすじ≫
 キャンプにやってきた人々。見るからにキャンプの常識は知らなそうで、案の定、あまりうまくいかない。そこで“キャンプの名人”(坂口辰平)に助言を求めたところ、「汚れを取り除くべし。前のリーダーをひどい目に合わせた奴がここにいる。そいつを追い出しなさい」と言われる。現リーダーの恒松(松井周)は、キャンプの名人の言葉を信用できない。
 ≪ここまで≫

 キャンプに出かけた現代の若者達と『オイディプス王』の世界が重なるのだろうと思って観ていたら、途中で疑問に感じることが出てきて、「おかしいな~」と思ったまま終盤近くまで。最後はとても面白かったです。
 自分の中にあった先入観を取り除けば、もっと広い世界に旅することができたんじゃないかな。これからご覧になる方は脳の中の柵をぶち壊して、どこまでも想像力を飛ばしてくださればと思います。

 イオカステの登場シーンがめちゃくちゃ可笑しかったです。あれは・・・登場なのか?(笑)

 ここからネタバレします。

 バカで素朴な若者たちが仲間同士でキャンプしに来てると思たら、金髪の少女(大久保亜美)がシンナーを吸ってたり、現リーダーの彼女(=イオカステ:木崎友紀子)が56歳だと判明したり(現リーダーは26歳ぐらい)。「あれれ、それって変じゃない?」と思った時点で、「この人たちは現代の若者である」ということを忘れれば良かったんですよね。舞台で起こっていることがある枠を超えた瞬間をとらえて、それをバネにして自分も遠くに行けば良かった。

 徐々に松井さんが野村萬斎さんに見えてくるから不思議(笑)。彼がオイディプスに見えたってことなんですよね(萬斎さんは蜷川幸雄演出『オイディプス王』に主演されました)。字幕にすんなり洗脳されたからかもしれませんが。

 恒松(松井)が今の彼女(本当は母親)の前の彼氏(=前リーダー)をひどい目に合わせたエピソードが、回想シーンとして上演されます。「釣具専門店・上州屋でルアーの先っぽを顔にひっかけた」というのがその真相。なんで上州屋なんだ!(笑) たき火がパタンとひっくり返って上州屋の写真が出てきた、あのチープさも可笑しかった。

 字幕が「オイディプス王 完」となった後から、種明かしのような最終場が始まります。
 原作でオイディプスは自ら両目を潰してテーバイを去りますが、恒松は枯れ枝(?)をモッソリとくっつけたメガネをかけます。「あぁ~、見えな~い・・・」とつぶやくぐらいのぬる~いリアクション。「それなに?」と聞かれて「いましめ」と返事(笑)。

 「私はこんなにも自分を悪いと思って反省していて、しかも自らに罰を与えて耐えているんですよ」とアピールしているんですよね。すぐに謝罪パフォーマンスをする人たちのことが思い浮かびました。
 そして他の仲間(テーバイの市民たち)はそんなオイディプスに全く興味はなく、男(金子岳憲)の体から生えたきのこが食べられるかどうかの話ばかり。だって民衆はお腹が空いているのだから、オイディプスの戒めになんて関わってる暇はないわけで。
 原作ではオイディプスは英雄だったけど、この作品では自意識過剰で被害者意識が強くて、でも過剰に自己アピールしちゃう“自分大好きクン”、みたいになっていたように思いました。

 ≪ポスト・パフォーマンス・トーク≫
 出演:岩井秀人/松井周

 小道具のきのこが何で出来ているのかに、観客の興味が集中していたのが面白かった。

青年団若手自主企画 vol.37
出演:松井周、秋山建一、端田新菜、木崎友紀子、大久保亜美、金子岳憲(ハイバイ)
作・演出 岩井秀人 照明:岩城保 当日運営:三好佐智子(quinada) 総合プロデューサー:平田オリザ 青年団若手自主企画 vol.37
【発売日】2008/03/15 予約2,500円 当日2,800円 前半料金 予約2,000円 当日2,500円(22日、23日、24日の19時半~の回)
http://www.seinendan.org/jpn/info/wakate080317.html

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2008年04月23日 22:05 | TrackBack (0)