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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2008年05月05日

タカハ劇団『プール』05/02-06王子小劇場

 タカハ劇団は高羽彩さんが作・演出(出演も)される劇団です。早稲田大学の学生劇団で(⇒過去レビュー)、今作が初めて一般の劇場での劇団公演になります。

 怖いお話ですが、軽い目に狙ったハードボイルドが笑いにも昇華されており、充実の観劇になりました。上演時間は2時間より短かったです(すみません、うろ覚えです)。

 ⇒CoRich舞台芸術!『プール

 ≪あらすじ≫
 「高額時給」という呼び込みに惹かれてうっかり死体洗浄のアルバイトをすることになった大学生・望月(西尾友樹)。地下の部屋には、仕事と割り切るだけではやり過ごせない、想像を超えた世界があった。
 ≪ここまで≫

 『モロトフカクテル』でも感じましたが、演劇のスタイルとしてはスタンダードで、王道を行く会話劇だと思います。
 2階まできちんと建て込まれた具象セットで、古い大学の建物の地下室の空気をうまく作っていました。天井の壁のかけらが照明のすきまに吊られているのも凝ってていいですね。

 軽~い気持ちで足を踏み入れて、自覚のないままずるずると目の前の暗い道を降りていく人々。ブラックホールのように吸い込まれているのに無自覚なんですよね。バカだな~と思って見つめながら、「吸い込まれたい、奥に(底に)何があるのかを確かめたい」という好奇心(欲望)に共感している自分もいました。すぐ隣にある狂気ってスリリングでわくわくしちゃうものですよね。そんな不謹慎とも言える気持ちの高揚をうまく盛り上げてくれる脚本・演出だと思います。

 いかにも「これから怖いことが起こるかも!」な音楽をかけたり、照明でわざとらしく派手にする、したたかな笑いのセンスがツボ。
 人間の死体にまつわる狂気の沙汰を描いていますが、あくまでもエンターテインメントで人間ドラマであることがとても面白いです。

 ここからネタバレします。セリフは完全に正確ではありません。

 地下のプールでは、既にそこにある死体を洗って保存するだけでなく、死体販売も行っており、さらには新たに死体を仕入てもいました。つまり殺人&臓器売買業です。

 金に目がくらんで死体洗浄という危ない仕事を「やります」と言ってしまう望月。思慮のないほうけた顔が良いですね。そこから赤や青、ピンクなどの派手な照明をパカパカさせて、ノリのいい音楽で登場人物全員が闊歩するオープニングが可笑しかったです。深い闇へと自分から堕ちて行く奴らの“悪乗り”が軽快に表現されていました。

 初めの方で、現場を取り仕切るオヤジ・中村(岡本篤)に事務員(高羽彩)が言った「600万円先払いしてもらってる」というセリフは、臓器売買の取引だったんですね。「人手が足りない」のは生きた内臓が足りないって意味で。あー中村さん、怖い人だわ(笑)。

 先輩の神田(永山智啓)に撃たれた主人公・望月が最後につぶやいた、「さびしいですわ」というセリフで終幕するのは真っ当でいいなと思いました。一瞬、望月が「風の谷のナウシカ」を見てなかったから神田が怒ったのかと思ったけど(笑)。
 撃ったのは普通のピストルじゃなくて、催眠銃だと思えば良かったかもしれません。だって臓器売るんですものね。

出演:西尾友樹、久我真希人(ヒンドゥー五千回)、永山智啓(elePHANTMoon)、浦井大輔(コマツ企画)、鈴木ハルニ(劇団コーヒー牛乳)、井手豊(安心くり太郎)、岡本篤(劇団チョコレートケーキ)、猪瀬早紀子、石澤彩美、兼桝綾、高羽彩、
作・演出:高羽彩 舞台監督:藤田有紀彦/舞台美術:稲田美智子/照明:吉村愛子(Fantasista?ish.)/音響:角張正雄(SoundCube)/小道具:木下早紀/衣装:佐藤愛/演出助手:目崎剛(+1)/フライヤーデザイン:サノアヤコ/制作助手:小林由梨亜(the Square of y)/制作:安田裕美(the Square of y)/製作:タカハ劇団
【発売日】2008/03/20 前売:2,000円/ペアチケット2,800円 当日:2,300円 未就学児のご入場はお断りすることがございます
http://takaha4th-poor.seesaa.net/

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2008年05月05日 18:37 | TrackBack (0)