5/10から開幕中の「Shizuoka春の芸術祭2008」。世界10カ国の15演目が上演されます。東静岡に行く時は、まるで演劇の聖地巡礼のような気分になります。
SPACの芸術総監督・宮城聰さん演出による泉鏡花の『夜叉が池』を拝見してきました。あまりの美しさに涙がこぼれおちることがある。そんなお芝居と出会えることの喜び。上演時間は約1時間40分。
春の芸術祭公式パンフレット(200円)の宮城さんの文章「いまアーティストが世界にできること」も凄いです。それにしてもこのパンフはものすごいボリューム。あまりに高度で私なんぞには読み解けないものもいっぱい(汗)。
⇒CoRich舞台芸術!『夜叉ヶ池』
≪あらすじ≫ 公式サイトより
命は長し、恋せよ乙女!
妖しく怪しく美しい 人と異界のちぎりの物語
龍神伝説が残る夜叉ヶ池。村人はかつて池の主の白雪姫(竜の化身)と、日に三度鐘をつきつづける約束を交わした。それを怠ると、姫は村を水に沈めるという。民話の採集に夜叉ヶ池へと赴いた東大生・萩原晃は、行きがかりで村の鐘つき役を引き受け、村娘の百合と二人でひっそりと暮らす。だが、日照りに悩む村人たちは百合を雨乞いの生け贄にと縛り上げ、萩原に鐘をつかぬよう迫る ・・・。
≪ここまで≫
『夜叉ヶ池』は“現代”を舞台にしつつも、蟹、鯉、なまずに竜神まで出てくるファンタジー。もちろん実際に現代に通じるテーマが描かれています。
鐘つきの夫婦の家に夫の旧友が訪ねてくるところまでは、ちょっと地味な感じでした。全体的に暗くて不気味さや恐ろしさもあり。
蟹、鯉、なまずの登場から空気が一変します。いきなり鯉とかに出てこられても・・・って、観客はちょっと戸惑うところだと思うんですが、そこはさすがSPAC。1人1人が堂々とした重みのある存在感で、突然の異形の世界を成立させてくれました。
白雪姫(夜叉ヶ池の主:瀧井美紀)がめっちゃくちゃかっこ良かった!!!あの衣裳!なんと美しい!!長くてふわっとした金髪に着物。ごわごわとした装飾がほどこされた白い内掛けは、両袖の下の部分が背中でつながっています。中に綿が入っているのか、形状は半分になったドーナツみたい。着物の腰から下はうろこの模様になっていて、お尻のあたりまで入ったスリットから、赤いうろこが描かれたきれいな左足があらわになります。胸元もけっこう開いてたんじゃないかしら。もちろん胸にもうろこあり。衣裳は鯉もなまずも可愛かったな~。
ここからネタバレします。
村の人々が雨乞いの生け贄として鐘つきの妻を連れて行こうとします。「数千人の命を助けるためになら、1人の命を犠牲にすることはいとわない」と主張する村人たち。生け贄の儀式が役に立たなかったことが過去に証明されているにも関わらず、村人たちは強引に行おうとします。まるで村の名物行事にしてお金儲けをしようとしているような(美女を手篭めにすることだけが目的のような)気配もあり。
乱闘の末に妻は自殺、夫は鐘を釣る部分を切って鐘を落とし、妻と同様に自殺。鐘の封印が解けた白雪姫は剣が峰へと出発し、村は水に沈みます。
最後は心中した鐘つきの夫婦が舞台中央で静かに眠り、村人たちがスモーク(大水)から逃げ惑う中、日本語のポップスが流れました。「おやや??」と現実に引き戻される感覚。異化効果として楽しみつつ、実は歌詞が物語にぴったりであることも味わいました。小泉今日子さんの曲なんですって。中盤でも一度日本語の歌が流れた気がしましたが、あれも不思議だった。
≪ポスト・パフォーマンス・トーク≫
出演:宮城聰
観客との質疑応答の形式で行われました。
※舞台写真は関係者より頂戴しました(2008/05/29静岡新聞朝刊より)。
出演:萩原晃(鐘楼守) 永井健二/百合(娘) 布施安寿香 /山沢学円(文学士) 奥野晃士 /白雪姫(夜叉ヶ池の主) 瀧井美紀 /湯尾峠の万年姥(眷属) 舘野百代 /白男の鯉七 池田真紀子 /大蟹五郎 金崎敬江 /黒和尚鯰入(剣ヶ峰の使者) 本多麻紀 /与十(鹿見村百姓) 藤本康宏 /鹿見宅膳(神官) 三島景太 /権藤管八(村会議員) 平垣温人 /斎田初雄(小学教師) 仲谷智邦 /畑上嘉伝次(村長) 植田大介 /伝吉(博徒) 大内米治 /穴隈鉱蔵(県の代議士) 高橋等
演出:宮城聰 作:泉鏡花 音楽:棚川寛子
4000円 同伴チケット(2枚)7000円 大学生・専門学校生2000円 高校生以下1000円
http://www.spac.or.jp/08_spring/index.html
※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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