デイヴィッド・オーバーンの戯曲『proof~証明』は2001年にピューリッツァー賞戯曲部門・トニー賞最優秀演劇作品賞などを受賞し、映画化もされた名作です。私はこれで3種類の『proof』を観たことになるのかしら(過去レビュー⇒1、2)。
ハリインドは俳優4人のユニットです。演出は演劇企画JOKOの松本永実子さん。真正面から正攻法で挑まれたようです。密度の濃いストレートプレイを堪能しました。上演時間はちょうど2時間ぐらい。
⇒CoRich舞台芸術!『proof』
≪あらすじ≫ 公式サイトより。(役者名)を追加。改行を変更。
proof=「証(あかし)」。数学の証明。人生の証明。愛の証明。
偉大な数学者でありながら精神的な病に苦しんだ父、ロバート(多根周作)。
数学の才能と病の兆候を受け継ぎ、父の看病をする娘、キャサリン(はざまみゆき)。
遠く離れたニューヨークでキャリアを積むキャサリンの姉、クレア(枝元萌)。
父の死。自責の念に苦しむ妹。
教授の弟子の若き数学者(伊原農)との恋が彼女の心の鍵をこじ開け、ある秘密を彼に打ち明ける…。
≪ここまで≫
舞台はロバートとキャサリンが暮らす家のテラス。家の壁も窓もしっかり具象で作られています。小さな劇場に上質なムード。ちょっと贅沢な気分。
小劇場 楽園は場内に大きな柱があって、2方向から客席が舞台を囲むのがよくあるスタイル。私は入口から向かって左側の席でした(全席指定)。
この作品は登場人物が4人だけの緻密な会話劇で、セリフがものすごく多いんですよね。でも「長いことしゃべってるな~」などとは全く思いませんでした。真摯に戯曲に取り組み、丁寧にこつこつと積み上げられた結果が出てるんじゃないかと思います。ストーリーも結末も覚えていましたが、対話の中で登場人物の気持ちが揺れ動くのをじっくり楽しみました。面白い戯曲ですからご存じない方にはぜひお薦めしたいですね。
ロバート役の多根周作さんは、セリフのひとつひとつについて深く考えた末に解釈を選び取って、演技をされているように見えました。だから感情の移り変わりにも言葉にも説得力があるし、ほんの少しの表情の変化もつぶさに見つめたくなります。
キャサリン役のはざまみゆきさんは、神経質で感受性の強いキャサリンを素直に演じられていてとても好感が持てました。どうしても気持ちが身体からあふれ出てしまって、はちきれそうになっている姿が可愛らしいです。
クレア(枝元萌)の人物造型については私の解釈とは違いましたね。思い込みが激しくて早とちりで感情的な女性に見えました。理知的で普通の人よりもずっとずっと賢い人なんじゃないのかな~。
衣裳およびヘアメイクはもうちょっとがんばって欲しいですね。美術がきれいだから余計に気になっちゃったのかもしれませんが。役柄に合ったものでありつつ、役者さんを美しく見せるものであって欲しいです。
ここからネタバレします。
ハルとキャサリンのキスシーンが自然で良かったです。でも一夜明けた時のハルは・・・少々エッチさが過ぎる気も(笑)。
元気になった父を置いてキャサリンが大学に入学した後の、ある冬の夜のシーンについて。これまではそのシーンが何を示していたのかがわかっていなかったんですが、今回で腑に落ちました。ロバートは「私は仕事ができる」とか「研究を一緒にやろう」とか、まわりくどい言い方をしますが、キャサリンに戻ってきて欲しかった、また2人で暮らしたかった、それだけなんですよね。父親の気持ちを受け止めたキャサリンは大学を辞めて家に戻り、父親の介護をすることになります。
そういえば時間の経過や過去に戻るシーンも、スムーズに理解できました。欲を言えば、数学や証明というものの美しさ、神々しさ、それに取り付かれた人々の恍惚を、舞台空間から感じ取れるような演出も観たかったかな~。
ハイリンドvol.6『プルーフ』
出演:伊原農、枝元萌、多根周作、はざまみゆき
[脚本]デイヴィッド・オーバーン [演出]松本永実子(演劇企画JOKO) [翻訳]小田島恒志 [舞台監督]井関景太(るうと工房) [照明]石島奈津子(東京舞台照明) [音響]高橋秀雄(SoundCube) [舞台美術]向井登子 [衣裳]阿部美千代 [宣伝美術]西山昭彦 [スチール]夏生かれん [撮影ヘアメイク]田沢麻利子 [グッズプロデュース]wayomix [Web デザイン]古川健司・藪地夏子 [制作]竹内佐江・石川はるか
【発売日】2008/04/20 前売・当日共 3500円(全席指定) 賛助会会員2500円 ★平日マチネ割引(28日・30日14時) 前売・当日共 3000円
http://www.hylind.net
※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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