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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2008年06月07日

東京ギンガ堂『音楽劇「ねこになった漱石」』06/07-15歌舞伎町「大久保公園」内特設テント

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テント劇場入口

 品川能正さんが作・演出される東京ギンガ堂(←音が鳴ります)のテント公演です。テントといっても布製ではなく、鉄骨を組んだ大掛かりな建築物でした(客席数433席)。開演前には新宿区長の挨拶もありました。公的なイベント色が強いですね。⇒記者発表写真レポート

 横幅が広い舞台を三方から客席が囲みます。全席自由席ですので、これからご覧になる方は早めに中央ブロックの席をゲットされることをお勧めします。上演時間は約2時間弱。

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 ≪あらすじ≫
 砂糖がけピーナッツを食べ過ぎて病床にある夏目漱石。漱石の魂(西本裕行)が体から抜け出て、かつて夏目家の飼い猫だった死んだ猫たちと語らう。「私は猫になりたかったんだ。」
 ≪ここまで≫

 タイトルどおり夏目漱石を題材にした音楽劇です。音楽はピアノの生演奏。猫が漱石の魂とともに、漱石の誕生から今に至るまでを演じていきます。

 どんな作品でもそうだと言えばそうなのですが、こういった歌って踊って大人も子供も楽しめるスタイルの娯楽作品は、オープニングで一気に夢の世界に連れて行ってもらいたいんですよね。大の大人が猫耳をつけて「にゃ~」とか言う、ちょっと照れくさいぐらいのファンタジーですから、身構えた状態から観客を解き放って欲しいのです。最初の勢いというか、観客を圧倒・魅了する力が弱かったです。今日は初日でしたので、これから良くなっていくだろうと思います。

 幼少期、少年期、青年期・・・と演じる猫(男優)が順に交代していく演出は面白かったです。ただ、各々の時期に取り上げられるエピソードには疑問が沸きました。なぜそんな他愛もないことを長々と・・・?とか。漱石を描くなら彼の小説とリンクさせて欲しいなと思いました。例えばこの作品のように。
 音楽や歌詞、ダンスについては、私が特に良い悪いと評価できるものではないのですが、会話劇から歌と踊りが始まる(およびその逆の)タイミングは良くなかった気がします。

 役者さんは、テント公演初日ということで本調子ではなかったご様子。声が響かないので苦労されているようにお見受けしました。
 漱石のさまよえる魂役の西本裕行さんはやっぱり素敵。 

 ここからネタバレします。

 一番初めの歌がたしかロンドンから来たメス猫のデュエットでした。オープニングなんだから全員で歌うとかにすれば良かったんじゃないかしら~・・・。
 音楽劇として楽しかったのは、漱石の洋行のシーン。着物姿の漱石がインドを通り過ぎて、イタリアに上陸、パリで美を堪能して、そして19世紀末の怪物が住む街・ロンドンに至るのがテンポ良く描かれていました。

 実は幼少期のエピソードの時、何が始まったのかがわからなかったんです。漱石の本名が金之助だってことは知識としては知っていたんですが。キンノスケ(野口真緒)が一体何なのかがわからなくて。全体的にわかりやすさ重視の作品ですから、そこは言葉でもっと説明しても良いと思います。
 最後の歌のメッセージは「わずらわしい人間世界とおさらばして、気楽な猫になりたかった」ということだったように感じました。それだと腑に落ちないな~。

 エンディングは奥の引き戸が全開して、歌舞伎町の街並みが見えるようになります。でもただ開くだけなのは物足りないです。最初から引き戸なので開いても驚きがないし・・・。仕掛けが無いのなら、外も大々的にアクティング・スペースにして役者さんも使えばいいのにな~と思いました。

出演:西本裕行、大谷朗、米倉紀之子、溝口舜亮、沙羅にしき、串間保、江口信、品川恵子、山本悠介、黒田瑚蘭、勝野洋輔、千月啓子、西原信行、吉田倫貴、森下康之、岡田茜、あべなぎさ、大谷瑠奈、野口真緒、橋本志乃、町屋美由紀、安藤沙織、夏目ひみか(特別ゲスト)
脚本・演出:品川能正 脚本協力:谷賢一/音楽:上田亨/舞台美術:加藤ちか/照明:関嘉明/音響:今西工/タップ振付:千月啓子/ダンス振付・ステージング:神崎由布子/衣裳:西原梨恵/舞台監督:森下紀彦/ピアノ:小山隼平/写真:宮内勝/絵:伊藤桂司/宣伝美術:武田昌也(Mo-Green)/演出助手:河田園子・秋葉由美子/制作(統括):樺澤良・(デスク)木村優子・佐藤理・三好佐智子/企画・制作:東京ギンガ堂/共催:「ねこになった漱石」上演実行委員会(実行委員長:新村雅彦、顧問:中山弘子<新宿区長>)/後援:新宿区
【発売日】2008/04/16 A席(椅子席)前売5,000円/当日5,500円 B席(桟敷席)前売3,000円/当日3,500円
http://www.tokyo-gingado.com

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2008年06月07日 23:57 | TrackBack (0)