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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2008年07月03日

イキウメ『表と裏と、その向こう』07/02-06紀伊國屋ホール

 イキウメは前川知大さんが作・演出される劇団です。紀伊國屋ホール初進出に加え、大阪、福岡公演もあります。凄いですね、あっという間に。

 イキウメというと日常と隣り合わせの少し不気味&恐ろしいSFという作風かと思うのですが、今回は日常の隙間のさらに隙間を覗き込んで、より身近だからこそ切実な“時間”のお話でした。
 2時間10分は少々長かったですが、とても面白かったです。

 CoRich舞台技術!⇒『表と裏と、その向こう

 ※音声認識ソフトで書いてみました!全部は無理ですけど、キーボード操作の量はかなり減るかも♪

 近未来の日本。すべてがIDカードで管理されるユビキタス社会。

 広い紀伊國屋ホールの空間を舞台美術の壁で狭く使う工夫が良いですね。詩的で雄弁な照明もいつもながら大胆で好きです。物語を説明するためのセリフが多いし、基本的に少人数の対話で展開されるため、理解するためには少々集中力が必要かも。

 目的なくだらだらと生きる少年と、死ぬ瞬間を待ちわびて短い時間を全力で生きる少女と。時計を見れば時間は誰にも平等に刻まれていますが、人間一人ひとりにとって特別でかけがえのないものですよね。同じ1時間が、1分が、1秒が、全く違う重さ(密度)と価値を持つということを、一瞬間で示してくれたのが素晴らしい。その一瞬間が私の体と心に刻まれた永遠となったなら、この作品は成功なのではないでしょうか。私にとっては成功でした♪

 セリフで説明することに傾倒しているのはもったいない気もしますが、回想シーンと現行シーンが同時進行したり、照明の変化による素早い場面転換など、演劇ならではの巧みな演出も多くありました。気軽な笑いもたくさんあって、イキウメのこれまでの集大成ととらえて良い作品なのではないかと思いました。

 ここからネタバレします。

 管理社会に自分のすべてを預けたとき、知らないうちに人生の時間を三十分の一秒ずつ奪われていたというアイデアが面白いと思います。私自身、モバイルSUICAを使いながらちょっとドキドキしてるし。

 何でも数値に換算しがちですけど(お金とか時間とか確率とかランキングとか)、換算はあくまでも換算であって、実体を余すところなくあらわせてるわけじゃないんですよね。
 時間の密度を上げて、時間を延ばすことは可能だと思います。

≪東京、福岡、大阪≫
出演:浜田信也、盛隆二、岩本幸子、森下創、緒方健児、西牟田恵、内田慈、安井順平
脚本・演出:前川知大 舞台美術:土岐研一 照明:松本大介(enjin-light) 音響:鏑木知宏 楽曲提供:安東克人(&cut)/衣裳:今村あずさ(SING KEN KEN) ヘアメイク 前原大祐 演出助手:矢本翼子 舞台監督:谷澤拓巳 棚瀬巧 宣伝美術:末吉亮(図工ファイブ)/WEB制作:渡邊由布 制作協力:エッチビイ 制作:中島隆裕 吉田直美 企画制作:イキウメ 主催:(社)日本劇団協議会 創作劇奨励公演
発売日:2008/05/17 3,500円 3,800円
http://www.ikiume.jp/

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2008年07月03日 16:12 | TrackBack (0)