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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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REVIEW

2008年07月13日

Bunkamura『道元の冒険』07/07-28シアターコクーン

 井上ひさし+蜷川幸雄コラボレーション第三弾(⇒第一弾第二弾)。
 『道元の冒険』は1971年初演、1972年に岸田國士戯曲賞、芸術選奨文部大臣新人賞を受賞した戯曲です。鎌倉時代初期の禅僧・道元(Wikipedia)の半生を笑いいっぱいにつづります。今公演のために井上さんが“大改修を加えた”(パンフレットより)そうです。

 3時間強の大作で、役者さんは歌って踊って着替えて走って・・・すごいバイタリティーです。井上ひさしさんの戯曲に正面からぶつかっていて、一観客としてはそのパワーについていくのがやっと(苦笑)。
 上演時間は約3時間15分(途中15分の休憩を含む)。

 ⇒CoRich舞台芸術!『道元の冒険

 ≪あらすじ≫ 公式サイトより
 日本曹洞宗の開祖・道元と怪しげな新興宗教の教祖。
 七百年余りの時空を越えて、夢の世界でもつれあう二人の男の記憶と思想。
 〝冒険〟の果てに描き出される、信仰と社会の狂気とは―?
 ブラックユーモア溢れる言葉遊びや、多彩な劇中歌など、井上戯曲の陽性の魅力が怒涛のごとく感じられる濃厚な劇世界!10名余の俳優がスピーディーな役替えにより全役を演じ分ける独特のスタイルで、人間社会の表と裏が克明に照らし出されます!
 ≪ここまで≫

 衣装の早替えと役の演じ分けが見どころです。思いっきりそこにフォーカスされています。乗っかって楽しんだ者勝ち!

 ちょっとネタバレします。でも読んでから観に行っても大丈夫じゃないかと思います。

 蜷川さんのお芝居で久しぶりに、ポカンと口を開けて唖然呆然となったエンディングでした。数年前の私だったら憮然としていたかもしれません(←“然”で韻を踏んでみた・笑)。「わからない!」「どうしたらいいって言うの!?」と、怒りながら家路に着いたかも。

 でも今日は、驚いている自分、考えている自分、拍手喝采の中でその拍手に耳をすましている自分を、じーっと見ている自分がいました。演劇のおかげで少しは頭を使うようになったかなと思います。本編がベタな笑いに満ちていたからこそ(笑)、その落差の衝撃が大きくて、私にとっては良かったです。

 歌の部分がお芝居と切り離されて、別ものになっているように感じたのは残念。ワン・コーラスじゃなくしっかり3番まであったりするのは、ちょっと大変そうですが。

 ここからネタバレします。

 木場さんが全身黄色の法衣を着た中国の僧を演じられている時に、仏教の教えをしっかりとしたセリフで説いてくださいます。「自分が自分で自分を自分にする」だったかな。そういうセリフがいっぱいあって、じっと聞き耳をたてました。

 青年・道元(北村有起哉)は間違った発言をする度に、大勢の僧に頭をバカスカ打たれます。ドタバタのお笑いシーンになっていてとても楽しかったです。同じ回をご覧になっていた方が「あれはドリフだよね、木場さんが長さんで北村さんが志村けんで(笑)」とおっしゃっていて、超~納得。劇場が一丸となって・・・みんなで笑ってた(笑)。前後しますが、北村さんと高橋洋さんの「表意文字ソング」も面白かったな~。

 最後は現代(?)と13世紀の道元が、「お前が夢なんだから消えろ!」と言い争って、お互いに相手のほっぺをつまんで夢から覚めようとします。覚めて消えたほうがニセモノだから。でも誰も消えることはなく僧たちが大勢で争う中、天井から鉄格子と、テレビ番組(SMAP×SMAPや報道番組など)が映っている大きなモニターが10台ぐらい降りてきます。そしていつの間にか、僧たちは精神病院の患者のようになっていました。牢の中だから囚人みたいにも見えます。

 今までだったら「あぁ、こういうエンディングなのね~」と冷ややかになっていたかもしれませんが、今回の私は違いました。巨大な文字のテロップが出ていて、テレビが本当に気が狂っているように見えたから。悲しくもならなかった。ある限度を超えると人は客観的になれるものなんですね。
 牢は、舞台上の彼らではなく客席の私を囲っているのかもしれません。狂人を「狂ってるな~」と眺めている私自身が、自分が狂っていることに無自覚なのかもしれません。テレビを馬鹿にしたけど、そのテレビに持ちつ持たれつ生きているのは私の方かもしれません。

出演:阿部寛、栗山千明、北村有起哉、横山めぐみ 高橋洋、大石継太、片岡サチ、池谷のぶえ、神保共子、木場勝己 手塚秀彰 茂手木桜子 金子文
脚本:井上ひさし 演出:蜷川幸雄 音楽:伊藤ヨタロウ 美術:中越司 照明:山口暁 音響:井上正弘 衣装:小峰リリー 振付:前田清美 歌唱指導:門司肇 音楽コーディネート:澤井宏始 所作指導:花柳輔太朗 演出補:井上尊晶 演出助手:桐山知也 羽原結 舞台監督:濱野貴彦 劇場舞台技術:伊集院正則 野中昭二 営業:加藤雅広 票券:森田友規子 制作助手:佐々木康志 制作:佐貫こしの 唐澤まどか プロデューサー:加藤真規 主催・企画・製作:Bunkamura
【発売日】2008/04/12 S・9,500円 A・7,500円 コクーンシート・5,000円
http://www.bunkamura.co.jp/cocoon/lineup/shosai_08_dogen.html

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2008年07月13日 11:54 | TrackBack (0)