ほさかようさんが作・演出される空想組曲。王子小劇場が主催する佐藤佐吉演劇祭2008参加作品です。
王子小劇場での前作が面白かったので期待して伺いました。上演時間は約2時間強。
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≪あらすじ≫ CoRichより (役者名)を追加。
―「この絵は、まだ完成していない」―
若手の画家が集う小さなアトリエ。
その中でひと際異彩を放つ一人の画家(狩野和馬)。
彼はあふれでるイメージを「物語」としてキャンバスに描いていく。
しかしどの絵も完成させることができず、物語は結末を迎えずに放りだされる。
ある日、アトリエに一人の少女(牛水里美)が現れる。
光を求める二人が出会い、絵は次第に完成に近づいていく。
しかしその結末は彼自身も予想しないものだった―
≪ここまで≫
斜めになった舞台は、ステージ自体が絵の額のようなデザイン。キャンバスの上で絵描きの物語がつむがれていくロマンティックな美術です。上手奥の隅っこから、布がめくれるように開いて人物が登場するのも素敵。ただ、出はけは大変そうですが。
黒の絵の具ばかりを使う気難しい絵描き・名村(狩野和馬)は、初めて自分の絵の意味をわかってくれる少女・茜(牛水里美)と出会い、彼女にだけは心を開くようになっていきます。
名村と同じアトリエを使っている2人の絵描きたちとのエピソードと、名村の想像上の人物たちが登場する4つ(だったかな)の幻想的な短編とが組み合わさった構成でした。どれも魅力的な題材で、ほさかさんならではの毒を含んだポエティックで乙女チックな世界に浸り、うっとりしたり、しんみりしたり。
これだけアイデアがあったら、お芝居が3本ぐらい作れるんじゃないかしら。少々盛り込みすぎな印象を受けました。
茜役の女優さんは、実際にやってらっしゃる演技のほぼ反対のことをした方が良いんじゃないかと、観ていて思いました。彼女が泣いている時は笑った方がいいんじゃないかと思いましたし、笑っている時は泣いた(怒った)方がいいんじゃないかとも。たとえて言うと、手拍子の裏打ちをしているような感覚でした。個人的な感想ですが。
ここからネタバレします。
喪服の人々の短編悲劇はどれも素敵。特に「夜虫」(松崎史也)が良かったです。「何でも1つだけ願い事が叶う」話も良かったな~。作り物みたいな執事(牧島進一)が面白かった。
オープニングだけのダンスは、きれいではあるのだけれど不要のようにも感じられました。1度だけでなく何度かダンスを使って欲しかったですね。名村の想像上の人々(喪服)が登場する時や、転換などでも演出として使える場所はあったんじゃないでしょうか。
最後はブラックライトでステージを照らし、名村が残した真っ白なキャンバスも光ります。装置の魅力を生かしていて良かったですが、これもまた盛り込みすぎな気もしました。
佐藤佐吉演劇祭2008参加作品
出演:狩野和馬(InnocentSphere) 牛水里美(黒色綺譚カナリア派) 牧島進一(Studio Life) 齋藤陽介(ひょっとこ乱舞) 田口治(サラエンターテイメント所属) 松崎史也(Afro13)藤田美歌子(新宿芸能社) 石澤美和(SQUASH) 紫村朋子 中田顕史郎
脚本・演出:ほさかよう 舞台美術:松本わかこ 舞台監督:小林英雄 音響:天野高志(OFFICE my on) 照明:坂口美和 ムーブメント演出:金崎敬江(picoLoop%) ドラマターク:中田顕史郎 宣伝美術:岩根ナイル 制作:小山与枝乃(猫の手) 企画製作:空想組曲
前売り2800円・当日3000円 高校生1800円(当日券のみ要学生証) 全席指定 ★8月1日14:00の回は有料動員数に応じてチケット料金のキャッシュバックを行う<昼ギャザ>を実施いたします。
http://www.k-kumikyoku.com
※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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