倉持裕さんが作・演出されるペンギンプルペイルパイルズの本公演です。東京公演に行けなくて、福岡の大千秋楽に滑り込みました。
色んな笑いが詰め込まれた、非常に満足感の高いコメディーでした。あ~見逃さずに済んで本当に良かったっ!!上演時間は約2時間。
⇒CoRich舞台芸術!『審判員は来なかった』
≪あらすじ≫ 公式サイトより
戦いの末、帝国から独立を果たした新生国家。グラグラの内政とピリピリの外交に身を削る首脳陣と、まだ誰もプレイしたことのない《国技》のルールに苦しむ審判団・・・。異なる階層に生きる人々が共通して見る夢は、無血で行き着く国家の末路。
≪ここまで≫
ある国の4つの場所で起こる出来事を、役者さんがどんどん着替えて何役も演じながら表現します。舞台上であわただしく着替えたり、前のシーンの人物が次のシーンの人物と顔を合わせて慌てたり、わかりやすい笑いとしても、メタ演劇的な演出としても大いに楽しめました。
回り舞台には大きく分けて3つの面があり、1面で2つの場所を表す面が1つあるので、全部で4場面。わざと斜めに歪ませた線がかっこいいし、色合いもシック。
建て込まれた装置の周囲の舞台床に、まるでバスケットボールのコートのような白いラインが引かれています。演技をしていることが同時に“新しいスポーツ”を競技しているようにも受け取れる、演劇の多重・多層感覚を巧みに組み合わせた美術でした。
今回のゲストはラーメンズの片桐仁さんと安藤聖さん。片桐さんは大きく遊んで、空気を盛り上げてくださっていました。安藤さんのことはポツドール公演(→1、2)で拝見していましたが、可愛らしいだけじゃなくてこんなに演技の幅が広いなんて新たな発見でした。
若手の劇団員の方々(近藤智行さんと吉川純広さん)も要所々々でビシっと決めてくださっていましたね。もちろん小林高鹿さん、ぼくもとさきこさん、玉置孝匡さんは期待以上のパフォーマンスでした。出演者全員に大満足。初日好きの私ですが、こんなに充実した演技を観られるなら終盤に行きたい気持ちもわかりますね~。
ここからネタバレします。セリフは正確ではありません。
オープニングからシビれる面白さ!スーツ姿の男女3人(小林、ぼくもと、玉置)が立っていて、男(小林)が女の背中を見つめて「光ってるね」と言うんです。女自身が美しく光り輝いているのかと思いきや、それは女の後頭部に仕込まれたきらきら輝く銀色(かな?)のテープのことだったんです。ぴ~っとひっぱると頭からテープがつるつるーっと伸び出てくる!なんともいえない可笑しさでした。
新たに生み出した国技「ハンティング・ボール」のルールがどんどん変わっていきます。一番初めのひらめきが、良くも悪くも、あれよあれよと言う間に歪んでいくのは世の常ですよね。それを笑いいっぱいに痛快に見せてくれます。
有名なテニス選手だった大統領(小林高鹿)は、自分が審判に激しくクレームをぶつけたあるテニスの試合を思い出します。反対側のコートで退屈そうにしていた相手選手のことなど省みず、自分は熱くなってずっと怒鳴っていたことを。そういえば4つの世界の人々は彼らなりに一生懸命でしたが、周囲のことを考えていない行動を取っていましたね。みんな自分のことで精一杯。
ハンティング・ボールは大統領の意に反して、自国内ではなく隣の帝国で大人気になります。最後に審判長(片桐仁)が大統領と会う約束をキャンセルしたことが、タイトルの『審判員は来なかった』につながっているのかしら。ハンティング・ボールがまだ世に出ていない時は、あんなに大統領に会いたがっていたのにね。人間はすれ違い、同じことを繰り返すってことかなと、軽やかに紙ふぶきが舞うステージを見ながら考えました。明るくも、暗くもあるエンディングでした。
≪東京、大阪、福岡≫ ペンギンプルペイルパイルズ#13
出演:小林高鹿 ぼくもとさきこ 玉置孝匡 近藤智行 吉川純広 安藤聖 片桐仁
脚本・演出:倉持裕 舞台監督:橋本加奈子(SING KEN KEN) 舞台美術:中根聡子 照明:清水利恭(日高照明) 音響:高塩顕 衣装:今村あずさ(SING KEN KEN) 音楽:野村田中と風林火山【田中馨(サケロック)、野村卓史(グッドラックヘイワ)】 ヘアメイク:栗原由佳 演出助手:松倉良子 宣伝美術:坂村健次(C2デザイン) チラシイラスト:横山裕一 宣伝写真:相澤心也 宣伝ヘアメイク:山本絵里子、浅沼靖 舞台写真:引地信彦 制作助手:寺地友子 制作:土井さや佳 企画・製作・お問い合わせ:ペンギンプルペイルパイルズ
【発売日】2008/05/24 料金(全席指定) 前売4,300円/当日4,500円
http://www.penguinppp.com/
※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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