REVIEW INTRODUCTION SCHEDULE  
Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
mail
REVIEW

2008年08月11日

Bunkamura『女教師(じょきょうし)は二度抱かれた』08/04-27シアターコクーン

20080804_jyokyoshi_ha_nido_dakareta.jpg
「女教師は二度抱かれた」パンフとチラシ

 市川染五郎さん、大竹しのぶさん、阿部サダヲさんら豪華キャストを迎えた、松尾スズキさんの新作、シアターコクーン公演です。

 松尾さん的ナンセンスな笑い全開で、でもぐっと切なくなる悲喜劇でした。歌がとっても素敵!最後は涙しました。上演時間は約3時間30分(休憩20分含む)。

 ⇒CoRich舞台芸術!『女教師は二度抱かれた

 ≪あらすじ≫ 公式サイトより。(役者名)を追加。
 演劇界の風雲児と呼ばれる劇団の演出家(市川染五郎)は、歌舞伎界の異端児と注目されている女形(阿部サダヲ)とタッグを組み、新しい現代の歌舞伎を創造しようと、威勢よく狼煙を上げている。そんな前途洋々の彼の前に、高校時代の演劇部の顧問である女教師(大竹しのぶ)が突然現われる・・・。
 これは、壊そうと思っても壊れないものと、壊れてほしくないのに壊れていくものの物語である。
 ≪ここまで≫

 染五郎さんが演技などまったくできない演出家役で、阿部サダヲさんがその隣りで歌舞伎役者を演じること自体が、まずとんでもない面白さです。染五郎さんが・・・たまらなく魅力的っ!!歌舞伎役者とは思えない、あの、なよなよした立ち姿(笑)!!高校生男子を演じる時なんて、もう恥ずかしいし胸きゅんだし、一人客席でもだえたよっ!(笑)

 現行シーンに夢や回想のシーンがザクザクと挟み込まれます。突然、歌とともにやってきたりするものだから何度も驚かされるし、舞台から気持ちをそらすことができないんですよね。そして体にズドンと届くギャグが次々と繰り出されますから、長時間でも集中して楽しむことができました。

 オリジナルの歌がとても良かったです。舞台奥ではバンドの生演奏あり。役者さんは歌手ではないので特に歌唱力があるわけではないですが、歌詞(松尾スズキ)が面白いし、音楽(星野源)はどこかおどけていて、でも切なくて、歌が始まる度にその曲独特の世界が生まれるのをじっくり味わいました。

 松尾さんの作品は、お芝居が終わった後も登場人物の人生は続くんだと強く示していますよね。だから、悲惨さを笑い飛ばす、この夢のひとときを信じられるのだと思います。

 ここからネタバレします。

 天久六郎(市川染五郎)は高校時代に、演劇部顧問の山岸諒子(大竹しのぶ)と動物園で肉体関係を持ってしまいます。それが世間にバレて山岸は精神を病んでしまいました。天久は高校を卒業し、「僕が演出家になったら、先生に出演してもらうよ」という約束をすっかり忘れて、18年が経ってしまいます。その間、山岸は夫・鉱物(浅野和之)とともに心の病と闘いながら生きてきて、とうとう有名演出家になった天久のところにやってきたのです。あの約束を守ってもらおうと。

 お芝居が始まったら、その瞬間からそこは現実世界ではなくなります。稽古場は想像力でいかようにも変化する小宇宙です。借金まみれになった天久と、精神を病みながらもやはり女優を目指す山岸が、稽古場で演技の練習を始めるシーンで泣けてきました。最後は頭上に日本国旗をはためかせた松尾さん(「お子様ランチSHOW」の人?)が登場し、ゆっくり歌います。しょっぱい現実の中の夢に酔いました。

 前半最後に客席通路をぐるりと回って歌った、あの、「ヘソの歌」(?)は何?!(笑) めちゃくちゃ可笑しかったです。
 浅野和之さん(山岸の夫・鉱物役)の「猟銃に撃たれた鹿」の演技に悩殺されました。笑いすぎて苦しいよっ!「インド人」も凄かった~。

出演:市川染五郎 大竹しのぶ 阿部サダヲ 市川実和子 荒川良々 星野源 池津祥子 皆川猿時 村杉蝉之介 宍戸美和公 平岩紙 少路勇介 菅原永二 ノゾエ征爾 浅野和之 松尾スズキ 赤地忠訓 
荒野のバンド:門司肇 伊藤靖浩 伊賀拓郎 田中馨 佐藤えりか BIC 前田卓次 高良久美子 藤井理佳 清水直人
脚本・演出:松尾スズキ 美術:二村周作 照明:大島祐夫 音楽:星野源 音楽監督:門司肇 振付:振付稼業air:man 音響:山本浩一 衣裳:戸田京子 映像:ムーチョ村松 ヘアメイク:大和田一美 演出助手:大堀光威 佐藤涼子 舞台監督:枡田勝敏 宣伝イラスト:河合克夫 宣伝美術:永石勝(トリプル・オー) 営業:加藤雅広 票券:小瀧香 制作助手:市川美紀 制作:松井珠美 プロデューサー:加藤真規 製作:山崎浩一 主催・企画・製作:Bunkamura
【発売日】2008/06/08 S9,500円 A7,500円 コクーンシート5,000円
http://www.bunkamura.co.jp/cocoon/lineup/shosai_08_onnakyoushi.html

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

★“しのぶの演劇レビュー”TOPページはこちらです。
 便利な無料メルマガも発行しております。

メルマガ登録・解除 ID: 0000134861
今、面白い演劇はコレ!年200本観劇人のお薦め舞台
   
バックナンバー powered by まぐまぐトップページへ
Posted by shinobu at 2008年08月11日 21:43 | TrackBack (0)