the companyが主催するロバート・アラン・アッカーマンさん(通称ボブさん)のワークショップを見学させていただきました。⇒第1回の写真レポート ⇒第2回情報 ⇒『バーム・・・』稽古場レポート
参加者の年齢層は17歳~50歳と幅広く、昼間と夜間の2クラスに約50名ずつ(合計101名)という編成でした。これまでで最も多人数ですね。関係者によると「応募が集まるのも今までで一番早いペースでした」とのこと。
ワークショップのテキストは『橋からの眺め(A VIEW FROM THE BRIDGE)』。アメリカの劇作家アーサー・ミラーの戯曲です。今回は「本を読む」ことに重点を置いて、最初の数日間は戯曲を読み解くことにじっくり取り組まれました。その後、2人1組または3人1組のチームごとの実技指導に入ります。
8/12(火)の前半を1時間、後半を3時間見学させていただきました。第1回、第2回に比べると今回は、会場が違うのもあるかもしれませんが、ずいぶんと雰囲気が違いました。一見、静かで穏やかな稽古場に、参加者の熱意がひたひたと満ちています。わいわい、がやがやとしていないんですよね。その場に腰をすえて、じっくりと耳を澄ませる方が多いのではないかと思いました。参加者が工夫を凝らして作ってきた数分間の対話シーンをいくつも拝見し、その密度の高さを実感。
ボブさんはいつもより早口で、通訳の珠麗さんの日本語とほぼ一体になったような進め方でした。2人で1人の人物のように見えてきて(すごい!)、それもまた稽古場の密度を高くしていたように思います。
ボブさんが語った言葉で、私にとって特に大切だったものを下記にご紹介します。※写真は稽古場風景です。文章とは特に関係ありません。
■役を甘やかしてはダメ
ボブ「日本人の俳優は、感傷の方に気持ちが行きやすいようだ。登場人物を醜くみせたり、嫌われたりすることから救いたい、役を愛されるものにしてあげたいと考える傾向がある。人物を甘やかしてはダメ。」
ボブ「例えば『奇跡の人』のサリバン先生を思い浮かべてみてください。彼女は非常にタフ(強い)な人物ですよね。ヘレンに教育するシーンなんて、とても激しい。でも彼女のことを愛情のないひどい先生だと思いますか?むしろ厳しい方が愛情深い人物に見えるはず。だから、あなたの『こう見られたい』という欲望から、シーンを決め付けないで欲しい。」
■自分の芝居にほだされるな
ボブ「芝居をすることに恋をするな("Don't fall in love with your acting.")。自分の芝居にほだされるな。場面の中に居て下さい("Stay in the scene.")。コメディーでもシリアスでも、作品へのアプローチは同じ。演じる自分に酔うことなく、そのシーンの中に居続けた結果、可笑しい(悲しい)だけだ。」
参加者「アネット・ベニングの言葉があります。『最も可笑しな瞬間は、最もシリアスなシーンでできている』と。」
ボブ「その通りだね。俳優が一度『このシーンは笑えるんだ』と知ったとたんに、危険になる。笑いが来るはずのシーンで、全く笑いが起こらないことはよく起こる。それは俳優が『ここで観客が笑うぞ!』と準備をしてしまうから。」
■力ではなく、言葉を使って相手と関わる
ボブ「今、(手をひっぱって)相手をイスに座らせる演技をしていましたね。自分の力を使って相手をねじふせる演技はしない方がいい。まず、現実でやっている人を見たことがないから。人は小道具じゃない。それに、相手役のイマジネーションを奪うことにもなる。言葉を使って相手と関わることができるように(なりましょう)。」
講義終了後、閉館までの空き時間にそれぞれに稽古をする参加者たち↓
★ボブさんへのインタビュー
しのぶ「今回は今までのワークショップの中で、一番(指導が)厳しいですね。発表を途中で止められて、翌日に再度発表になったチームもいくつかありました。」
ボブ「ああ、そうだよ。同じシーンについて何度も同じことを言う必要はないからね。参加者の人数も多いから、繰り返しは避けたい。the companyでのワークショップは今回で3度目。今までに何度も私のワークショップに来てくれていたり、いっしょに仕事をしたメンバーも増えたから、よりスムーズになったんだ。」
しのぶ「参加者全体のカラーも前回までとは違いますよね。大人の、経験豊かな役者さんが多い気がします。」
ボブ「参加者の約85%が『バーム・イン・ギリヤド』を観た人たちだったんだよ。『BENT』『Angels in America』を観たという人もいたね。the companyがどんな団体なのか(どういう作風なのか)を知っていて、それをやりたいと思ってる人が増えたからじゃないかな。今回は洗練された演技をする人が多いと思う。」
しのぶ「今回のワークショップから次回作『1945』に出演される方はいらっしゃるんでしょうか?」
ボブ「まだわからないけど、なるべく多く出てもらいたいと思ってるよ。」
ボブ「今回も充実したワークショップになっていると思う。ワークショップが終わる度にとても残念な気持ちになるんだ。時間が足りない。定期的に、もっと長い時間が取れたらと、心から願っているよ。」
10月に開幕する『1945』のメディア掲載情報が貼られたパネル↓ ワークショップが実際の公演と強くつながっていることが伝わってきます。⇒イープラス特集 関連記事⇒1、2
2008年8月4日(月)~15日(金)※9日(土)、10日(日)の両日は休み
Class.1: 13:00~16:00 (8/4~8/15)/Class.2: 17:00~20:00 (8/4~8/15) ※これら二つのクラスは同一内容。参加費:100,000円 テキスト:『橋からの眺め』 著:アーサー・ミラー
講師:ロバート・アラン・アッカーマン 通訳:薛珠麗 スタッフ:斎藤努 ほか 主催:ゴーチ・ブラザーズ
http://www.thecompany-t.com/workshop.php
※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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