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Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
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2008年09月01日

新国立劇場演劇研修所2期生 試演会2『テネシー・ウィリアムズの世界』08/29-31新国立劇場 小劇場

 2005年に開講した新国立劇場演劇研修所の2期生の第2回目の試演会です⇒予約情報 ⇒2期生の試演会1

 テネシー・ウィリアムズの短編3本立て(「バーサよりよろしく」「しらみとり夫人」「ロング・グッドバイ」)で、ダブルキャストです。初日にAキャスト、千秋楽にBキャストを拝見。戯曲本を読んでから伺いました。上演時間は約2時間弱(途中15分の休憩を2回含む)

 ⇒CoRich舞台芸術!『テネシー・ウィリアムズの世界

20080831Tennessee_Wiliams.jpg
劇場入り口の看板

 新国立劇場でプロのスタッフワークが味わえて、休憩時間が終わる度に新しい舞台装置が現れるんですから、無料公演だと思うとお得すぎます。
 初日は演技の硬さが目につきました。今回の収穫は、なかなか上演されないテネシー・ウィリアムズの短編を3作連続で見られたことかな・・・と思っていたのですが、千秋楽では忘れられなくなるであろう、劇的な瞬間を見せていただけました。

■バーサよりよろしく "Hello from Bertha"(1961年初演) 上演時間は約30分。
 ≪あらすじ≫ パンフレットより (役者名)を追加。
 セントルイスの場末の私娼窟。年増の娼婦バーサ([A]佐々木抄矢香[B]熊澤さえか)は具合が悪く、この二週間働いていない。女主人のゴールディ([A]滝香織[B]岩澤乃雅)は家賃の滞るバーサを追い出そうとするが、バーサは出て行こうとしない。とうとうゴールディが病院へ連絡したと聞いたバーサは、助けを求めようと昔の恋人チャーリーに手紙を出そうとする…。
 ≪ここまで≫

 今にも死にそうに苦しみながら感情のピンからキリまでを行ったり来たりするバーサ役は、女優さんにとって演じ甲斐のある役だと思います。
 【A】皆さん熱演でしたが劇の世界がぐっと温まる感覚が薄く、最後まで冷静に眺めることに。終盤にバーサが可愛がる同僚のリーナ(吉田妙子)が登場し、バーサとの関係に緊張感が見られて良かったです。
 【B】女主人ゴールディ役の岩澤乃雅さんが、冒頭から大迫力。バーサ役の熊澤さえかさんも、痛々しさがかなりアップ。[A]で吉田さんが演じたリーナと[B]で保可南さんのリーナが全く違う人物(性格)に見えたのが、とても面白かったです。吉田さんの方がしたたかな悪者のようで私好み。

■しらみとり夫人 "The Lady of Larkspur Lotion"(l949年初演) 上演時間は約15分。
 ≪あらすじ≫ パンフレットより (役者名)を追加。
 ニューオリンズのフレンチ・クォーターにある下宿屋。女主人のワイア夫人([A]岩澤乃雅[B]滝香織)が部屋代を徴収しにハードウィック=ムーア夫人([A]藤井咲有里[B]深谷美歩)の部屋を訪れるが、ゴキブリと部屋代を巡って押し問答となる。その騒ぎを聞きつけた別の部屋を借りている作家([A]角野哲郎[B]阿川雄輔)が仲裁に入るのだが…。
 ≪ここまで≫

 こんなにコメディ色が前面に出た演出になるとは、全く想像していませんでした。やはり戯曲本を読んだだけではわからないものですね(←私に読解力がないだけかも)。
 【A】好感は多いに持てましたが、決めた型にそって演じている感がぬぐえず、役者さんのがんばりを冷静に眺めることに。
 【B】ムーア夫人を演じる深谷美歩さんのコメディエンヌぶりが素敵でした。

■ロング・グッドバイ "The Long Goodbye"(1940年初演) 上演時間は約40分。
 ≪あらすじ≫ パンフレットより (役者名)を追加。
 小説家志望のジョー([A]宇井晴雄[B]西原康彰)は、今日まさに生まれ育った街を出て南米へ行こうとしている。友人のシルヴァ([A]遠山悠介[B]西村壮悟)は政府の失業対策事業の仕事を勧めるが、ジョーの決心は変わらない。そこへ運送屋がやってきて、次々と家具を運び出していく。病院に支払いが出来ないのを苦に自殺した母([A]深谷美歩[B]藤井咲有里)、母の死後堕落し家を出ていった妹のマイラ([A]保可南[B]吉田妙子)、そして行方不明の父…さまざまな思い出がジョーの胸をよぎる。やがて空になった部屋に別れを告げ、ジョーはゆっくりと出て行く。
 ≪ここまで≫

 やはりとても面白い戯曲だなと思いました。特にシルヴァという男性がどういう人物なのかがわからなかったので、こうやって演じて見せてもらえたことが大きな収穫。
 【A】ジョーとシルヴァの関係が太く見えてこなくて、表面を上滑りしたような感覚。妹マイラが衣裳・ヘアスタイルを変えて登場するのがやはり効果的。
 【B】母役の藤井咲有里さんの独白が素晴らしくて、ドライブ中の景色が鮮やかに浮かびました。マイラ役の吉田妙子さんのきめ細やかな変身っぷりがお見事。

※「テネシー・ウィリアムズの世界」配役表より
■「バーサよりよろしく」
【Aキャスト29日19時/30日14時】ゴールディ(女主人):滝香織 バーサ(年増の娼婦):佐々木抄矢香 リーナ(バーサの同僚):吉田妙子 若い女:熊澤さえか
【Bキャスト30日19時/31日14時】ゴールディ(女主人):岩澤乃雅 バーサ(年増の娼婦):熊澤さえか リーナ(バーサの同僚):保可南 若い女:佐々木抄矢香
■「しらみとり夫人」
【Aキャスト29日19時/30日14時】ハードウィック=ムーア夫人:藤井咲有里 ワイア夫人(下宿屋の女主人):岩澤乃雅 作家:角野哲郎
【Bキャスト30日19時/31日14時】ハードウィック=ムーア夫人:深谷美歩 ワイア夫人(下宿屋の女主人):滝香織 作家:阿川雄輔
■「ロング・グッドバイ」
【Aキャスト29日19時/30日14時】ジョー(小説家志望の青年):宇井晴雄 マイラ(ジョーの妹):保可南 母(ジョーの母):深谷美歩 シルヴァ(ジョーの友人):遠山悠介 ビル(マイラの男友達):阿川雄輔 運送屋1:角野哲郎 運送屋2:西村壮悟 運送屋3:西原康彰 運送屋4:米川貴久(3期生)
【Bキャスト30日19時/31日14時】ジョー(小説家志望の青年):西原康彰 マイラ(ジョーの妹):吉田妙子 母(ジョーの母):藤井咲有里 シルヴァ(ジョーの友人):西村壮悟 ビル(マイラの男友達):角野哲郎 運送屋1:阿川雄輔 運送屋2:遠山悠介 運送屋3:宇井晴雄 運送屋4:米川貴久(3期生)
作:テネシー・ウィリアムズ 翻訳:鳴海四郎「バーサよりよろしく」「しらみとり夫人」 倉橋健「ロング・グッドバイ」早川書房刊 演出:西川傷廣 美術:工藤明夫 照明:鈴木武人 衣装デザイン:出川淳子 メイク指導:川端室生 音楽:上田亨 音響:青木央 演出助手:田中麻衣子 舞台監督:米倉幸雄 演出部:大杉良 協カ:小島恵三子 舞合・照明・音響操作:新国立劇場技術部 シアターコミュニケーションシステムズ・レンズ(舞合:本庄正和 照明:矢場拓史 音響:黒野尚 デザイン:北村俊也 調整:久村泰代 大道具:細井敏之 大道具義作:C-COM 小道具:高津映圖装飾 鳥城清 履物:神田屋 スチール:落合高仁 制作:新国立劇場演劇研修所 研修所所長:栗山民也
http://www.nntt.jac.go.jp/season/updata/20000134_training.html

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2008年09月01日 20:49 | TrackBack (0)