メルマガ2008年9月号でご紹介しておりました、青年団こまばアゴラ劇場国際演劇月間「キスフェス」参加作品です(⇒1、2)。
フェスティバルディレクターの多田淳之介さんが構成・演出される東京デスロックの、3本立てランダム上演。私は【発情期(一人芝居)】【蜜月期(二人芝居)】【倦怠期(非公開)】の順に1日で3本すべてを拝見。終演後に作品解説がある日がオススメです。
9/17の『夏目LOVE』では、看板俳優の夏目慎也さんに三条会の関美能留さん、ハイバイの岩井秀人さんが1時間ずつワークショップを行うとパンフレットに書いてあり、その場でチケットを予約(笑)。
⇒CoRich舞台芸術!『演劇LOVE2008~愛の行方3本立て~』
ひとことで言っちゃうと、【発情期】【倦怠期】で私はボロ泣き。【蜜月期】は少しばかり原作に忠実すぎるような気がしました。
fringe blogで書かれている“小劇場に最初の一歩を踏み入れようとしている方”には、お薦めできる公演ではない、と、現時点では思っています。「初心者オススメ」の基準も結局は個人差があることを踏まえて、ご自身の判断で観に行くかどうか決めていただけたらと思います。
アーティストは探求し続けます。演劇は進化します。そして観客も変わり続けるのだと思います。
ここからネタバレします。
≪作品解説≫については断片のみ。実際は長時間、たくさん話されていました。
【発情期】「HERE I AM-ドン・キホーテがやってくる!-」 上演時間:約1時間
出演:夏目慎也 原作:ミゲル・デ・セルバンテス 構成・演出 多田淳之介
セルバンテスの長編小説「ドン・キホーテ」を1人芝居に。Tシャツに短パンという普段着姿の夏目さんが、ドン・キホーテを演じます。
語る。(壁に)ぶつかる。媚を売る。祈る。脱ぐ。一人であること、一人よがりであること、カッコ悪くてみじめで、完膚なきまでに負けること。その命の貪欲さ、輝き。
突然の雨から逃れようとTシャツを頭からかぶった姿は、ウルトラマの怪獣ジャミラに似てる(笑)。一緒に雨宿りをしている相手の顔が可笑しくて笑う演技が、次第に自分自身(夏目さん)を笑っているように見えてきて、他人と自分が同一化し、それは観客をも巻き込みます。孤独の中の孤独。先日の岡崎藝術座『三月の5日間』のラストシーンと重なりました。
小説『ドン・キホーテ』の目次を第74章まで(だったかな)壁に映写。なんて長い小説。
小説自体がメタ構造になっていることも、夏目さんが小説家役で登場することで表現。
≪作品解説≫ 出演:多田淳之介 夏目慎也
多田「ドン・キホーテは夢を見ている。客が舞台を見ていることと近い。嘘を信じること、何かに見立てること。」
多田「今回の“発情”とは、演劇に対して発情しているという意味。演劇を一緒にやる人がいないから、『じゃあ一人でやってやるぜ!』と、演劇を演じ切って発情している。」
多田「10分間のセリフなしのシーンについて。それはスペインのカナリア諸島から来るテアトロイフィーアの、サイレント・クラウンに敬意を表して。」
【蜜月期】「ジャックとその主人」 上演時間:約1時間(うろ覚えです)
出演:佐山和泉 橋口久男(三条会) 原作:ドゥニ・ティドロ 構成・演出:多田淳之介
戯曲ではなく小説版の「ジャックとその主人」を2人芝居に。「人間が何をやろうと、世界で何が起ころうと、それは運命として最初から決まってる」という、運命論について書かれた小説だそうです。
天井に脚本が1枚ずつ、ぶら下がるように数枚貼ってあります。演劇にとっての“運命”は戯曲ってことですね。役者さんは「私がジャックです。・・・ということを今から話します」など、演技の外枠まで語ります。メタ芝居の構造です。
ジャックが恋の話をしようとしますが、一向に先を話せないまま関係ないエピソードが続々と。最後は黒いテープで目隠しをして演技をすることで、物理的に「何が起こるかわからない」状況を生み出し、演劇の運命論から脱出。
佐山さんと橋口さんの堂々たる演技対決は見ごたえがありますが、個人的にはもっと戯曲のあらすじから離れて、核心に迫るような演出で観たかった気がします。
≪作品解説≫ 出演:多田淳之介 橋口久男
多田「原作はスイス人ドゥニ・ティドロの小説『運命論者ジャックとその主人』で、ミラン・クンデラの戯曲版も有名です。」
多田「この小説は運命論について書かれていますが、演劇にも戯曲があるので、次に何が起こるのかは決まっているとも言えます。この作品では“その場で実際に起こること”を見せた。」
多田「使用楽曲は山口百恵など。三条会へのリスペクトもあり。」
多田「今回はTシャツと缶バッチを作りました。“演劇LOVE”と書いてあるバッチは“踏み絵バッチ”と呼んでいます(笑)。俺がつけなくてどうする?ってことで。果たしてこれを付けて電車に乗れるか?と(笑)」
【倦怠期】「CASTAYA」 上演時間:約50分
作・演出:エンリク・カステーヤ
出演:非公表 ※カステーヤ氏の意向により、出演者は非公表とさせていただきます
東京デスロックREBIRTH#2 こまばアゴラ劇場国際演劇月間 キスは何回?フェスティバル参加作品
出演:夏目慎也 佐山和泉 橋口久男(三条会) ほか
構成・演出:多田淳之介 宣伝美術:宇野モンド チケット・当日パンフレットデザイン:京 制作:服部悦子 企画制作:東京死錠 リトルモア地下 主催:東京デスロック (有)アゴラ企画・こまばアゴラ劇場 共催:リトルモア地下 協力:にしすがも創造舎 東京都
【休演日】9/16【発売日】2008/07/19 予約¥2000 当日¥2500 LOVEセット券¥5000 夏目LOVE¥2000(予約・当日共 LOVEセット券ご購入の方¥1000)
http://deathlock.specters.net/
http://www.komaba-agora.com/line_up/2008_09/deathlock.html
※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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