REVIEW INTRODUCTION SCHEDULE  
Shinobu's theatre review
しのぶの演劇レビュー
mail
REVIEW

2008年09月17日

新国立劇場演劇研修所『朗読劇 少年口伝隊一九四五』09/16新国立劇場 小劇場

 今年2月に日本ペンクラブ主催イベントにて上演された、井上ひさしさんの新作朗読劇です。新国立劇場演劇研修所によって早々と再演が実現しました。⇒初演レビュー

 2度目でも新たに気づくことが多かったです。演劇研修所のレパートリーとしてぜひ毎年夏に、多くの場所で上演していただきたいですね。学校公演にもとても良いと思います。上演時間は約1時間。

・水戸公演:9月21日(日)@水戸芸術館ACM劇場
・山形公演:9月23日(火・祝)@シベールアリーナ

 ⇒CoRich舞台芸術!『朗読劇 少年口伝隊一九四五

 あらすじ等はこちらでどうぞ。

 役者がイスに座って脚本を読むスタイルの朗読劇ですが、暗記したセリフを話すところも多いですし、イスに座ったり立ち上がったり、少し歩いたりと、動きにも精密なルールがあって、普通の演劇公演と遜色ない観劇体験ができます。
 舞台装置はシンプルながら照明や映像の効果が非常に大きいです。朗読ならではのミニマムさが、戯曲の意味をより重く、深く心に響かせるのではないかと思います。

 2期生の皆さんがこの作品に出演するのは数回目ですよね。本を読むところと客席を向いて演技をするところの切り替えがするどく出来ていて、演技に自信と落ち着きが感じられ、言葉の肉付きが良くなっているように思いました。

 ここからネタバレします。セリフは正確ではありません。

 3人の少年が口伝する情報に、哲学じいたんが「そんなことできるわけがない」と正論で返します。言われてみたらその通りだなと少年たちは思いますが、やはりまた、広島県上層部の人々は「ほら穴を掘って住居とし、小さな花を飾って心を豊かにし、最後の最後まで戦え!」などと、実現不可能なことをさも正しいかのように声高に言う(言わせる)のです。
 大きな声はその時は心地よく響くけれど、それに流されてはいけない。2度目にして、一番胸に響いたのはこのことでした。

 アメリカに原爆を落とされて広島はこんな惨状となっているのに、なぜ進駐軍の「慰安所」を作らなければならないのか。父も母も友もみな殺されたのに、なぜ今、アメリカ人にお世辞を言ってもてなして、喜ばせなければならないのか。口伝隊の少年らは怒りに震えます。この「怒り」を、私の世代は学校で教えてもらっていません。

 3人の少年の内の1人が手に手榴弾を握り締めたまま、台風による大水で行方不明になってしまいます。彼と彼の手に握られた手榴弾を、私が覚えておかなければならないと思います。

≪東京、茨城、山形≫
出演:新国立劇場演劇研修所2期生14名(岩澤乃雅 熊澤さえか 佐々木抄矢香 滝香織 保可南 深谷美歩 藤井咲有里 吉田妙子 阿川雄輔 宇井晴雄 角野哲郎 西原康彰 遠山悠介 西村壮悟) ギター:宮下祥子 
作:井上ひさし 演出:栗山民也 音楽監督:後藤浩明 模型作成:尼川ゆら 照明:服部基 衣裳:中村洋一 音響:秦大介 映像:小林倫和 方言指導:大原穣子 ヘアメイク:林節子 演出助手:田中麻衣子 舞台監督:田中伸幸 舞台・照明・音響操作:新国立劇場技術部シアターコミュニケーションズ・レンズ(舞台:米倉幸雄 照明:河野和子 塩沢しのぶ 麻生輝樹 音響:黒野尚 映像:鈴木大介 調整:村田祐二) 制作:新国立劇場 研修所所長:栗山民也
2008年9月16日(火)4:00開演/7:00開演
http://www.nntt.jac.go.jp/season/updata/20000136_training.html

※クレジットはわかる範囲で載せています。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

★“しのぶの演劇レビュー”TOPページはこちらです。
 便利な無料メルマガも発行しております。

メルマガ登録・解除 ID: 0000134861
今、面白い演劇はコレ!年200本観劇人のお薦め舞台
   
バックナンバー powered by まぐまぐトップページへ
Posted by shinobu at 2008年09月17日 22:02 | TrackBack (0)